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79 クローンと自分殺し
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今日もいつものようにダンジョンへと潜っている小愛。
果たして今回は一体どんな目に遭ってしまうのだろうか。
「あっ」
これまたいつものように、彼女は床に設置してあったトラップを盛大に踏み抜いてしまう。
するとその瞬間に壁から謎の機械が現れ、彼女の上へと移動した。
「な、何これ!?」
いつものことではあるが、それでも突然のこととなれば流石の彼女であっても驚くのも無理からぬことだった。
そしてひとしきり驚いた彼女に向けて機械は装置を向ける。
「ひっ……うぁっ!?」
小愛はばしゃりと謎の液体をかけられてしまった。
「ぅ……あれ、特になんとも……無くない!」
普段であれば特濃の媚薬だったりするために警戒しまくっていた小愛だが、特に何事も無いと安心して目を開けた。
しかし決して何事も無くは無かった。
「服が……溶けてる……!」
そう、彼女の着ていた服が溶けていたのだ。
この機械が彼女にぶっかけたのは服だけ溶かす液体だった。
「あっ、ちょっと何をして……」
壁から新たに現れた機械の腕は小愛の体を拘束し、しっかりと全身の服を溶かせるように動かした。
脇の下や股下を露出させられ、そこにしっかりと液体をかけられる。その一連の行為に対して、当然だが彼女の中には羞恥心が芽生えていた。
「ぅぅ……誰もいないよね……?」
辺りを見回して確認をする小愛。幸いと言うべきか辺りには誰もいなかった。
いや、誰にも助けてもらえないと言う意味では不幸なのかもしれないのだが。
「はぁ……服だけ溶かして私をどうするつもりなの……」
未だに拘束されっぱなしであることから、このまま服だけ溶かしてハイさよならと解放される訳では無いと考える小愛。
しかしだからと言って機械の目的はわからずにいた。
そんな彼女の前に今度はまた別の謎の機械が姿を現す。
「こ、今度は何を……ぅっ!?」
パシャリと目の前が白く光る。カメラのフラッシュのようなものを行ったのだと、数秒してから彼女は理解した。
「な、何今の……」
結局小愛はよくわからないままに機械に好きにされてしまう。
フラッシュをたいた機械は今度はスキャナーのような赤い光を出し、彼女の全身に当て始めた。それはまるで彼女の体をスキャンしているようだ。
「んぅ……♡」
まるでジロジロと体を見られているかのような妙な快感を覚え、いつの間にか彼女の乳首はぷっくりと膨れ上がり、秘部は濡れてしまっていた。
「……うぅ、特に害はないけど……なんだか嫌な予感がする」
無理やり拘束を解いて妙なことになっても困ると思っていた小愛だったが、流石にこのまま何もしないまあではいられないと力を入れて拘束している機械を引っ張った。
すると彼女の想像とは裏腹に目立った抵抗も無く機械はその体を解放したのだった。
「あれ、思ったよりも素直に解放してくれた……? ま、まあいいや。また捕まるのも嫌だしさっさと逃げよう」
そう言うと小愛は素っ裸のままその場を後にした。
そうしてしばらく歩いた後、安全なのを確認した小愛はアイテムウィンドウを開き、適当に衣服を呼び出して着用した。
「こういう時にアイテムとして呼び出せるのは便利だよね。もしこれが無かったら……」
もしアイテムウィンドウが使えなかったらと、その時の事を考える小愛。
着る物を買うために着ていく物も無く、どう足掻いても最初の一回は裸のまま服を調達する必要があるのだ。
「……んっ」
彼女は想像してしまった。自分の裸を、商人の男にジロジロと舐めるように見つめられてしまうことを。
それどころかそこに辿り着くまでに街中を裸のまま歩くことにも一種の快楽を感じてしまっていた。
「って、違う違う今はそんなことしてる場合じゃないよ!」
そう言って小愛は軽く頬を叩く。無理やりにでも現実へと戻ってきた彼女はダンジョンを再び進み始めた。
