記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
33 / 42
第二章

第十八話 ラルスの救出、そして

しおりを挟む
 ~ソフィー視点~





 杖に魔力を送り、頭の中でラル君を思い描く。すると杖から光が放たれ、大きい建物を指し示した。

 あの建物の中にラル君がいる。

「シルヴィア! ラル君はあの大きい建物の中にいるわ!」

 彼女にラル君の居る建物のことを伝えると、シルヴィアは駆けて行き、そのまま扉を叩き切る。

 少し乱暴な突入の仕方だけど、彼女らしい。

「くそう! 侵入者が入って来てしまったか」

「あのガキを連れ戻しに来たのかい? 悪いけど、あんたたちには帰ってもらうよ」

 シルヴィアに続いて建物の中に入ると、リビングには男女の野盗がいた。

 互いに左手薬指に指輪を嵌めていることから、夫婦なのかもしれないわね。

「悪いが、ラルスは返してもらう」

「ラル君を返しなさい! ウインド!」

 シルヴィアがエッジのない部分の刀身を当てて男を吹き飛ばし、私は魔法で家の中の気圧に変化を与える。

 私たちがいる場所の空気の密度を重くし、女野盗のいる場所の空気の密度を軽くする。これにより、空気は密度の重い方から軽い方に押し出され、風を発生させる。

 空気の塊が直撃した彼女は、そのまま吹き飛ばされて壁に激突すると意識を失ったようだ。立ち上がる気配を見せない。

「この家には他に野盗は潜んでいないようだな。気配を感じない。ソフィー、ラルスの居る場所はどこだ?」

「杖の光はこっちを指し示しているわ」

 今度は私が先頭になり、光の導きに従う。すると、突き当たりの扉に光が当たっていた。

 あの扉の向こうに、ラル君が居る。家の構造的に考えても、扉の先が通路になっていることは考え辛い。つまり、何かの部屋に決まっている。

 扉の前に立つと、扉越しに声をかける。

「ラル君、ラル君、そこに居るの?」

「ソフィーお姉さん! やっぱり村の侵入者ってソフィーお姉さんたちだったんだね。ごめんなさい。僕、おじさんからお父さんとお母さんが見つかったって聞いて、ソフィーお姉さんが別れを悲しむからと言われて、内緒にして出て行ってしまった」

 ラル君が謝罪の言葉を述べ始める。彼の言葉を聞きながら、拳を強く握った。

 こんなに純粋なラル君を騙して連れ去るなんて、絶対に許さない。野盗たちは全員牢屋ブタ小屋にぶち込んでやる。

「ラルス、今この扉を破壊する。危ないから離れてくれ」

「うん!」

 扉越しにシルヴィアが声をかけ、ラル君は返事をする。

 私も彼女の後に下がると、シルヴィアは剣を振り下ろして扉を破壊した。

「ラル君!」

「ラルス!」

 シルヴィアと同時にラル君の名を呼ぶと、黒髪童顔の可愛らしい少年が部屋の中から出て来る。

 彼の姿を見た瞬間、居ても立っても居られない気持ちになり、ラル君を抱きしめる。

「再会できて嬉しい気持ちは分かるが、早くこの場から出よう。いつ野盗たちがこの家の中に入ってくるか分からない」

「それもそうね。早くこの場から出ましょう」

 ラル君の手を握り、家から出る。

「そこまでだ! 罪人を連れ出す悪党ども!」

 壊れた扉を抜けて外に出た瞬間、視界に入ったのはあのウイークとか言う男と、数々の護衛の兵士たちだった。

 彼らは剣を構え、いつでも突撃できる体勢でいる

「ウイーク殿、何を言っている。この村は野盗たちの村だ。そこで捉えられている子どもを助けたにすぎない。寧ろ罪人は野盗たちだ」

 シルヴィアがウイークに向けて言葉を放つ。彼女が弁明する中、ウイークは口角を上げながら私たちを見据える。

「何を言っている? 確かにこの村は野盗の村だが、その少年はこの家の子どもだ。それなのに、村民たちにケガを負わせて連れ去る行為こそが罪ではないか」

「何を根拠にそのことを言っているのよ!」

 罪人扱いをされ、感情的になって声を上げる。

「なら、お前たちは証明できるのか? その少年はこの村の出身ではないと言う証拠を提出できるのか」

「それは……」

 途中で言葉がつかえてしまい、歯を噛み締める。

 確かに彼の言う通り、私たちにはそれを証明する手段はない。だけど、ラル君が野盗の子どもとは考えられない。

「さぁ、その子どもを私に渡すんだ。そしてシルヴィアは私と婚約をすると誓え、そうすれば、お前たちを罪人として捕らえないでおいてやろう」

 ウイークがラル君を差し出すように要求してくる。彼の言葉が耳に入った瞬間、ラル君の手を握っている状態で力を入れる。

 ラル君は野盗の子どもではないと信じている。でも、それを証明する手段がない。

「大丈夫だよ、ソフィーお姉さん。だって、僕は思い出しているから」

 ラル君の突然のカミングアウトに、私の鼓動は早鐘を打つ。

「ラル君、それってどう言うことなの?」

「僕、思い出したんだ。僕の両親は、野盗なんかじゃない。魔族に殺された普通の村人だよ。僕の命を助けるために、自分たちが盾になって、僕を逃してくれたんだ」

 ラル君の記憶が戻ったことに衝撃を受けつつも、彼の言葉に耳を傾ける。

「それに、ウイークさんは嘘を吐いている。僕は扉越しにお兄さんが言っていた言葉を覚えているよ。ウイークさんが僕の誘拐を計画したんだ。懸賞金を付けて、僕を誘拐させた」

 ラル君が言葉を連ねる中、シルヴィアが私たちの前に立つ。

 彼女の背中がブラインドになっており、今の彼女がどんな表情をしているのかは分からない。

「ウイーク殿、どんな理由があるのか分からないが、知り合いを誘拐させた罪で、捉えさせてもらう」

「くそう! まさかガキが記憶を取り戻すとは! こうなったらプライドもクソもあるか! お前たち、シルヴィア以外を殺せ!」

 ウイークさんが指示を出すと、護衛の兵士たちは一斉に駆け寄ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...