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第二部 並行異世界地球編
8 初めてのダンジョン演習③
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「大豊……お前、一体何をしている」
「いや、違う……これは、こいつらが先に攻撃を……」
「だとしてもだ! お前の爆発魔法は軽率に使用して良い物では無い……それをお前は理解しているのか?」
「ぐっ……」
奴は再び魔力を手に集め始める。だが奴が再び爆発魔法を放つことは無かった。
後から一人また一人と教師が集まって来たのだ。
教師一人くらいなら殺して証拠隠滅を図れると思ったんだろうが、この学園の教師は魔物ハンターを兼任しているからな。
いくら規格外の爆発魔法があっても魔物ハンター複数人には勝てないと判断したんだろう。
「……僕が……僕ともあろう存在が、ここで終わるのか……?」
最後にそれだけ言って奴は教師たちに連行されていった。
これでひとまず後ろの二人において危機は脱したと言って良いだろうな。
……俺の方はまだ最大の危機が残っている訳だが。
「君たち、大丈夫だったか!? 怪我は無いか!?」
「は、はいぃ……」
安心して緊張の糸が切れてしまったのかリュウはその場に崩れ落ちる。
「俺たちは大丈夫です。それで、彼はどうなるんでしょうか」
「ああ、彼にも君たちにも色々と聞かなければいけないことはあるが……どうあっても彼の退学処分は覆ることは無いだろうね」
まあ、そうなるだろうな。
とは言え大変なのは俺も同じなんだよな。ここで起きたことを色々と話さないといけない。となると俺の能力について言わざるを得ないだろう。
特に奴の爆発を防いだあの魔法はこの世界ではかなり異質なものになるはずだ。
さて、どうごまかそうか……。
とりあえず今日は色々と疲れただろうと言うことで解放されたが、明日が億劫過ぎる。
ああ、マジでどうしよう。
「それでは色々と聞いて行こうか。昨日の今日ですまないが、情報は出来るだけ早く欲しいから協力して欲しい」
俺たち3人は再び集められ、昨日の話をすることになった。
「まずは彼との関係性について聞かせてくれ。と言っても大方、向こうから絡んできたのだろうがな」
「はい、大体そのような認識で問題ないですね。俺とエリンは数日前に彼に目を付けられたみたいでして……」
俺とエリンはそれぞれ、奴と初めて会った時から今に至るまでの事を話す。
と言っても俺に関しては奴の部下と思われる輩を返り討ちにしたのは隠して話した。今更ではあるが、変に目立つことは言いたくないしな。
「なるほど、やはりそうだったか。このようなことは一度や二度では無いが、ここまで大事になったのは初めてだな」
あの感じだと今までにも似たようなことはあったんだろうが、奴はあのオーラで即座に無力化したり服従させたりしてたんだろうな。
だからそれが効かない俺に出会ってしまったことで今回のようなことが起こったと。
「次にダンジョン内でのことなんだが……」
目の前の教師は手元の書類を見ながら、何とも言えない表情を浮かべた。
「あの時確かに彼は爆発魔法を発動させていた。その証拠も残っていたし、彼自身も白状した。だが……事実として君たちは無傷だった。これがどうにも理解出来んのだ」
そうだよな。高等クラスの面々と奴とでは圧倒的に魔術師としてのランクが違う。使う魔法の質も魔力量も段違いだ。
そんな中、とんでもない威力の魔法に巻き込まれた俺たちが無傷で生還しているのはあまりにも不自然過ぎる。
「そう言えば晴翔、あの時『マジックプロテクション』って言うのを発動させて無かったか?」
「確かにそうだったわね。でもそんな魔法、見たことも聞いたことも無いわよ」
おっと……気を付けないといけない存在はこちらにもいたようだ。
いやまあどちらにしろいつかはバレることだったのかもしれないけども。まさか魔法名の詠唱がこんな形でデメリットになるとは……。
