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第四章『俺が魔王リュカオンを倒すまで』
53 開戦の時
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王都を囲う壁の上で兵士たちが士気をぶち上げていた頃、壁の下でも冒険者や傭兵たちが戦闘の準備を進めていた。
その結果、防衛における作戦が立てられたのだった。
と言ってもそれは作戦と言うにはシンプル過ぎるものである。
主にAランクの冒険者、及びそれに匹敵する実力を持つ傭兵が前に出て戦い、それ以外は基本的に後方支援を行うこととする。
そんな単純にして明快なものであった。
もっとも、これだけの人数が同時に戦うとなればそれくらいシンプルな方が良いだろう。
同じパーティのメンバーならともかく、見たことも一緒に戦ったことも無い人間と共に戦うのだ。
複雑で難しいことをしようとしても、それが決して上手く行かないであろうことは目に見えていた。
そう言う事もあり、簡単に役割を決めたくらいで作戦会議は終了となった。
正直言えばこれだけでも十分と言える。中でも回復能力を持つ存在はこういった防衛線では重要だ。
回復手段が無ければ守る側はジリ貧となるため、あらかじめそう言った要因の把握と行動の指示を行う意味は大きい。
またそれとは別に、今回の防衛戦では薬師ギルドからは大量のポーションが、鍛冶師ギルドからは大量の武具が提供されていた。
国王が自らそれぞれのギルドマスターへと話を通し、防衛に際して色々な物資を提供するように促したのである。
こうして、今の王都が出来得る万全の準備を整えた状態で、とうとう魔物の大群と王都との戦いの火ぶたが切られたのだった。
するとまず最初に、機動力の高い犬型の魔物「レッドケルベロス」が大量に王都へと攻め込んで来た。
その名の通り血液のように真っ赤な体表を持つ彼らだが、実際その赤さは彼らの血液によるものである。
あまりにも皮膚が薄いことにより、内側の血管が透けて見えているのだ。
当然、厚い外殻も皮膚も無い彼らに防御力と言うものはほぼ存在しない。
だがその代わりとして、彼らは凄まじい機動力を持っていた。
速く走るために発達した筋肉を冷却するため、そして速さのためには重荷を捨て去る必要もあるため、彼らは自身を守る一切の防御を捨てたのである。
それだけ速さに特化した性質を持つ魔物だからこそ、魔族はこうして彼らに先陣を切らせたのだろう。
しかし、王都側だってそう簡単にやられはしない。
「来たぞ!! 撃て!!」
兵士長の合図と同時に、壁の上に設置された兵器による攻撃がレッドケルベロスへと降り注いだ。
魔導砲からは圧縮された魔力が放たれ、爆風でレッドケルベロスの群れを吹き飛ばす。
そしてバリスタからは魔法の矢が放たれ、彼らの脆い体を容赦なく射抜く。
兵器による攻撃は凄まじいもので、王都へと攻め込もうとするレッドケルベロスの大群を瞬く間に一掃していった。
それを見た壁の下の冒険者たちは呆気にとられるばかりである。
「これもう、俺たちいらないんじゃないか?」
と、そう言い始める者までいる程だ。
事実、数分も経たない内にあれだけの数がいたレッドケルベロスも壊滅状態となっている。
彼らには防御力がほぼ無いため、攻撃されればまず耐えられないのだ。
ましてやワイバーンすらものともしないような兵器に攻撃されたとなれば、もはや彼らがどうにか出来るはずも無かった。
ただ、これはまだまだ序の口。
魔物の軍勢において、レッドケルベロスはただの前座でしか無かった。
次に攻め込んで来たのは大量のミノタウロスとオーガの軍勢である。
それもざっと数千体はいるだろう。先程のレッドケルベロスとは比べようも無い数だ。
いくら兵器の破壊力が凄まじいとは言え、これだけの数となれば撃ち漏らしも当然ながら存在していた。
それを狩るために待機しているのが、冒険者や傭兵だ。
ここに来てようやっと彼らの出番がやってきた訳である。
「ハァァァァッ!!」
「グミ゜ァッ」
自身よりも遥かに大きな体を持つミノタウロスの首を、一人の戦士が切り落とす。
それに続くように後方から走って来た槍使いがオーガの丸太のような足を切り落とし、オーガが体勢を崩した隙に魔術師が上級魔法を発動させてとどめを刺した。
そう言った流れを繰り返し、彼らは壁上の兵器が撃ち漏らした魔物を次々に打ち倒していく。
即席のパーティでもこれだけの連携を行える辺り、流石はAランクの冒険者と言うべきだろう。
何よりミノタウロスもオーガもその危険度はAランクを超えている危険な魔物である。
それを倒せる時点で、彼らが相当な実力者であることは確定的に明らかと言えた。
そんな冒険者たちの尽力もあり、ついに彼らはミノタウロスとオーガの群れを一歩たりとも王都内へと踏み入れさせることもなく、無事に殲滅することに成功したのだった。
ここまでの戦いを終え、壁の上の兵士も、壁の下の冒険者たちも、皆同様に歓喜に沸き立っている。
魔族の率いている魔物の大群を、こうも見事に返り討ちにしているのだ。
これはもしかすると、もしかするのでは無いか……と、そう考えてしまうのも無理もないだろう。
実際、ここで魔物による攻撃は止まった。
相変わらず魔物の大群は王都から見える範囲に待機してはいるものの、結局夜が明けても彼らが攻め込んで来ることは無かったのだ。
