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第二部 並行異世界地球編
20 最悪な戦法
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「剣を持っていないようですが……そのまま試合を始めてしまっても構わないんですよね?」
一応聞いておく。ここまで来ている以上は忘れてしまったとかいう話ではないだろうが、後から色々と言われても面倒だからな。
「構わないよぉ。剣なんか無くても君はボクには勝てない」
えらく自信があるようだが、剣無しで戦うということだろうか。
剣術学校の生徒なのにか……?
『それでは両者位置に付いて……』
疑問は残るが試合開始の合図が来たので所定の位置に移動する。
『始め!!』
その実況の声と共に目の前の男は懐から小瓶を取り出し、その中身をこちらへと飛ばしてきた。
「よっと」
真正面から受けてやる義理も無いし、軽く避ける。
「避けたっ……!?」
そんな今の俺の動きを見た男は妙に動揺していた。
この程度は別におかしくも無いだろうに。……おかしくないよな?
「どういうことだぁ!? 魔術師はひ弱な存在ではないのか!?」
「いや、これくらいは動けますよ流石に」
「ええい、それでは困る……!」
妙だな。思えば目の前の男は剣を使うにしては細すぎる。
今の謎の液体もそうだが、そもそも剣がメインでは無いということか。剣術学校の所属と言う事で先入観があったが、考えてみれば魔法学園の方も魔法以外に陰陽術や呪術のような物を扱うクラスもあるらしいからな。
となると、未知の能力を警戒しないといけないのかもしれないぞ。
「……なんてな」
「ッ!?」
そう考えていた矢先、背後で何か気配がした。
「ファイアウォール!」
咄嗟に炎の壁を張り、液体を防ぐ。
名目上、俺の持つ属性は炎と言う事になっている。そのため使える魔法には制限があるから相応の立ち回りをしないといけない。
『うぉぉっ! ここで晴翔選手の魔法が発動! 凄まじい威力の炎魔法だ!』
とは言っても、俺の使える中では最弱クラスのこの魔法でさえこの盛り上がりだ。
よっぽどの事が無い限りは威力不足になることは無いだろう。
「チッ、今のも防ぐのか……けど、完全じゃないだろぅ?」
「この程度、どうってことは……」
燃えずに通り抜けた液体は俺の服に付着するだけでこれと言ったダメージを与えてくることは無かった。
だが……。
「なんだ、これは……?」
どういう訳か液体が付着した箇所の服が奇麗さっぱり無くなっていた。
「ふふっ、気付いたか……その液体の正体に」
「何?」
「それは服だけを溶かすスライムだぁ。それも攻撃するまでは魔力も発さないただの液体になるように調整を施している」
服だけを溶かすスライム……?
何だそのあまりにも都合が良すぎる存在は。
ただ、まあ……ふざけた概念ではあるがその能力は本物らしい。事実、俺の服の一部はそのスライムによって消失している。
「これはまた厄介な物を……」
アリーナの上の方にある学園長室を見る。そこにいる両校の学園長両名と目が合ったが、二人共ばつが悪そうな顔をするばかりだった。
つまりはそう言う事だろう。ルール的には違反していないがあまり褒められた物ではない……と。
それに恐らくこの男自体、何らかの方法で強引に合同試合にねじ込んでもらった口なのだろう。
あの大豊とかいう奴と同じく裏で金が絡んでいるんだろうさ。
……まあ、無理やりねじ込んで出場していることに関しては俺も否定は出来ないけども。
「ふふっ、どうだ? 今のは運よく防げたようだが、このまま戦い続ければいつかはその服が全て溶かされてしまうぞぉ? その柔らかな肌を大勢の前で晒したくは無いだろう?」
理解した。なるほど、そう言うやり方か。
確かにこの方法なら相手が女子であればほぼ確実に勝てる。一部の化け物を除けばではあるが。
それこそさっきの足立だったか。彼女と戦えばスライムをかけるよりも前に黒焦げにされて終わりだろう。
……いや、待て。それも含めて計算済みか?
戦う相手まである程度操作できるのだとしたら、勝てると踏んだ相手にしか挑まないということが可能だ。
「……」
男の視線が俺の全身に注がれているのがわかる。
ああ、そうだよな。そうなるよな。まあ俺、可愛いし?
服、脱がしたいよな?