「マジックプロテクション……か。確かに聞いたことの無い魔法だな。それを使って大豊の魔法を防いだと言う事で良いのかね?」
ここでごまかしたところで他に良い言い訳も見つからない。
なら正直に言うしかないか……。
「そうですね。俺がその魔法で彼の魔法を防ぎました」
「そうか……情報提供に感謝する。細かいことが分かり次第また呼び出すかもしれないが、その時はまた協力して欲しい」
……こうして俺たち3人は解放された。
予想とは違い俺に対してのそれ以上の追及は無かったが、多分わからないことだらけで質問しようにも出来ないんだろう。
だからまあ、危機が去ったと言う訳では無さそうだ。
「はぁ……本当に怖かった。マジで死ぬかと思ったぜ」
「まあでも、これで安心よね。大豊先輩は退学になるってことでしょう?」
「それはそうだけどよ……学園外で逆恨みの復讐とかされそうじゃないか?」
リュウの言う事ももっともだ。
ただ退学になっただけなら良くも悪くも奴がフリーになってしまう。そうなればもうなりふり構わず復讐に走る可能性だってあるんだもんな。
「そういやあの時、大豊先輩は教師は来ないって言っていたけど……全然そんなこと無くて本当に助かったよなぁ」
「でもそれにしては反応がおかしくなかった? 早すぎる……とか言っていたような」
……実際、奴の策は万全だったろう。もちろん相手が俺でなければの話ではあるが。
俺自身が強くなり過ぎているせいで最初は気づかなかったが、生徒に相手をさせるにしては明らかに強い魔物が多かったんだよな。
だから気配と魔力を探ってみれば……あろうことか異常な強さの魔物がかなりの数存在していた。これらを教師にぶつけることで時間稼ぎをするつもりだったんだろうな。
もっともそれらのほとんどはあらかじめ俺が遠隔魔法で無力化しておいた訳だが。
と言っても遠隔魔法だけだと削り切れないのがチラホラいたせいで教師たちが集まるのが少し遅れたが……まあ無事に助かったし奴の悪行は明るみになったし、結果オーライだな。
------
薄暗い部屋の中、大豊は壁を殴りながら叫び続けていた。
「どうして、僕がこんな目に遭わなければいけないんだ……!」
何度も何度も繰り返し殴っているのか、彼の拳の肉は裂け、流れ出た鮮血が夕闇に溶け込むように滴り落ちていく。
「僕は……国家魔術師をも超える才能があるんだ。あんなのに負けるはずはない! それに会社だって継ぐはずだった。なのに……何が僕には失望しただ! ああ、これは何かの間違いだ! そうに違い無い!! そうでなければおかしい!!」
「……そう、おかしいのです」
もはや痛みを感じているのかも怪しい程に激しく壁を殴り続けていた大豊。
そんな彼は突然背後から聞こえてきた謎の声に驚き、全ての動きを止めた。
「だ、誰だ……!?」
振り返った大豊は壁を殴る音が消えて静まり返った自室を見回しながら、声の主の返事を待つ。
だが次の言葉が来ることは無く、しびれを切らした彼はもう一度口を開いた。
「どうやってこの部屋に入った! このマンションの警備は厳重なはずだぞ!?」
不法侵入はありえないと自分に言い聞かせるように叫ぶ大豊だが、残念ながらその行為も意味をなさずに再び彼の耳元で声がしたのだった。
「貴方は決して、他の者と同じなどではありません。確かな恵まれた才をお持ちなのです。その事実は揺らぎません」
「だが……今の僕はこんな有様だ。そんな才があるのならこんなことには……!」
「ですので、私共が力をお貸しいたしましょう」
「力……だって?」
絶望に染まった者がほんの僅かな希望にすがりつくかのように、大豊はその声に耳を傾けてしまう。
一方で彼の本能はこの声に耳を貸しては駄目だと警鐘を鳴らしていた。このままでは取り返しがつかないことになると理解していたのだ。
だが、彼の意思は違った。
さらなる力を、自らを陥れた存在を見返せるような力を求めてしまっていたのだ。
「ええ、貴方の才を数倍……いえ、数百倍にまで跳ね上げて差し上げますわ」
「それがあれば僕は……。わかった、その力を僕にくれ。どんな代償だろうが払ってやる……!」
