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第二部 並行異世界地球編
19 合同試合開始
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あれから数日が経ち、とうとうその日は来た。
剣術学校との合同試合。それがついに来てしまった。
『開会式を前に、会場内は大いに盛り上がっています!!』
まだ始まってすらいないというのにアリーナ内は大騒ぎだった。
まあ、これだけ規模のデカいイベントとなればそうなってもおかしくはないか。
と言うかまだ始まってないんだから実況も変に盛り上げるなよ……。
「よお、晴翔。隣良いか?」
「おおリュウか。構わないぞ……というかまあ、お前のために取っておいたんだがな」
他にやることも無いからと、早い内に良さそうな席を取っておいて良かった。せっかくなら色々と語り有ったりしたいからな。
「助かるぜ。ところで晴翔は今日の合同試合、誰が勝つと思う?」
「……剣術学校の方の生徒はあまり知らないから何とも言えないな」
言えない。俺が参加して優勝かっさらってやるから見ててくれとは絶対に言えない。
「迷うよな~。学園の生徒だとやっぱり『最大火力』の二つ名を持っている足立先輩が有力だろうけど、剣術学校の方にも『音速』って呼ばれてる滅茶苦茶強い人がいるらしいんだよ」
「随分と詳しいんだな」
どうやらリュウは剣術学校の方の参加生徒についても詳しいようだ。
「そりゃ当たり前だろうよ。合同試合なんて言えば堅苦しい雰囲気だが、実際の所は俺たちじゃ手も届かないような超次元の試合が見られる、ある種のエンターテイメントなんだからな」
熱が入ったその語り……その熱意は本物のようだな。
俺もこの体の持つとんでもない能力が無ければ彼みたいに純粋に楽しめたのだろうが……少し損をした気分だ。
「おっと、そろそろ始まりそうだ」
リュウの言う通り、アリーナの中心に両校の学園長が立っていた。
そしてそのまま開会の演説が始まり、それが終わると早速第一回戦の最初の選手が出てきたのだった。
『両者位置に付いて……始め!』
実況による戦闘開始の合図と共に両者が動いた。
剣術学校側の生徒は即座に剣を抜き、魔法学園側の生徒の方へと一気に駆け出す。それに対して魔法学園側は距離を取るように後方へと跳んだ。
どちらも定石通りの動きだ。近接戦闘を行うのであればとにかく得物の届く範囲に入らないといけない。
そして魔術師であれば逆に攻撃範囲に入ってはいけない。
故にこの行動はどちらも最善手と言えるだろう。だからこそ重要なのはここからだ。
「アクアスラッシュ!」
『おぉっと先に攻撃を仕掛けたのは魔法学園側だ!』
このタイミングと距離感での攻撃……恐らくダメージを与えるための物では無く牽制用だな。
「せぇぃっ!!」
だが恐るべきことに剣術学校側の生徒はそれを真正面からぶった切った。
俺が言うのもあれだが、そんなのアリなのか……?
