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第二部 並行異世界地球編
3 授業開始
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午後の授業から参加することになった俺は食堂で昼食を済ませてからしばらく学園内を見て回った。
と言っても魔法以外は特に目新しい物も無く、いたって普通の学校といった感じだ。魔法学園というのだからてっきりどこぞの魔法魔術学校のような物をイメージしていたが、そんなことは無かった。
……まあ、そのせいでより一層魔法が滅茶苦茶目新しいものになってるんだけどな。
「なあ、召喚術の授業で召喚する召喚精霊どれにする?」
「初心者なら扱いやすい火か水の精霊が良いらしいけど、どうせならもう少し背伸びしたいよな」
聞こえてくる会話があまりにも元の世界とかけ離れ過ぎていてついて行けない。
そんなこともありながら時間は過ぎて行き、いつの間にか午後の授業が始まりそうな時間となっていた。
死ぬ前の記憶を失っているということを考慮してくれたのか最初の授業は他の人たちとは別で行うらしいので伝えられた教室へと向かう。
恐らくオリエンテーション的なものを行うのだろう。
そんなことを考えながら教室へ入るとそこには見覚えのある少女がいた。
「え、晴翔?」
紅い瞳の少女は驚いたような声で俺の名を呼ぶ。
そこにいたのは紛れもなく、今朝共に学園に来たエリンだった。
「お知り合いですか?」
「いえ、今朝会ったばかりです……。てっきり初等部の子だと思ってたので驚いてしまって」
ああそうか。この見た目だもんな。
「彼は同じ高等クラスの葛城晴翔さんです。色々あってオリエンテーリングを受けることになっているんですよ」
「では改めて、葛城晴翔です。これからよろしくお願いしますね」
「そ、そうなのね。わかった。よろしくね晴翔」
いきなり名前呼びとはまた距離感の近いこと。俺でなければ勘違いしてしまうぞ。
雰囲気が快活と言うか、クラスの男子を勘違いさせる系だこの子は。
「それでは二人揃ったので早速授業を……と言っても最初の内は学園内の案内や色々な説明が主なんですけどね」
そう言うと教師は黒板に魔法を使って映像を投射した。
「まず、おおまかに学園内の構造について紹介しますね。今いるこの教室を含めたいくつかの教室が座学用の普通教室ですね。それとは別に魔法の実技に合わせてそれぞれ魔法教室がありますのでそちらの場所も早い内に覚えておくと後が楽だと思います」
なるほど、理科室とか家庭科室とかそう言ったノリか。
「教室以外ですと食道や第一・第二グラウンド、アリーナなどがありますがアリーナの方は基本的にイベントごとでしか使わないので今はあまり気にしなくても良いかもしれません。あと重要なのが地下ダンジョンですね」
……うん?
今、地下ダンジョンって言ったか?
おおよそ学校にあるとは思えない物の名が聞こえた気が……。聞き間違い……それとも俗称か?
