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第一章『俺がCランク冒険者へと成り上がるまで』
15 脱出、そして再登録
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魔法陣に飛び込んだ瞬間、視界が真っ白になった。
……かと思えば、次の瞬間には眩い光が俺の目を襲う。
「外だ……!」
俺は確信をもって、痛む目を開けた。
するとそこには青い空と白い雲が。
ああ、断言しよう。
見慣れたそれらが見えることを、これほど嬉しく思ったことは無いと。
「やったな、リリィ。俺たち、出られたんだ……!」
「……」
「リリィ?」
リリィは空を食い入るように見つめていた。
……そうか。
ずっとあの部屋にいた彼女にとって、これは初めての空なんだな。
「ん……凄く、奇麗。知識では知ってたけど、実際見ると全然違う……」
リリィは目を輝かせながらそう言う。
……ああ、そうだ。
俺も、昔はこんな目をしていたはずだ。
どんなスキルが手に入るのか。どんな生き方が出来るのか。
そんなことを考えるあの頃の俺は、希望に満ち溢れていたはずだ。
だがいざ蓋を開けてみれば、手に入ったのは外れスキル。
それから俺の人生はどん底だ。
世界をこんなにも美しく思ったことは一度だって無かった。
あの頃は毎日が絶望続きで、世界に目を向ける余裕なんて無かったんだからな。
……けど、今は違った。
今の俺には、力がある。
絶望に抗えるだけの力が、今の俺にはあるんだ。
「……なあ、リリィ。二人で、旅をしないか」
思わずそう口にしていた。
そうしないと気が済まなかったんだ。
「旅……?」
「ああ、そうだ。リリィは初めてのこの世界を見るために。そして俺は、今までの時間を取り戻すために。二人で気ままに、世界を旅しよう」
彼女が断るなら、それも仕方がない。
それを覚悟でリリィに伝える。
だが俺の懸念は杞憂だったようで――
「ん、凄く楽しそう。賛成」
リリィは快く俺の提案を受け入れてくれたのだった。
「ありがとう、リリィ……!」
「ん、ノアと旅をしたいのは私も同じだから」
「ははっ、嬉しい事言ってくれるぜ。じゃあ早速、行こうか」
「……? どこに?」
「あー……えっと……」
しまった。
あんなに良い感じの雰囲気だったのに、肝心のこれからの方針を何も考えていなかった。
旅をするって言っても俺には知識もほとんどないし、どこに行けばいいのかもわからない。
その結果――
「と、とりあえず街でも目指そうか」
俺の搾り出した答えは物凄く平凡なものとなってしまったのだった。
◆◆◆
「ここが、街……!」
リリィは街の外壁を見ながらぴょんぴょんと跳ねている。
可愛い。
にしても、転移したあの場所からそう遠くない所に街があったのは幸運だったな。
とりあえず、しばらくはこの街で今後の方針を考えるとしよう。
そのためには結構な金が必要になるだろうが……そこは考えがある。
「リリィ、これから冒険者ギルドに行こうと思うんだが一緒に来るか?」
「ん、行く。冒険者ギルドがどんなところか、気になる」
と言う事なので俺とリリィの二人はこの街の冒険者ギルドへと向かった。
そこで何をするのかと言う話だが……ずばり、再登録だ。
と言うのも、今の俺は多くの有用なスキルを持っている。
これなら再登録をすればいくらかランクが上がるだろうし、そうすれば報酬の高いクエストも受けられるようになるだろって寸法よ。
まさにかんぺき~な作戦。
そう思っていたのだが――
「再登録? そんなシステムは無いぞ」
「え……?」
ギルドの受付に冒険者登録の再登録をお願いした所、そもそもそんな概念自体が無いと言われてしまった。
そう、早くも俺の完璧な作戦は打ち砕かれてしまった訳だ。
……いや待て! 待ってくれ!
諦められるかよここまで来て……!
