4 / 41
第一章
第四話 推しとの関係に進展が!
しおりを挟む
「ユニークスキルが未来予知ではなく【推し愛】?」
カレンの言葉に、俺は頷く。
「ああ」
「それってどんな効果なの? そんなユニークスキル聞いたことがないのだけど?」
カレンが小首を傾げる。
それもそうだろう。【推し愛】は俺が考えたユニークスキルで、物語の本編には存在していないスキルなのだから。
「ユニークスキル【推し愛】って言うのは、推しへの愛を力に変え、その愛で他のユニークスキルを手に入れることを可能にするスキルなんだ」
カレンへの愛を推しへの愛と言い換え、ユニークスキルの効果を彼女に教える。
流石にスキルの効果を馬鹿正直に隅々まで教えたら、いくらカレンでも引いてしまうだろう。せっかく嫌われない程度に好感度を上げられたのに、これ以上下げて嫌われてしまうのだけは避けたい。
推しから嫌われることの方が、死ぬよりも何倍も辛いからな。
「推しって言うのが何のことを表しているのか、私には分からないけれど、素敵なスキルね。愛の力であなたが強くなるってことでしょう。物語の主人公みたいで格好良いわね」
カ、カレンから格好良いって言われた! ヒャッホーイ! めちゃくちゃ嬉しい! もう、彼女の言葉一つ一つが嬉しくて堪らないのだけど。
マジやばい。俺の推しは天使すぎる。
「あれ? でも、そしたらどうして私の未来のことを知っているの? 未来予知でないのなら、そんなことは分からないわよね?」
「そ、それは……」
『この世界がゲームの世界であり、俺はこの世界に迷い込んだ転生者なんだ』
そう言おうとするが、途中で言葉がつっかえて続きが言えない。
言え! 言うんだ! 彼女には隠し事をしないって決めたばかりじゃないか!
「それは――」
「お待たせしました。紅茶二人前です」
タイミングが悪く、ウエイトレスが注文の品を持ってきた。
テーブルの上に置かれたものは、大きめのグラスに入った紅茶だ。そして二つのストローが入っている。
どうみても、カップルが飲む用のやつだ。
「ちょっと、これってどう言うことなの? 私は紅茶を二つ頼んだでしょう?」
「あら? そうでしたか。ごめんなさい。こちらサービスとさせてもらいますので、どうぞお召し上がりください」
ウエイトレスがニヤニヤとしながら紅茶を飲むように促す。
この人、絶対にわざとだな。厚意は嬉しいけど、やりすぎだ。
さすがにこれは恐れ多すぎる。俺がカレンと同じ飲み物を飲む訳にはいかない。
でも、彼女は先ほどもこの店の紅茶を飲んだと言っていた。なら、ここは俺が男を見せて、一人で飲むべきだ。
「この紅茶は俺が飲むよ」
「ありがとう。助かるよ」
カレンが安心したように微笑む。彼女に感謝されるだけで、紅茶を五杯どころか十杯は飲んでしまえそうな気がした。
ウエイトレスが再び厨房へと向かい、俺たちはもう一度向き合う。
「それで、話しを戻すけど、どうして私が聖神戦争で必ずリタイアすることを知っているの?」
もう一度訊ねられ、俺は生唾を呑み込む。
「そ、それはだな。えーと、そ、そう。もう既に未来予知を手に入れているからなんだ。だからカレンの未来が分かったってことなんだ」
咄嗟に出任せを言ってしまう。
俺のチキン野郎! どうして真実を言えないんだよ!
その原因は既に分かっていた。大きな理由はカレンを悲しませたくない。そんな自己中心的な理由だ。
この世界がゲームであり、彼女はその世界の登場人物の一人にすぎないって分かったら、最悪の場合、心が崩壊するかもしれない。悲しむ彼女の姿を見たくはなかった。
「なるほど、これで全てがつながったわ。うん、納得した。それじゃ、疑問が解消したから次のお題に入るけど。今も私のことが好きって言う気持ちは変わらないの?」
「当たり前だ! 何があろうと、俺がカレンを愛している気持ちは永遠に変わらない!」
咄嗟に彼女の質問に答える。するとカレンは口元に人差し指を持ってきた。その動作を見て、俺が大声を出したことに気付き、口を覆う。
口元に人差し指を持ってくるカレン、可愛い。
「わ、分かったわ。でも、告白の返事は保留にさせてね。今日あったばかりの人に簡単にOKを出すほど、お尻は軽くないから」
それって友達以上、恋人未満ってことじゃないか! 敵対状態から一気に進展しすぎだろう!
