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IF14 ノアによる兄の敵討ち
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「あらすじ」
獣人の村で伝説の魔物を復活させようと村人を殺して周り儀式を成功させた男の弟が敵討ちをしに来たぞ!
※内容※
滅多刺し
――――――
ショータが宿から出たところで一人の少年が彼にぶつかった。
「おっと、悪……い?」
ぶつかったことに気付いたショータは謝罪の言葉を口にする……が、すぐに違和感に気付いた。
「ぐぁっ……てめえ、何を……」
見ればショータの腹部は赤く染まっていた。
「アンタがショータ……だろ?」
「そうだが……それよりお前、何故俺を知っている? ……ああ、そういうことか」
ショータは自己完結したのか納得したような顔で続けた。
「そのローブ、組織のモンだな? にしても、しくじった……まさかお前みたいな小さいのにやられちまうとはな……」
「そうだよ。僕はアンタが追っている組織に所属している。……以前アンタが殺したヤツの弟だよ」
少年はそう言うともう一度ショータの腹にナイフを刺した。
「ガフッ……」
「……どうして殺した? 僕たちはただ獣人の立場を上げたかっただけなのに!!」
(不味いな……当たりどころか悪くて体が動かねえ……)
その場から離れようとするショータだが体が上手く動かないようで、為すすべなく少年に刺され続けていた。
「アンタを許さない……兄さんは僕のたった一人の家族だったんだ……!!」
「ぁぐっ……ぁ゛ぁ゛っ」
何度も何度もナイフで刺され、倒れたショータの周りに血だまりが出来て行く。鋭い痛みがショータの体中を支配していく。
「ああ、この腕が悪いんだ。こんなものがあったから兄さんは死んだ……!」
「ぐぁあぁっぁ゛ぁ゛」
少年は勢いよくショータの腕にナイフを突き刺した。神経も筋肉も鋭利なナイフに断ち切られ、常人ならば発狂してもおかしくない程の苦痛がショータを襲う。
しかし獣宿しの一族であり身体能力の高い彼はその程度で正気を失うことは無い。それが逆に苦しむ時間を長くした。
「斬れろ……斬れろ、斬れろ、斬れろ、斬れろォッ!!」
少年があまりにも激しく動いたからかローブがズレてその顔が露わになる。あどけなさの残る可愛らしい顔。顔だけでは少女とも少年ともとれる彼の頭からはフワフワの耳が生えている。しかしそんな可愛らしい顔も今は憎しみと怒りに包まれていた。
「はぁ……はぁ……アンタがいなければ僕と兄さんはずっと一緒に居られたんだ……!!」
(こいつ、確かにあん時のにそっくりだ……だが、アイツは……)
ショータが殺した少年の兄はナイトウルフを召喚して近隣の村や国を壊滅させようとしていたのだ。それ以前に彼は最終的に毒を使って自殺した。ショータにはどうしようも無かった。
(だが……それも今言ったところで意味はねえだろうな……。余計火に油を注ぐだけか……クソッ、目が見えなくなってきた……)
ショータは霞む目で怒りに身を任せ泣きながらナイフを振り続けている少年を見つめる。その目にはどこか慈悲のようなものがあった。
「な、何でアンタがそんな顔をすんだよ……! アンタは僕の兄を殺したんだ! もっと残虐なヤツであってくれよ……!」
少年は絶えず涙を流しながらもナイフを振るその手は止めなかった。しかしその勢いは徐々に落ちて行く。
「どうして……どうしてだよ……。アンタがそんなんだと、兄が悪かったみたいじゃないか……! 僕は、何のために復讐をしているのか……もうわからないよ……」
ナイフを落とし、少年はショータの上に倒れ込んで泣き始める。
「ぅぁああっぁあっぁ!!」
ショータは自身の上で号泣する少年を片腕でゆっくりと抱きしめた。彼自身もまた日本での戦いで大事な友を失っているのだ。
大事な人を失う痛みや苦しみは彼もわかっていた。だから自身を殺しに来たのにも関わらず少年に感情移入してしまっていたのだ。
だがあまりにも出血量が多くとっくに限界を超えていたショータはもう言葉を発することも出来なかった。
今にも消え入りそうな意識を根性で無理やり維持し、最後の力を振り絞って少年を抱きしめたのだった。
そうして、ショータの冒険は終わってしまった!