「ちょ、ちょっと何それ!? そんなのアリなのっ!?」
俺と同じことを考えていたようで、魔法学園側の生徒は動揺を隠せない様子だった。
そんな隙だらけな状態を見逃すはずもなく、懐に潜り込んだ剣術学校側の生徒が一撃を入れ、そこで試合は終了した。
「いっ……たた……私の体、ちゃんと全部あるわよね……?」
このアリーナ内では特殊なマジックアイテムによって致死性の攻撃が無効化されるらしいから、命に関わるような大怪我は負わないようになっているようだ。
とは言え痛みはあるようで、手痛い一撃を貰った生徒はアリーナの端で悶え苦しんでいた。
「魔法の実力だけならあの先輩も決して弱くはないはず。いや、むしろ出力だけならかなり強い部類に入る……相手の選手に関する情報収集をしていなかったのが勝敗を分けたのか。やっぱり合同試合はこうでないとな」
今の試合を見たリュウは独り言を言いながら試合結果を分析していた。きっとこういう所が彼の実力の裏付けになっているんだろうな。
そんな訳で始まった合同試合も徐々に進んで行き、一回戦も半分程が終わった頃だろうか。次の試合の参加選手が発表されると同時に会場内が沸き立った。
「とうとうだぞ晴翔。優勝最有力候補の足立先輩が試合に出るんだ!」
「あの人が……」
アリーナの真ん中に出てきたのは長身の女性だった。見た目はまあ美人だなと言った感じだ。
とは言え向こうの世界で他プレイヤーのキャラアバターの見た目に慣れてしまった俺がそう感じるだけで、実際には相当な美人であることに間違いはないだろう。
だが重要なのはそこじゃない。
彼女の周りに浮いている謎の砲台の方が滅茶苦茶に気になる。
「なあリュウ、あの砲台って」
「ああ、良いよなあれ。あれこそが足立先輩が『最大火力』と呼ばれることになった魔法なんだ……やっぱ生で見るとかっこよすぎるぜ」
まるでスーパーヒーローを見る子どものように目をキラキラとさせながら、リュウは勢いよくそう言って来た。
だがまあ……その気持ち、わからなくもないぞ。
いつか夢見た巨大ロボットと同じようなロマンを感じる見た目と動きだ。あれが嫌いな男がいるだろうか。いやいない。
「こればっかりは相手の選手が可哀そうではあるよな。正直勝ち目なんてないだろうよ」
「そんなに強いのか? あの足立って言う先輩は」
「そりゃもう、中等部の時点で特例で魔物ハンターやっていたような人なんだ。弱い訳が無いだろ?」
まさかそこまでとは。
この世界において魔物ハンターは一定以上の戦闘能力がある成人でないとなれないはずだ。それを中学生の頃からって……あの人、どれだけ化け物だったんだ?
「すまない、かなり痛いかもしれない……私は加減が苦手でね」
「……」
対戦相手である剣術学校側の生徒は青ざめていた。
恐らく彼女の実力を戦う前から理解してしまったんだろう。そして自分では絶対に勝てないと言う事もわかってしまったと……。
『それでは両者位置に付いて……始め!!』
「全砲塔、一斉射撃……!!」
彼女のその声と共に浮遊していた砲塔が一斉に対戦相手の方を向く。そして一瞬の後にアリーナは閃光に包まれたのだった。
『な、何が起こったのでしょうか……!? あぁっ! 剣術学校側の選手が倒れています! 勝負あり!』
「すまない、少し火力が出過ぎてしまった……本当にすまない」
「いえ……合同試合ってこういうものです……から」
全身黒こげになっている剣術学校側の生徒はそのまま担架に乗せられて運ばれていった。
あの状態でも命に別条はないってことだろうから彼が凄いのか……はたまたマジックアイテムが凄いのか。
それにしてもあの一瞬の閃光……視覚情報の抑制のおかげでギリギリ見えたが、あれは凄まじいものだったな。
砲塔から撃ちだされた無数の雷魔法が全方位から相手を焼いていた。あれだけの威力と精密性を両立するとなると俺でも難しいかもしれない。