「対魔物戦術の授業で頻繁に使うのでここもしっかり覚えておいてくださいね」
「対魔物戦術……? 地下ダンジョン……?」
どうやら聞き間違いでも俗称でも無いらしい。本当に魔物の出る地下ダンジョンがあるんだろう。
流石は魔法学園だ。というかこの世界に魔物がいる方が驚きだよ俺は。
「知らないの? 魔法学園は基本的に地下ダンジョンを塞ぐ形で存在しているのよ。外に魔物が出てくるのを防ぐために教師を兼任している凄腕の魔物ハンターが何人も常駐しているから、下手したら他の場所よりも安全とまで言われているわ」
マジか……え、マジなのか。
思っていたよりも遥かにとんでもない世界になってしまったのか地球は。
「エリンさんの言う通り、ここ東都魔法学園には何人もの魔物ハンターが常駐しています。都内に魔物が発生するのを防ぐのもそうですが、何よりも生徒さんの命を預かるわけですので万が一があってはいけませんからね」
なるほど、地下ダンジョンへの対策と魔物ハンターの後継の育成を同時にしてしまおうってことか。
確かに魔法の特訓をするなら本物の魔物がいた方が良いのかもしれない。いや、いないならいないでそれが一番平和で良いんだけども。
とまあそんな感じで学園内に関してやこの世界での常識について色々と学ぶことが出来た授業だった。
明日からは本格的に授業が始まるのだが、こんな状態で本当についていけるのだろうか。せめて教科書を読むだけでもしておこう。
そして翌日。
「おはよう晴翔!」
「おはようございます一ノ瀬さん」
高等クラスの教室に入るとエリンが挨拶をしてきた。
「もう、昨日一緒に学園内を回った仲でしょ? 敬語もいらないし呼び捨てで良いわよ」
「それは流石に……いや、わかった。じゃあ改めて、これからよろしくエリン」
「よろしく、晴翔♪」
今の俺は見た目がこれだからな。学園長も言っていたが、ある程度見た目相応な振る舞いをした方が目立ちにくいというのはその通りだろう。
少なくとも高等クラス内ではもっとフランクに接した方が良いんだろうな。
「よお、晴翔。なんか色々大変なことになっているらしいが……まあ頑張れよ」
エリンが自分の席に向かった後、今度は後ろの席から声がした。
とは言え今の俺にはこの世界における知識と言うか記憶が無い。だから彼が誰なのかがわからないんだよな……。
一応学園内の生徒には俺の事はぼかして伝えてあるらしい。実は死んでいなくて記憶喪失状態になっているということになっている。あまりにも怪し過ぎるが今の所それでなんとかなっているようだ。
だから気を使って話かけてきてくれたのだろう。本当に申し訳ない。
「あ、ああ……。その、ごめん。以前の記憶が無くて……」
「ああ、そう言えばそうだったな。なら改めて名乗っておこうか。俺は永多リュウ。得意なのは水属性魔法で趣味はゲーム。好きな食べ物は焼きそばパンだ」
「永多リュウ……うん、改めてよろしく」
随分とテンポよく情報をくれたけど、むしろその方が今の俺にとっては良いかもしれない。せめてクラス内の人とは死ぬ前の俺と同じような関係性にしておいた方が良いだろうし。
「よし、全員揃ったな。そろそろ1限始めるから準備しろよ~」
1限の科目である数学を担当する教師が教室に入って来たことでクラス内の喧騒が収まった。
懐かしいなこの感じ。異世界にいた期間も含めたらもうかなり昔の事か。
その後授業は進んで行き、何の問題も無く魔法学園での初授業は終わりを迎えた。
高校数学なんて久しぶりだから不安だったものの、案外なんとかなった。それどころか高校生の頃よりも計算速度が上昇している気がする。
恐らくこの体……HARUとしての能力が演算速度にも影響を与えているんだろうな。
と、あまりゆっくりはしていられない。次は属性魔法の授業だからグラウンドに移動しないといけない。
教室からの距離はあまり遠くないものの、厄介なものが他にある。
「あ、またいるよあの精霊」
残念ながらその厄介なものがいたようだ。
この学園内では時折下級精霊が勝手に発生するみたいなんだよな。どうやら地下ダンジョンから漏れ出た魔力が実体を持った結果精霊として姿を現すらしい。
で、その精霊は時折人に対して敵意を持つことがあるのだとか。魔物程の脅威では無いが少し痛いくらいには影響を及ぼしてくるのだと。
まあ元の世界の感覚としては窓から蜂が入って来た時のあの感じに近いのかね?
