【R18】Fランク冒険者の俺が外れスキル≪プレイヤー≫で世界最強へと成り上がるまで

遠野紫

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第四章『俺が魔王リュカオンを倒すまで』

55 助っ人

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「クソッ!! どれだけいるんだコイツらは!!」

 王都へと迫るグレーターオーガと戦っている一人の冒険者がそう叫ぶ。
 今の状況を考えれば、そんな悪態をつきたくもなるだろう。

 なにせ今彼らが相手にしているのはAランクの危険度を持つ魔物なのだ。
 それがざっと数千体はいる訳で。
 そんなものを相手にしてはもはや、まともでいられるはずが無かった。

「知るか!! 口を動かしてねえで武器を振るえ!!」

「ああ、その通りだなチクショー!!」

 恐らく既に限界が近いであろう彼らだが、それでも根性で武器を振り続ける。
 中にはとっくに刃こぼれしている剣を振る者もいた。

 しかし彼らに武器を変えている余裕などない。
 今の時点でもなんとかギリギリ防衛出来ている状態なのだ。
 一人減れば、即座に戦線は崩壊することだろう。

 それは回復についても同じで、ポーションを使用する余裕も、後方へと取りに行く余裕も同様に彼らには無かった。

 こうなった以上、あとは回復能力を持つ者頼みとなるのだが……残念ながらそれも難しいと言えた。
 これだけの人数を回復するには相当な量の魔力が必要であり、それでいて戦場に散らばった彼らの元へと移動する必要もあるのだ。
 人員不足と言わざるを得なかった。

「回復はまだなのか!」

「駄目だ、他の部隊に行ったっきり戻って来ねえ!」

「クソッ! これ以上はもう……ぅぐッ……!!」

 とうとう限界を迎えたのか、一人の冒険者が片膝をついてしまう。
 その隙を見逃すことなく、オーガはより激しく攻撃を行った。

 このままでは戦線は間違いなく崩壊してしまうだろう。
 だが、彼らの絶望はまだ始まったばかりだ。

「オウオウオウ!! 巻き込まれたく無けりゃ道を開けろォ!!」

「な、何だアイツは……!?」

 グレーターオーガを弾き飛ばしながら、遠方から一人の魔族が突っ走って来る。
 数百キロはある重量を簡単に弾き飛ばしながら、王都へとまっすぐに。

「ま、不味い……あんなものを止められる訳が……」

「けど、やるしかねえ!!」 

 盾を持つ冒険者たちが魔族の前に立ちふさがる。
 己の命を犠牲にしてでも、彼を止めようと言うのだろう。
 しかし、その勇気も全て無駄であった。

「笑止! その程度でこのエグスを止められるとでも思っているのかァ!?」

「ぐああぁぁッッ!!」

 グレーターオーガすら容易に吹き飛ばすような力と勢いを相手に、たかが人間など勝ち目どころかその動きを止めることすら叶わないのである。

「がはっ……」

「脆い。脆すぎる。これでは俺が楽しめんでは無いか」

「う、うわああぁぁっ!!」

 目の前で多くの冒険者が吹き飛ばされ、肉塊となったことで錯乱してしまったのだろう。
 何人かの冒険者が武器を振り上げ、エグスへと走り寄って行く。

 だが無謀だ。それはあまりにも無謀としか言えない行為だった。

「フンヌッ!」

「ぁ゜っ……?」

 たった一撃、拳をぶち込まれただけで冒険者たちは上半身と下半身が真っ二つに分かれてしまう。
 と同時に、彼らの体の断面からは大量の血と内臓が噴き出し、辺り一面を真っ赤に染め上げた。

 それほど、魔族にとって人間は脆い存在なのである。
 もはやそこには、種族として絶対に覆せない力の差があった。
 だがしかし、魔族の攻撃はまだまだこれからである。

「相変わらず、やりすぎでやんすねぇエグスは。目的は負のエネルギーの回収だと言うことを、忘れてはいないよねぇ?」

「なッ!? 一体どこから……!?」

 突如として何も無い場所から魔族が現れたためか、冒険者たちは驚愕の声を漏らした。
 もちろん何も無い場所から現れるなどと言う芸当はヤバスにも出来はしない。
 ただただ、純粋にここまで超スピードで移動しただけである。