「いや、ただスキルを再登録するだけで良いんだ……! 最悪Fランクじゃなくなるだけでも良い……!」
俺はもうこれでもかってくらいに抗議した。
せめてFランクは脱却しないとまともなクエストが受けられないんだ。
ここで引き下がれる訳が無かった。
それが効いたのか、受付の男は再び口を開く。
やったぞ。これで再登録してもらえ……
「あのなぁ。スキルの再登録っつったって、スキルが後天的に変わる訳も増える訳も無いだろう? ほら、帰った帰った。仕事の邪魔だ」
……駄目だった。
そうだ。完全に抜け落ちていたが、本来スキルは一人一つ。
そもそも再登録なんてもの自体、本来は必要が無いんだ。
「ノア、大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だ」
嘘だ。全然大丈夫じゃなかった。
だって、これでやっと最底辺を脱却できると思っていた矢先にこれだ。
精神にダメージが無い訳が無い。
けどそんな姿をリリィには見せられないので、俺はなんとか平静を装った。
――と、そんな時だ。
「おいおい、アンタFランクなんだって?」
先程の俺の発言を聞いていたのか、一人の男がそう声をかけてきた。
見たところ剣士のようだ。それもそこそこ腕が立つ。
恐らくはCかBランクくらいの冒険者だろう。
って、なんでそんなことが分かるんだ?
まさかこれも魔剣士スキルの効果なのか?
「ん、ノアに何か用?」
「あ? 何だお前……ああ、そう言う事ね。コイツは傑作だ。Fランクの癖に女連れてるってか」
「いや、そう言うつもりじゃ……」
男は何か変な勘違いをしているようだ。
……ああいや、別に勘違いでも無いのか。
俺がFランクなのも、女の子を連れているのも事実だった。
「けど、止めといた方が良いぜ? Fランクなんて、毎日生きるのもやっとな無能なゴミなんだからな」
「ううん、ノアは違う。ノアは強い」
「ハッハッハッ、冗談キツイぜ」
リリィの反論を聞いた男は盛大に笑っている。
悔しいが、何も言い返せなかった。
再登録が出来ないんじゃ、どれだけスキルを持っていようが俺はFランクのままだ。
これに限っては実際の力がどうって話じゃない。
客観的な事実として、俺が最底辺なFランク冒険者であることに変わりは無いのだ。
「もういい、リリィ。行こう」
「でも、ノアが馬鹿にされたままは嫌」
「良いんだ。事実だからさ……」
リリィを連れて冒険者ギルドを出ようとする。
すると、男が俺の手を掴んできた。
「何だ? まだ俺に何か用なのか?」
「まあ落ち着けって。アンタがFランクってんなら、良い話があるんだ。……アンタを俺たちのクエストに同行させてやるよ」
「……何だって?」
耳を疑った。
あろうことか彼はFランク冒険者である俺を、クエストに誘おうとしているのだ。
……かと思えば、次の瞬間には眩い光が俺の目を襲う。
「外だ……!」
俺は確信をもって、痛む目を開けた。
するとそこには青い空と白い雲が。
ああ、断言しよう。
見慣れたそれらが見えることを、これほど嬉しく思ったことは無いと。
「やったな、リリィ。俺たち、出られたんだ……!」
「……」
「リリィ?」
リリィは空を食い入るように見つめていた。
……そうか。
ずっとあの部屋にいた彼女にとって、これは初めての空なんだな。
「ん……凄く、奇麗。知識では知ってたけど、実際見ると全然違う……」
リリィは目を輝かせながらそう言う。
……ああ、そうだ。
俺も、昔はこんな目をしていたはずだ。
どんなスキルが手に入るのか。どんな生き方が出来るのか。
そんなことを考えるあの頃の俺は、希望に満ち溢れていたはずだ。
だがいざ蓋を開けてみれば、手に入ったのは外れスキル。
それから俺の人生はどん底だ。
世界をこんなにも美しく思ったことは一度だって無かった。
あの頃は毎日が絶望続きで、世界に目を向ける余裕なんて無かったんだからな。
……けど、今は違った。
今の俺には、力がある。
絶望に抗えるだけの力が、今の俺にはあるんだ。
「……なあ、リリィ。二人で、旅をしないか」
思わずそう口にしていた。
そうしないと気が済まなかったんだ。
「旅……?」
「ああ、そうだ。リリィは初めてのこの世界を見るために。そして俺は、今までの時間を取り戻すために。二人で気ままに、世界を旅しよう」
彼女が断るなら、それも仕方がない。
それを覚悟でリリィに伝える。
だが俺の懸念は杞憂だったようで――
「ん、凄く楽しそう。賛成」
リリィは快く俺の提案を受け入れてくれたのだった。
「ありがとう、リリィ……!」
「ん、ノアと旅をしたいのは私も同じだから」