「あ、晴翔そっちに精霊が……!」
「うお、マジか」
他に人がたくさんいる中、何故俺をめがけてやってくるんだよ。
って他の人も思っていそうだからそこはおあいこか。
「……あれ?」
身構えたのは良いものの、結局精霊が攻撃をして来ることは無かった。
それどころか精霊は奇麗さっぱり消え去っていた。
「ふぅ、何とも無くて良かったな。恐らく魔力が尽きかけてたんだな。なんにせよ怪我をしなくてよかったよ……っといけない。早くグラウンドに行かないと」
精霊騒ぎで少し時間を持っていかれたため、リュウと一緒にグラウンドまで急いで走って行った。
と言っても魔法以外は特に目新しい物も無く、いたって普通の学校といった感じだ。魔法学園というのだからてっきりどこぞの魔法魔術学校のような物をイメージしていたが、そんなことは無かった。
……まあ、そのせいでより一層魔法が滅茶苦茶目新しいものになってるんだけどな。
「なあ、召喚術の授業で召喚する召喚精霊どれにする?」
「初心者なら扱いやすい火か水の精霊が良いらしいけど、どうせならもう少し背伸びしたいよな」
聞こえてくる会話があまりにも元の世界とかけ離れ過ぎていてついて行けない。
そんなこともありながら時間は過ぎて行き、いつの間にか午後の授業が始まりそうな時間となっていた。
死ぬ前の記憶を失っているということを考慮してくれたのか最初の授業は他の人たちとは別で行うらしいので伝えられた教室へと向かう。
恐らくオリエンテーション的なものを行うのだろう。
そんなことを考えながら教室へ入るとそこには見覚えのある少女がいた。
「え、晴翔?」
紅い瞳の少女は驚いたような声で俺の名を呼ぶ。
そこにいたのは紛れもなく、今朝共に学園に来たエリンだった。
「お知り合いですか?」
「いえ、今朝会ったばかりです……。てっきり初等部の子だと思ってたので驚いてしまって」
ああそうか。この見た目だもんな。
「彼は同じ高等クラスの葛城晴翔さんです。色々あってオリエンテーリングを受けることになっているんですよ」
「では改めて、葛城晴翔です。これからよろしくお願いしますね」
「そ、そうなのね。わかった。よろしくね晴翔」
いきなり名前呼びとはまた距離感の近いこと。俺でなければ勘違いしてしまうぞ。
雰囲気が快活と言うか、クラスの男子を勘違いさせる系だこの子は。
「それでは二人揃ったので早速授業を……と言っても最初の内は学園内の案内や色々な説明が主なんですけどね」
そう言うと教師は黒板に魔法を使って映像を投射した。
「まず、おおまかに学園内の構造について紹介しますね。今いるこの教室を含めたいくつかの教室が座学用の普通教室ですね。それとは別に魔法の実技に合わせてそれぞれ魔法教室がありますのでそちらの場所も早い内に覚えておくと後が楽だと思います」
なるほど、理科室とか家庭科室とかそう言ったノリか。
「教室以外ですと食道や第一・第二グラウンド、アリーナなどがありますがアリーナの方は基本的にイベントごとでしか使わないので今はあまり気にしなくても良いかもしれません。あと重要なのが地下ダンジョンですね」
……うん?
今、地下ダンジョンって言ったか?
おおよそ学校にあるとは思えない物の名が聞こえた気が……。聞き間違い……それとも俗称か?
「対魔物戦術の授業で頻繁に使うのでここもしっかり覚えておいてくださいね」
「対魔物戦術……? 地下ダンジョン……?」
どうやら聞き間違いでも俗称でも無いらしい。本当に魔物の出る地下ダンジョンがあるんだろう。
流石は魔法学園だ。というかこの世界に魔物がいる方が驚きだよ俺は。
「知らないの? 魔法学園は基本的に地下ダンジョンを塞ぐ形で存在しているのよ。外に魔物が出てくるのを防ぐために教師を兼任している凄腕の魔物ハンターが何人も常駐しているから、下手したら他の場所よりも安全とまで言われているわ」
マジか……え、マジなのか。
思っていたよりも遥かにとんでもない世界になってしまったのか地球は。
「エリンさんの言う通り、ここ東都魔法学園には何人もの魔物ハンターが常駐しています。都内に魔物が発生するのを防ぐのもそうですが、何よりも生徒さんの命を預かるわけですので万が一があってはいけませんからね」
