記憶喪失のおねショタハーレム〜遊んでいるだけなのになぜか大人や魔物よりも強いです〜

第一章

第一話 記憶喪失のショタの出会い

「あれ？　ここは……どこ？」

　気が付いたら、僕は森の中にいた。

　周りには草木が生い茂っている以外は何もない。

「ここってどこだろう？　早く家に帰らないと」

　足を一歩前に出したタイミングで、その場で動きを止める。そして頭に手を置いた。

「僕の家って……どこなの？」

　必死になって思い出そうとするも、家の住所が思い出せない。

　そもそも僕に帰る家ってあったの？　家族はいたの？　友だちは？

　どうにか思い出せるのは、自分の名前がラルス・セーデルシュトレームと言う名前と年齢が８歳と言うだけ、それ以外は何も思い出せない。

　不安と恐怖を感じてしまったからか、さっきまでの森の風景がさらに怖く感じてしまう。

　まるで御伽噺おとぎばなしに出てくる悪い魔女の住む森のように思えてきた。

「ひっ！」

　風が吹いて草木が揺れるだけで、とても怖く感じてしまう。

「寂しいよ。誰かいないの？」

　誰もいない中、ポツリと言葉を漏らす。

　寂しい気持ちと不安が募り出し、悲しい気持ちが溢れて泣きそうになった。

「うっ、うっ」

　我慢の限界を超え、小さく嗚咽が出始めたその時、茂みが揺れていることに気付く。

「誰かいるの？」

　茂みに向かって小さい声で問いかける。でも、返事が返ってこなかった。

　もしかして、この森に住む怖い魔女とか！

　怖い気持ちが強まり、心臓が早く動く。

　ど、どど、どうしよう。僕食べられちゃうよ。

　その場から動くことが出来ず、銅像のように立ち尽くしていると、茂みの中から何かが飛び出して来た。

　涙目になりながら、滲んだ視界で茂みから出てきたものを見る。

「あれ？　ウサギ？」

　茂みから出て来たのは、真っ白い毛がふさふさのウサギだった。

「よ、良かった！　悪い魔女ではなかったよ！」

　現れたのが無害な小動物であることを知り、安心すると僕はウサギに駆け寄る。

「捕まえた！」

　地面を蹴ってジャンプをすると、ウサギに覆い被さる。そして逃げ道を塞ぎ、そのまま腕で捕まえると抱き締めた。

「これで少しは寂しくない。お前の名前はウッサーだ！」

　捕えたウサギに勝手に名前を付け、白く柔らかい体毛に頬擦りする。

「痛い！」

　手に痛みを感じて、ケガをしたと思われる手を見る。すると、ウッサーが僕の手を噛んでいた。

　反射的に手を離すと、ウッサーは地面に着地して森の中を跳ねて行く。

「待ってよ！　僕を置いて行かないで！　1人にしないでよ」

　森の中を駆けて行くウサギを追いかけて行くと、人のようなの声が聞こえてきた。

　ウッサーは人らしき声が聞こえた方に向かっている。

　もしかして僕を他の人に合わせようとしてくれているの？

　もし、この先に人がいるのなら、僕のことを知っているかもしれない。

　走っていると人の姿が見えた。男の人が３人、女の人が２人だ。

　でも、何だか雰囲気が良くない。喧嘩をしているのかな？

　更に近付くと、視界から入る情報量が多くなる。

　男の人３人は手に斧や剣を握っている。そして女の人は、後ろにいる女の人を庇うようにして剣を構えていた。

　男の人たちはみんな怖い顔付きをしている。

　剣を持った女の人に庇われている女の人は、茶髪のセミロングで、毛先にはウェーブがかかっている。

　そして剣を構えている女の人は、青い髪を長く伸ばしていた。

「ハハハ！　さっきまでの威勢はどうしたのかな？」

「大人しくしていた方が身のためだぜ！　安心しな。痛くはしないからさ。ハハハ！」

「クッ、ケガをしていなければ、こんなやつら直ぐに倒すと言うのに」

　何が起きているのか分からないけど、男の人たちが女の人を虐めていることは、分かる。

「虐めはダメだよ！」

　声を上げた瞬間、爪先が道端に落ちている石に当たり、蹴り飛ばしてしまった。

「あ……ううっ」

　その瞬間、一番前にいた男の人がタマタマがあるところを押さえて疼くまる。

　もしかして、あのお姉さんが倒したの！　すごい！　早くて何も見えなかったよ！

「アニキ！　大丈夫ですか」

「女！　アニキに何をしやがった！」

「いや、私は何もしていないのだが？」

　2人の男性が倒れている男性を心配している間に、僕は間に入った。

「虐めはダメだよ！　弱い者虐めをしたらいけないってお母さんに教わらなかったの！」

「何だこのガキ！」

「突然現れやがって！　こうなったら、お前も捕まえて奴隷として売り捌いてやる！」

　男の人の言葉を聞いて、心臓の音が早くなっているのが分かった。

　この人たち虐める人よりももっと悪い人だった。怖いよ。でも、助けに入った以上は何かしないと。

　体が震えていることが分かる中、視線を下げると石が落ちていることに気付く。

　人に石を投げてはいけませんって、誰からか教えてもらったような気がするけど、もうこれしかない。

「ごめんなさい！　許してください！」

　人に石を投げる行為に罪悪感を覚え、目を閉じて思いっきり投げ付けた。

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ！」

「いってええええええぇぇぇぇぇぇぇ！」

　男性２人の声が聞こえ、閉じていた瞼を開ける。

　すると視界には、地面に倒れる2人の男の姿が見えた。

　す、凄い！　怖いおじさんたちが地面に倒れている。きっと後ろにいるお姉さんが倒したんだ。

「ありがとう。お姉さん」

　振り返って悪いおじさんたちを倒してくれたお姉さんにお礼を言ったその時、僕の喉元に剣の刃先を向け、お姉さんは怖い顔をして僕のことを睨み付けてきた。

　これっていったいどうなっているの！