そのまま次の階層に辿り着いた時、妙な物音に気付いた小愛はゆっくりと慎重にその音の方へと向かった。
肉と肉の当たる音や液体の垂れる音。なんとなく聞き覚えのあるその音の正体を見た時、彼女は絶句した。
「何……これ……」
そこには多種多様な魔物と性行為をしている自分自身がいたのだ。
それも一人では無く、十人は優に超えていた。
「何で私が……こんなところで……はっ!」
そこで小愛は先程機械に行われたことを思い出した。
わざわざ服を溶かしてまで行ったのは謎のスキャン。しかしその正体が今の彼女にはわかっていた。
「私のクローンが作られてるの……?」
目の前で起こっていること。そして自らの身に起こったこと。その二つからこの結論に辿り着いたのだった。
「どうしよう……これ、放っておいていいのかな……」
自分自身が犯されているものの、その犯されているのは自分では無いのだ。
ややこしい状態ではあるが、彼女自身という一個体にとっては特に害はない状態だった。
「うぅ……♡」
自分では無い自分自身が犯されている状態に、自分の体では無いのに勝手に想像で感じてしまう小愛。
今までだったらそこにいるのはクローンでは無く自分なのだ。ぐちゃぐちゃに体中を犯されて喘ぎながら盛大にアクメを決めるのは自分のはずだったのだ。
要は羨ましかったのだ。クローンの自分に嫉妬を感じてしまっていた。
そんな状態の小愛だったが、クローンが異常なことになっていることに気付いて我に返った。
「んぉ゛っ……ぉ゛ぉっ♡」
「な、何で……もうお腹が大きくなって……」
クローンの内の一人が性行為を終えて数分しか経っていないというのにも関わらず既に妊娠していることに気付いたのだ。
「んぉぉ゛っぉぉ゛ぉ゛♡」
一際大きく鳴いた小愛の秘部から、ずりゅんと何かが生まれ出る。それはまごうこと無き魔物の赤子だった。
「これ……魔物を増やすための装置なんだ……」
一連の流れを見た小愛は即座に機械の目的を理解したのだった。
実際、彼女がたどり着いた結論は正しかった。あの機械の目的はダンジョン内の魔物の個体数を増やすことだったのだ。
外から入って来た優秀なメス個体をスキャンし、それをクローンとして量産した後に魔物達の母体として利用する。
一度使ったらそれっきりの本体を直接使わずに、それを元にしたクローンを使った方がはるかに効率が良いのだ。それに本体を生かして返せば今後もっと優秀な母体となる可能性もあった。
そのためにこのダンジョンは独自に魔導機械を発展させ、クローン量産装置を完成させたのだった。
ダンジョンには未だに謎が多く、各ダンジョンごとに様々な特徴を持つとされている。
それはさながらガラパゴス諸島の生物のような多様さを持ち合わせており、世界が違えばガラパゴスダンジョンと呼ばれていただろう。
「このまま魔物が増え続けたらいくか外に出るかもしれない……私がやるしかない」
生み出され続ける魔物の赤子を見た小愛はとうとう覚悟を決める。
当然このまま放っておいて脱出することも出来ただろう。しかしそうなるとこのままダンジョン内の魔物が増え続け、いつかは飽和して外に出てくるかもしれないと彼女は考えた。
そうなれば近隣の村に被害が出て最悪多くの人が死ぬ。それは彼女にとってあまり良いことでは無かった。
「やるしかない……やるしかないんだよ……!」
小愛は剣を強く握り、魔物ごと自身のクローンに突き刺した。
「ブホゥゥッッ!?」
魔物は断末魔をあげてその場に崩れ落ち、その後塵と化した。
しかし小愛の想定とは違い、彼女のクローンは悲鳴を上げなかった。
「痛覚は……無いの?」
それならそれで願っても無いことだと、小愛は改めて剣を握り直して再び自身のクローンたちに剣を刺して周った。
躊躇いつつも自らと同じ姿をした存在の胸部に強く剣を突き刺す。そして剣を抜くとき、自分と同じ真っ赤な血しぶきが舞う。
「はぁっ……はぁっ……」
自らの行っていることの残虐性を理解しないように、業の深さを認識しないように、自分に言い聞かせながら震える手足で剣を突き刺し続けた。
そうしてその場の十数体の自分を殺して周った彼女は部屋の中央で崩れ落ちる。