「まったく、エグスも人が悪いでヤンスねぇ。本気を出せばすぐにでも壁まで到達出来ただろうに」

「それではつまらんだろう。俺は、戦いを求めているのだからなァ!!」

「はぁ……そう言う血の気が多いところ、あっしは嫌いでヤンスよ。人間なんて、ジワジワとなぶり殺しにするのが一番でヤンス。こうやって……ねぇ!」

「うぐっ、な、なんだ……体……が……」
 
 ヤバスが指をパチンと鳴らした瞬間、その場にいた冒険者たちが一斉に苦しみ始めた。
 まるで毒でもくらったかのような惨状だが、実際彼らの体は猛毒に侵されていた。

 これこそが、ヤバスの能力の恐ろしいところである。
 予備動作も無く、範囲内に状態異常を付与できる……それがどれだけ厄介か。
 もはや言うまでも無いだろう。

「が、がはっ……」

 次々と猛毒を付与された冒険者たちが倒れて行く。
 それでも死んではいない。
 ギリギリ死なないところで延々と苦しませ続けられているのだ。

 だがそんな状況でも原因が分からない以上は対策も出来ない。
 そのせいで周りにいる回復能力持ちも、彼らに近づけずにいた。

 結局、原因不明と言うのが一番厄介なのである。
 下手に動けば自分の命が危ないのだから。

「うっひっひ、やっぱり人間共が苦しむ姿を見るのは最高でヤンスねぇ!」

「おい、全員殺すなよ。俺が楽しむ分も残しておけ」

「……あのねぇ、エグスはシンプルに殺しすぎなの。負のエネルギーを出させる前に殺しちゃ意味ないでヤンスからに。これだから脳筋は困るでヤンス」

「っるせぇ!! 俺は、俺自身の快楽のために戦うんだよ!!」

 ヤバスの煽りにまんまと乗せられてしまったのか、エグスはヤバスへと殴り掛かった。

「うぉっとぉ!?」

 それを最小限の動きで避けたヤバス。
 今の動きを見るだけでも、彼が搦め手のみでは無く、魔族としての高い身体能力をしっかりと持っていることが分かる。

 勿論、エグスも本気で殴り掛かった訳では無いのだろうが。
 彼が本気を出せばこの辺り一帯が吹き飛んでいたのは確定的に明らかである。

 と、その時だった。

「おい、何をしている」

 喧嘩が勃発しそうだったのを察知したのか、或いはまた別の理由があるのか、二人の前へとツヨスが姿を現した。

「ツヨス兄さん……! コイツがよぉ!」

「いや、あれはエグスがねぇ……」

「まあ待て。後で聞くとしよう」

 話し始めようとするエグスとヤバスの二人をツヨスは制止し、王都の方を見つめながら口を開いた。

「このままでは時間がかかり過ぎる。一気に決めようじゃないか」

「一気にって……良いのか? 負のエネルギーってのを集めるんじゃねえのかよ」

「そうでヤンス。魔王様の復活にはまだエネルギーが足りないでヤンスよ」

 二人は驚いた様子でツヨスへとそう言うが、ツヨスは表情をやや強張らせながら続ける。

「……終焉の三つ首龍リプス=ヒュドラが討ち取られたと、先程報告があった」

「なんだと!? あのリプス=ヒュドラがやられたってのかよ!?」

「それはもしや……豊穣の災厄カタス=ニグラトを倒したと言うあの人間でヤンスか?」

「ああ、情報は一致していた。ただ、あの場にはもう一人異常な力を持つ者がいたらしいがな」

「ありえねぇ……三大厄災の内、二体が倒されたってのかよ。それも人間如きに……おもしれぇじゃねえか」

 エグスの表情と声が徐々に高揚した際のそれへと変わって行く。
 まるで強者を前にした武人のようだ。

 ……そうもなるだろう。
 彼にとって自分より強いのは長男であるツヨスと魔王軍幹部。そして魔王くらいなのだ。
 それらに匹敵する実力を持つ人間がいるなど、魔族である前に戦いを愛する者として無視できなかったのだろう。

「落ち着け、エグス。まずは魔王様の復活が最優先だ。奴がここに来るのも時間の問題であろうからな」

 エグスの様子が怪しくなっていることに気付いたのか、ツヨスは彼を窘めるようにそう言った。

「あ、あぁすまねえ……けど、足りるのか? 相当な量が必要なんだろ?」

「なに、問題は無い。私の≪崩壊≫さえあればな」

 そう言うとツヨスは右手へと魔力を込め始めた。
 その量は膨大で、王都の専属魔術師でさえその域に達することは無い程である。

 それだけの魔力を使って、彼は崩壊スキルを発動させようと言うのだ。
 間違いなく、王都は壊滅するだろう。

「私たち相手にここまでよく頑張ったと褒めてやりたいが、とうとう終わりの時が来たようだ。……今こそ、貴様らの全てを破壊してやろう!」

 ツヨスの右腕が光り輝く。
 そして次の瞬間、眩い光が辺り一帯を包み込んだ。

 しかし……

「何だ……何が起こっている?」

 どういう訳か何も起こらず、王都はもちろん健在のままであった。

 いや、正確には変化はあった。
 王都全体に魔法によるバリアが張られているのだ。
 このバリアにより、ツヨスの崩壊スキルが機能しなかったのだ。

 それは彼にとっても想定外だったらしく、彼はこれまでの余裕に満ちた笑みを失くし、目に見えて動揺しているのが分かる程となっていた。

「ふぅ、間に合った。中々に危ないところだったよ」

「貴様は……!!」

 動揺するツヨスの前に姿を現したのは一人の少女。
 だが、ただの少女では無い。
 体全体から異常な量と密度の魔力を放っているエルフの少女である。

 そして、あの時ノアたちに便宜をはからい、助言をしたギルドマスターでもあった。

「その魔力……忘れるはずが無い……! またしても我らの邪魔をするか……ステラ・グリーンローズゥゥ!!」

 ツヨスが叫ぶ。
 その目は怒りに満ちていて、これまで冷静に行動していた彼からは信じられない程の激昂っぷりだ。

 だがそうなるのも当然だろう。
 彼ら魔族と、それを統べる魔王がこの世界の表舞台から姿を消すことになったのは、彼女との戦いで敗れたからなのである。

 因縁の相手。
 そう言わざるを得ない存在が、数百年の時を経て今、彼の目の前に立ちふさがっている訳だ。
 激昂しないはずが無いのだった。
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