獣人の村で伝説の魔物を復活させようと村人を殺して周り儀式を成功させた男の弟が敵討ちをしに来たぞ!
※内容※
滅多刺し
――――――
ショータが宿から出たところで一人の少年が彼にぶつかった。
「おっと、悪……い?」
ぶつかったことに気付いたショータは謝罪の言葉を口にする……が、すぐに違和感に気付いた。
「ぐぁっ……てめえ、何を……」
見ればショータの腹部は赤く染まっていた。
「アンタがショータ……だろ?」
「そうだが……それよりお前、何故俺を知っている? ……ああ、そういうことか」
ショータは自己完結したのか納得したような顔で続けた。
「そのローブ、組織のモンだな? にしても、しくじった……まさかお前みたいな小さいのにやられちまうとはな……」
「そうだよ。僕はアンタが追っている組織に所属している。……以前アンタが殺したヤツの弟だよ」
少年はそう言うともう一度ショータの腹にナイフを刺した。
「ガフッ……」
「……どうして殺した? 僕たちはただ獣人の立場を上げたかっただけなのに!!」
(不味いな……当たりどころか悪くて体が動かねえ……)
その場から離れようとするショータだが体が上手く動かないようで、為すすべなく少年に刺され続けていた。
「アンタを許さない……兄さんは僕のたった一人の家族だったんだ……!!」
「ぁぐっ……ぁ゛ぁ゛っ」
何度も何度もナイフで刺され、倒れたショータの周りに血だまりが出来て行く。鋭い痛みがショータの体中を支配していく。
「ああ、この腕が悪いんだ。こんなものがあったから兄さんは死んだ……!」
「ぐぁあぁっぁ゛ぁ゛」
少年は勢いよくショータの腕にナイフを突き刺した。神経も筋肉も鋭利なナイフに断ち切られ、常人ならば発狂してもおかしくない程の苦痛がショータを襲う。
しかし獣宿しの一族であり身体能力の高い彼はその程度で正気を失うことは無い。それが逆に苦しむ時間を長くした。
「斬れろ……斬れろ、斬れろ、斬れろ、斬れろォッ!!」
少年があまりにも激しく動いたからかローブがズレてその顔が露わになる。あどけなさの残る可愛らしい顔。顔だけでは少女とも少年ともとれる彼の頭からはフワフワの耳が生えている。しかしそんな可愛らしい顔も今は憎しみと怒りに包まれていた。
「はぁ……はぁ……アンタがいなければ僕と兄さんはずっと一緒に居られたんだ……!!」
(こいつ、確かにあん時のにそっくりだ……だが、アイツは……)
ショータが殺した少年の兄はナイトウルフを召喚して近隣の村や国を壊滅させようとしていたのだ。それ以前に彼は最終的に毒を使って自殺した。ショータにはどうしようも無かった。
(だが……それも今言ったところで意味はねえだろうな……。余計火に油を注ぐだけか……クソッ、目が見えなくなってきた……)
ショータは霞む目で怒りに身を任せ泣きながらナイフを振り続けている少年を見つめる。その目にはどこか慈悲のようなものがあった。
「な、何でアンタがそんな顔をすんだよ……! アンタは僕の兄を殺したんだ! もっと残虐なヤツであってくれよ……!」
少年は絶えず涙を流しながらもナイフを振るその手は止めなかった。しかしその勢いは徐々に落ちて行く。
「どうして……どうしてだよ……。アンタがそんなんだと、兄が悪かったみたいじゃないか……! 僕は、何のために復讐をしているのか……もうわからないよ……」
ナイフを落とし、少年はショータの上に倒れ込んで泣き始める。
「ぅぁああっぁあっぁ!!」
ショータは自身の上で号泣する少年を片腕でゆっくりと抱きしめた。彼自身もまた日本での戦いで大事な友を失っているのだ。
大事な人を失う痛みや苦しみは彼もわかっていた。だから自身を殺しに来たのにも関わらず少年に感情移入してしまっていたのだ。
だがあまりにも出血量が多くとっくに限界を超えていたショータはもう言葉を発することも出来なかった。
今にも消え入りそうな意識を根性で無理やり維持し、最後の力を振り絞って少年を抱きしめたのだった。
そうして、ショータの冒険は終わってしまった!
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