器用貧乏なバトルマジシャン、異世界では最強でした~物理戦闘も魔法も召喚も全て使えれば強いに決まってるでしょう~

遠野紫

文字の大きさ
上 下
79 / 90
第二部 並行異世界地球編

31 ダンジョンのその先へ①

しおりを挟む
 善は急げということもあり、トウヤと俺は早速闇に飲まれしモンスターの一体がいるというダンジョンへとやってきた。

「晴翔、オレが言うのもあれかもしれないが……本当に良かったのか」
「学園のことか? もちろん許してはいないが、今はそんなことを気にしている場合でも無いしな。どちらにせよ世界が滅んだら全部終わりなんだから」
「そうか……何と言うか、見た目の割に随分と達観しているんだな晴翔は」

 見た目の割には余計だ。
 とは言えどう見ても見た目幼女な奴の言葉にしては落ち着き過ぎてるのも事実か。

 ……いっそのこと彼には本当の事を言ってしまっても良いのかもしれない。
 道中で彼自身の事は一通り聞かせてもらったが、白姫についてもいくらか知っているらしい。それなら勇者召喚について話してしまっても問題は無いはず。
 
 と、その前に魔物の気配が……。

「曲がり角の向こうに3体程魔物がいるが……どうする?」
「無論、襲って来るのならば叩くまでだ」
「俺もそのつもりだ。なら、こちらから仕掛けてやろうじゃないか」

 トウヤと共に曲がり角までゆっくりと近づいて行き、そのまま魔物の動きを窺う。
 どうやらまだこちらには気付いていないようだ。

「よし、行くぞトウヤ!」
「ああ!」

 トウヤと共に角から一斉に飛び出す。
 それに驚いたのか蜘蛛のような姿をしたその魔物は一瞬動きを止めた。それだけの隙があればこっちのものだ。

「せぇぃっ……!」

 剣を一振りし、硬直している魔物の体を真っ二つにする。
 その後すぐ飛び掛かってきたもう一体の魔物に蹴りを入れた。
 
 ぐちゃっという音を立てながら青い血しぶきが飛ぶ。中々惨い状況ではあるが今となっては特に何も感じないな。

「こっちは仕留めた。そっちはどうだ?」
「ああ、問題ない」

 トウヤの方も手際よく魔物を始末し追えていた。
 
「まだ他にも仲間がいるかもしれない。注意しながら進もう」

 辺りに魔物の気配は感じないものの、一応警戒しながらダンジョンの奥へと進む。
 とは言えここはまだ浅い場所だからか、他の魔物と出会うことも無く下の階へ降りるための階段に辿り着いた。

 そしてその階段を下りた後もそのまま探索を続け、道中で何度か魔物と戦いながらも無事に最奥へとたどりつくことが出来た。
 恐ろしく重苦しい魔力を纏う大きな扉が道を塞いでいる。きっとこの奥へ進んだらもう後戻りはできないんだろうな。

「ここがダンジョンの一番奥か……実際に来るのは初めてだ」
「そうなのか? 晴翔程の実力者ならばもう何度もダンジョンを制覇しているものだと思っていたが」

 正確にはこの世界のダンジョンは初めてってだけなんだよな。アーステイルでのダンジョンは何度も制覇している。
 と言ってもダンジョンの仕組みとかは向こうと違うかもしれないし、慢心する訳にはいかない。

「それなら、なおの事慎重に行動しないといけないな」

 そう言いながらトウヤはゆっくりと扉を開け始めた。
 ズズズっという重い物が地面を擦る音と共に奥からとんでもない量の魔力が流れ出てくる。
 
 ……明らかにヤバイのがいる。直感的にと言うか本能的にと言うか、とにもかくにもそう理解させられた。

「行くぞ」
「……ああ」

 慎重に扉の奥へと進んでいく。
 一歩また一歩と歩みを進めるたびにだんだん空気中の魔力濃度が濃くなっていくのを感じる。

「アイツがこのダンジョンのボスか……」

 トウヤが歩みを止めた。
 その遥か先、通路を抜けた所にある空間にソレはいた。

 巨大なカマキリの姿をした魔物が一体、天を仰ぎながら鎌を合わせて静止している。
 カマキリはそう言った動きやポーズをすることから祈り虫とも呼ばれているらしいが、今のこの魔物は本当に神に祈っているんじゃないかとすら思える神々しさを放っていた。

