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第三章
第二話 お兄ちゃんの目は誤魔化せないよ。
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~シルヴィア視点~
兄さんの後を歩き、ワタシは第一騎士団団長室に入った。
室内に入ると、兄さんは椅子に座り、机の上で肘を突いて指を絡ませ、こちらを見て来る。
「兄さん、ワタシにお願いしたいこととは?」
「ああ、それね。あれは嘘だよ。シルヴィアちゃんをこの部屋に誘い込むためのウ・ソ」
片目を瞑ってウインクをするが、正直兄のウインクほど、気持ち悪いものはない。
第三者からしたら特に何も思わないのかもしれないが、妹の立場だとそのように感じてしまう。
「では、何ようでワタシをここまで連れて来たのですか?」
不快感を覚えつつも、本題に入るために本当の狙いを話すように促す。
「それはね。本当のことをシルヴィアちゃん自身から聞くためだよ。シルヴィアちゃん、さっきは嘘を吐いていたよね。王様の前では気付かない振りをしていたけれど、お兄ちゃんはちゃんと見抜いていたよ。シルヴィアちゃんは、隠し事がある時は、若干目線を下げて話す癖があるからね」
「な!」
思わず言葉が漏れる。
まさか兄さんにワタシの嘘が見抜かれているとは! それに隠し事があるときは、目線を下げるだと? そんな癖があるなど、全然気付かなかった。
「本当のことを話してくれるよね? これはちょっとした国の問題だ。これにシルヴィアちゃんが関与しているとなると、いくら第一騎士団長であり、尚且つ肉親である僕でも庇いきれないところがある。事実を話してくれると、君を守るためにも動きやすい。だから話してくれないかい? 僕はシルヴィアちゃんの味方だから」
本当のことを話すように促され、拳を強く握る。
嘘やワタシの癖がバレている以上は、誤魔化そうとしても無駄だろう。兄さんには王様に話す危険性があるから言いたくはなかったが、こうなってしまうと後戻りができない。
「分かった。だけどひとつ約束をして欲しい。絶対にあの少年に危険が及ばないように協力してくれると言うのであれば、嘘偽りなく真実を話そう」
「OK! 交渉成立! シルヴィアちゃんの要求を呑もう」
兄さんは笑みを浮かべながら高い声音で交渉内容を承諾する。
あまりにも軽く返事をするものだから、本当に信頼しても良いのか、訝しんでしまう。
「大丈夫、僕はシルヴィアちゃんの味方だから」
安心させようとしているのか、もう一度味方アピールをしてくる。
「騎士団長が何も考えていないように軽く返事をするから、嫌でも疑いたくなるのです」
「それを言われてもなぁ? これが僕の性格だからどうしようもないよ。それは妹であるシルヴィアちゃんが一番知っていることだろう?」
「確かにそうだったな」
この男が何を考えているのか分からないが、とにかく今は信じるしかない。
覚悟を決めると、ワタシは野盗の村で何が起きたのか真実を語る。
「なるほど、そのラルス君がユニークスキルを使って巨大化し、モンスターとなってしまったウイーク殿を倒してくれたと言う訳か」
話しが終わると、兄さんは考え込むように真剣な表情をする。彼がここまで凛々しい顔つきをするとは珍しい。
「良いなぁ、僕もそんなユニークスキルが欲しかった。僕のユニークスキルなんて、ありふれたものだから羨ましい! 僕も遊んでいるだけで強くなりたい!」
凛々しい顔立ちは数秒しか持たず、直ぐにいつもの兄さんの表情に戻ってしまった。
やっぱり、珍しいだけあって、そんなに長くは保たなかったか。
「騎士団長! 直ぐにふざけるのはやめてください!」
「いや、いや、ふざけてはいないよ。ちゃんと真剣に考えている。だけど……」
「だけど?」
何やら意味深なことを言い出す兄さんの姿に小首を傾げる。
「第二騎士団長だよ。彼はラルス君を探し出して処刑しようとしている。この町にいるのであれば、所在が割れるのも時間の問題だ。いかにして情報収集を妨害するかだな」
