記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第二章

第十八話 ラルスの救出、そして

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 ~ソフィー視点~





 杖に魔力を送り、頭の中でラル君を思い描く。すると杖から光が放たれ、大きい建物を指し示した。

 あの建物の中にラル君がいる。

「シルヴィア! ラル君はあの大きい建物の中にいるわ!」

 彼女にラル君の居る建物のことを伝えると、シルヴィアは駆けて行き、そのまま扉を叩き切る。

 少し乱暴な突入の仕方だけど、彼女らしい。

「くそう! 侵入者が入って来てしまったか」

「あのガキを連れ戻しに来たのかい? 悪いけど、あんたたちには帰ってもらうよ」

 シルヴィアに続いて建物の中に入ると、リビングには男女の野盗がいた。

 互いに左手薬指に指輪を嵌めていることから、夫婦なのかもしれないわね。

「悪いが、ラルスは返してもらう」

「ラル君を返しなさい! ウインド!」

 シルヴィアがエッジのない部分の刀身を当てて男を吹き飛ばし、私は魔法で家の中の気圧に変化を与える。

 私たちがいる場所の空気の密度を重くし、女野盗のいる場所の空気の密度を軽くする。これにより、空気は密度の重い方から軽い方に押し出され、風を発生させる。

 空気の塊が直撃した彼女は、そのまま吹き飛ばされて壁に激突すると意識を失ったようだ。立ち上がる気配を見せない。

「この家には他に野盗は潜んでいないようだな。気配を感じない。ソフィー、ラルスの居る場所はどこだ?」

「杖の光はこっちを指し示しているわ」

 今度は私が先頭になり、光の導きに従う。すると、突き当たりの扉に光が当たっていた。

 あの扉の向こうに、ラル君が居る。家の構造的に考えても、扉の先が通路になっていることは考え辛い。つまり、何かの部屋に決まっている。

 扉の前に立つと、扉越しに声をかける。

「ラル君、ラル君、そこに居るの?」

「ソフィーお姉さん! やっぱり村の侵入者ってソフィーお姉さんたちだったんだね。ごめんなさい。僕、おじさんからお父さんとお母さんが見つかったって聞いて、ソフィーお姉さんが別れを悲しむからと言われて、内緒にして出て行ってしまった」

 ラル君が謝罪の言葉を述べ始める。彼の言葉を聞きながら、拳を強く握った。

 こんなに純粋なラル君を騙して連れ去るなんて、絶対に許さない。野盗たちは全員牢屋ブタ小屋にぶち込んでやる。

「ラルス、今この扉を破壊する。危ないから離れてくれ」

「うん!」

 扉越しにシルヴィアが声をかけ、ラル君は返事をする。

 私も彼女の後に下がると、シルヴィアは剣を振り下ろして扉を破壊した。

「ラル君!」

「ラルス!」

 シルヴィアと同時にラル君の名を呼ぶと、黒髪童顔の可愛らしい少年が部屋の中から出て来る。

 彼の姿を見た瞬間、居ても立っても居られない気持ちになり、ラル君を抱きしめる。

「再会できて嬉しい気持ちは分かるが、早くこの場から出よう。いつ野盗たちがこの家の中に入ってくるか分からない」

「それもそうね。早くこの場から出ましょう」

 ラル君の手を握り、家から出る。

「そこまでだ! 罪人を連れ出す悪党ども!」

 壊れた扉を抜けて外に出た瞬間、視界に入ったのはあのウイークとか言う男と、数々の護衛の兵士たちだった。

 彼らは剣を構え、いつでも突撃できる体勢でいる

「ウイーク殿、何を言っている。この村は野盗たちの村だ。そこで捉えられている子どもを助けたにすぎない。寧ろ罪人は野盗たちだ」

 シルヴィアがウイークに向けて言葉を放つ。彼女が弁明する中、ウイークは口角を上げながら私たちを見据える。

「何を言っている? 確かにこの村は野盗の村だが、その少年はこの家の子どもだ。それなのに、村民たちにケガを負わせて連れ去る行為こそが罪ではないか」

「何を根拠にそのことを言っているのよ!」

 罪人扱いをされ、感情的になって声を上げる。

「なら、お前たちは証明できるのか? その少年はこの村の出身ではないと言う証拠を提出できるのか」

「それは……」

 途中で言葉がつかえてしまい、歯を噛み締める。

 確かに彼の言う通り、私たちにはそれを証明する手段はない。だけど、ラル君が野盗の子どもとは考えられない。

「さぁ、その子どもを私に渡すんだ。そしてシルヴィアは私と婚約をすると誓え、そうすれば、お前たちを罪人として捕らえないでおいてやろう」

 ウイークがラル君を差し出すように要求してくる。彼の言葉が耳に入った瞬間、ラル君の手を握っている状態で力を入れる。

 ラル君は野盗の子どもではないと信じている。でも、それを証明する手段がない。

「大丈夫だよ、ソフィーお姉さん。だって、僕は思い出しているから」

 ラル君の突然のカミングアウトに、私の鼓動は早鐘を打つ。

「ラル君、それってどう言うことなの?」

「僕、思い出したんだ。僕の両親は、野盗なんかじゃない。魔族に殺された普通の村人だよ。僕の命を助けるために、自分たちが盾になって、僕を逃してくれたんだ」

 ラル君の記憶が戻ったことに衝撃を受けつつも、彼の言葉に耳を傾ける。

「それに、ウイークさんは嘘を吐いている。僕は扉越しにお兄さんが言っていた言葉を覚えているよ。ウイークさんが僕の誘拐を計画したんだ。懸賞金を付けて、僕を誘拐させた」

 ラル君が言葉を連ねる中、シルヴィアが私たちの前に立つ。

 彼女の背中がブラインドになっており、今の彼女がどんな表情をしているのかは分からない。

「ウイーク殿、どんな理由があるのか分からないが、知り合いを誘拐させた罪で、捉えさせてもらう」

「くそう! まさかガキが記憶を取り戻すとは! こうなったらプライドもクソもあるか! お前たち、シルヴィア以外を殺せ!」

 ウイークさんが指示を出すと、護衛の兵士たちは一斉に駆け寄ってきた。
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