……けど、いい加減ある程度は慣れてきたぞ。この程度だったら動揺にもならん。
「悪いが俺は勝つさ」
「何だって? いや、そんなことはさせない。ボクにはまだこれだけのスライムがあるんだ」
そう言うと男はスライムが入っているであろう小瓶を大量に取り出した。
「良いのか? 今なら棄権出来るぞぉっ!? ボクとしてはお前の服を全て溶かしてその奥にある物を見てしまいたいが、流石にそれを強制する程鬼では無いんだぁ。だから……」
「気付いてんだろ? 俺が、そんなこと気にしてないってことをさ」
「ひぃっ……!」
俺が一歩進むたびに、男が一歩後退する。
「え、ええいっもう知らんぞぉっ!!」
これ以上は駄目だと判断したのか男は小瓶の中身を一斉にこちらへと投げつけた。
「へ、へへっ、この量のスライムはさっきの魔法じゃ絶対に防げないぞっ……! こ、後悔するんだな!」
「ファイアウォール」
先程よりもほんの少し魔力を込めて火力を上げた魔法を発動させる。
最初の一撃はあくまでテストでしかない。今放った魔法の威力を調整するためのな。
「……ぁ、ぁぁ」
今の魔法に一切の妥協は無い。奴の放ったスライムを欠片も残さず燃やし尽くすのにちょうどの火力を実現した。
『な、なんということでしょうか!! 先ほどよりも高火力な魔法を発動させたではありませんか! 晴翔選手、一体どれだけの力を隠し持っているのか……これは期待ですね!』
実況によって会場内が盛り上がる。だがその喧騒に紛れながら、目の前の男は絶望に染まった顔で何かボソボソと呟いていた。
「……けん……」
「うん?」
「棄権する……! こんな化け物なんかと戦えるかぁっ!!」
そう言うと男は一目散に選手入り口へと走り去ってしまった。
『えー……これからの展開に期待が膨らんだところではありますが、棄権により晴翔選手の勝利です!』
「なんだよ! これからってところじゃないのか!?」
「クソッもっと見たかった!」
会場内はブーイングの嵐だった。
俺としては俺自身の能力を偽装したもので上書きできればそれで良いんだけど、確かにこのままでは生殺しだよな。
これに関しては二回戦以降をお楽しみにと言うことで。
そんな訳でひと悶着あった試合だったが無事に終え、元の席へと戻った。
「おかえり晴翔。いやーまさかお前が出場するなんてな。俺出場するからっていきなりどっか行った時は現実を疑ったぜ」
「悪かったよ。学園長にも他に漏らすなって言われてたからさ」
「ま、それなら仕方無いな……それはそれとしてさ」
リュウの視線が泳いでいる。
「さっきの戦いでちょっとだけど服溶けたんだろ? 次の試合まで少しあるし着替えて来いよ……」
チラチラと俺の服の無くなっている部分を見ながらリュウはそう言う。
ふっ、視線がバレバレだぞリュウよ。
「なんだー? 気になっちゃうかー?」
「おい、からかうなって!」
「ははっ、悪い悪い。それじゃちょっと着替えてくるな」
流石にこのままでいるのも彼に悪いだろうし、着替えるために更衣室へと向かう。
その途中で聞き覚えのある声で「やっぱり新聞の内容はあってたじゃないですかー!」とか何とか言っていたのが聞こえてきたが、そのまま無視して歩き続けた。
一応聞いておく。ここまで来ている以上は忘れてしまったとかいう話ではないだろうが、後から色々と言われても面倒だからな。
「構わないよぉ。剣なんか無くても君はボクには勝てない」
えらく自信があるようだが、剣無しで戦うということだろうか。
剣術学校の生徒なのにか……?
『それでは両者位置に付いて……』
疑問は残るが試合開始の合図が来たので所定の位置に移動する。
『始め!!』
その実況の声と共に目の前の男は懐から小瓶を取り出し、その中身をこちらへと飛ばしてきた。
「よっと」
真正面から受けてやる義理も無いし、軽く避ける。
「避けたっ……!?」
そんな今の俺の動きを見た男は妙に動揺していた。
この程度は別におかしくも無いだろうに。……おかしくないよな?
「どういうことだぁ!? 魔術師はひ弱な存在ではないのか!?」
「いや、これくらいは動けますよ流石に」
「ええい、それでは困る……!」
妙だな。思えば目の前の男は剣を使うにしては細すぎる。
今の謎の液体もそうだが、そもそも剣がメインでは無いということか。剣術学校の所属と言う事で先入観があったが、考えてみれば魔法学園の方も魔法以外に陰陽術や呪術のような物を扱うクラスもあるらしいからな。
となると、未知の能力を警戒しないといけないのかもしれないぞ。
「……なんてな」
「ッ!?」
そう考えていた矢先、背後で何か気配がした。
「ファイアウォール!」
咄嗟に炎の壁を張り、液体を防ぐ。
名目上、俺の持つ属性は炎と言う事になっている。そのため使える魔法には制限があるから相応の立ち回りをしないといけない。
『うぉぉっ! ここで晴翔選手の魔法が発動! 凄まじい威力の炎魔法だ!』
とは言っても、俺の使える中では最弱クラスのこの魔法でさえこの盛り上がりだ。
よっぽどの事が無い限りは威力不足になることは無いだろう。
「チッ、今のも防ぐのか……けど、完全じゃないだろぅ?」
「この程度、どうってことは……」
燃えずに通り抜けた液体は俺の服に付着するだけでこれと言ったダメージを与えてくることは無かった。
だが……。
「なんだ、これは……?」
どういう訳か液体が付着した箇所の服が奇麗さっぱり無くなっていた。
「ふふっ、気付いたか……その液体の正体に」
「何?」
「それは服だけを溶かすスライムだぁ。それも攻撃するまでは魔力も発さないただの液体になるように調整を施している」
服だけを溶かすスライム……?