「ははっ、嬉しい事言ってくれるぜ。じゃあ早速、行こうか」
「……? どこに?」
「あー……えっと……」
しまった。
あんなに良い感じの雰囲気だったのに、肝心のこれからの方針を何も考えていなかった。
旅をするって言っても俺には知識もほとんどないし、どこに行けばいいのかもわからない。
その結果――
「と、とりあえず街でも目指そうか」
俺の搾り出した答えは物凄く平凡なものとなってしまったのだった。
◆◆◆
「ここが、街……!」
リリィは街の外壁を見ながらぴょんぴょんと跳ねている。
可愛い。
にしても、転移したあの場所からそう遠くない所に街があったのは幸運だったな。
とりあえず、しばらくはこの街で今後の方針を考えるとしよう。
そのためには結構な金が必要になるだろうが……そこは考えがある。
「リリィ、これから冒険者ギルドに行こうと思うんだが一緒に来るか?」
「ん、行く。冒険者ギルドがどんなところか、気になる」
と言う事なので俺とリリィの二人はこの街の冒険者ギルドへと向かった。
そこで何をするのかと言う話だが……ずばり、再登録だ。
と言うのも、今の俺は多くの有用なスキルを持っている。
これなら再登録をすればいくらかランクが上がるだろうし、そうすれば報酬の高いクエストも受けられるようになるだろって寸法よ。
まさにかんぺき~な作戦。
そう思っていたのだが――
「再登録? そんなシステムは無いぞ」
「え……?」
ギルドの受付に冒険者登録の再登録をお願いした所、そもそもそんな概念自体が無いと言われてしまった。
そう、早くも俺の完璧な作戦は打ち砕かれてしまった訳だ。
……いや待て! 待ってくれ!
諦められるかよここまで来て……!
「いや、ただスキルを再登録するだけで良いんだ……! 最悪Fランクじゃなくなるだけでも良い……!」
俺はもうこれでもかってくらいに抗議した。
せめてFランクは脱却しないとまともなクエストが受けられないんだ。
ここで引き下がれる訳が無かった。
それが効いたのか、受付の男は再び口を開く。
やったぞ。これで再登録してもらえ……
「あのなぁ。スキルの再登録っつったって、スキルが後天的に変わる訳も増える訳も無いだろう? ほら、帰った帰った。仕事の邪魔だ」
……駄目だった。
そうだ。完全に抜け落ちていたが、本来スキルは一人一つ。
そもそも再登録なんてもの自体、本来は必要が無いんだ。
「ノア、大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だ」
嘘だ。全然大丈夫じゃなかった。
だって、これでやっと最底辺を脱却できると思っていた矢先にこれだ。
精神にダメージが無い訳が無い。
けどそんな姿をリリィには見せられないので、俺はなんとか平静を装った。
――と、そんな時だ。
「おいおい、アンタFランクなんだって?」
先程の俺の発言を聞いていたのか、一人の男がそう声をかけてきた。
見たところ剣士のようだ。それもそこそこ腕が立つ。
恐らくはCかBランクくらいの冒険者だろう。
って、なんでそんなことが分かるんだ?
まさかこれも魔剣士スキルの効果なのか?
「ん、ノアに何か用?」
「あ? 何だお前……ああ、そう言う事ね。コイツは傑作だ。Fランクの癖に女連れてるってか」
「いや、そう言うつもりじゃ……」
男は何か変な勘違いをしているようだ。
……ああいや、別に勘違いでも無いのか。
俺がFランクなのも、女の子を連れているのも事実だった。
「けど、止めといた方が良いぜ? Fランクなんて、毎日生きるのもやっとな無能なゴミなんだからな」
「ううん、ノアは違う。ノアは強い」
「ハッハッハッ、冗談キツイぜ」
リリィの反論を聞いた男は盛大に笑っている。
悔しいが、何も言い返せなかった。
再登録が出来ないんじゃ、どれだけスキルを持っていようが俺はFランクのままだ。
これに限っては実際の力がどうって話じゃない。
客観的な事実として、俺が最底辺なFランク冒険者であることに変わりは無いのだ。
「もういい、リリィ。行こう」
「でも、ノアが馬鹿にされたままは嫌」
「良いんだ。事実だからさ……」
リリィを連れて冒険者ギルドを出ようとする。
すると、男が俺の手を掴んできた。
「何だ? まだ俺に何か用なのか?」
「まあ落ち着けって。アンタがFランクってんなら、良い話があるんだ。……アンタを俺たちのクエストに同行させてやるよ」
「……何だって?」
耳を疑った。
あろうことか彼はFランク冒険者である俺を、クエストに誘おうとしているのだ。
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