「情報収集の妨害とは、また回り諄いことをしますね。てっきり、ラルスを城下町から引き離すと言い出すものかと思っていた」
「それが一番手っ取り早いのだけどね。実は僕の耳にある不穏な情報が入って来たんだ。万が一の時には、ラルス君の力が必要になる。だから、あまり遠くには行ってほしくないんだ」
「国のお抱え事情に、子どもを巻き込むと言うのか!」
思わず声を上げてしまう。
「シ、シルヴィアちゃん落ち着いて。これはあくまでも万が一の場合だ。最悪な展開にならないように、僕も全力で尽くす所存だよ。でも、なんやかんやで絶対と言うものは存在しない。100パーセントに見えても、本当は99パーセントだったことなんてある。そのたった1パーセントの可能性を騎士団長として無下にできない。なにごとも最悪のケースを考えて行動するべきだ」
兄さんの話しを聞きながら一度深呼吸をして頭を冷やす。
確かに兄さんの言うことにも一理ある。何事も絶対とは言えないのが現実だ。なら、その1パーセントの確率を引き当てないためにも、ワタシが全力を尽くす必要がある。
「分かった。だが、ラルスのことを知ってしまった以上、兄さんには馬車馬のように働いてもらうからな」
「種馬のように?」
「馬車馬のようにだ! どんな聞き間違いをしている! とにかく兄さんには、ラルスの情報隠蔽に尽力してもらうからな! 私も個人的に動いてラルスの身を守る」
兄さんに指を向け、ビシッと決める。すると彼は含みのある笑みを浮かべた。
「なんだその顔は?」
「いやー、どうしてウイーク殿との婚約を破棄したのかと疑問に思っていたのだけど、そう言う理由があったんだね。まさかシルヴィアちゃんがショタコンだとは思わなかった。でも、犯罪になってしまうから、少年に手を出すのは彼が成人してからね」
とんでも発言をする兄さんの言葉が耳に入り、怒りの感情が募る。きっと今のワタシは顔が赤くなっているだろう。
「どうしてそんな発想になってしまう! 彼は単なる保護対象だから守ってやるだけだ!」
見当違いも甚だしい兄さんに、思わず声を上げてしまった。
兄さんの後を歩き、ワタシは第一騎士団団長室に入った。
室内に入ると、兄さんは椅子に座り、机の上で肘を突いて指を絡ませ、こちらを見て来る。
「兄さん、ワタシにお願いしたいこととは?」
「ああ、それね。あれは嘘だよ。シルヴィアちゃんをこの部屋に誘い込むためのウ・ソ」
片目を瞑ってウインクをするが、正直兄のウインクほど、気持ち悪いものはない。
第三者からしたら特に何も思わないのかもしれないが、妹の立場だとそのように感じてしまう。
「では、何ようでワタシをここまで連れて来たのですか?」
不快感を覚えつつも、本題に入るために本当の狙いを話すように促す。
「それはね。本当のことをシルヴィアちゃん自身から聞くためだよ。シルヴィアちゃん、さっきは嘘を吐いていたよね。王様の前では気付かない振りをしていたけれど、お兄ちゃんはちゃんと見抜いていたよ。シルヴィアちゃんは、隠し事がある時は、若干目線を下げて話す癖があるからね」
「な!」
思わず言葉が漏れる。
まさか兄さんにワタシの嘘が見抜かれているとは! それに隠し事があるときは、目線を下げるだと? そんな癖があるなど、全然気付かなかった。
「本当のことを話してくれるよね? これはちょっとした国の問題だ。これにシルヴィアちゃんが関与しているとなると、いくら第一騎士団長であり、尚且つ肉親である僕でも庇いきれないところがある。事実を話してくれると、君を守るためにも動きやすい。だから話してくれないかい? 僕はシルヴィアちゃんの味方だから」
本当のことを話すように促され、拳を強く握る。
嘘やワタシの癖がバレている以上は、誤魔化そうとしても無駄だろう。兄さんには王様に話す危険性があるから言いたくはなかったが、こうなってしまうと後戻りができない。