何だそのあまりにも都合が良すぎる存在は。
ただ、まあ……ふざけた概念ではあるがその能力は本物らしい。事実、俺の服の一部はそのスライムによって消失している。
「これはまた厄介な物を……」
アリーナの上の方にある学園長室を見る。そこにいる両校の学園長両名と目が合ったが、二人共ばつが悪そうな顔をするばかりだった。
つまりはそう言う事だろう。ルール的には違反していないがあまり褒められた物ではない……と。
それに恐らくこの男自体、何らかの方法で強引に合同試合にねじ込んでもらった口なのだろう。
あの大豊とかいう奴と同じく裏で金が絡んでいるんだろうさ。
……まあ、無理やりねじ込んで出場していることに関しては俺も否定は出来ないけども。
「ふふっ、どうだ? 今のは運よく防げたようだが、このまま戦い続ければいつかはその服が全て溶かされてしまうぞぉ? その柔らかな肌を大勢の前で晒したくは無いだろう?」
理解した。なるほど、そう言うやり方か。
確かにこの方法なら相手が女子であればほぼ確実に勝てる。一部の化け物を除けばではあるが。
それこそさっきの足立だったか。彼女と戦えばスライムをかけるよりも前に黒焦げにされて終わりだろう。
……いや、待て。それも含めて計算済みか?
戦う相手まである程度操作できるのだとしたら、勝てると踏んだ相手にしか挑まないということが可能だ。
「……」
男の視線が俺の全身に注がれているのがわかる。
ああ、そうだよな。そうなるよな。まあ俺、可愛いし?
服、脱がしたいよな?
……けど、いい加減ある程度は慣れてきたぞ。この程度だったら動揺にもならん。
「悪いが俺は勝つさ」
「何だって? いや、そんなことはさせない。ボクにはまだこれだけのスライムがあるんだ」
そう言うと男はスライムが入っているであろう小瓶を大量に取り出した。
「良いのか? 今なら棄権出来るぞぉっ!? ボクとしてはお前の服を全て溶かしてその奥にある物を見てしまいたいが、流石にそれを強制する程鬼では無いんだぁ。だから……」
「気付いてんだろ? 俺が、そんなこと気にしてないってことをさ」
「ひぃっ……!」
俺が一歩進むたびに、男が一歩後退する。
「え、ええいっもう知らんぞぉっ!!」
これ以上は駄目だと判断したのか男は小瓶の中身を一斉にこちらへと投げつけた。
「へ、へへっ、この量のスライムはさっきの魔法じゃ絶対に防げないぞっ……! こ、後悔するんだな!」
「ファイアウォール」
先程よりもほんの少し魔力を込めて火力を上げた魔法を発動させる。
最初の一撃はあくまでテストでしかない。今放った魔法の威力を調整するためのな。
「……ぁ、ぁぁ」
今の魔法に一切の妥協は無い。奴の放ったスライムを欠片も残さず燃やし尽くすのにちょうどの火力を実現した。
『な、なんということでしょうか!! 先ほどよりも高火力な魔法を発動させたではありませんか! 晴翔選手、一体どれだけの力を隠し持っているのか……これは期待ですね!』
実況によって会場内が盛り上がる。だがその喧騒に紛れながら、目の前の男は絶望に染まった顔で何かボソボソと呟いていた。
「……けん……」
「うん?」
「棄権する……! こんな化け物なんかと戦えるかぁっ!!」
そう言うと男は一目散に選手入り口へと走り去ってしまった。
『えー……これからの展開に期待が膨らんだところではありますが、棄権により晴翔選手の勝利です!』
「なんだよ! これからってところじゃないのか!?」
「クソッもっと見たかった!」
会場内はブーイングの嵐だった。
俺としては俺自身の能力を偽装したもので上書きできればそれで良いんだけど、確かにこのままでは生殺しだよな。
これに関しては二回戦以降をお楽しみにと言うことで。
そんな訳でひと悶着あった試合だったが無事に終え、元の席へと戻った。
「おかえり晴翔。いやーまさかお前が出場するなんてな。俺出場するからっていきなりどっか行った時は現実を疑ったぜ」
「悪かったよ。学園長にも他に漏らすなって言われてたからさ」
「ま、それなら仕方無いな……それはそれとしてさ」
リュウの視線が泳いでいる。
「さっきの戦いでちょっとだけど服溶けたんだろ? 次の試合まで少しあるし着替えて来いよ……」
チラチラと俺の服の無くなっている部分を見ながらリュウはそう言う。
ふっ、視線がバレバレだぞリュウよ。
「なんだー? 気になっちゃうかー?」
「おい、からかうなって!」
「ははっ、悪い悪い。それじゃちょっと着替えてくるな」
流石にこのままでいるのも彼に悪いだろうし、着替えるために更衣室へと向かう。
その途中で聞き覚えのある声で「やっぱり新聞の内容はあってたじゃないですかー!」とか何とか言っていたのが聞こえてきたが、そのまま無視して歩き続けた。
応援ありがとうございます!
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