「やったー!」
思わず声を上げてしまう。
「ちょっと、まだ付き合ってはいないのよ。分かっているよね?」
「ああ、分かっている。恋人じゃなくとも、心の距離が縮まったってことが分かっただけで大満足だ。ありがとうカレン」
嬉しさのあまりに、俺は変なテンションになっていることに気付く。でも仕方がない。嫌われても当然だと思い込んでいただけに、嬉しさが何倍にもなってしまう。
ああ、今の俺はなんて幸せなんだろう。こんな気持ちがいつまでも続けばいいのに。
幸せな気持ちになっていると、喉が渇いた。
まぁ、あれだけ幸せな気持ちを声に出せば、喉くらい乾くだろう。
ストローに口をつけ、紅茶を飲む。
口内に紅茶の甘みが広がり、香りが鼻から抜けていくのが分かった。
うん、設定どおりの美味しさだ。本当に隠れた名店なんだな。
そんな風に思っていると、次第に瞼が重くなってきた。
あれ? どうしてこんなに眠くなるんだ? あまりの嬉しさに絶叫したせいで、疲れたのかな?
我慢ができず、両の瞼を閉じる。
「あれ? ここはどこだ?」
次に目が覚めると、俺は知らない場所にいた。周辺は薄暗いが、どこに何があるのか分かる。
「ここはゲームの中にあった道具屋のような建物だな」
自分の居場所が何となくわかり、次に状況を確認する。俺は椅子に座らされ、なぜか縛られていた。
「これはいったいどう言うことだ? どうして俺は縛られている」
「あら? どうやら目が覚めたみたいですね。ようこそ、愛の神カーマが経営するスキルショップへ」
カウンターから顔を出して姿を見せたのは、紫色のロングヘアーに花の髪飾りをしている女性だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
カレンの言葉に、俺は頷く。
「ああ」
「それってどんな効果なの? そんなユニークスキル聞いたことがないのだけど?」
カレンが小首を傾げる。
それもそうだろう。【推し愛】は俺が考えたユニークスキルで、物語の本編には存在していないスキルなのだから。
「ユニークスキル【推し愛】って言うのは、推しへの愛を力に変え、その愛で他のユニークスキルを手に入れることを可能にするスキルなんだ」
カレンへの愛を推しへの愛と言い換え、ユニークスキルの効果を彼女に教える。
流石にスキルの効果を馬鹿正直に隅々まで教えたら、いくらカレンでも引いてしまうだろう。せっかく嫌われない程度に好感度を上げられたのに、これ以上下げて嫌われてしまうのだけは避けたい。
推しから嫌われることの方が、死ぬよりも何倍も辛いからな。
「推しって言うのが何のことを表しているのか、私には分からないけれど、素敵なスキルね。愛の力であなたが強くなるってことでしょう。物語の主人公みたいで格好良いわね」
カ、カレンから格好良いって言われた! ヒャッホーイ! めちゃくちゃ嬉しい! もう、彼女の言葉一つ一つが嬉しくて堪らないのだけど。
マジやばい。俺の推しは天使すぎる。
「あれ? でも、そしたらどうして私の未来のことを知っているの? 未来予知でないのなら、そんなことは分からないわよね?」
「そ、それは……」
『この世界がゲームの世界であり、俺はこの世界に迷い込んだ転生者なんだ』
そう言おうとするが、途中で言葉がつっかえて続きが言えない。
言え! 言うんだ! 彼女には隠し事をしないって決めたばかりじゃないか!
