親の裏切りで幼馴染を買い損ねた奴隷商は、異世界転生者の生まれ変わりの娘と孫と共に彼女を買い戻す旅に出る〜全裸追放から始まる成り上がり生活2〜

仁徳

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第二章

第十三話 何だと!ジェーン男爵がワシらの奴隷を買わないだと!

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~フリードの父親視点~





「ぐふふ。今日も大量だな。あの奴隷を売っただけで、こんなにたくさんの現金が入って来るとは」

 奴隷を売却した際に貰った金の束を長めながら、ワシはニヤついていた。これだけあれば、また贅沢することもできる。

「親父、手紙が届いたぞ」

 部屋の扉を開け、息子のガロンが部屋に入って来ると、手紙が届いたことを告げる。

「ほう、手紙か。送り主は誰だ?」

「えーと、ジェーン男爵だな」

「ジェーン男爵か」

 送り主が国境沿いに住む男爵だと言うことを知り、期待に胸を膨らませる。

 あの人はカレンの素晴らしさが分かり、多額な金を支払ってまで買い付けてくれた。今後も贔屓ひいきをしてもらえれば、お得意様として扱えるだろう。

 もしかしたら、また商売の話しかもしれないな。

「ガロン、封を開け、書かれてある内容を読み上げろ」

「了解、ちょっと待ってくれ」

 ガロンが封を開け、中から便箋を取り出す。

「拝見クレマース商会の皆様、先日は奴隷の件で、色々な意味で互いのことを知ることができましたね」

 手紙に書かれてあると思われる内容をガロンが読み始めるが、変な違和感を覚える。

 何だか変な始まり方だな?

「カレンを連れ戻しに来た挙句、私を辱めに合わせ、脅してタダで私の奴隷たちを奪った罪は大きい。もう、クレマース商会とは縁を切らせてもらう。もちろん、私が受けた事実は多くの奴隷愛好家にも伝えておく。もう、お前たちは奴隷商として生きてはいけないだろう……敬具……何だって!」

「おい! 何かの間違いじゃないのか! 宛先を間違えたとか、別の人物へと差し向けた内容のものとか!」

 息子のガロンが、手紙を読み上げたのを聞き、ワシは思わず声を上げた。

「いや、住所はここだし、手紙の内容もクレマース商会と書かれてある。何かの間違いではない」

 信じられないものを見るかのように、ガロンは目を大きく見開く。

 これはいったいどう言うことなんだ? ワシらが売ったカレンを連れ戻してジェーン男爵を辱め、その上脅して奴隷をタダで奪っただと?

 まるで夢物語のような、身に覚えのないことだ。

「ハハハ、親父、きっと何かの間違いだ。ジェーン男爵が俺たちとの関係を断ち切る訳がない。きっとドッキリか何かに決まっているさ。だって、手紙に書かれているようなことは、俺も親父もしていないんだぜ。本当にあの変態おっさんは困ったものだぜ」

 おふざけに決まっているから気にしなくて良いとガロンが言うが、ワシは胸騒ぎがしてならなかった。

 もしかしたら息子の言う通り、おふざけで送ったものなのかもしれない。もしそうなら、お茶目なやつだなで終わらせることができる。だが、本当にジェーン男爵の身に起きたことなのであれば、無視できないことだ。

「もしかしたら、ワシらの商会を潰すために、何者かが騙ってジエーン男爵と接触した可能性も考えられる。真実であれば、これは見逃せない事案だ」

 呑気に物事を考えている場合ではないことを告げると、ガロンも顔色を悪くし始める。

「やっぱり、そっちの可能性の方が高いよな」

 息子の言葉に覇気が感じられない。もしかしたら、前向きに語っていたのは現実逃避ではなく、少しでも気持ちを楽にしようと、彼なりに気を使ったのかもしれない。

「とにかく、事態は一刻も争うことだと考えた方が良い。ワシは今から、国境沿いの街に向かい、直接ジェーン男爵に話しを聞いてみる。お前は町に残り、社長代理として仕事を熟してくれ」

「分かった。俺の方からでも、何か情報を集めてみるよ。俺らのことを語っているやつの正体を掴めるかもしれない」

 互いに役割を決めると、ワシは旅支度を整え、急いで家を飛び出す。

 頼む、何かの間違いであってくれ。
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