つまるところ、一時的とは言え彼らは王都を守り切ったと言う訳である。
もっともこの一時的な勝利すらも魔族側の策だと言う事を、彼らはまだ知らない……。
その結果、防衛における作戦が立てられたのだった。
と言ってもそれは作戦と言うにはシンプル過ぎるものである。
主にAランクの冒険者、及びそれに匹敵する実力を持つ傭兵が前に出て戦い、それ以外は基本的に後方支援を行うこととする。
そんな単純にして明快なものであった。
もっとも、これだけの人数が同時に戦うとなればそれくらいシンプルな方が良いだろう。
同じパーティのメンバーならともかく、見たことも一緒に戦ったことも無い人間と共に戦うのだ。
複雑で難しいことをしようとしても、それが決して上手く行かないであろうことは目に見えていた。
そう言う事もあり、簡単に役割を決めたくらいで作戦会議は終了となった。
正直言えばこれだけでも十分と言える。中でも回復能力を持つ存在はこういった防衛線では重要だ。
回復手段が無ければ守る側はジリ貧となるため、あらかじめそう言った要因の把握と行動の指示を行う意味は大きい。
またそれとは別に、今回の防衛戦では薬師ギルドからは大量のポーションが、鍛冶師ギルドからは大量の武具が提供されていた。
国王が自らそれぞれのギルドマスターへと話を通し、防衛に際して色々な物資を提供するように促したのである。
こうして、今の王都が出来得る万全の準備を整えた状態で、とうとう魔物の大群と王都との戦いの火ぶたが切られたのだった。
するとまず最初に、機動力の高い犬型の魔物「レッドケルベロス」が大量に王都へと攻め込んで来た。
その名の通り血液のように真っ赤な体表を持つ彼らだが、実際その赤さは彼らの血液によるものである。
あまりにも皮膚が薄いことにより、内側の血管が透けて見えているのだ。
当然、厚い外殻も皮膚も無い彼らに防御力と言うものはほぼ存在しない。
だがその代わりとして、彼らは凄まじい機動力を持っていた。
速く走るために発達した筋肉を冷却するため、そして速さのためには重荷を捨て去る必要もあるため、彼らは自身を守る一切の防御を捨てたのである。
それだけ速さに特化した性質を持つ魔物だからこそ、魔族はこうして彼らに先陣を切らせたのだろう。
しかし、王都側だってそう簡単にやられはしない。
「来たぞ!! 撃て!!」
兵士長の合図と同時に、壁の上に設置された兵器による攻撃がレッドケルベロスへと降り注いだ。
魔導砲からは圧縮された魔力が放たれ、爆風でレッドケルベロスの群れを吹き飛ばす。
そしてバリスタからは魔法の矢が放たれ、彼らの脆い体を容赦なく射抜く。
兵器による攻撃は凄まじいもので、王都へと攻め込もうとするレッドケルベロスの大群を瞬く間に一掃していった。
それを見た壁の下の冒険者たちは呆気にとられるばかりである。
「これもう、俺たちいらないんじゃないか?」
と、そう言い始める者までいる程だ。
事実、数分も経たない内にあれだけの数がいたレッドケルベロスも壊滅状態となっている。
彼らには防御力がほぼ無いため、攻撃されればまず耐えられないのだ。
ましてやワイバーンすらものともしないような兵器に攻撃されたとなれば、もはや彼らがどうにか出来るはずも無かった。
ただ、これはまだまだ序の口。
魔物の軍勢において、レッドケルベロスはただの前座でしか無かった。
次に攻め込んで来たのは大量のミノタウロスとオーガの軍勢である。
それもざっと数千体はいるだろう。先程のレッドケルベロスとは比べようも無い数だ。
いくら兵器の破壊力が凄まじいとは言え、これだけの数となれば撃ち漏らしも当然ながら存在していた。
それを狩るために待機しているのが、冒険者や傭兵だ。
ここに来てようやっと彼らの出番がやってきた訳である。
「ハァァァァッ!!」
「グミ゜ァッ」
自身よりも遥かに大きな体を持つミノタウロスの首を、一人の戦士が切り落とす。
それに続くように後方から走って来た槍使いがオーガの丸太のような足を切り落とし、オーガが体勢を崩した隙に魔術師が上級魔法を発動させてとどめを刺した。
そう言った流れを繰り返し、彼らは壁上の兵器が撃ち漏らした魔物を次々に打ち倒していく。
即席のパーティでもこれだけの連携を行える辺り、流石はAランクの冒険者と言うべきだろう。
何よりミノタウロスもオーガもその危険度はAランクを超えている危険な魔物である。
それを倒せる時点で、彼らが相当な実力者であることは確定的に明らかと言えた。
そんな冒険者たちの尽力もあり、ついに彼らはミノタウロスとオーガの群れを一歩たりとも王都内へと踏み入れさせることもなく、無事に殲滅することに成功したのだった。
ここまでの戦いを終え、壁の上の兵士も、壁の下の冒険者たちも、皆同様に歓喜に沸き立っている。
魔族の率いている魔物の大群を、こうも見事に返り討ちにしているのだ。
これはもしかすると、もしかするのでは無いか……と、そう考えてしまうのも無理もないだろう。
実際、ここで魔物による攻撃は止まった。
相変わらず魔物の大群は王都から見える範囲に待機してはいるものの、結局夜が明けても彼らが攻め込んで来ることは無かったのだ。
つまるところ、一時的とは言え彼らは王都を守り切ったと言う訳である。
もっともこの一時的な勝利すらも魔族側の策だと言う事を、彼らはまだ知らない……。
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