記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第二章

第三話 ショタは町の暴れん坊を懲らしめる

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~ラルス視点~




「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 シルヴィアお姉さんから貰ったウッシーナの串焼きを食べ終わると、どこからか女の人の悲鳴が聞こえてきた。

「何事もなく1日が過ぎてくれればと思っていたが、やはり平和な1日と言うのは、そう簡単には起きないな。悪いが、ワタシは悲鳴が聞こえた方に行ってくる」

 シルヴィアお姉さんが走ってこの場から去って行く。

 どうしよう。僕も悲鳴が聞こえた場所が気になる。

 可能性は低いかもしれないけれど、もしあの声が知り合いの人だったら嫌だな。

「ローザ、ごめん。また今度遊ぼう」

「あ、待ってよ! あたしも行く」

 待つようにローザが言うけれど、彼女を待っている訳にはいかない。

 追いかけっこ!

 ユニークスキルを発動したことで、僕の足が早くなる。今ならお馬さんとかけっこをしても勝てる。

 急いで声が聞こえた場所に向かう。すると、刃物を持った男が女性に刃先を向けていた。

「さぁ、大人しくついて来るんだ」

「いやよ! 騎士様! シルヴィア騎士様お助けください!」

 女の人はシルヴィアお姉さんの名前を言っている。もしかして、お姉さんの知り合いの人かな?

 まだシルヴィアお姉さんは駆けつけていないみたい。今は僕しかお姉さんを助けられない以上、ここは僕がお姉さんを助けないと。

 いったいどんな遊びなら、あのお姉さんを助けることができる?

 一生懸命に考えるも、今の段階では思いつかない。

 こうなったら、あのおじさんの気を少しでも逸らして、その間に戦いごっこを仕掛けよう。

 さぁ、お遊びを始めるよ。

 僕はジッと自分の影を見つめる。そして瞬きを我慢した。

 10秒程我慢して今度はおじさんの後方に視線を向ける。

「影だと! いったいいつの間に背後を取られた……いない!」

 後方を振り向いたおじさんが影に気を取られて振り向くも、誰もいないことに驚く。

 やった! 上手く『影送り』に成功した!

 本当の影送りは、空に影の残像が現れる遊びだけど、ユニークスキルのお陰で自分が出したい場所に影の残像が出るようになっている。

 さぁ、今がチャンスだ。今のうちにおじさんからお姉さんを引き離すぞ。

 遊び変更、かけっこ!

 スキルを発動してかけっこの際に足が早くなるようにする。一瞬でおじさんの前に立つと、直ぐに遊びを変える。

 立ち相撲!

 立った状態でおじさんの体を押す。するとおじさんはバランスを崩して転倒した。

 転ぶ直前におじさんが手を離したので、お姉さんが巻き込まれることはない。

「グハッ!」

「お姉さん今だよ。逃げて!」

「でも?」

 どうしてなのか、お姉さんはおじさんをチラチラと見て、ここから離れようとはしない。

 もしかして、僕のことを心配しているのかな?

「僕のことは大丈夫。直ぐにシルヴィアお姉さんが来るから」

「わ、分かったわ」

 シルヴィアお姉さんの名前を出すと、お姉さんは走ってここから離れて行く。

「くそう、いったい何が起きやがったんだ?」

 首を抑えながら、おじさんはゆっくりと立ち上がる。

「おじさん、女の人に乱暴をするのは良くないよ!」

「何だこのガキ?」

 注意をすると、おじさんが目を細めて睨んでくる。

 怖くない。怖くない。怖くない。僕は魔族だって氷付けにできるんだ。大丈夫、きっとどうにかなる。

「ガキのくせに大人の仕事の邪魔をするんじゃねぇ!」

 おじさんが拳を握り締めると、僕の顔面に放ってくる。

「遊び変更! 影踏み氷鬼!」

 おじさんの影が近付いた瞬間、足で彼の影を踏む。するとおじさんの体は時が止まったかのように動かなくなる。

「なぜだ! どうして俺の体なのに、自分の意思通りに動かない!」

「無理に動かそうとしても無駄だよ。影踏み氷鬼は、影踏みと氷鬼が合体させた遊び。鬼である僕が影を踏んでいる限り、おじさんは動くことができない。安心して、氷鬼の時みたいに、氷漬けになることなんてないから」

 どうして動くことができないかを説明すると、おじさんは顔色を悪くする。

「くそう! 予定と全然違うじゃないか! どうしてシルヴィアではなく、こんなガキに邪魔をされることになる!」

 おじさんが目を細めて睨むも、全然怖くない。だって影を踏んでいる限り、殴られる心配がないから。

「ラルス! まさか先回りしていたのか!」

「あ、シルヴィアお姉さん! この人悪い人だよ。刃物で女の人を怖がらせていた」

 地面に落ちている刃物を指差しながら、シルヴィアお姉さんに説明をする。

「くそう! くそう! くそう! どうしてこうなったんだ! あいつの言っていたことと全然違う状態になっているじゃないか!」

「喚くな。近隣の住民に迷惑だろうが。詳しい話は、詰所で聞こう」

 黙るように言いながら、シルヴィアお姉さんは懐から縄を取り出しておじさんを縛り上げていく。

「これでよしラルス、こいつを連れていくから動けるようにしてくれないか」

「うん、分かった」

 踏んでいたおじさんの影から足を離すと、おじさんは再び動けるようになった。

「ラルス、さっきは疑って悪かったな。お前はしっかりと自分のユニークスキルをコントロールすることができている。謝らせてくれ」

「別に良いよ。シルヴィアお姉さんの気持ちも分かるし」

「でもやっぱり心配だ。婚約の件はしばらく断った方がいいだろう」

 ポツリとシルヴィアお姉さんが言葉を漏らす。だけど小さかったから上手く聞き取ることができなかった。

 コンニャックがどうかしたのかな?
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