記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
36 / 42
第三章

第一話 王家の事件

しおりを挟む
~シルヴィア視点~





 ラルスが誘拐される事件から1週間が経過した。あの事件以来、ワタシは彼のことで頭を悩ませている。

 ウイークが倒された後、野盗たちを全員捕まえた。そして王国に連絡して兵士を派遣して捕らえてもらったのだ。

 そこまでは良かった。しかし野盗たちを尋問している間に、ウイークが巨大なモンスターになったことや、ラルスが巨大化して倒したことまでも話したのだ。

 そのお陰で、城中その話題で大騒ぎになっている。

 どうにかラルスであることを隠し通すことに成功したものの、現状はあまり宜しくない。

「隠し通すにも時間の問題のような気がするし、はたしてどうしたものか」

 痒くもないのに頭を掻く。

 兄さんに相談でもするか? あいつなら、喜んで協力してくれるかもしれない。

 兄のことを脳裏に浮かべるも、直ぐに首を横に振る。

「いや、兄さんに話せば、絶対に王様の耳にも入るだろう。そうなれば国の総力を上げてでも、ラルスを見つけ出そうとするかもしれない」

「シルヴィア副団長!」

 考えごとに耽っていると、1人の兵士が駆け寄って来る。

「どうかしたか?」

「はい、王様がお呼びです。直ちに玉座の間に来るようにとのこと」

「そうか。分かった。教えてくれて礼を言う」

「いえ、これも仕事ですので。それでは私は、自分の任務に戻ります」

 一礼をすると、部下の兵士はワタシの横を通り過ぎ、そのまま離れて行く。

 足を一歩前に出し、再び歩き出しながら、右手の親指を顎に当てた。

 王様がワタシをお呼びになった。間違いなくラルス絡みだろう。そしてきっと、あの男も一緒にいるはず。ここは正念場だと思っていた方が良さそうだな。

 決意を改め、覚悟を決めると、玉座の間の前に辿り着く。

「シルヴィア副団長、王様がお待ちです。どうぞ、中にお入りください」

 扉の前で見張りをしていた兵士が扉を開け、中に入るように促す。

 一度立ち止まった足を再び動かし、玉座の間に入る。

 玉座の間には、ワタシの兄である騎士団長の他にもう一人、第二騎士団の騎士団長の姿もあった。

 そして玉座に座っている50代の男がこちらに視線を送ってきた。

「王様、お待たせして申し訳ありません。シルヴィア、到着しました」

 片膝を突いて首を垂れる。

「シルヴィア、良く来てくれた。楽な姿勢を取るが良い」

「ありがとうございます」

 王様に礼を言い、ゆっくりと立ち上がる。

「それで、このワタシに何の用なのでしょうか? 副騎士団長であるワタシを呼ぶとは珍しいですね」

「ああ、一応お前の意見も聞こうと思って。今、第一と第二の騎士団長と例の少年について話しておったのだ。シルヴィアよ、何度も同じ質問をされてうんざりだと思うが、最後にもう一度聞かせてもらう。本当に少年について何も知らないのだな?」

「はい。ワタシは少年については詳しく覚えてはいません。以前にもお伝えしたように、友であるソフィーのお願いで護衛任務をしていました。その時に偶然にも野盗の村を発見し、個人的な判断で村に襲撃をかけました。その時にモンスターが現れ、村を破壊している時に、巨大な少年が現れました。ですが、その時に風が吹き、砂塵が舞って目に入ってしまいました。視界が良好になったときには、モンスターは倒され、巨大な少年も消えていたので、明確な顔は覚えておりません」

 以前と同じことを繰り返す。女は嘘が上手い。嘘と真実を組み合わせることで、嘘がバレ難くすることができる。

 説明をすると、王様は兄さんに視線を送る。

「どうだ? 兄であるお前の立場から、妹は嘘をついているように思うか?」

「シルヴィアは嘘は吐いていません。確認をしましたが、うそぶいているようには見えませんでした」

 兄さんが、ワタシは嘘を言っていないことを王様に伝える。

 どうやら兄を使って、ワタシの嘘を見破ろうとしていたらしい。

「そうか。お前が言うのならそうなのだろう。では、次は野盗の町に現れたモンスターを倒してくれた少年についてだがーー」

「王様、今更議論をする必要はありません。直ちに見つけ出して捕えて処刑するべきです」

 王様の言葉を遮り、第二騎士団長が過激ばことを言ってくる。

 ラルスを捕まえて処刑するだと! そんなことをさせるか!

「王様、ワタシはその少年のことは今は気にしない方が宜しいかと。現場に居合わせましたが、人間に危害を加える様子はありませんでした」

「僕もシルヴィアちゃんの意見に賛成だな。その少年のことが良くわかっていないのに、捜索のために兵力を割くのは良くないかと」

 ラルスのことは頭の片隅に止めておくだけの方が良いと進言すると、続いて兄さんがワタシに賛同して言葉を連ねる。

「うむ、確かにお前たちの言うことも一理あるな。第二騎士団長、お主はどう思う?」

「私は断然、一刻も早くその少年を見つけ出すべきです。何かが起きてからでは手遅れになります。早急に捜索隊を編成して送り出すべきかと」

 王様が第二騎士団長に問うと、彼は自分の意思を曲げることなく、兵力を分散するべきだと主張してきた。

「そもそも、どうして少年の捜索をしたくないのですか? 少年を見つけ出されては困ることでもあるのですか!」

 第二騎士団長が指を向けて訊ねてくる。

 この男、まだワタシを怪しんでいるな。だけど事実である以上、下手なことは言えない。万が一にでも口を滑らせる危険性がある。

「それは君にも言えることだよ。第二騎士団長、君も少年を探し出すために、兵力を割きたい理由でもあるのかな?」

 どんな言葉で納得してもらおうかと思考を巡らせていると、兄さんが第二騎士団長に問いかける。

「何を言っている! そんなこと、民の安全を守るために決まっているだろうが! 危険な芽は早く摘まなければ、多くの命が奪われることにもなりかねないのだぞ!」

 第二騎士団長は兄さんを睨む。しかし兄さんはいつものようにニコッと笑みを浮かべた。

「騎士団長たちよ。ワシがいる前でそんなに歪み合うな。今日のところはこの辺で開催としよう。全員、己の職務を全うするがいい」

 王様が命令を下すと、第二騎士団長は兄さんをキッと睨み付け、そのまま玉座の間から出ていく。

「それじゃあ、僕たちも出ようか。シルヴィアちゃんにはお願いしたいことがあるから、そのまま僕に付いて来てくれ」

 そう言って歩き出すと、ワタシは兄さんの後ろを歩き、彼に付いて行く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

処理中です...