上 下
17 / 41
第二章

第七話 そんなバカな!どうして認識阻害が効かない!

しおりを挟む
~サク視点~



「さぁ、カレンを返してもらおうか」

 俺ことサクは、突然現れたユウリに邪魔をされ、指を向けられる。

 今、あの男は俺を見破っているかのような発言をしていなかったか? いや、そんなまさかな。さすがに俺の認識阻害を無効化している訳がない。

 そんなスキル、俺には聞いたことも見たこともない。そうだ。きっと何かの聞き間違いに決まっている。

「何を言ってのよ。どう見たってカレンじゃない。あなたの方がおかしいんじゃないの?」

 ほら、女の方はしっかりと俺のユニークスキルの影響下にある。やっぱり俺のスキルに異常が起きた訳ではないな。

「なら、今からあいつにかけられているデバフを解除するから、その目で確かめてみろ。【脳治療ブレインセラピー】」

 男がスキル名のようなものを呟く。その瞬間、女が驚きの表情を浮かべた。

「うそ、さっきまでカレンが居た場所に男がいる」

 そ、そんなバカなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 あの女、俺のユニークスキルの効果が切れただと! 本当にユウリは、俺の【認識阻害インピード・レゴグニッション】を打ち消したと言うのか!

「バカな! 俺のユニークスキルが破られるなんて。そんな技、聞いたことがないぞ!」

「それもそうだろうな。だって、このスキルは中盤で登場するスキルだ。ゲーム序盤であるこの時期に、知っている訳がない」

 ユウリが意味の分からないことを言ってくる。

 中盤で登場する? ゲームの序盤? こいつは何のことを言っているんだ?

「せっかくだからカレンを連れ去った報いとして、お前の心を折ってやろう」

 口角を上げ、ユウリはニヤリと笑う。

 俺の心を折るだと? いったい何をする気だ。

「お前のユニークスキル【認識阻害インピード・レゴグニッション】がどうして認識を変えられるのか、そのトリックを当ててやる」

 何だと! こいつわかるのか? いや、そんな訳がない。たいていイケメンは顔だけだ。そうでなければ、俺が顔でも頭脳でも敗北することになる。

「まず、お前は魔力を微小な粒子に変えて周囲に放つ。それを人が鼻腔から吸引し、鼻の粘膜から吸収して血液に混じると、摂取した成分が脳へと送り込まれる。それにより脳は、負荷によって脳内神経伝達物質の過剰分泌で生じた脳回路の異常が発生する。脳回路上を制御、抑制されない情報が駆け巡るという暴走状態に陥った脳は、情報のつながりが統合できなくなって混乱してしまう。フィルターのかからない、あらゆる刺激情報が直接脳に入力されることになり、脳の記憶を司る海馬に架空の記憶を植え付けた」

 こ、この男! 俺のユニークスキルの効果を、俺以上に詳しく説明しやがる! いったい何なんだよこいつは! 俺以上の天才じゃないか!

「あ、因みに俺の使ったスキル【脳治療ブレインセラピー】の説明もしてやろうか? どうしてお前の【認識阻害インピード・レゴグニッション】を打ち消したのか、知りたいだろう?」

「誰がそんなことを知りたいか! 俺が逆に答えてやる!」

 正直、かなり知りたい。だけどここで答えを教えてもらったら、俺の心が折られてしまう。そうなっては、こいつの思う壺だ。

 考えろ、俺の頭脳を信じるんだ。

「それはな、脳内で異常な興奮が起きたときに、それを押さえてくれる働きをする神経伝達物質のGABAギャバを、脳神経のGABA受容体に結合するようにした。その結果、脳回路が抑制されて余計な情報を遮断できた結果、お前の認識を阻害するスキルを無力化させたというわけだ」

「今考えていたのに、答えを言うなああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 思考を巡らせた瞬間にあっさりと答えを聞かされた俺は、プライドがズタズタにされる。

 感情的になってしまい、俺は地を蹴って走ると、短剣を構えてユウリに斬りかかった。

「答えをバラされたからってそんなに怒るなよ。簡単に切られる訳にはいかないから、反撃させてもらう【肉体強化エンハンスドボディー】【俊足スピードスター】!」

 ユウリがスキル名と思われる言葉を言うと、一瞬にしてやつの姿が消える。

 何! いったいどこに消えた!

「後ろだ!」

「何?」

 後方から声が聞こえ、直ぐに振り返る。しかしやつの姿はどこにも見当たらない。

「残念、またお前の背後に回っている」

 再び背後からユウリの声が聞こえ、踵を返す。その瞬間、顔面に何かがぶつかったようで痛みが走り、思いっきり後方に吹き飛ばされた。

 地面をバウンドしながら転がり、置いてあったポリバケツに激突する。それによって俺の体は止まったが、ポリバケツの中にあったゴミが散乱して異臭が漂う。

 くそう。やつがスキルを発動した瞬間、猛スピードで移動したことは分かった。でも、頭では理解しても体が追い付かない。

 ユニークスキルが破られた今、俺はただの一般人のようなもの。

 この男には絶対に勝てない。

 くそう。このままでは負ける。

 よろよろと立ち上がり、ユウリを睨みつける。

 考えろ。この窮地でもどうにかなる方法がきっとあるはずだ。

「今のが俺を欺いた分の一撃だ。だけどまだまだこれで終わらせるつもりはない。あと、カレンが裏切ったと思い込んだアリサの心の傷の分と、カレンを誘拐した罪の分が残っている。まだまだ俺のターンを継続させてもらう」

 ユウリが言葉を吐き捨てた瞬間、顎に強烈な痛みが走り、空中に飛んだような浮遊感を覚える。

「これがアリサの分!」

「グハッ!」

「そしてこれがカレンの分だ!」

 続いて腹部に強烈な痛みを覚えると同時に、背中にも激痛が走る。

 どうやら空中に浮いた俺を地面に叩き落としたようだ。まったく見えなかった。これが……スキルがゴミと化したものの末路か。

 起き上がろうとするも力が入らない。頭がぼーっとする中、俺の体が光る。

 この現象は粒子化か。どうやら俺は、聖神戦争に敗北したみたいだな。

 起き上がることはできないが、足の方から消えて行くのが感覚的に分かった。

『サク・アケチ、お前は良くやった。ここでお前を失うのは痛手だが、お前の目を通していいデーターを取ることができた。あとはコワイに任せろ』

 体が消えゆく中、あの方の声が聞こえてくる。

 そうだ。俺はここでリタイアだが、俺たちにはあの方がいる。どうせこの男はあの方には勝てない。最後は殺されかけ、命と引き換えにあの方の駒になるに決まっている。

「俺の負けだ。だけどまだ、コワイやあの方がいる! お前があの方に倒され、自分の命欲しさに駒にされるところを、あの世から見ておいてやる!」

 その言葉を最後に、俺の意識は消え去った。











最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

処理中です...