器用貧乏なバトルマジシャン、異世界では最強でした~物理戦闘も魔法も召喚も全て使えれば強いに決まってるでしょう~

遠野紫

文字の大きさ
上 下
50 / 90
第二部 並行異世界地球編

2 東都魔法学園

しおりを挟む
 無事に……と言って良いのかはわからないが魔法学園にまでたどり着いた俺はまずは学園長室へと向かった。
 生き返ったから再び在籍させる、というのは前例が無さ過ぎて色々と大変らしい。そのため諸々の処理は学園長が自ら行ってくれていたようだ。

「失礼します」
「おや、来たか」

 学園長室に入るとそこには以前にも手続きのために会ったことのある女性がいた。
 彼女こそここ魔法学園の学園長であり、それと同時にとてつもなく優秀な魔術師らしい。まあそうでも無ければ魔法学園の学園長なんて務まらないんだろう。

「久しぶりだね晴翔君。いやはや驚いたよ。まさか人が生き返ることがあるなんてね。国家魔術師になってもう何年も経つがこんなことは初めてだ」

 国家魔術師……細かいことはわからないが、相当な魔法技術を持つ者に与えられる国家公認の称号だと言うことは調べたからわかっている。
 日本国内に十数人しかいないらしく、その価値と言えばもうとんでもないことになっているらしい。
 
 そんな国家魔術師でさえ今まで経験したことが無いと言うことは、魔法があってもなお死人が生き返ることは無いのだろう。
 つまり俺の存在は完全なイレギュラーと言うことになる。

「色々と大変だったよ。何しろ君のような存在が公に知られれば多方面から連絡が殺到するだろうからね。中には君を実験して蘇生魔法を創りだそうとする組織などもいるだろう」
「それは穏やかじゃあないですね」
「そうだな。まあそこは気にしなくても大丈夫だ。我が学園が君やその家族の安全を保障しようじゃないか」

 それは助かる。死ぬまで実験動物になるとか嫌だからな。

「色々とありがとうございます」
「いやいや、こちらとしても君のような存在を抱えて置けるメリットはデカいのさ」

 ……よく考えたらこの学園がそのヤバイ組織じゃない確証って無いんだよな。
 まあその時はその時か。棺桶が燃やされた時に俺は全く燃えなかったことから、少なくとも耐久面に関してはこの世界でも俺の強さは通用するはず。
 いざとなったら両親を連れて逃げればなんとかなるだろ。多分。

「まあ細かい話は後にしよう。以前にも言っていたが、君は亡くなる前の記憶が曖昧なようだからね。今期の授業が始まる前に改めて説明をしておこうじゃないか」

 そう言うと学園長はホワイトボードのような物に魔法を使って映像を投射し始めた。

「まずここは東都魔法学園。それはわかるかな?」
「そうですね。名前だけはわかっているくらいです」
「ふむ、それなら簡単に言おう。要は魔法を学ぶ学校だよここは。その中でもここ東都魔法学園は優秀な者たちが集まることで有名な学校でね」

 なるほど、元の世界における東大とか早稲田とかそう言う話かな?
 いやこの世界にもそれらの大学はあるにはあるみたいだけども。あくまで魔法専門で考えるとこの東都魔法学園の方が優秀ってだけで。

「そう言う訳もあって、この学園は多くの生徒を抱えているのだよ。それこそ下は初等教育、上は大学までね。ここは小中高一貫校と魔法大学を複合した国内でも数少ない一貫校なのさ」
「なるほど。ですがどうして俺は制服を……?」
「何を言っているんだ? 高校生なら制服を着るのは当たり前だろう?」

 ……うん?
 
「もしかして年齢についての記憶も失っているのか?」

 そんなはずは無い……俺は確かに大学生だったはずだ。とっくに成人もしていたし酒だって飲んでいた。
 だが学園長の反応を見るに、今の俺はどうやら高校生のようだ。
 もしや数年のズレが存在しているのか……?

「まあいい。少しずつ記憶を取り戻していけばいいさ。それよりも君の制服についてなんだが……」
「制服ですか?」
「ああ、君はどう見ても女の子だ。なのにどうして男用の制服を着ているのかと、ずっと気になってはいたんだ」
「ああ……」

 俺が男用の制服を着ていることについて、やはり学園長も気になっていたようだ。

「だがおかしなことに過去の在籍記録において君は男性として登録されているんだ。今こうして目の前の君を見ても入学時からその見た目だったようにしか思えないのにも関わらずだ」
 
 ……俺の歪な経歴について彼女は気付いているらしい。
 どういう訳か戸籍も過去の学校における在籍記録も全てにおいて俺は男として記録されていた。
 だが今こうして女の体をしていても皆違和感すら持っていない。まるで俺の見た目に関しての認識だけがすり替わっているかのように。

「何か異常な事が起こっているのは確実だろう。だがそれを解明することは今の我々には恐らく不可能だ。だからこれに関しては今後随時すり合わせを行っていくしかない。ということでまずはその制服からだな」
「……はい?」

 学園長はそう言うと女性用の制服を持ちだしてきた。嫌な予感がする。

「流石に見た目が女の子である君をその制服のまま扱う訳にはいかないんだ」
「それはその……規則的な話ですか?」
「それも少しはあるが、何よりも変に目立ってしまう事を避けるためには重要だ。先程も言った通り、君の異常性について外に漏れることは極力避けたい。それは君の経歴の異質さも含めてだ」

 まあ、それはそうだ。
 データとしては男として登録されているが女の子の姿をしていて男用の制服を着ている……だなんてあまりにも異質過ぎる。異常性が服を着て歩いているようなものだ。
 しかし、しかしだ。

「それを着るのは……抵抗が……」

 女の子として扱われること自体は異世界での事もあって慣れた。だが服装に関しては全くもって別だ。
 露出が多いってのもそうだが、なによりスカートだってのが何より不味い。

「薄々感じてはいたが君の人格は男のそれだろう。本当に申し訳ないと思っている。だがこればかりはどうしようもないんだ」
「……」

 どうやら折れてくれる気は無いらしい。

「……わかりました」

 こうなりゃもうどうにでもなれ。どうせここで言い争っても何にもならないんだろう。実際彼女の言う事の方が論理的に正しいんだ。理にもかなっている。

 と、そう考えていた時期が俺にもあった。

「……これ、思っていた以上にヤバイな?」

 いざ着てみた結果、余計にヤバさが際立っていた。胸元空きすぎ。スカート短すぎ。
 これ絶対幼女に着せて良いものじゃない。あまりにも無防備過ぎる格好だ。特にスカートの丈が短すぎるのもあってか滅茶苦茶下半身がスースーする。少し風が吹けば内側が見えてしまいそうな程に。

 ああ、顔が熱いな。もう夏か。……夏だった。
 いや現実逃避している場合じゃない。この顔の熱さは紛れもなく羞恥のそれだ。え、俺今後この格好で学校生活するのか?

「……終わった」

 あの時俺の方が折れたのを後悔してもしきれない。論理的に正しいがなんだ。俺のこの格好の方が正しく無さすぎだろ。
 ああ、過去に助言できるなら絶対に負けるなと伝えたい。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

処理中です...