上 下
20 / 42
第二章

第五話 ショタはサーカスを楽しむ?

しおりを挟む
 ソフィーお姉さんにお願いしてサーカスを見ることになり、僕はワクワクが止まらなかった。

「ソフィーお姉さん早く! 早くしないと良い席が取られちゃう!」

 早くサーカスが見たいと思う気持ちから、ソフィーお姉さんの手を引っ張る。

「大丈夫よ。そんなに慌てないで。座席はチケットに書いてある場所になっているから、慌てる必要はないわ」

 席が決まっていることをソフィーお姉さんが教えてくれる。お姉さんの言葉を聞いて、正直少しだけがっかりした。

 何だ。席が決まっているのか。だったら急ぐ必要はないけれど、良い席に座れるように神様にお願いするしかないね。

 ドキドキが止まらない中、城下町を歩くと、赤色の大きいテントが見えてきた。

 もう少しでサーカスを見ることができる。

 ワクワクしてきた僕は、気がつくと歩く時の歩幅が大きく、早く足を動かしていた。

 次第にテントが大きく見えるようになると、入り口付近に金髪をツインテールにしている女の子を発見する。

「ローザ!」

 彼女に駆け寄り、声をかける。

「ローザ、早かったね。もしかして待った?」

「別に少しだけしか待っていないわよ。それじゃあ早速中に入りましょう」

「ま、待って!」

 僕の手を握って中に入ろうとするローザを止める。大人の人が一緒じゃないと入れない以上、ソフィーお姉さんが来るのを待たないといけない。

「何? どうかしたの?」

「ローザちゃん、こんばんは」

 ローザが訊ねたタイミングで、少し遅れたソフィーお姉さんが合流する。

「どうしてソフィーさんが一緒にいるの?」

 ジッと見てくるローザの顔が怖く感じてしまい、視線を逸らす。

 だってしょうがないじゃないか。大人の人が一緒じゃないと入れないんだから。

「ローザちゃん。サーカスはね、大人の人が一緒じゃないと入れないのよ。子どもだけでは危ないから、保護者の同伴が必要なのよ」

「そんなこと、ママは何も言っていないわよ」

「多分、言い忘れていたのでしょうね。だから私が保護者として来たの」

 ソフィーお姉さんが説明すると、なぜかローザは面白くなさそうに、顔を俯かせる。

「それじゃあ、私は自分の分のチケットを買ってくるわね。大人しく待っていたら、飲み物とお菓子を買ってあげるから」

「やった! お菓子だ!」

 大人しく待っていたらお菓子を買ってもらえる。

 ローザは早くこの場から離れたそうで、僕の袖を引っ張っているが、お菓子の魅力には勝てない。

 ソフィーお姉さんがチケットを買って戻ってくると、そのまま食べ物や飲み物を販売している出店に連れて行ってもらい、そこでお菓子と飲み物を買ってもらった。

 その後、テントの中に入ってチケットに書かれてある席に移動する。

 僕の左にはローザが、右にはソフィーお姉さんが座っている。

 どうやら僕の隣が空いてたみたいだ。

 良かった。正直ソフィーお姉さんと離れるのが少しだけ怖かったから。

 買ってもらったお菓子をローザと一緒に食べながら、サーカスが始まるのを待つ。

 するとテント内を照らす明かりがなくなり、中央部分に明かりが集中する。

「レディースアンドジェントルマン! ようこそお越しいただきました。私はこのサーカスの団長を務めております。アクと申します。今宵は頼んでください。それでは最初のショーを始めましょう!」

 団長さんが挨拶をすると、再び明かりが付き、ショーが始まる。

 ボールに乗りながらのジャグリング、空中ブランコや綱渡りを目の当たりにして、ドキドキが止まらなかった。

 僕もやってみたい。その気持ちが強くなり、新しい遊びを思い付く。

 今度機会があったら遊んでみようかな?

「ここまで楽しんでいただけたでしょうか? それでは、最後の演目に移らせていただきます。最後の演目は人間ダーツです」

 次の演目を語ると、団長さんはポケットからナイフを取り出す。

「これで、終わりだ!」

 団長さんが投げたナイフは勢い良く僕ぼのところへと飛んでくる。

 え? これって嘘だよね。何かの間違いだよね。

 ナイフはオモチャかもしれない。そう思ったけれど、飛んでくるナイフの刃先は尖っていて、簡単に肉が裂けそうな感じがした。

 これ、オモチャじゃないよ! うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!
しおりを挟む

処理中です...