記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

仁徳

文字の大きさ
上 下
10 / 42
第一章

第十話 町の外の屋敷

しおりを挟む
 急いで城下町の入り口に行くと、門番さんが居た。でも、彼は眠っているようで、その場に座り込んでいる。

 周辺にはローザの姿が見えない。もしかして彼女よりも先に来てしまったのかな?

「あ、来たわね。良かった。もし来なかったらどうしようかと思ったわ」

 後方からローザの声が聞こえ、振り向く。

 松明の明かりに照らされる範囲に入ったようで、暗闇の中から金髪ツインテールの女の子が姿を見せる。

「ローザ、門番さん眠っているみたいだよ」

「ええ、この人いつもこうなのよ。まともに仕事をしないで寝ているの。だから今なら見つからないように外に出られるわ。昼間だと、子ども1人で王都の外には出させてもらえないから、これを狙っていたのよ」

 彼女の説明を聞き、ようやく夜中じゃないといけない理由に納得する。

 でも、それなら僕からソフィーお姉さんにお願いすることも出来たのになぁ。

 そんなことを思いながら、ローザの後ろを歩く。

 眠っている兵士を起こさないようにして横を通り過ぎ、ローザが鉄の扉に手を置く。

「うーん、うーん! うそ! 扉が重くて開かないわ。こんなに重いものなの!」

 額を拭い、ローザは表情を曇らせる。

 確か、ぼくがソフィーお姉さんに連れられてこの門を潜った時、見張りの兵士さんは普通に開けていたと思うけど、これが子どもと大人の差なのかなぁ?

 どうにかならないか考えていると、あることを閃く。

 そうだ! 僕のユニークスキルを使えば、もしかしたらエンハンスドボディーとか言う肉体強化の魔法が使えるかもしれない。

 今からやることは、重い扉を開けるゲームだ。僕とローザ、どっちが先にこの扉を開けることができるのかの勝負。

 頭の中で遊びを決め、今度は僕が扉に手を添える。

 お願い! 開いて。

 手に力を入れる。すると扉は簡単に開き、子ども1人が通れるスペースを作る。

「ラルス凄いじゃない! 見直したわ! あんなに重い扉を開けるなんて、さすが男の子!」

 外に出られることがそんなに嬉しいのだろうな。ローザはその場でジャンプして喜んでくれた。

「しー! 静かにしないと門番のおじさんが起きてしまうよ」

 口元に人差し指を持っていきながら彼女に注意する。

「ごめんなさい。やっとあそこに行けると思うと、つい嬉しくなって」

 頭を下げて謝ると、ローザは先に門を出て行く。彼女に続いて城下町の外で出ると、目に映る光景が一気に変わった。

 一度通ったことのある場所のはずなのに、昼間と夜では雰囲気がガラリと変わってしまった。

 なんだか急に怖くなってきたよ。どうしてだろう? さっきまで全然怖いとは思わなかったのに。

 どうして急に怖いと思ったのかを考えていると、あることを思い付く。

 もしかしたら、扉を開ける際に遊びを変えたのがいけなかったのかもしれない。

 肝試しから扉を押して開けるゲームに変えたから、体に与える影響が変わったのかも。

 だったら、もう一度肝試しに戻った方が良いよね。よーし、肝試しを再開だ!

 拳を握って腕を上げる。すると、ユニークスキルが発動したみたいで、怖いとは思わなくなった。

 これでよし、後はローザに案内してもらうだけだね。

「ローザ、君が行きたい場所はどっち?」

「こっちよ」

 目的地の場所を訊ねると、ローザは僕の手を握って歩き出す。





「ねぇ、少し離れてくれない? 歩き辛いのだけど?」

 暗闇の森の中を2人で歩いているけど、ローザが僕の腕に自身の腕を絡ませて密着してくる。だからそのせいで歩き難い。

「こ、これは、ラルスが怖がっているといけないから、あたしが側にいるから安心しなさいって言う意味を込めているのよ。別に怖いからあんたと引っ付いている訳ではないわ」

 どうして引っ付いてくるのか訊ねると、ローザは僕が怖がっていると思い込んでの行動だと言う。

「なんだ。それなら僕は怖くないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。だからもう離れて良いよ」

 ローザに礼を言い、怖くないから離れてもらうようにお願いする。

「強がって嘘を吐く必要はないわ。あたしには、あんたが強がっていることくらい分かるんだから。大人しくお姉さんの言うことを聞きなさい」

 僕が強がっていると勝手に決め付け、意地でも離れようとはしなかった。

 別に強がっていないのだけどなぁ。でも、ユニークスキルの効果がなければ、僕も怖くて一歩も歩けなかったかもしれない。だから強がっていると言うのは案外間違っていないのかもしれない。

「分かったよ。別に嘘は付いていないけど、歩き難いのは我慢する」

 ローザは幼い子どもみたいに我儘を言うから、僕がお兄さんになってあげないといけないよね。

 ローザに引っ付かれたまま森の中を歩くと、お屋敷のような建物が見えた。

 近付くと普通のお屋敷とは違うことに気付く。

 屋根はボロボロで柵は錆びており、窓ガラスも割れている。

 夜中と言うこともあって、余計に不気味に思えた。

 もし、肝試しの効果で怖いと思わないようになっていなければ、半べそかいて今にでも逃げ出していたかもしれない。

「この屋敷なの?」

「そ、そうよ。あの屋敷の中庭に用があるの」

 腕を絡ませているローザが力を入れる。

「痛いよ。そんなに強く締め付けないで」

「ご、ごめん」

 締め付けている腕の力を弱めたようで、腕が少しだけ楽になった。

 早いところあの屋敷の中に入って、中庭でローザが探しているものを見つけよう。

 屋敷に近づき、扉をゆっくりと開ける。

 もちろん明かりのようなものはなく、建物内は暗かった。

「ごめんください。誰かいますか?」

 念のために声をかけるも、誰かがやってくる様子がなかった。

 完全に無人だ。本当にお化け屋敷に来た気分だな。

 唾を呑み込み、僕は暗闇の奥を見つめる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...