記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第二章

第七話 ショタはサーカスで遊びまくる

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 サーカスのステージに現れたモンスターさんたちを倒すために、僕はステージに上った。

「まさか逃げずに自分から来るとは思ってもいませんでしたね。自分から殺されに来てくれたので、手間が省けましたよ」

 団長さんは口の端を吊り上げてニタッと笑う。

「おじさんはいったい何者なの? 魔族とか言う悪いやつなの?」

「アハハハハ! 魔族? 私をあんな蛮族とは一緒にしないでください。私はモンスターマスター、動物を魔物に変えたり、数多くのモンスターを手駒にしたりする力を持っています」

 魔族なのかと聞くと、おじさんは笑いながら自分のことを話してくれた。

 ソフィーお姉さんが言っていた。モンスターは人々を襲う悪い生き物、それを飼っているこのおじさんも、悪い人だ。

「どうして僕を狙って来たの?」

「それはとある人物からのお願いですね。君を始末するように言われたのです。本来はこのサーカスは普通に行われる予定だったのですが、君がこのサーカス小屋に入ったのを目撃して急遽きゅうきょ予定を変更しました」

「僕がサーカスを見に来たから、サーカスが台無しになった」

 団長さんの言葉を聞き、顔を俯かせる。

 もし、僕がこのサーカスを見に来なければ、こんなことにはならなかった。たくさんの人がサーカスを楽しみ、笑顔で1日を過ごせられたんだ。

 自分のせいだと何度も心の中で呟き、心の中で黒いものが渦巻く。

「ラル君のせいではないわ!」

 自身を責めていると、ソフィーお姉さんの声が聞こえ、俯かせていた顔を上げる。

「ラル君がサーカスを観に来なくても、あの男は君を狙っていた。場所が違うだけで、結果は同じよ! ラル君は悪くない! 悪いのはあの男よ」

 ソフィーお姉さんが声を上げて必死に僕に語りかけてきた。

 そうだ。ソフィーお姉さんの言う通りだ。僕がサーカスを観に来たのは偶然だ。そもそも、団長さんが動物さんたちをモンスターに変えなければ、こんなことにはならなかった。

「モンスターを飼っている悪いおじさんは、僕が懲らしめる。ちゃんと兵士の人たちに悪いことをしてごめんなさいって言わせるからね」

「誰がそんな恥ずかしいことをするか! 子どもがモンスターに敵う訳がないだろうが! エレファントエンペラー! あのガキを踏み潰せ!」

『パオーン!』

 団長さんが指を僕に向けてゾウさんのモンスターに命令すると、ゾウさんは大きな声で鳴きながら僕の前に来る。そして、大きい足で踏みつけようとしてきた。

「ラル君逃げて!」

 ソフィーお姉さんが逃げるように言う中、大きな足が近付いて足の影が大きくなる。

「大丈夫だよ、ソフィーお姉さん。だって、逃げる必要がないから……影踏んだ!」

 ゾウさんのモンスターの影を踏んだ瞬間、モンスターさんの動きが止まる。

「エレファントエンペラー何をやっている! さっさとそのガキを踏み潰せ!」

「ムダだよ。だって今は、影踏み氷鬼をしているんだもん。鬼役である僕が影を踏んでいる間は、踏まれたものは動くことができないから」

「何だと!」

「ソフィーお姉さん今だよ!」

「ええ、ファイヤーボール!」

 ソフィーお姉さんに攻撃をお願いすると、僕の真上に火球が飛び、ゾウさんのモンスターに直撃した。

『パオーン!』

 火の玉が当たったモンスターさんは悲鳴を上げるも、影を踏んでいるので倒れることはできない。

 僕が影を踏んでいる限り、このゾウさんは像と化しているようなもの。

「くそう! まさかターゲットがこんなトリッキーな力を持っているとは! ジャイアントコング! お前も攻撃しろ!」

『ウホホ! ウホホ!』

 団長さんがもう1体のモンスターさんに命令すると、大猿のモンスターさんが四足歩行で近付く。

 影の位置はモンスターさんの後、これでは影踏み氷鬼が使えない。

 えーと、この場合に適した遊びって何かあったかな?

 モンスターさんを大人しくさせる遊びを考えていると、ある遊びを閃く。だけどこの遊びはモンスターさんに触れる必要がある。

 上手く行くかはわからないけれど、やってみる価値はあるよね。

 一か八か、僕は踏んでいたゾウさんモンスターの影を離す。その瞬間、バランスを崩したゾウさんモンスターが、大猿モンスターの方に倒れ、そのまま押し潰す。

『ウホッ!』

 下敷きになった大猿のモンスターさんが短い悲鳴を上げる中、僕は2体のモンスターさんの体に触れた。その瞬間、突然牢屋が出現してモンスターさんたちを閉じ込める。

「ろ、牢屋が突然現れた!」

 突然現れた牢屋に、団長さんが驚く。

「今やっている遊びは、憲兵とシーフ、略してケイシーだったかな? 泥棒さんであるシーフと憲兵に分かれて、憲兵はシーフ役全員を捕まえれば勝ちって言うあの遊びだよ。団長さんも子どもの頃遊んだことがあるでしょう?」

「そんな遊びしたことがない! そもそも、大人数で遊べるほど友達が……と、とにかくよくも私の手駒を拘束しやがったな!」

 友達がいないと語る団長さんに、僕は少しだけ同情してしまった。きっと団長さんにとって、友達と呼べる人を作れなかったんだ。

「それじゃあ、僕と一緒にケイシーをしようよ。シーフ役の団長さんがモンスターさんをタッチすれば、牢屋は消えるから。ほらおいでよ」

 手招きをするも、団長さんは中々遊びに参加しようとはしない。

 うーん、大人になってから子どもの遊びをするのは恥ずかしいのかな? なら、参加したくなるように誘導してあげよう。

「ケイシーする人この指止まれ、はーやくしないと明かりが消える――」

 右手の人差し指を伸ばしながら歌を歌う。すると、団長さんがゆっくりと近付く。

「ば、ばかな! 私の意思に関係なく体がガキのところに向かって行く!」

 驚きを隠せないと言いたげな顔付きで、団長さんが僕のところに近付く。そして伸ばしていた指を握った。

「団長さん、僕の指を握ったね。もう、逃げられないから。だから観念して遊び尽くそう」

 満面の笑みを浮かべる。けれど団長さんは逆に頬を引き攣らせていた。それはまるで、お化けを見たかのように恐怖を感じている顔付きだった。
 
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