記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

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第二章

第二話 婚約話し

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~シルヴィア視点~




「ワタシに婚約話しが来ている?」

「そう。相手は隣国に住む男爵の御子息。王様が隣国に出かけた時に紹介されたようなんだ。王様の話しでは、イケメンで誠実そうな男だったと言っていた」

 まさかワタシに婚約話しが出てくるとは思わなかった。でも、いくらなんでも早すぎる。まだ10代で結婚だなんて考えられない。それに、何だか嫌な予感がする。

「騎士団長、悪いがその婚約ーー」

「まぁ直ぐに答えを出さなくって良いと王様も言っていた。数日考えればいいさ。僕は今のところは賛成だから、シルヴィアちゃんがその気になってくれれば全力で後押しさせてもらうよ」

 今の直感を信じて断ろうとしたその時、兄さんが考える猶予を与えると言ってきた。

「そうですか。おそらく答えは変わらないとかと思いますが、少し考えてみるとしましょう」

「前向きな返事を期待しているからね」

「それでは、午後の巡回に行ってきますので、ワタシはこれで失礼します」

 軽く会釈して団長室を出ていく。

 今は婚約話しのことは忘れて、仕事に集中するとしよう。

 お城を出ると、城下町内の巡回をして辺りを見渡す。

 今のところは何もトラブルなどは起きていないようだな。

「シルヴィアさんじゃないか。午後の見回りかい?」

 町中を巡回していると、肉屋の店主が声をかけてきた。

「ああ、今日も良い匂いがするな」

「今、ウッシーナの串焼きを作っているところだ。どうだい?」

 先程軽く昼食を取った。けれどこの美味しそうな匂いを嗅いでしますと、食欲がそそられる。

 まぁ、巡回で歩き回るから、その分カロリーは消費されるだろう。

「分かったもらおう」

「了解、少し待ってくれ」

 肉屋の店主が手早く焼いた肉にタレを付ける。タレが付けられたことで、更に美味しそうな匂いが漂い出す。

 気を抜くと涎が出そうだな。しかし騎士たる者、いつでも凛々しくあらなければならない。

「はいよ。ウッシーナの串焼きセットだ」

「ありがとう。お代はいくらだ?」

「代金なんてものはいらないよ。シルヴィアさんが美味しそうに食べながら歩き回ってくれれば、それだけで宣伝になる。広告代と思って受け取ってくれ」

 代金はいらないと店主は言ってくれるが、それでは申し訳ない。頭の中では広告代のようなものだと分かっていても、心の方が苦しくなる。

 まるで恐喝で奪っているような気分になる。

「すまない。やっぱりタダで貰う訳にはいかない。半分だそう」

 店に書かれてある値段を見て、財布から金額の半分の金を取り出してカウンターの上に置く。

 そして店主が口を開く前にこの場から離れた。





「それじゃあ始めるわよ」

「うん! 分かった」

 ウッシーナの串焼きを1本食べながら巡回を続けていると、子どもの声が聞こえてきた。

 この声ラルスか?

 気になってしまったからか、足が自然と声が聞こえた方へと歩く出す。

 しばらく歩くと、金髪ツインテールの女の子の隣に、黒い短髪の男の子がいた。

「ラルスじゃないか。こんなところで何をしているんだ?」

「あ、シルヴィアお姉さん! こんにちわ!」

 ラルスに声をかけると、彼は子どもらしい満面の笑みで挨拶をしてくる。

「僕はローザと遊んでいたんだ」

「遊びだと!」

 ラルスが遊んでいたと聞き、思わず声を上げる。

 彼のユニークスキルは遊ぶことで発動する。今は何も問題が起きていないようだが、この後何が起きるか分からない。

「いいか! ラルスは遊んではダメだ!」

「なんでなのよ! 何でラルスは遊んではいけないのよ!」

 ラルスに遊ぶことを禁じると、隣にいた女の子が抗議する。

 確かラルスはローザと言っていたな。

「いいかい、ローザちゃん。ラルスのユニークスキルは遊びなんだ。遊ぶことで時には人を傷付けることにもなる。危険が及ぶ可能性がある以上は、ラルスは遊んではいけないんだ」

 納得してもらおうと、少し厳しめに言う。

「それがどうしたって言うのよ。あたしたち子どもは、遊んで学ぶことが仕事のようなものでしょう! ラルスに遊ぶことを禁じては、自由を奪うことになるわ! 見た感じ騎士のようだけど、騎士が自由を奪う権利はないわよ」

 意外な返しに我ながら驚いてしまう。

 まさか、ラルスとあまり変わらない年頃の女の子に、言い返されるとは思わなかった。

「だけど、事情が事情だ。万が一にでもこの町に被害が出たらどうする。ワタシでも庇い切れないことが起きれば、ラルスの処刑は免れない。それにソフィーにも責任を取らせることにも繋がるんだぞ」

 子ども相手になんてことを言っているんだと自覚してしまう。

 本当にすまない。でも、ラルスを守るには我慢してもらうしかないんだ。

「シルヴィアお姉さん。僕のユニークスキルのことなんだけど、多分大丈夫だと思うんだ」

「何を根拠にそんなことを言う?」

「僕ね。ローザと一緒に森の中にあるお化け屋敷に行ったとき、頭の中で遊びをイメージしたの。そしたら、不思議と強くなった。でもね」

 話しの途中でラルスが離れると、近くにあった木箱の前にいく。そして手を上げると手刀を放つ。

 だが、木箱に手が当たった瞬間、彼の手は赤くなった。

「こんな風に……痛みが……あって……うええええぇぇぇぇん! 痛いよおおおおおぉぉぉぉ!」

 木箱を叩いたラルスが突如泣き始めた。

 これはどう見ても本気で泣いているな。もし、本当にコントロールすることができているなら、遊びを制限しなくても良いのかもしれない。

「本当にラルスは良い子ね。自分の手を痛めてまで、あたしたちのことを止めようとしたのでしょう」

 ローザが泣きじゃくるラルスの頭を撫でる。

 さすがにワタシも厳しくしすぎただろうか。

「ほら、これをあげるから泣き止め。ローザ、君にもあげるよ」

「ヒック……ありがとう」

 ウッシーナの串焼きをラルスたちに渡し、彼らが食べ終わるのを待つ。

「それじゃあ、ワタシは見回りの続きでもしてくるとしよう。ラルスたちもーー」

「きゃああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 巡回の続きをしようとしたところで、どこから悲鳴が聞こえてきた。
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