器用貧乏なバトルマジシャン、異世界では最強でした~物理戦闘も魔法も召喚も全て使えれば強いに決まってるでしょう~

遠野紫

文字の大きさ
上 下
45 / 90
第一部 異世界アーステイル編

45 元の世界への手がかり

しおりを挟む
 あらためて魔導国にやってきた俺は今度は魔術師ギルドにやって来ていた。
 ここには優秀な魔術師が多く集まっていて、魔法に関する情報も多く集まっているらしい。そんな場所でなら勇者召喚の儀式魔法についても何かわかるかもしれないからだ。

「おや、おやおや!? 貴方は白姫さんじゃありませんか!?」
「ええ、まあ……」

 ギルドに入ると、受付嬢は開口一番そう叫んだ。
 そうだったこの大陸でも俺の名は轟いているんだった。特に魔法文明の国ともなれば俺みたいな有名な魔術師はそれなりの扱いにもなるだろう。

「貴方のおかげで魔術師志望の方も多くなり、魔導国は大きく賑わっておりますよ! それにしても貴方ほどのお方が一体何用なのでしょうか?」
「そうですね。単刀直入に聞くんですけど、勇者召喚についてご存じではありませんか? 何かしらの書物だとか、風の噂だとか、そう言うのでも良いんです。何かしらの手がかりとなりそうなものとかは無いでしょうか」
「勇者召喚……ですか?」

 受付嬢は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。

「すみません、私は存じ上げないですね。特にそう言った噂や情報も回って来てはいませんね」
「そうですか……」

 やはりそう簡単にはありつけないか。まあそうだよな。大規模に知れ渡っているんだったらもっと大々的に勇者召喚を行って世界を救ってもらえば良いんだ。
 それこそどこぞのRPGに良くあるような王の命令で魔王を倒す旅に出る勇者のようにな。
 そうすればこの世界も闇に飲まれしモンスターに怯える必要もない。

「ですが、召喚については少し気になる情報が」
「え……?」
「かつてこの魔導国に存在したプラチナランクの冒険者、『たかなしありす』と言う者はどうやらここでは無い別世界から召喚されたのではないかと、そう言われているのです」

 また、たかなしありすか。けど今プラチナランクって言ったのか?
 確か今プラチナランクとダイヤランクの冒険者は存在しなかったはず。最高でも俺が今いるゴールドランク。
 となるとそれだけの功績をプレイヤーとしての力も無く彼女は成し遂げていたと言う事か。
 ……超優秀な大先輩じゃん。もう少し敬意をもって接するべきだったかもしれない。

「彼女は突然現れたにしては凄まじい魔法の腕を持っていました。それもあの年齢で。それこそ世界でも数人しかいないであろう程の……ですがある時を境にその姿を消してしまったのです」
「いなくなったと言う事ですか?」
「ええ、まるで最初からいなかったかのように完全に痕跡を消してしまったのです。どこを探しても生きているのかさえわからない。そんな状態でした」

 恐らく彼女の言っていることは真実だ。アリスの言っていたこちらの世界への転移と元の世界に戻ったのと辻褄は合う。
 こうなりゃもっと情報が欲しいな。
 
「彼女がいなくなった時、何かありませんでしたか? こう、強大なモンスターが現れたとかそう言った何かが」
「そうですね……あ、そう言えばその時大きな空間の歪みが起こったとかなんとかって言われていますね。私は直接は見たことは無いのですが……」

 そう言うと受付嬢は奥へと入って行き、何かを探し始めた。

「ありました! 確かこの本に……これです!」

 彼女はそう言いながら俺に本のとあるページを見せてくる。

「かつて起こった大規模な空間の歪み。幸い人里に被害は起こっていないようですが、ありすさんが姿を現さなくなったタイミングと同じなんです。直接の関係はわかりませんが何かしらの関連性がある可能性はあるかと思います」
「これは……!?」

 本に記述されていた内容は今多く発生している空間の歪みと似ていた。
 いや、それだけじゃない。そこに描かれていた風景は紛れもない日本のそれだった。

「この絵は一体……?」
「なんでも近くを通りがかった画家の方が空間の先に見えた光景を描いたそうです。誰が見ても全くもって見覚えの無い場所なようで、もしかしたら別世界なんじゃないかとか言われていますね。まあ眉唾物ではありそうですけど」

 ……同じだ。この空間の歪みは今そこらじゅうで起こっている空間の歪みと全く同じものなんだ。
 それが大規模に発生した場合、向こうの世界への転移が可能になる。アリスのことが正しければそう言う事になる。
 これは、可能性だ。元の世界に帰ることが出来るかもしれない。

 けど、問題はこの規模の空間の歪みをどうやって発生させたのかだ。いやそもそも人為的に発生させられるものなのだろうか。
 偶発的に発生するものなのだとすれば、それが起こるまで待つことしか出来ないってことになる。

「あの、白姫さん?」
「……ハッ、す、すみません少し考え事をしていまして。こんなにも多くの有益な情報をありがとうございました」
「いえいえ、白姫さんのためになれるのでしたらこんなこと造作もないですよ。それではまた。白姫さんのますますのご活躍を応援していますね」

 受付嬢に挨拶をして魔術師ギルドをあとにし、時間も時間だから一旦スターティアに戻ろうとした。
 しかしその瞬間に正門の方から人々が走って来るのが見えた。

「どうかしたんですか?」
「出たんだ……魔龍が……!」

 魔龍……?
 聞いたことが無い名前だ。

[報告、魔龍は儀式魔法によって構築されたゲーム内には存在していないモンスターです]
「何だって?」

 まさかとは思ったが、やっぱり存在していなかったのか。

[あのモンスターは儀式魔法の発動後に現れた新種のモンスターであり、ただひたすらに人と街を襲い続けることから魔龍と呼ばれ恐れられていること以外ほとんどわかっていることがありません]
「新種……だって?」

 おいおいマジか。ここにきてナビすら見たことも聞いたことも無いモンスターが出てきたってのか。 
 ……もしかして、これも空間の歪みに何か関係があるのか?

[ですが一つわかっていることがあります。このモンスターは非常に強大な闇に飲まれしモンスターの反応を示しているようです]
「……そうか。なら、放っておくわけにもいかないよな」

 走って来る人の流れに逆らうように、正門へと向かって走る。
 そして外へ出ると、数百メートル程先に禍々しいオーラを放つ一体の龍が見えた。

「あれが……魔龍」

 どう見てもヤバイ見た目だ。何より全身からにじみ出る殺意が物凄い。この世界に来たばかりの俺だったら相対しただけで失禁気絶していてもおかしくは無い。
 とは言えゲームには存在しないモンスターであれ、後ろには人々の住む街がある。戦わないという選択肢は無い。

「やるしかない……よな」

 一筋縄ではいかない。それはわかっている。
 だからこそ、俺が……勇者が倒すしかないんだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

処理中です...