[R18G]デッドエンド・獣宿し

遠野紫

文字の大きさ
上 下
14 / 23

IF14 ノアによる兄の敵討ち

しおりを挟む
「あらすじ」
獣人の村で伝説の魔物を復活させようと村人を殺して周り儀式を成功させた男の弟が敵討ちをしに来たぞ!

※内容※
滅多刺し

――――――

 ショータが宿から出たところで一人の少年が彼にぶつかった。

「おっと、悪……い?」

 ぶつかったことに気付いたショータは謝罪の言葉を口にする……が、すぐに違和感に気付いた。

「ぐぁっ……てめえ、何を……」

 見ればショータの腹部は赤く染まっていた。

「アンタがショータ……だろ?」
「そうだが……それよりお前、何故俺を知っている? ……ああ、そういうことか」

 ショータは自己完結したのか納得したような顔で続けた。

「そのローブ、組織のモンだな? にしても、しくじった……まさかお前みたいな小さいのにやられちまうとはな……」
「そうだよ。僕はアンタが追っている組織に所属している。……以前アンタが殺したヤツの弟だよ」

 少年はそう言うともう一度ショータの腹にナイフを刺した。

「ガフッ……」
「……どうして殺した? 僕たちはただ獣人の立場を上げたかっただけなのに!!」

(不味いな……当たりどころか悪くて体が動かねえ……)

 その場から離れようとするショータだが体が上手く動かないようで、為すすべなく少年に刺され続けていた。

「アンタを許さない……兄さんは僕のたった一人の家族だったんだ……!!」
「ぁぐっ……ぁ゛ぁ゛っ」

 何度も何度もナイフで刺され、倒れたショータの周りに血だまりが出来て行く。鋭い痛みがショータの体中を支配していく。

「ああ、この腕が悪いんだ。こんなものがあったから兄さんは死んだ……!」
「ぐぁあぁっぁ゛ぁ゛」

 少年は勢いよくショータの腕にナイフを突き刺した。神経も筋肉も鋭利なナイフに断ち切られ、常人ならば発狂してもおかしくない程の苦痛がショータを襲う。
 しかし獣宿しの一族であり身体能力の高い彼はその程度で正気を失うことは無い。それが逆に苦しむ時間を長くした。

「斬れろ……斬れろ、斬れろ、斬れろ、斬れろォッ!!」

 少年があまりにも激しく動いたからかローブがズレてその顔が露わになる。あどけなさの残る可愛らしい顔。顔だけでは少女とも少年ともとれる彼の頭からはフワフワの耳が生えている。しかしそんな可愛らしい顔も今は憎しみと怒りに包まれていた。

「はぁ……はぁ……アンタがいなければ僕と兄さんはずっと一緒に居られたんだ……!!」

(こいつ、確かにあん時のにそっくりだ……だが、アイツは……)

 ショータが殺した少年の兄はナイトウルフを召喚して近隣の村や国を壊滅させようとしていたのだ。それ以前に彼は最終的に毒を使って自殺した。ショータにはどうしようも無かった。

(だが……それも今言ったところで意味はねえだろうな……。余計火に油を注ぐだけか……クソッ、目が見えなくなってきた……)

 ショータは霞む目で怒りに身を任せ泣きながらナイフを振り続けている少年を見つめる。その目にはどこか慈悲のようなものがあった。

「な、何でアンタがそんな顔をすんだよ……! アンタは僕の兄を殺したんだ! もっと残虐なヤツであってくれよ……!」

 少年は絶えず涙を流しながらもナイフを振るその手は止めなかった。しかしその勢いは徐々に落ちて行く。

「どうして……どうしてだよ……。アンタがそんなんだと、兄が悪かったみたいじゃないか……! 僕は、何のために復讐をしているのか……もうわからないよ……」

 ナイフを落とし、少年はショータの上に倒れ込んで泣き始める。

「ぅぁああっぁあっぁ!!」

 ショータは自身の上で号泣する少年を片腕でゆっくりと抱きしめた。彼自身もまた日本での戦いで大事な友を失っているのだ。
 大事な人を失う痛みや苦しみは彼もわかっていた。だから自身を殺しに来たのにも関わらず少年に感情移入してしまっていたのだ。

 だがあまりにも出血量が多くとっくに限界を超えていたショータはもう言葉を発することも出来なかった。
 今にも消え入りそうな意識を根性で無理やり維持し、最後の力を振り絞って少年を抱きしめたのだった。

 そうして、ショータの冒険は終わってしまった!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

NH大戦争

フロイライン
ファンタジー
呪詛を家業として代々暮らしてきた二階堂家。 その二十六代目にあたる高校二年生の零は、二階堂家始まって以来の落ちこぼれで、呪詛も出来なければ、代々身についているとされる霊能力すら皆無だった そんな中、彼の周りで次々と事件が起きるのだが…

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...