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第二章

第十四話 ラル君がまた居なくなった

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 ~ソフィー視点~




「はい。これが今回の依頼を成功した証よ」

 私は討伐対象のモンスターの素材をカウンターの上に置き、ギルドの受付嬢に見せる。

「はい、お疲れ様です。これが今回の報酬となります」

 素材の確認を終えた受付嬢が、お金の入っている麻袋を手渡す。

 紐を解いて中身を確認すると、依頼書に書かれてあった通りの金額が入っていた。

 うん、確かに依頼書に書かれてあった通りの金額ね。これでまた暫くは安心して生活ができるわ。

 ラル君に何かお土産でも買って帰ろうかしら? 何が良いかな? おもちゃ? それとも甘いお菓子が良いかな?

「よぉ、ソフィー」

 ほっこりとした気分でギルドから出て行こうとすると、話しかけて欲しくない男が声をかけてくる。

「何よ、グリゴリー。私に話しかけないでくれる」

 彼を睨み付け、そのままギルドから出て行こうとする。

「まぁ、待てよ。別にお前を揶揄からかうつもりはない。ひとつ確認したいことがあるんだ」

「確認?」

「ああ、お前が今預かっているガキ……ラルスとか言ったか? あいつに何か用事でも頼んだのか?」

 グリゴリーの言葉を聞き、何かラル君に頼んでいたことがあったのか思考を巡らせる。でも、心当たりがなかった。

「別に何も頼んでいないけど?」

「そうか。いや、ここに来る前に、ラルスが見かけない男の馬車に乗り込んでな。その前にフードを被って顔を隠していたから、内緒で何かを頼んでいるのかと思ってな」

「ラル君が知らない人に連れて行かれた!」

 思わず声を上げる。心臓の鼓動が早鐘を打ち、一瞬頭の中が真っ白になりそうになった。

「その男の特徴とどこに行ったのかを今すぐに教えなさい!」

 グリゴリーを睨み付けながら、声音を強めて彼に詰め寄り、情報を開示するように進言する。

「わ、分かった。格好から冒険者だと思うが、このギルドには在籍していないやつだったな。ラルスが乗った馬車は、城下町の門の方に向かった」

「城下町の門の方ね」

 彼に礼を言わずにそのままギルドを飛び出すと、真っ先に家へと帰る。

 家には魔力を流し込むことで、探し人の居場所が分かる杖がある。あれがあれば、ラル君の居場所を特定することができる。

 城下町を走っている中、ふっとギルドマスターが言っていたことを思い出す。

 ラル君のユニークスキルを悪用する者が現れるかもしれないと言っていた。もしかしてギルドマスターが言っていたみたいに、ラル君の力を利用しようとした者の犯行かもしれない。

 シルヴィアに連絡を入れた方が良い? でも、彼女は騎士団の仕事中のはず。声をかける訳にはいかない。

「ソフィーじゃないか。どうした? そんなに血相をかいて? 何か問題でも起きたのか?」

 家に向かって走っていると、青い髪のロングの女性が声をかけてきた。

 噂をすればなんとやら。私に声をかけてきたのはシルヴィアだった。

 出会ってしまった以上は、彼女にも話していた方がいいわよね。

「ゼー、ハー、シ、シルヴィア。ラル君がこの町の者ではない男に連れて行かれたみたいなのよ。もしかしたらラル君の力を悪用しようとした者の犯行かもしれない」

「なんだって!」

 ラル君が連れ去られたことを話すと、彼女は驚きの声を上げる。

「分かった。私もラルスの救出に協力しよう」

「でも、シルヴィアは騎士団の仕事があるじゃない」

「世界の危機に陥るかもしれないんだ。それに比べたら、騎士団の仕事なんて大したことではない。騎士団長はワタシの兄さんだからな。言いくるめることなど、造作もないさ」

 自分を頼れと言いたげな眼差しを送りながら、シルヴィアは自身の胸を軽く叩く。

「分かった。あなたも協力してくれるのなら心強いわ。ラル君の居場所を特定できる杖があるから、一旦家に戻るわね。シルヴィアは先に、城下町の門の方に向かっていて」

「分かった。では、門の前で合流しよう」

 シルヴィアと一時的に解散すると、急いで家に帰る。

 家の扉の施錠を解除して扉を開け、急いで寝室に向かう。

 ベッドの横に立て掛けられている杖を握り、飛び出すように家を出た。

 全速力で走り、門に辿り着く。

「ソフィー、来たか。今、門番に話しを聞いていたのだが、ローブを着て顔を隠した人物が乗っいた馬車が、数十分前に出て行ったと言う情報を得た」

 門の前でシルヴィアと合流すると、彼女は門番から聞き出した情報を開示してくれた。

 グリゴリーが言っていたことと一致する。やっぱりラル君は、城下町の外に連れ出されたんだわ。

 シルヴィアの話しを聞き終わった後、握っていた杖に魔力を送り、ラル君を頭の中で思い浮かべる。すると杖から光が放たれ、探し人がいる方角が示される。

 北の方角にラル君がいるようね。

「シルヴィア、今からラル君が連れ去られた場所に向かうわよ」

 走ってこの場から離れようとすると、シルヴィアが腕を掴む。

「待ってくれ。走ってラルスが連れ去られた場所にたどり着けたとしても、救出するための体力が残されていないだろう? 馬を手配しているから、もう少しだけ待ってくれ」

 馬が届けられるまで待つようにシルヴィアが言ってくる。

 確かに彼女の言う通りだわ。何も考えなしで突っ込んでは、ラル君を救出できる力が削がれることになる。

 暫く待ってみると、一頭の馬を連れて1人の兵士がやって来る。

「シルヴィア副団長、馬を連れて来ました」

「ありがとう。お前は持ち場に戻ってくれ」

「ハッ! 了解しました」

 馬を連れて来た兵士がシルヴィアに敬礼すると、この場から去って行く。

 その後、シルヴィアが先に馬に乗ると、私に手を差し出す。

 彼女の手を握り、持ち上げてもらうと馬に跨った。

「しっかり捕まっていてくれよ。振り落とされないように」

 忠告をした後、シルヴィアは馬に合図を送ったようで、馬は勢い良く走り始めた。

 ラル君待っていてね。直ぐに助けるから。
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