「分かった。だけどひとつ約束をして欲しい。絶対にあの少年に危険が及ばないように協力してくれると言うのであれば、嘘偽りなく真実を話そう」
「OK! 交渉成立! シルヴィアちゃんの要求を呑もう」
兄さんは笑みを浮かべながら高い声音で交渉内容を承諾する。
あまりにも軽く返事をするものだから、本当に信頼しても良いのか、訝しんでしまう。
「大丈夫、僕はシルヴィアちゃんの味方だから」
安心させようとしているのか、もう一度味方アピールをしてくる。
「騎士団長が何も考えていないように軽く返事をするから、嫌でも疑いたくなるのです」
「それを言われてもなぁ? これが僕の性格だからどうしようもないよ。それは妹であるシルヴィアちゃんが一番知っていることだろう?」
「確かにそうだったな」
この男が何を考えているのか分からないが、とにかく今は信じるしかない。
覚悟を決めると、ワタシは野盗の村で何が起きたのか真実を語る。
「なるほど、そのラルス君がユニークスキルを使って巨大化し、モンスターとなってしまったウイーク殿を倒してくれたと言う訳か」
話しが終わると、兄さんは考え込むように真剣な表情をする。彼がここまで凛々しい顔つきをするとは珍しい。
「良いなぁ、僕もそんなユニークスキルが欲しかった。僕のユニークスキルなんて、ありふれたものだから羨ましい! 僕も遊んでいるだけで強くなりたい!」
凛々しい顔立ちは数秒しか持たず、直ぐにいつもの兄さんの表情に戻ってしまった。
やっぱり、珍しいだけあって、そんなに長くは保たなかったか。
「騎士団長! 直ぐにふざけるのはやめてください!」
「いや、いや、ふざけてはいないよ。ちゃんと真剣に考えている。だけど……」
「だけど?」
何やら意味深なことを言い出す兄さんの姿に小首を傾げる。
「第二騎士団長だよ。彼はラルス君を探し出して処刑しようとしている。この町にいるのであれば、所在が割れるのも時間の問題だ。いかにして情報収集を妨害するかだな」
「情報収集の妨害とは、また回り諄いことをしますね。てっきり、ラルスを城下町から引き離すと言い出すものかと思っていた」
「それが一番手っ取り早いのだけどね。実は僕の耳にある不穏な情報が入って来たんだ。万が一の時には、ラルス君の力が必要になる。だから、あまり遠くには行ってほしくないんだ」
「国のお抱え事情に、子どもを巻き込むと言うのか!」
思わず声を上げてしまう。
「シ、シルヴィアちゃん落ち着いて。これはあくまでも万が一の場合だ。最悪な展開にならないように、僕も全力で尽くす所存だよ。でも、なんやかんやで絶対と言うものは存在しない。100パーセントに見えても、本当は99パーセントだったことなんてある。そのたった1パーセントの可能性を騎士団長として無下にできない。なにごとも最悪のケースを考えて行動するべきだ」
兄さんの話しを聞きながら一度深呼吸をして頭を冷やす。
確かに兄さんの言うことにも一理ある。何事も絶対とは言えないのが現実だ。なら、その1パーセントの確率を引き当てないためにも、ワタシが全力を尽くす必要がある。
「分かった。だが、ラルスのことを知ってしまった以上、兄さんには馬車馬のように働いてもらうからな」
「種馬のように?」
「馬車馬のようにだ! どんな聞き間違いをしている! とにかく兄さんには、ラルスの情報隠蔽に尽力してもらうからな! 私も個人的に動いてラルスの身を守る」
兄さんに指を向け、ビシッと決める。すると彼は含みのある笑みを浮かべた。
「なんだその顔は?」
「いやー、どうしてウイーク殿との婚約を破棄したのかと疑問に思っていたのだけど、そう言う理由があったんだね。まさかシルヴィアちゃんがショタコンだとは思わなかった。でも、犯罪になってしまうから、少年に手を出すのは彼が成人してからね」
とんでも発言をする兄さんの言葉が耳に入り、怒りの感情が募る。きっと今のワタシは顔が赤くなっているだろう。
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