最大火力と呼ばれているらしいけど、実際の所は緻密な魔力操作を必要とする攻撃なのは間違いなさそうだ。
「相変わらずすっごい攻撃だな……なんも見えないや」
ああそうか。そもそもあの一瞬の攻撃がほとんどの人には見えていないのか。
だから攻撃後の結果として残る「火力」が彼女の二つ名になったと。
ははっ、思っていた以上に面白い試合があるじゃないか。それに想像以上に強力な力を持つ選手も多い。
この分なら俺の対戦相手とも中々良い勝負が出来るかもしれない。
……そう考えていた。
『なぁんと!! ここで特例で認められた高等部の生徒が特別参加だ!! もちろん両校との話はついていますので、皆さまは引き続き試合を存分にお楽しみください!』
やってきた俺の出番。
第一回戦の最後に突如として明かされた俺の出場……当然だが会場内は困惑に包まれていた。
まあそれは良い。最初はどよめきこそあったものの、俺がネットで話題の少女だと言うことに気付いた途端に困惑は逆に盛り上がりへと変わった。
問題は相手の方だ。
「ふふっ、君が対戦相手? まあ、ボクに勝つことは無いけどね」
剣術学校の生徒であるはずの彼は、どういう訳か剣を持っていなかったのだ。
剣術学校との合同試合。それがついに来てしまった。
『開会式を前に、会場内は大いに盛り上がっています!!』
まだ始まってすらいないというのにアリーナ内は大騒ぎだった。
まあ、これだけ規模のデカいイベントとなればそうなってもおかしくはないか。
と言うかまだ始まってないんだから実況も変に盛り上げるなよ……。
「よお、晴翔。隣良いか?」
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他にやることも無いからと、早い内に良さそうな席を取っておいて良かった。せっかくなら色々と語り有ったりしたいからな。
「助かるぜ。ところで晴翔は今日の合同試合、誰が勝つと思う?」
「……剣術学校の方の生徒はあまり知らないから何とも言えないな」
言えない。俺が参加して優勝かっさらってやるから見ててくれとは絶対に言えない。
「迷うよな~。学園の生徒だとやっぱり『最大火力』の二つ名を持っている足立先輩が有力だろうけど、剣術学校の方にも『音速』って呼ばれてる滅茶苦茶強い人がいるらしいんだよ」
「随分と詳しいんだな」
どうやらリュウは剣術学校の方の参加生徒についても詳しいようだ。
「そりゃ当たり前だろうよ。合同試合なんて言えば堅苦しい雰囲気だが、実際の所は俺たちじゃ手も届かないような超次元の試合が見られる、ある種のエンターテイメントなんだからな」
熱が入ったその語り……その熱意は本物のようだな。
俺もこの体の持つとんでもない能力が無ければ彼みたいに純粋に楽しめたのだろうが……少し損をした気分だ。
「おっと、そろそろ始まりそうだ」
リュウの言う通り、アリーナの中心に両校の学園長が立っていた。
そしてそのまま開会の演説が始まり、それが終わると早速第一回戦の最初の選手が出てきたのだった。
『両者位置に付いて……始め!』
実況による戦闘開始の合図と共に両者が動いた。
剣術学校側の生徒は即座に剣を抜き、魔法学園側の生徒の方へと一気に駆け出す。それに対して魔法学園側は距離を取るように後方へと跳んだ。
どちらも定石通りの動きだ。近接戦闘を行うのであればとにかく得物の届く範囲に入らないといけない。
そして魔術師であれば逆に攻撃範囲に入ってはいけない。
故にこの行動はどちらも最善手と言えるだろう。だからこそ重要なのはここからだ。
「アクアスラッシュ!」
『おぉっと先に攻撃を仕掛けたのは魔法学園側だ!』
このタイミングと距離感での攻撃……恐らくダメージを与えるための物では無く牽制用だな。
「せぇぃっ!!」
だが恐るべきことに剣術学校側の生徒はそれを真正面からぶった切った。
俺が言うのもあれだが、そんなのアリなのか……?