「契約成立……ですわね」
謎の声がそう言った瞬間、糸の切れた操り人形のように大豊の体は力なくその場に倒れ込んだのだった。
「いや、違う……これは、こいつらが先に攻撃を……」
「だとしてもだ! お前の爆発魔法は軽率に使用して良い物では無い……それをお前は理解しているのか?」
「ぐっ……」
奴は再び魔力を手に集め始める。だが奴が再び爆発魔法を放つことは無かった。
後から一人また一人と教師が集まって来たのだ。
教師一人くらいなら殺して証拠隠滅を図れると思ったんだろうが、この学園の教師は魔物ハンターを兼任しているからな。
いくら規格外の爆発魔法があっても魔物ハンター複数人には勝てないと判断したんだろう。
「……僕が……僕ともあろう存在が、ここで終わるのか……?」
最後にそれだけ言って奴は教師たちに連行されていった。
これでひとまず後ろの二人において危機は脱したと言って良いだろうな。
……俺の方はまだ最大の危機が残っている訳だが。
「君たち、大丈夫だったか!? 怪我は無いか!?」
「は、はいぃ……」
安心して緊張の糸が切れてしまったのかリュウはその場に崩れ落ちる。
「俺たちは大丈夫です。それで、彼はどうなるんでしょうか」
「ああ、彼にも君たちにも色々と聞かなければいけないことはあるが……どうあっても彼の退学処分は覆ることは無いだろうね」
まあ、そうなるだろうな。
とは言え大変なのは俺も同じなんだよな。ここで起きたことを色々と話さないといけない。となると俺の能力について言わざるを得ないだろう。
特に奴の爆発を防いだあの魔法はこの世界ではかなり異質なものになるはずだ。
さて、どうごまかそうか……。
とりあえず今日は色々と疲れただろうと言うことで解放されたが、明日が億劫過ぎる。
ああ、マジでどうしよう。
「それでは色々と聞いて行こうか。昨日の今日ですまないが、情報は出来るだけ早く欲しいから協力して欲しい」
俺たち3人は再び集められ、昨日の話をすることになった。
「まずは彼との関係性について聞かせてくれ。と言っても大方、向こうから絡んできたのだろうがな」
「はい、大体そのような認識で問題ないですね。俺とエリンは数日前に彼に目を付けられたみたいでして……」
俺とエリンはそれぞれ、奴と初めて会った時から今に至るまでの事を話す。
と言っても俺に関しては奴の部下と思われる輩を返り討ちにしたのは隠して話した。今更ではあるが、変に目立つことは言いたくないしな。
「なるほど、やはりそうだったか。このようなことは一度や二度では無いが、ここまで大事になったのは初めてだな」
あの感じだと今までにも似たようなことはあったんだろうが、奴はあのオーラで即座に無力化したり服従させたりしてたんだろうな。
だからそれが効かない俺に出会ってしまったことで今回のようなことが起こったと。
「次にダンジョン内でのことなんだが……」
目の前の教師は手元の書類を見ながら、何とも言えない表情を浮かべた。
「あの時確かに彼は爆発魔法を発動させていた。その証拠も残っていたし、彼自身も白状した。だが……事実として君たちは無傷だった。これがどうにも理解出来んのだ」
そうだよな。高等クラスの面々と奴とでは圧倒的に魔術師としてのランクが違う。使う魔法の質も魔力量も段違いだ。
そんな中、とんでもない威力の魔法に巻き込まれた俺たちが無傷で生還しているのはあまりにも不自然過ぎる。
「そう言えば晴翔、あの時『マジックプロテクション』って言うのを発動させて無かったか?」
「確かにそうだったわね。でもそんな魔法、見たことも聞いたことも無いわよ」
おっと……気を付けないといけない存在はこちらにもいたようだ。
いやまあどちらにしろいつかはバレることだったのかもしれないけども。まさか魔法名の詠唱がこんな形でデメリットになるとは……。
「マジックプロテクション……か。確かに聞いたことの無い魔法だな。それを使って大豊の魔法を防いだと言う事で良いのかね?」
ここでごまかしたところで他に良い言い訳も見つからない。
なら正直に言うしかないか……。
「そうですね。俺がその魔法で彼の魔法を防ぎました」
「そうか……情報提供に感謝する。細かいことが分かり次第また呼び出すかもしれないが、その時はまた協力して欲しい」
……こうして俺たち3人は解放された。
予想とは違い俺に対してのそれ以上の追及は無かったが、多分わからないことだらけで質問しようにも出来ないんだろう。
だからまあ、危機が去ったと言う訳では無さそうだ。
「はぁ……本当に怖かった。マジで死ぬかと思ったぜ」
「まあでも、これで安心よね。大豊先輩は退学になるってことでしょう?」
「それはそうだけどよ……学園外で逆恨みの復讐とかされそうじゃないか?」
リュウの言う事ももっともだ。
ただ退学になっただけなら良くも悪くも奴がフリーになってしまう。そうなればもうなりふり構わず復讐に走る可能性だってあるんだもんな。
「そういやあの時、大豊先輩は教師は来ないって言っていたけど……全然そんなこと無くて本当に助かったよなぁ」
「でもそれにしては反応がおかしくなかった? 早すぎる……とか言っていたような」
……実際、奴の策は万全だったろう。もちろん相手が俺でなければの話ではあるが。
俺自身が強くなり過ぎているせいで最初は気づかなかったが、生徒に相手をさせるにしては明らかに強い魔物が多かったんだよな。
だから気配と魔力を探ってみれば……あろうことか異常な強さの魔物がかなりの数存在していた。これらを教師にぶつけることで時間稼ぎをするつもりだったんだろうな。
もっともそれらのほとんどはあらかじめ俺が遠隔魔法で無力化しておいた訳だが。
と言っても遠隔魔法だけだと削り切れないのがチラホラいたせいで教師たちが集まるのが少し遅れたが……まあ無事に助かったし奴の悪行は明るみになったし、結果オーライだな。
------
薄暗い部屋の中、大豊は壁を殴りながら叫び続けていた。
「どうして、僕がこんな目に遭わなければいけないんだ……!」
何度も何度も繰り返し殴っているのか、彼の拳の肉は裂け、流れ出た鮮血が夕闇に溶け込むように滴り落ちていく。
「僕は……国家魔術師をも超える才能があるんだ。あんなのに負けるはずはない! それに会社だって継ぐはずだった。なのに……何が僕には失望しただ! ああ、これは何かの間違いだ! そうに違い無い!! そうでなければおかしい!!」
「……そう、おかしいのです」
もはや痛みを感じているのかも怪しい程に激しく壁を殴り続けていた大豊。
そんな彼は突然背後から聞こえてきた謎の声に驚き、全ての動きを止めた。
「だ、誰だ……!?」
振り返った大豊は壁を殴る音が消えて静まり返った自室を見回しながら、声の主の返事を待つ。
だが次の言葉が来ることは無く、しびれを切らした彼はもう一度口を開いた。
「どうやってこの部屋に入った! このマンションの警備は厳重なはずだぞ!?」
不法侵入はありえないと自分に言い聞かせるように叫ぶ大豊だが、残念ながらその行為も意味をなさずに再び彼の耳元で声がしたのだった。
「貴方は決して、他の者と同じなどではありません。確かな恵まれた才をお持ちなのです。その事実は揺らぎません」
「だが……今の僕はこんな有様だ。そんな才があるのならこんなことには……!」
「ですので、私共が力をお貸しいたしましょう」
「力……だって?」
絶望に染まった者がほんの僅かな希望にすがりつくかのように、大豊はその声に耳を傾けてしまう。
一方で彼の本能はこの声に耳を貸しては駄目だと警鐘を鳴らしていた。このままでは取り返しがつかないことになると理解していたのだ。
だが、彼の意思は違った。
さらなる力を、自らを陥れた存在を見返せるような力を求めてしまっていたのだ。
「ええ、貴方の才を数倍……いえ、数百倍にまで跳ね上げて差し上げますわ」
「それがあれば僕は……。わかった、その力を僕にくれ。どんな代償だろうが払ってやる……!」
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