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第二章
第十二話 ショタは自分の過去を知っている人と出会う
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~ラルス視点~
サーカスでの騒動から数日が経った。あれから大きな事件などは起きずに、平和な日々を過ごしている。
「それじゃあ、私はギルドに行って、依頼を受けてくるわね」
「うん。行ってらっしゃい」
仕事に向かうソフィーお姉さんを見送り、戸締りを確認する。
「これでよし、僕も遊びに行こう」
泥棒さんが家に入って来られないように鍵をかけると、家を出る。
「今日はどこに行こうかな? ローザと遊んでも良いし、まだ行ったことのない場所に探検に出てもいいや」
どんなことをして1日を過ごそうか考えていると、1人の男性がこっちに向かって歩いてきた。
全身に鎧を身に付けていることから、兵士か冒険者のどちらかであることが分かる。
そのまま気にしないで通り過ぎようとすると、男性と目が合い、彼は僕のところに駆け寄ってきた。
「君、もしかしてラルス君かい?」
「そうですけど、おじさんは?」
「俺はこの城下町のギルドで働いている冒険者だ。ちょうど君に用事があってね。ちょっとおじさんに付いて来てもらえないかい?」
冒険者だと名乗ったおじさんは、ニッコリと笑みを浮かべながら声をかけてくる。
僕に用事って何だろう? でも、ソフィーお姉さんからは、知らない人には付いて行ってはダメって言われているんだよな。
「おじさんの用事って何? ここで話せないようなものなの? 僕をどこに連れて行こうとしているの?」
質問をしてみると、おじさんは困ったように少しだけ首を傾げた。
「まずはソフィーお姉さんに一言声をかけないといけないから、一旦ギルドに行ってからでも良い?」
「あ、いや、それはまずい」
おじさんに背を向けてギルドの方に歩こうとすると、彼は僕の腕を掴んで止める。
やっぱり、このおじさんは何か変な感じがする。子どもを騙して、連れ去る誘拐犯かもしれない。
「待ってくれ。ソフィーお姉さんには話さない方が良い」
「どうしてなの?」
「それは、君のご両親が見つかったからだ」
「僕のお父さんとお母さんが!」
思わず声を上げる。すると、おじさんは右手の人差し指を伸ばして口元に持っていく。
「シー! あんまり大きな声を出さないでくれ。ソフィーお姉さんに聞かれたら、彼女を悲しませることになる」
「それってどう言う意味なの? どうしてソフィーお姉さんが悲しむようなことになってしまうの?」
もう一度聞いてみると、おじさんは耳元に顔を近づけ、小声で話し始める。
「ソフィーお姉さんは君のことを大事にしているだろう? そんな彼女が目の前で君と別れるんだ。きっと悲しくなって泣いてしまうだろう。君はそんなことをソフィーお姉えさんにさせたいのかい?」
おじさんの言葉を聞き、頭の中でその光景を思い浮かべてみる。
ソフィーお姉さんを泣かせたくはない。お姉さんにはいつも笑顔でいてほしい。
「分かった。僕もソフィーお姉さんとお別れしたら、きっと寂しくって泣いてしまうかもしれない。だから、お別れはしたくない」
「分かってくれたか。それでは、おじさんに付いて来てくれ。君のお父さんとお母さんが待っているところに案内しよう。段取りがあるから、まずはこのローブを着てくれ」
おじさんは持っていた麻袋からローブを取り出して僕に手渡す。
どうしてローブを着る必要があるのだろう?
「どうしてローブを着ないといけないの?」
「それはだな。城下町の外でご両親が待っているからだ。そのままの姿で門の外に出たところを見られたら、ソフィーお姉さんが追いかけて来るからな。君たちに悲しいお別れをさせないためには必要なことなんだ」
おじさんの説明を聞き、納得した。
確かに、僕が門を出るところを門番さんに見られたら、ソフィーお姉さんに知られるかもしれない。トラブルなしで門を通過するには必要だよね。
ローブを着てフードを被り、顔が見え難いようにする。
「よし、それでは馬車を手配するから、ここで待っていてくれ」
馬車を用意すると言い、おじさんはこの場から離れて行く。
冒険者のおじさんがいなくなると、どこからか誰かに見られているような気がした。
誰が見ているのだろう? そう思って辺りを見渡してみるも、通行人からは僕のことを見ている感じがしなかった。
「お待たせ。馬車を用意して来たぞ。さぁ、乗ってくれ」
通行人を眺めながら待っていると、おじさんが戻って来た。持って来た馬車は、行商人が乗るような馬車であり、荷台には袋詰めされた何かが乗っている。
「助手席に座り、おじさんが御者席に乗ると、彼は手綱を操作して馬を走らせる」
しばらくすると城下町の門が見えた。今日も2人の門番さんが通行人の確認をしている。
「お疲れ様です。商売が終わったので、村に帰ります」
おじさんが門番さんに声をかけ、懐から1枚の紙を取り出して門番さんに見せる。
「通行書は確認した。では、無事に村に帰れることを願っておる」
「ありがとうございます。では」
おじさんが軽く頭を下げると、手綱を操って馬を走らせ、門から出て行く。
「しばらくの間はフードを被ったままでいてくれ」
フードを被っているように言われ、おじさんの言う通りにフードを被ったままにしておく。