「ちょ、ちょっと何それ!? そんなのアリなのっ!?」
俺と同じことを考えていたようで、魔法学園側の生徒は動揺を隠せない様子だった。
そんな隙だらけな状態を見逃すはずもなく、懐に潜り込んだ剣術学校側の生徒が一撃を入れ、そこで試合は終了した。
「いっ……たた……私の体、ちゃんと全部あるわよね……?」
このアリーナ内では特殊なマジックアイテムによって致死性の攻撃が無効化されるらしいから、命に関わるような大怪我は負わないようになっているようだ。
とは言え痛みはあるようで、手痛い一撃を貰った生徒はアリーナの端で悶え苦しんでいた。
「魔法の実力だけならあの先輩も決して弱くはないはず。いや、むしろ出力だけならかなり強い部類に入る……相手の選手に関する情報収集をしていなかったのが勝敗を分けたのか。やっぱり合同試合はこうでないとな」
今の試合を見たリュウは独り言を言いながら試合結果を分析していた。きっとこういう所が彼の実力の裏付けになっているんだろうな。
そんな訳で始まった合同試合も徐々に進んで行き、一回戦も半分程が終わった頃だろうか。次の試合の参加選手が発表されると同時に会場内が沸き立った。
「とうとうだぞ晴翔。優勝最有力候補の足立先輩が試合に出るんだ!」
「あの人が……」
アリーナの真ん中に出てきたのは長身の女性だった。見た目はまあ美人だなと言った感じだ。
とは言え向こうの世界で他プレイヤーのキャラアバターの見た目に慣れてしまった俺がそう感じるだけで、実際には相当な美人であることに間違いはないだろう。
だが重要なのはそこじゃない。
彼女の周りに浮いている謎の砲台の方が滅茶苦茶に気になる。
「なあリュウ、あの砲台って」
「ああ、良いよなあれ。あれこそが足立先輩が『最大火力』と呼ばれることになった魔法なんだ……やっぱ生で見るとかっこよすぎるぜ」
まるでスーパーヒーローを見る子どものように目をキラキラとさせながら、リュウは勢いよくそう言って来た。
だがまあ……その気持ち、わからなくもないぞ。
いつか夢見た巨大ロボットと同じようなロマンを感じる見た目と動きだ。あれが嫌いな男がいるだろうか。いやいない。
「こればっかりは相手の選手が可哀そうではあるよな。正直勝ち目なんてないだろうよ」
「そんなに強いのか? あの足立って言う先輩は」
「そりゃもう、中等部の時点で特例で魔物ハンターやっていたような人なんだ。弱い訳が無いだろ?」
まさかそこまでとは。
この世界において魔物ハンターは一定以上の戦闘能力がある成人でないとなれないはずだ。それを中学生の頃からって……あの人、どれだけ化け物だったんだ?
「すまない、かなり痛いかもしれない……私は加減が苦手でね」
「……」
対戦相手である剣術学校側の生徒は青ざめていた。
恐らく彼女の実力を戦う前から理解してしまったんだろう。そして自分では絶対に勝てないと言う事もわかってしまったと……。
『それでは両者位置に付いて……始め!!』
「全砲塔、一斉射撃……!!」
彼女のその声と共に浮遊していた砲塔が一斉に対戦相手の方を向く。そして一瞬の後にアリーナは閃光に包まれたのだった。
『な、何が起こったのでしょうか……!? あぁっ! 剣術学校側の選手が倒れています! 勝負あり!』
「すまない、少し火力が出過ぎてしまった……本当にすまない」
「いえ……合同試合ってこういうものです……から」
全身黒こげになっている剣術学校側の生徒はそのまま担架に乗せられて運ばれていった。
あの状態でも命に別条はないってことだろうから彼が凄いのか……はたまたマジックアイテムが凄いのか。
それにしてもあの一瞬の閃光……視覚情報の抑制のおかげでギリギリ見えたが、あれは凄まじいものだったな。
砲塔から撃ちだされた無数の雷魔法が全方位から相手を焼いていた。あれだけの威力と精密性を両立するとなると俺でも難しいかもしれない。
最大火力と呼ばれているらしいけど、実際の所は緻密な魔力操作を必要とする攻撃なのは間違いなさそうだ。
「相変わらずすっごい攻撃だな……なんも見えないや」
ああそうか。そもそもあの一瞬の攻撃がほとんどの人には見えていないのか。
だから攻撃後の結果として残る「火力」が彼女の二つ名になったと。
ははっ、思っていた以上に面白い試合があるじゃないか。それに想像以上に強力な力を持つ選手も多い。
この分なら俺の対戦相手とも中々良い勝負が出来るかもしれない。
……そう考えていた。
『なぁんと!! ここで特例で認められた高等部の生徒が特別参加だ!! もちろん両校との話はついていますので、皆さまは引き続き試合を存分にお楽しみください!』
やってきた俺の出番。
第一回戦の最後に突如として明かされた俺の出場……当然だが会場内は困惑に包まれていた。
まあそれは良い。最初はどよめきこそあったものの、俺がネットで話題の少女だと言うことに気付いた途端に困惑は逆に盛り上がりへと変わった。
問題は相手の方だ。
「ふふっ、君が対戦相手? まあ、ボクに勝つことは無いけどね」
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