なるほど、地下ダンジョンへの対策と魔物ハンターの後継の育成を同時にしてしまおうってことか。
確かに魔法の特訓をするなら本物の魔物がいた方が良いのかもしれない。いや、いないならいないでそれが一番平和で良いんだけども。
とまあそんな感じで学園内に関してやこの世界での常識について色々と学ぶことが出来た授業だった。
明日からは本格的に授業が始まるのだが、こんな状態で本当についていけるのだろうか。せめて教科書を読むだけでもしておこう。
そして翌日。
「おはよう晴翔!」
「おはようございます一ノ瀬さん」
高等クラスの教室に入るとエリンが挨拶をしてきた。
「もう、昨日一緒に学園内を回った仲でしょ? 敬語もいらないし呼び捨てで良いわよ」
「それは流石に……いや、わかった。じゃあ改めて、これからよろしくエリン」
「よろしく、晴翔♪」
今の俺は見た目がこれだからな。学園長も言っていたが、ある程度見た目相応な振る舞いをした方が目立ちにくいというのはその通りだろう。
少なくとも高等クラス内ではもっとフランクに接した方が良いんだろうな。
「よお、晴翔。なんか色々大変なことになっているらしいが……まあ頑張れよ」
エリンが自分の席に向かった後、今度は後ろの席から声がした。
とは言え今の俺にはこの世界における知識と言うか記憶が無い。だから彼が誰なのかがわからないんだよな……。
一応学園内の生徒には俺の事はぼかして伝えてあるらしい。実は死んでいなくて記憶喪失状態になっているということになっている。あまりにも怪し過ぎるが今の所それでなんとかなっているようだ。
だから気を使って話かけてきてくれたのだろう。本当に申し訳ない。
「あ、ああ……。その、ごめん。以前の記憶が無くて……」
「ああ、そう言えばそうだったな。なら改めて名乗っておこうか。俺は永多リュウ。得意なのは水属性魔法で趣味はゲーム。好きな食べ物は焼きそばパンだ」
「永多リュウ……うん、改めてよろしく」
随分とテンポよく情報をくれたけど、むしろその方が今の俺にとっては良いかもしれない。せめてクラス内の人とは死ぬ前の俺と同じような関係性にしておいた方が良いだろうし。
「よし、全員揃ったな。そろそろ1限始めるから準備しろよ~」
1限の科目である数学を担当する教師が教室に入って来たことでクラス内の喧騒が収まった。
懐かしいなこの感じ。異世界にいた期間も含めたらもうかなり昔の事か。
その後授業は進んで行き、何の問題も無く魔法学園での初授業は終わりを迎えた。
高校数学なんて久しぶりだから不安だったものの、案外なんとかなった。それどころか高校生の頃よりも計算速度が上昇している気がする。
恐らくこの体……HARUとしての能力が演算速度にも影響を与えているんだろうな。
と、あまりゆっくりはしていられない。次は属性魔法の授業だからグラウンドに移動しないといけない。
教室からの距離はあまり遠くないものの、厄介なものが他にある。
「あ、またいるよあの精霊」
残念ながらその厄介なものがいたようだ。
この学園内では時折下級精霊が勝手に発生するみたいなんだよな。どうやら地下ダンジョンから漏れ出た魔力が実体を持った結果精霊として姿を現すらしい。
で、その精霊は時折人に対して敵意を持つことがあるのだとか。魔物程の脅威では無いが少し痛いくらいには影響を及ぼしてくるのだと。
まあ元の世界の感覚としては窓から蜂が入って来た時のあの感じに近いのかね?
「あ、晴翔そっちに精霊が……!」
「うお、マジか」
他に人がたくさんいる中、何故俺をめがけてやってくるんだよ。
って他の人も思っていそうだからそこはおあいこか。
「……あれ?」
身構えたのは良いものの、結局精霊が攻撃をして来ることは無かった。
それどころか精霊は奇麗さっぱり消え去っていた。
「ふぅ、何とも無くて良かったな。恐らく魔力が尽きかけてたんだな。なんにせよ怪我をしなくてよかったよ……っといけない。早くグラウンドに行かないと」
精霊騒ぎで少し時間を持っていかれたため、リュウと一緒にグラウンドまで急いで走って行った。
応援ありがとうございます!
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