「それは――」
「お待たせしました。紅茶二人前です」
タイミングが悪く、ウエイトレスが注文の品を持ってきた。
テーブルの上に置かれたものは、大きめのグラスに入った紅茶だ。そして二つのストローが入っている。
どうみても、カップルが飲む用のやつだ。
「ちょっと、これってどう言うことなの? 私は紅茶を二つ頼んだでしょう?」
「あら? そうでしたか。ごめんなさい。こちらサービスとさせてもらいますので、どうぞお召し上がりください」
ウエイトレスがニヤニヤとしながら紅茶を飲むように促す。
この人、絶対にわざとだな。厚意は嬉しいけど、やりすぎだ。
さすがにこれは恐れ多すぎる。俺がカレンと同じ飲み物を飲む訳にはいかない。
でも、彼女は先ほどもこの店の紅茶を飲んだと言っていた。なら、ここは俺が男を見せて、一人で飲むべきだ。
「この紅茶は俺が飲むよ」
「ありがとう。助かるよ」
カレンが安心したように微笑む。彼女に感謝されるだけで、紅茶を五杯どころか十杯は飲んでしまえそうな気がした。
ウエイトレスが再び厨房へと向かい、俺たちはもう一度向き合う。
「それで、話しを戻すけど、どうして私が聖神戦争で必ずリタイアすることを知っているの?」
もう一度訊ねられ、俺は生唾を呑み込む。
「そ、それはだな。えーと、そ、そう。もう既に未来予知を手に入れているからなんだ。だからカレンの未来が分かったってことなんだ」
咄嗟に出任せを言ってしまう。
俺のチキン野郎! どうして真実を言えないんだよ!
その原因は既に分かっていた。大きな理由はカレンを悲しませたくない。そんな自己中心的な理由だ。
この世界がゲームであり、彼女はその世界の登場人物の一人にすぎないって分かったら、最悪の場合、心が崩壊するかもしれない。悲しむ彼女の姿を見たくはなかった。
「なるほど、これで全てがつながったわ。うん、納得した。それじゃ、疑問が解消したから次のお題に入るけど。今も私のことが好きって言う気持ちは変わらないの?」
「当たり前だ! 何があろうと、俺がカレンを愛している気持ちは永遠に変わらない!」
咄嗟に彼女の質問に答える。するとカレンは口元に人差し指を持ってきた。その動作を見て、俺が大声を出したことに気付き、口を覆う。
口元に人差し指を持ってくるカレン、可愛い。
「わ、分かったわ。でも、告白の返事は保留にさせてね。今日あったばかりの人に簡単にOKを出すほど、お尻は軽くないから」
それって友達以上、恋人未満ってことじゃないか! 敵対状態から一気に進展しすぎだろう!
「やったー!」
思わず声を上げてしまう。
「ちょっと、まだ付き合ってはいないのよ。分かっているよね?」
「ああ、分かっている。恋人じゃなくとも、心の距離が縮まったってことが分かっただけで大満足だ。ありがとうカレン」
嬉しさのあまりに、俺は変なテンションになっていることに気付く。でも仕方がない。嫌われても当然だと思い込んでいただけに、嬉しさが何倍にもなってしまう。
ああ、今の俺はなんて幸せなんだろう。こんな気持ちがいつまでも続けばいいのに。
幸せな気持ちになっていると、喉が渇いた。
まぁ、あれだけ幸せな気持ちを声に出せば、喉くらい乾くだろう。
ストローに口をつけ、紅茶を飲む。
口内に紅茶の甘みが広がり、香りが鼻から抜けていくのが分かった。
うん、設定どおりの美味しさだ。本当に隠れた名店なんだな。
そんな風に思っていると、次第に瞼が重くなってきた。
あれ? どうしてこんなに眠くなるんだ? あまりの嬉しさに絶叫したせいで、疲れたのかな?
我慢ができず、両の瞼を閉じる。
「あれ? ここはどこだ?」
次に目が覚めると、俺は知らない場所にいた。周辺は薄暗いが、どこに何があるのか分かる。
「ここはゲームの中にあった道具屋のような建物だな」
自分の居場所が何となくわかり、次に状況を確認する。俺は椅子に座らされ、なぜか縛られていた。
「これはいったいどう言うことだ? どうして俺は縛られている」
「あら? どうやら目が覚めたみたいですね。ようこそ、愛の神カーマが経営するスキルショップへ」
カウンターから顔を出して姿を見せたのは、紫色のロングヘアーに花の髪飾りをしている女性だった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
106
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる