器用貧乏なバトルマジシャン、異世界では最強でした~物理戦闘も魔法も召喚も全て使えれば強いに決まってるでしょう~

遠野紫

文字の大きさ
上 下
72 / 90
第二部 並行異世界地球編

24 ドラゴンの正体

しおりを挟む
 しかし妙だな。爆発が起こる時に発生した魔力……どこかで感じたことがあるような気が……。

「晴翔君!」
「え?」

 気付けばドラゴンが急降下してきていた。
 俺としたことが隙を晒すなんて。流石に平和ボケし過ぎたかもな。

「フレイムウォール」

 炎の壁をドラゴンの前に展開する。あれだけの戦闘力なんだ。流石にそのまま飛び込んで来る程、見切り発車ということは無いだろう。
 とは言えヤツの方からやってきたのであれば好都合。射程に難がある魔法もこの距離なら問題なく当たる。

「相変わらず凄い魔力だ……だがこれでも時間稼ぎにしかならないだろう……。何か、手はあるのかい晴翔君?」
「確証は無いですが……まあ、やるだけやってみますよ」

 心配そうにこちらを見る学園長にそう返し、奴に通用しそうな魔法を発動させる。

「イグニブレイド!」

 魔法を発動させると同時に炎の剣が大量に召喚され俺の周囲を回転し始めた。
 この魔法は炎の剣をこれでもかという数作り出す中級魔法だ。一本一本の威力はそこまででも無いが攻撃速度と制圧力ならお手の物。
 ……だがどちらにしろこの威力では奴の防御は突破できない。

 そこでだ。
 さっき学園長と行った複合魔法をこのイグニブレイドに行ってみるとしよう。

「ぶっつけ本番だが、試す価値はあるよな」

 大量の炎の剣を一本に集約していく。すると物凄い轟音とともに剣が巨大になって行った。
 こんな状態は始めて見たが、見たところどうやら上手くいっているようだな。

「後はこいつをぶつけてやれば……!」

 ちょうどフレイムウォールが消え、奴の姿が見えた。
 こんなんをぶつけられれば流石の奴もただじゃ済まな……。

「……は?」

 近くまで来ていたからか奴の顔がはっきりと見えた。その姿を見た瞬間、一瞬思考が止まってしまった。

「どういうことだ……君は、大豊なのか?」

 今こうして目の前にいる奴は確かに大豊の顔をしていた。
 形状はドラゴンに近いものになっているしほのかに面影が残っているだけだ。
 見ようによってはバイオなハザードにおける変異体のようになっていたが……確かにアイツのそれだった。

 そうか。あの妙な感覚。感じたことのある魔力だとは思っていたが、大豊の野郎のそれだったんだ。

「なんでお前が……」
「やっと気づいたのかよ」
「……どういう状況かはわからないが、こうして再び出てきたってことはそう言う事で良いんだよな?」

 奴がどうしてドラゴンになっているのかはわからない。だが一つ言えることがある。
 あれだけのことをして、あんなことになって、それでもなお俺の前に出てきたと言うことは相応のことをしでかそうとしているってことだ。

「アリーナの他の皆を襲ったのは何故だ? お前の目的は俺じゃないのかよ」
「確かにそうだね。けど、どうせなら僕をこんな目に遭わせた学園の連中にも復讐してやりたいじゃないか」
「復讐も何も自業自得だろうよ」
「……はぁ、そうだな。そう言うと思った。だから僕はこの力を使って、僕が正しいんだと言う事を証明する」

 そう言うと奴は再びブレスを吐く動作を行った。
 この距離で攻撃されれば俺は大丈夫でもアリーナにいる皆は無事では済まない。

「不味いぞ晴翔君、この距離では私たちどころか皆が巻き込まれてしまう!」
「そうはさせない!」

 作り出した巨大な炎の剣を奴にぶち込む。
 その瞬間、それは奴のブレスと衝突して大爆発を起こした。

「マジックプロテクション!」

 即座にマジックプロテクションを発動させる。だが今回はアリーナを覆うのではなく、奴を囲むように展開させた。
 これで爆発を中に閉じ込める。上空にいた時は距離が遠すぎて使えなかった方法だがこの距離でなら問題ない。

「無駄だよ!」

 バリア内の爆発が一瞬にして消える。
 まるで最初から爆発なんて無かったかのように静けさだけが残った。

「なんだ、今のは……?」
「残念だけど僕に爆発は効かない。この体になって僕は爆発そのものを操れるようになったんだからね」
「……なるほど、一筋縄ではいかなそうだな」

 奴に攻撃が全く通らなかった理由が分かった気がする。
 今まで俺たちが行った攻撃は全て爆発を起こしていた。それがまともなダメージになる前に奴は爆発そのものを消していたってことか。

 正直、厄介極まりない能力だ。敵対する上で無効化系が一番面倒くさいって。

「学園長、貴方は他の皆と一緒に避難してください」
「だがそれでは君が……生徒を残して私が逃げる訳にはいかない」
「お気持ちはわかりますが……薄々気付いているのではありませんか?」
「……」

 俺がそう言うと学園長は少しの間黙ってしまった。
 彼女自身ももうわかっているはずなのだ。自分では大豊には勝てないと。そして自身よりも俺の方が遥かに実力が上だと言うことに。

 だがそうだとしても、学園長として生徒を残して逃げるなんて出来るはずが無い。
 それはわかる。けど、正直な話……彼女がこの場にいない方が戦いやすいのは事実だった。

「……わかった。君を信じるとしよう」
「ありがとうございます」
「こうまでするんだ……絶対に、ぜーったいに負けるんじゃないぞ?」
「はい。もとより負ける気なんてありませんよ」

 俺がそう言い終わると同時に学園長はアリーナの外へと飛んで行った。

「良いのかい? せっかく2対1だったのに数の有利を捨てるなんて、よっぽど死にたいんだね君は」
「なに、一人の方が戦いやすいだけだ」
「強がりもそれまでだよ。見たところ、君の魔法はそのほとんどが爆発を引き起こすものだ。一応それ以外も使えるようだけど、そもそも威力が足りないよ。僕のこの体には通用しない。だから君は僕には絶対に勝てない」

 奴の言う事は一部正しかった。確かに俺が今まで行った攻撃はその全てが爆発を引き起こすものだ。
 一応状況判断はしっかりしているようだな。それにそれら以外の魔法についてもいくつか知っているようだ。

 けど、それらはあくまで俺の情報の一部に過ぎない。

「一つ勘違いをしているから教えてやるよ」
「なんだい? 今更ハッタリかな?」

 奴は余裕を崩すことなく俺の言葉にそう返した。
 ……その余裕、俺が崩してやろう。

「俺が使う魔法は爆発魔法だけじゃないんだ。例えば……フォールオブフロスト」
「なに……?」

 巨大な氷の塊を生成する中級魔法を発動させ、奴の頭上に氷塊を生み出した。
 
「どうなっている……お前は爆発属性と火属性の2属性使いじゃ……」
「だからそれが勘違いなんだよ。別に俺が使えるのはその2つだけじゃない」
「ふ、ふざけるな……3属性の使い手なんてそうそういるもんじゃない……! そうだ、きっと何かトリックがあるんだろう?」

 目に見えて奴が焦り始めた。どうやら本当に俺の事を2属性使いだと思っていたようだ。

「じゃ、トリックかどうかその身で確かめてみな」

 そう言い、奴の頭上に作り出した氷塊を落とす。

「ぐっ……エクスプロージョン!!」

 氷塊がぶつかる寸前、奴は爆発魔法を発動させて氷塊を内側から爆発させて木っ端みじんにした。

「は、はは……どちらにしろ僕の爆発魔法の前にこの程度の魔法は無意味なんだよ……!」
「そうか。じゃあ次行こうか」
「なっ……!?」

 間髪入れずに魔法を発動させる。

「マッドミサイル」

 発動と共に俺の周囲の地面が砕け、土とコンクリの混じり合った棘が大量に作り出された。

「土属性まで……ありえない、絶対にありえない!!」

 奴の表情がどんどん曇って行く。ああ、良いね。凄く良い。
 勝ちを確信していた所から絶望に染まって行くサマを見るのはやっぱりそそるものがある。

 さて、どこまで耐えられるか見せてもらおうか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...