この先に僕のお父さんとお母さんが待っているんだ。何だかワクワクするな。
サーカスでの騒動から数日が経った。あれから大きな事件などは起きずに、平和な日々を過ごしている。
「それじゃあ、私はギルドに行って、依頼を受けてくるわね」
「うん。行ってらっしゃい」
仕事に向かうソフィーお姉さんを見送り、戸締りを確認する。
「これでよし、僕も遊びに行こう」
泥棒さんが家に入って来られないように鍵をかけると、家を出る。
「今日はどこに行こうかな? ローザと遊んでも良いし、まだ行ったことのない場所に探検に出てもいいや」
どんなことをして1日を過ごそうか考えていると、1人の男性がこっちに向かって歩いてきた。
全身に鎧を身に付けていることから、兵士か冒険者のどちらかであることが分かる。
そのまま気にしないで通り過ぎようとすると、男性と目が合い、彼は僕のところに駆け寄ってきた。
「君、もしかしてラルス君かい?」
「そうですけど、おじさんは?」
「俺はこの城下町のギルドで働いている冒険者だ。ちょうど君に用事があってね。ちょっとおじさんに付いて来てもらえないかい?」
冒険者だと名乗ったおじさんは、ニッコリと笑みを浮かべながら声をかけてくる。
僕に用事って何だろう? でも、ソフィーお姉さんからは、知らない人には付いて行ってはダメって言われているんだよな。
「おじさんの用事って何? ここで話せないようなものなの? 僕をどこに連れて行こうとしているの?」
質問をしてみると、おじさんは困ったように少しだけ首を傾げた。
「まずはソフィーお姉さんに一言声をかけないといけないから、一旦ギルドに行ってからでも良い?」
「あ、いや、それはまずい」
おじさんに背を向けてギルドの方に歩こうとすると、彼は僕の腕を掴んで止める。
やっぱり、このおじさんは何か変な感じがする。子どもを騙して、連れ去る誘拐犯かもしれない。
「待ってくれ。ソフィーお姉さんには話さない方が良い」
「どうしてなの?」
「それは、君のご両親が見つかったからだ」
「僕のお父さんとお母さんが!」
思わず声を上げる。すると、おじさんは右手の人差し指を伸ばして口元に持っていく。
「シー! あんまり大きな声を出さないでくれ。ソフィーお姉さんに聞かれたら、彼女を悲しませることになる」
「それってどう言う意味なの? どうしてソフィーお姉さんが悲しむようなことになってしまうの?」
もう一度聞いてみると、おじさんは耳元に顔を近づけ、小声で話し始める。
「ソフィーお姉さんは君のことを大事にしているだろう? そんな彼女が目の前で君と別れるんだ。きっと悲しくなって泣いてしまうだろう。君はそんなことをソフィーお姉えさんにさせたいのかい?」
おじさんの言葉を聞き、頭の中でその光景を思い浮かべてみる。
ソフィーお姉さんを泣かせたくはない。お姉さんにはいつも笑顔でいてほしい。
「分かった。僕もソフィーお姉さんとお別れしたら、きっと寂しくって泣いてしまうかもしれない。だから、お別れはしたくない」
「分かってくれたか。それでは、おじさんに付いて来てくれ。君のお父さんとお母さんが待っているところに案内しよう。段取りがあるから、まずはこのローブを着てくれ」
おじさんは持っていた麻袋からローブを取り出して僕に手渡す。
どうしてローブを着る必要があるのだろう?
「どうしてローブを着ないといけないの?」
「それはだな。城下町の外でご両親が待っているからだ。そのままの姿で門の外に出たところを見られたら、ソフィーお姉さんが追いかけて来るからな。君たちに悲しいお別れをさせないためには必要なことなんだ」
おじさんの説明を聞き、納得した。
確かに、僕が門を出るところを門番さんに見られたら、ソフィーお姉さんに知られるかもしれない。トラブルなしで門を通過するには必要だよね。
ローブを着てフードを被り、顔が見え難いようにする。
「よし、それでは馬車を手配するから、ここで待っていてくれ」
馬車を用意すると言い、おじさんはこの場から離れて行く。
冒険者のおじさんがいなくなると、どこからか誰かに見られているような気がした。
誰が見ているのだろう? そう思って辺りを見渡してみるも、通行人からは僕のことを見ている感じがしなかった。
「お待たせ。馬車を用意して来たぞ。さぁ、乗ってくれ」
通行人を眺めながら待っていると、おじさんが戻って来た。持って来た馬車は、行商人が乗るような馬車であり、荷台には袋詰めされた何かが乗っている。
「助手席に座り、おじさんが御者席に乗ると、彼は手綱を操作して馬を走らせる」
しばらくすると城下町の門が見えた。今日も2人の門番さんが通行人の確認をしている。
「お疲れ様です。商売が終わったので、村に帰ります」
おじさんが門番さんに声をかけ、懐から1枚の紙を取り出して門番さんに見せる。
「通行書は確認した。では、無事に村に帰れることを願っておる」
「ありがとうございます。では」
おじさんが軽く頭を下げると、手綱を操って馬を走らせ、門から出て行く。
「しばらくの間はフードを被ったままでいてくれ」
フードを被っているように言われ、おじさんの言う通りにフードを被ったままにしておく。
この先に僕のお父さんとお母さんが待っているんだ。何だかワクワクするな。
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