「私……人を殺して……それも自分を……」
ありのままの衝撃が暴力的なまでに彼女の頭の中を反芻する。
この世界では人殺しが普通に行われる。それは理解していた。しかしいざ自分が行うのでは覚悟のレベルが違うのだ。
「ぁ……っぁ……」
「ッ! まだ生きて……!」
小愛は剣を握りなおし、まだ生きている自分の元へと向かう。
「ぅ……ぁ……」
もはや光は見えず音も聞こえず、ただただ闇雲に動いているだけの自身を見て小愛は一瞬ためらってしまう。
その一瞬の隙に新たに現れたクローンが彼女の体を拘束した。
「うぐっ……は、放して……!」
ギリギリと首を締めあげられ、徐々に意識が薄れて行く小愛。
「ぅぅっ……私も殺したんだ……殺されても何も文句は言えない……よね」
流石の小愛も酸欠には勝てず、完全にその意識は落ちてしまった。じきに筋肉は弛緩し、糞尿が垂れ流されることとなるだろう。
それすらもダンジョンは糧とし、魔物を増やし続ける。
……しかしそうはならなかった。
突然ダンジョンの壁が破壊され、その向こうから一人の少女が現れる。
「……あれ、もう一人の私が二人? いや三人いるの?」
それは小愛から別れたもう一人の小愛だった。
クローンでは無く純正の小愛の現身である彼女はその卓越した思考能力で即座にこの状況を理解し、クローンを生み出す機会を破壊すると共にもう一人の小愛に回復ポーションを飲ませた。
「……はっ!? あれ、私クローンに殺されて……」
「大丈夫? もう一人の私」
「あ、あれ……クローン……じゃない?」
「大丈夫安心して。もうクローンは生まれないよ、私が壊したから。」
そう言うともう一人の小愛は小愛のおでこに自らのおでこを触れ合わせると、彼女の中から記憶を吸い取り始めた。
「こういうのは私の役目だから。苦しい記憶も、嫌な記憶も、私が引き受けるよ」
そうしてもう一人の小愛は彼女の中から今回の一連の記憶を吸い取った。そして彼女をダンジョンの外にまで送り届けると、再びダンジョンの中に戻って行った。
その後一日もしない内にそのダンジョンは跡形も無く姿を消したのだと言う。
果たして今回は一体どんな目に遭ってしまうのだろうか。
「あっ」
これまたいつものように、彼女は床に設置してあったトラップを盛大に踏み抜いてしまう。
するとその瞬間に壁から謎の機械が現れ、彼女の上へと移動した。
「な、何これ!?」
いつものことではあるが、それでも突然のこととなれば流石の彼女であっても驚くのも無理からぬことだった。
そしてひとしきり驚いた彼女に向けて機械は装置を向ける。
「ひっ……うぁっ!?」
小愛はばしゃりと謎の液体をかけられてしまった。
「ぅ……あれ、特になんとも……無くない!」
普段であれば特濃の媚薬だったりするために警戒しまくっていた小愛だが、特に何事も無いと安心して目を開けた。
しかし決して何事も無くは無かった。
「服が……溶けてる……!」
そう、彼女の着ていた服が溶けていたのだ。
この機械が彼女にぶっかけたのは服だけ溶かす液体だった。
「あっ、ちょっと何をして……」
壁から新たに現れた機械の腕は小愛の体を拘束し、しっかりと全身の服を溶かせるように動かした。
脇の下や股下を露出させられ、そこにしっかりと液体をかけられる。その一連の行為に対して、当然だが彼女の中には羞恥心が芽生えていた。
「ぅぅ……誰もいないよね……?」
辺りを見回して確認をする小愛。幸いと言うべきか辺りには誰もいなかった。
いや、誰にも助けてもらえないと言う意味では不幸なのかもしれないのだが。
「はぁ……服だけ溶かして私をどうするつもりなの……」
未だに拘束されっぱなしであることから、このまま服だけ溶かしてハイさよならと解放される訳では無いと考える小愛。
しかしだからと言って機械の目的はわからずにいた。
そんな彼女の前に今度はまた別の謎の機械が姿を現す。
「こ、今度は何を……ぅっ!?」
パシャリと目の前が白く光る。カメラのフラッシュのようなものを行ったのだと、数秒してから彼女は理解した。
「な、何今の……」