「リーパーマンティスだな。少々厄介な奴がいたものだが、晴翔なら問題無く倒せるはずだ」

 どうやらあの魔物はリーパーマンティスと言うらしい。
 祈りとかなんとかが嘘みたいに恐ろしい名前だった。

「とは言え気を付けろ。奴は動きが素早く、それでいて鎌の切れ味は金属すら容易に切り裂く程だ。まともに食らえばまあ……どうなるかは説明しなくてもわかるよな」

 頭の中に真っ二つにされた俺の体が浮かび上がる。
 ……流石にちょっとゾっとするな。

「ま、まあ……要は攻撃されなければ良いんだろ?」
「その通りだ」

 簡単に言ってくれるが、実際俺もそのつもりだ。

「それじゃあ、早速やっちまおうか」

 通路を抜けて奴の前へと移動する。

「気付いたか」

 目はそこまで良くないのか、俺たちがそこそこの距離に近づくまで奴は反応を示すことは無かった。

「来るぞ……!」

 トウヤのその言葉と共に俺とトウヤの二人はその場から飛び退いた。
 そのすぐ後、つい今の今まで俺たちがいた場所の地面が抉り取られていた。

 言っていた通りの素早さと切れ味だな。
 多分普通の金属鎧なんかじゃ一発でアウトだ。何かしらの魔術的防護が無いとあの鎌の攻撃は耐えられそうにない。

 その点で言えば今着ている学園の制服は中々のものだ。露出面積こそそれなりに多いものの、防護魔術が何重にもかけられているから下手な金属鎧なんかよりもよっぽど堅い。
 それでいて柔軟性があり動きやすいし軽い。
 流石はエリートの集まる魔法学園だな。制服にも技術が詰め込まれている。

「今度はこちらから行かせてもらおうか!」

 奴は攻撃を終えて隙が生まれていた。その内に背後に回り込み、足を斬りつける。

「うぉ、堅ぇっ!」

 思っていたよりも奴の足は強靭だった。
 ワイバーンの鱗すらも容易く切り裂く俺の攻撃でも表面に傷が出来るだけって、コイツどれだけ堅いんだよ……。

「晴翔、上だ!」
「おう!」

 トウヤのその声が聞こえると同時に剣を上に振り上げる。
 ガキンと堅い物同士がぶつかる甲高い音と共に火花が散った。

「よっ……と」

 振り下ろしてきた鎌を剣で受け流し、一度奴から距離を取った。
 さて、どうしたものか。想像以上に堅いぞコイツ。

「晴翔、気を付けろ。コイツ……何かがおかしい」
「おかしい……って?」
「あまりにも堅過ぎるんだ。通常、リーパーマンティスはそこまでの強度を持つ外骨格を持ってはいない」

 なるほど、俺の剣が通らなかったのもこの個体が異常に堅いってだけなのか。

「それ、もしかして魔物が強力になっているってのと関係があったりするのか?」
「わからないが、可能性は十分にあるだろうな」

 そうか。それなら納得だ。
 トウヤの実力を考えれば、今までに相当な数の魔物と戦いそれを打ち倒してきているのは間違いないはず。
 そんな彼が違和感を覚えるってのなら間違いなくイレギュラーが起きていると見ていいだろうな。

 ……そこで俺の出番って訳だ。
 剣が効かないのなら魔法を使えばいいじゃない。だって俺は近接戦闘も魔法戦闘も出来るんだからな。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

処理中です...