推しが必ず死ぬゲームのモブに転生した俺は、彼女を救うためにシナリオブレークします〜俺の推し活は彼女を生かすための活動です〜

仁徳

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第二章

第九話奴隷を操る女の子

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 カレンの隣にいる女の子を見て、俺は歯を食い縛る。

 なんてことだ。まさかコワイがこんなところに現れるなんて。これも俺の選択肢に寄ってルートが変わった影響なのか。

「何? あの子、ボンテージなんか着て。まさか、カレンにSMプレイでもしようって言うの?」

 コスプレ衣装を着ている女の子に対して、アリサが変な妄想を口走る。

 SMプレイだったのなら、どんなに良かったことか。

「アリサ、見た目に騙されるな。あの女は見た目以上に強いぞ」

「あら? あなたは妾のことを知っているようね。どこかで会ったかしら?」

 コワイが長い黒髪をたくしあげながら赤い瞳で俺を見てくる。

「いや、単に俺が一方的に知っているだけだ。俺たちはカレンを迎えに来た」

「カレン? ああ、この女ね。悪いけどそれはできないわ。サクとの約束だもの。彼が戻って来るまでは、この女を牢から出す訳にはいかない」

「うっ! うう! うううん!」

 カレンが俺たちを見ながら声を上げているが、口に噛まされている猿轡のせいでまともに発音することができていない。

 安心してくれ。必ず君を守るから。

 彼女を救出するためにも、まずは俺たちが優勢であることを相手に思い込ませることが先だ。

「悪いが、サクは帰って来ないぞ。俺が倒したからな」

「サクを倒しただと? 戯言を言うではない。サクのユニークスキルの前には、神の駒は無力なのだからな」

 お前の幼馴染は倒したと教えるも、コワイは信じようとはしない。

「本当よ! アタシ、この目で見たのだから、ユウリがサクって言う男を倒して、光の粒子になったところを」

「何だと! いや、確かにこの時間になってもサクが戻って来ないのは変だ。念のためにも確認をしておくか」

 コワイが耳元に手を持って行く。

「それは本当ですか! どうしてサクを……いえ、何でもありません。けして口答えをした訳では……はい……分かりました」

 黒髪ロングの女の子が、いきなりぶつぶつと独り言を言い出したかと思うと、彼女は俺に対してキッと睨み付けてきた。

 コワイはいったい何をやっているんだ? 誰かと会話をしているようにも聞こえるのだが。

「おのれ! よくもサクを! 許さない! お前だけは絶対にリタイアさせてやる! 来なさい! 奴隷共!」

 敵の女の子が叫ぶと、一階から物音が聞こえてくる。階段を見ると、額に紋様がある人たちが地下にやってきた。

 老若男女関係なく、数多くの人々が手に得物を握っていた。

 やつが呼び出したのはこれで全員なのか? 確かめる必要があるな。

「【音波探知エコーロケーション】」

 スキルを使用して周辺の探査を行う。
すると建物の外にまで彼女の奴隷と思われる反応があった。

 この感じ、おそらく百人以上いる。なんてこった。絶対に初期設定のコワイじゃないか。

 彼女のユニークスキルは【奴隷契約スレーブコントラクト】。奴隷化したものを操ることができる。

 初期のころは奴隷にした人物に制限がなく、何人でも奴隷にすることができた。プレイヤー側で彼女を使用したとき、数の暴力で敵を一掃するという、ある意味パワープレイが可能だった。

 実際に俺も、主人公に選んでプレイしたときは、ビビってしまうほどに強かったのを覚えている。ボスも圧倒するほどの力を持っているイカれたキャラだ。

 アップデート後、奴隷にすることが可能な人数は三十人までと縮小されたことで、ゲームバランスを保たれた。

 だが、目の前にいるコワイは、初期設定のぶっ壊れた力を持っているバージョンだ。

 普通に戦っては、間違いなく俺たちは負ける。

「さぁ、奴隷共! こいつらをリタイアさせろ!」

 コワイが指示を出した瞬間、得物を握った老若男女たちが一斉に襲い掛かる。

「アリサ、正直に言って君を守りながら戦える自信がない。自分の身は自分で守ってくれ」

「言われなくても自分の身ぐらい自分で守るわよ! ハッ!」

 アリサが格闘術を使って敵を攻撃し始める。拳や蹴りで奴隷兵を吹き飛ばし、他の奴隷を巻き込む。

 やっぱりアリサは格闘センスがあるな。彼女に【肉体強化エンハンスドボディー】を使えば、少しは戦況を有利に運ぶことができるかもしれない。

「【肉体強化エンハンスドボディー】!」

 俺とアリサに肉体強化のスキルを発動すると、彼女の拳の威力が上がった。

 蹴り飛ばされた奴隷兵たちは次々と壁に吹き飛ばされ、直ぐには起き上がれない状態にさせていた。

「うそ! なぜか分からないけど、腕力と脚力が上がっている!」

「俺が【肉体強化エンハンスドボディー】のスキルを発動したからだ。持続時間は俺よりも短いが、これで少しは力を抜いても敵を倒すことができる」

「へぇーなら、全力で攻撃したらどうなるのかしら?」

 アリサが鎧を着ている奴隷兵に拳を叩き込む。するとやつが着ている鎧にヒビが入った。

 嘘だろう! 鎧にひびを与えるなんて、どれだけバカ力何だよ。何度も言うけど、絶対にユニークスキルを間違っているって! 彼女が【聖女セイント】なんておかしいだろう。

 金髪ツインアップの女の子の戦いぶりに驚かされる中、俺も拳や蹴りで奴隷兵たちを倒していく。

 一応こいつらもコワイに無理やり奴隷にされた可哀想な人たちだ。

 だから、極力殺すようなことをせずに戦闘不能にさせるだけに止めたい。

「もう! 何人気絶させてもキリがないわ。これって本当に終わるの?」

 倒しても次々と地下に現れる奴隷兵にアリサは次第に焦り出している。

「アリサ危ない! しゃがめ!」

「え、ええ!」

 戸惑いながらもアリサは体を屈めた瞬間、一人の奴隷兵が彼女の背後から剣を横なぎに振る。

 危なかった。危うくアリサが切られるところだった。

「【ロック】!」

 石畳の床を剥がし、アリサに切り掛かった奴隷兵にぶつける。

「ありがとう。助かったわ」

 額から流れる玉のような汗を拭いながら、アリサが礼を言ってくる。

 このままでは俺たちの方がやられる。何か、何か方法は?

 思考を巡らせると、あることを閃く。

 そうだ! あの方法なら現状を打破できる!











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