結局小愛はよくわからないままに機械に好きにされてしまう。
フラッシュをたいた機械は今度はスキャナーのような赤い光を出し、彼女の全身に当て始めた。それはまるで彼女の体をスキャンしているようだ。
「んぅ……♡」
まるでジロジロと体を見られているかのような妙な快感を覚え、いつの間にか彼女の乳首はぷっくりと膨れ上がり、秘部は濡れてしまっていた。
「……うぅ、特に害はないけど……なんだか嫌な予感がする」
無理やり拘束を解いて妙なことになっても困ると思っていた小愛だったが、流石にこのまま何もしないまあではいられないと力を入れて拘束している機械を引っ張った。
すると彼女の想像とは裏腹に目立った抵抗も無く機械はその体を解放したのだった。
「あれ、思ったよりも素直に解放してくれた……? ま、まあいいや。また捕まるのも嫌だしさっさと逃げよう」
そう言うと小愛は素っ裸のままその場を後にした。
そうしてしばらく歩いた後、安全なのを確認した小愛はアイテムウィンドウを開き、適当に衣服を呼び出して着用した。
「こういう時にアイテムとして呼び出せるのは便利だよね。もしこれが無かったら……」
もしアイテムウィンドウが使えなかったらと、その時の事を考える小愛。
着る物を買うために着ていく物も無く、どう足掻いても最初の一回は裸のまま服を調達する必要があるのだ。
「……んっ」
彼女は想像してしまった。自分の裸を、商人の男にジロジロと舐めるように見つめられてしまうことを。
それどころかそこに辿り着くまでに街中を裸のまま歩くことにも一種の快楽を感じてしまっていた。
「って、違う違う今はそんなことしてる場合じゃないよ!」
そう言って小愛は軽く頬を叩く。無理やりにでも現実へと戻ってきた彼女はダンジョンを再び進み始めた。
そのまま次の階層に辿り着いた時、妙な物音に気付いた小愛はゆっくりと慎重にその音の方へと向かった。
肉と肉の当たる音や液体の垂れる音。なんとなく聞き覚えのあるその音の正体を見た時、彼女は絶句した。
「何……これ……」
そこには多種多様な魔物と性行為をしている自分自身がいたのだ。
それも一人では無く、十人は優に超えていた。
「何で私が……こんなところで……はっ!」
そこで小愛は先程機械に行われたことを思い出した。
わざわざ服を溶かしてまで行ったのは謎のスキャン。しかしその正体が今の彼女にはわかっていた。
「私のクローンが作られてるの……?」
目の前で起こっていること。そして自らの身に起こったこと。その二つからこの結論に辿り着いたのだった。
「どうしよう……これ、放っておいていいのかな……」
自分自身が犯されているものの、その犯されているのは自分では無いのだ。
ややこしい状態ではあるが、彼女自身という一個体にとっては特に害はない状態だった。
「うぅ……♡」
自分では無い自分自身が犯されている状態に、自分の体では無いのに勝手に想像で感じてしまう小愛。
今までだったらそこにいるのはクローンでは無く自分なのだ。ぐちゃぐちゃに体中を犯されて喘ぎながら盛大にアクメを決めるのは自分のはずだったのだ。
要は羨ましかったのだ。クローンの自分に嫉妬を感じてしまっていた。
そんな状態の小愛だったが、クローンが異常なことになっていることに気付いて我に返った。
「んぉ゛っ……ぉ゛ぉっ♡」
「な、何で……もうお腹が大きくなって……」
クローンの内の一人が性行為を終えて数分しか経っていないというのにも関わらず既に妊娠していることに気付いたのだ。
「んぉぉ゛っぉぉ゛ぉ゛♡」
一際大きく鳴いた小愛の秘部から、ずりゅんと何かが生まれ出る。それはまごうこと無き魔物の赤子だった。
「これ……魔物を増やすための装置なんだ……」
一連の流れを見た小愛は即座に機械の目的を理解したのだった。
実際、彼女がたどり着いた結論は正しかった。あの機械の目的はダンジョン内の魔物の個体数を増やすことだったのだ。
外から入って来た優秀なメス個体をスキャンし、それをクローンとして量産した後に魔物達の母体として利用する。
一度使ったらそれっきりの本体を直接使わずに、それを元にしたクローンを使った方がはるかに効率が良いのだ。それに本体を生かして返せば今後もっと優秀な母体となる可能性もあった。
そのためにこのダンジョンは独自に魔導機械を発展させ、クローン量産装置を完成させたのだった。
ダンジョンには未だに謎が多く、各ダンジョンごとに様々な特徴を持つとされている。
それはさながらガラパゴス諸島の生物のような多様さを持ち合わせており、世界が違えばガラパゴスダンジョンと呼ばれていただろう。
「このまま魔物が増え続けたらいくか外に出るかもしれない……私がやるしかない」
生み出され続ける魔物の赤子を見た小愛はとうとう覚悟を決める。
当然このまま放っておいて脱出することも出来ただろう。しかしそうなるとこのままダンジョン内の魔物が増え続け、いつかは飽和して外に出てくるかもしれないと彼女は考えた。
そうなれば近隣の村に被害が出て最悪多くの人が死ぬ。それは彼女にとってあまり良いことでは無かった。
「やるしかない……やるしかないんだよ……!」
小愛は剣を強く握り、魔物ごと自身のクローンに突き刺した。
「ブホゥゥッッ!?」
魔物は断末魔をあげてその場に崩れ落ち、その後塵と化した。
しかし小愛の想定とは違い、彼女のクローンは悲鳴を上げなかった。
「痛覚は……無いの?」
それならそれで願っても無いことだと、小愛は改めて剣を握り直して再び自身のクローンたちに剣を刺して周った。
躊躇いつつも自らと同じ姿をした存在の胸部に強く剣を突き刺す。そして剣を抜くとき、自分と同じ真っ赤な血しぶきが舞う。
「はぁっ……はぁっ……」
自らの行っていることの残虐性を理解しないように、業の深さを認識しないように、自分に言い聞かせながら震える手足で剣を突き刺し続けた。
そうしてその場の十数体の自分を殺して周った彼女は部屋の中央で崩れ落ちる。
「私……人を殺して……それも自分を……」
ありのままの衝撃が暴力的なまでに彼女の頭の中を反芻する。
この世界では人殺しが普通に行われる。それは理解していた。しかしいざ自分が行うのでは覚悟のレベルが違うのだ。
「ぁ……っぁ……」
「ッ! まだ生きて……!」
小愛は剣を握りなおし、まだ生きている自分の元へと向かう。
「ぅ……ぁ……」
もはや光は見えず音も聞こえず、ただただ闇雲に動いているだけの自身を見て小愛は一瞬ためらってしまう。
その一瞬の隙に新たに現れたクローンが彼女の体を拘束した。
「うぐっ……は、放して……!」
ギリギリと首を締めあげられ、徐々に意識が薄れて行く小愛。
「ぅぅっ……私も殺したんだ……殺されても何も文句は言えない……よね」
流石の小愛も酸欠には勝てず、完全にその意識は落ちてしまった。じきに筋肉は弛緩し、糞尿が垂れ流されることとなるだろう。
それすらもダンジョンは糧とし、魔物を増やし続ける。
……しかしそうはならなかった。
突然ダンジョンの壁が破壊され、その向こうから一人の少女が現れる。
「……あれ、もう一人の私が二人? いや三人いるの?」
それは小愛から別れたもう一人の小愛だった。
クローンでは無く純正の小愛の現身である彼女はその卓越した思考能力で即座にこの状況を理解し、クローンを生み出す機会を破壊すると共にもう一人の小愛に回復ポーションを飲ませた。
「……はっ!? あれ、私クローンに殺されて……」
「大丈夫? もう一人の私」
「あ、あれ……クローン……じゃない?」
「大丈夫安心して。もうクローンは生まれないよ、私が壊したから。」
そう言うともう一人の小愛は小愛のおでこに自らのおでこを触れ合わせると、彼女の中から記憶を吸い取り始めた。
「こういうのは私の役目だから。苦しい記憶も、嫌な記憶も、私が引き受けるよ」
そうしてもう一人の小愛は彼女の中から今回の一連の記憶を吸い取った。そして彼女をダンジョンの外にまで送り届けると、再びダンジョンの中に戻って行った。
その後一日もしない内にそのダンジョンは跡形も無く姿を消したのだと言う。
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