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第一部 異世界アーステイル編
41 彼女の罪
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「それで、指名手配の理由って……いや言いたくないんだったらそれはそれで良いんですけど」
「ここまで来て言わない訳にもいかないでしょ。私、この世界に来たばかりの時……あ、転移してきた時じゃ無くて勇者として、プレイヤーとして転生してきた時のことね。プレイヤーとしての圧倒的な力を使って英雄もどきになってたの」
「英雄では無く、英雄もどき……ですか?」
妙に引っかかる言い回しだな。やっていることがそう変わらないなら別に英雄で良くないか?
そう言えない何かが彼女の中にはあるってことか。
「ええ、英雄ごっこと言えばいいのかしらね。強大なモンスターを狩って、皆に褒められて、調子に乗ってた。それである時、街を襲った闇に飲まれしモンスターを倒そうとして超級魔法を発動させたの。そうしたら……」
アリスは震え始めた。
不味い、言いたくないことを、思い出したくないことを強制してしまっているのかもしれないな。
「大丈夫、ゆっくりで良いから。言いたくないならそれでも……」
「駄目、言わないと先に進めないから……ふぅ。……あの時、何故か魔法が暴走して……街ごと全部消えちゃったの」
「街ごと……」
あまり信じたくは無いことではあるが彼女が嘘を言っているようにも見えない。
それにプレイヤーの力では不可能では無いはずだ。何故か強化されている俺の魔法の威力でも上級魔法を使えば街一つは吹き飛ばせてしまう。
ましてや彼女は魔法のエキスパートであるエレメンタルウィザードだ。そんな彼女の超級魔法が暴走すれば確実に街一つ簡単に吹き飛んでしまうだろう。
けど逆に魔法のエキスパートであるがゆえに、魔法の暴走などそうそう起こらないような気もする。
「アリスさんは……魔法の無詠唱についてはご存じですか?」
ナビによれば無詠唱は無理やり使おうとすれば魔法の暴走を引き起こす可能性が高いと言う。というかこっちに来たばかりの時に俺も一度そのせいで火だるまになった経験がある。
痛みや熱は感じなかったものの、あの時の体中が炎に包まれていく恐怖と驚きはそう簡単には忘れはしない。
「いえ、初耳だわ。そんなものがあるの?」
「知らないのならそれで良いんですが……。どうやら無詠唱で魔法を発動させると暴走する可能性があるらしいのです。今回は関係ないみたいですけど」
「そう……なのね」
となると無詠唱による暴走では無い……か。
ナビ、完全詠唱における魔法暴走の確率はどれくらいになる?
[一般の冒険者においては1割程、勇者様方のような魔力の扱いに長けた存在ですと0.01%にも満たないかと思われます]
うーむ、となるとますます変だな。
もちろん極低確率で発生するというのならそれはそうなんだろうけど、その中でも魔法系最強と名高い職業を使う彼女がピンポイントで暴走させることなんてあるのか?
「あ、でも確かあの時……」
「何か思い出したんですか?」
「ええ、あの時私のほかにも微力な魔力反応を感じたような気がするわ。けど私の魔法発動に影響を与える程のものでは無かったはず……」
「なるほど……」
その魔力反応の持ち主に何かされた可能性も……いや、どれだけ考えても憶測の域を出ないな。
とにかく、今重要なのは彼女が何故指名手配されているのかだ。
「それで、指名手配にはその事件が関係あると」
「……そう。街を丸ごと一つ消してしまったその責任を取るために、ある王国の宮廷魔導士としてその身を捧げるか、もしくは奴隷として売りさばかれるかを選ばされて……」
「逃げてきたと言う訳ですね」
彼女が追われている理由もそれで納得できる。
でも責任のために宮廷魔導士になれってのはどういう……言っちゃあれだが街を簡単に滅ぼせるヤツをひざ元に置いておくのってどうなんだ。
「宮廷魔導士になれと言うのはこれまたどうしてなのでしょう……」
「この世界だと超級魔法を扱える人は全くと言って良い程いないからね。そんな存在を国で保持しておけば、戦争を始めとしたありとあらゆることにおいて強く出られるってことなのでしょう」
「あぁ……」
心当たりはある。俺もつい最近王子に求婚されたしな。
「それに、あの時の国王は……完全にそう言った目で私を見ていたわ」
「……」
なるほどな。俺たちプレイヤーはキャラクリで作られた容姿でこの世界に来ている都合上、この世界では絶世の美男美女として扱われることも多い。
そんな美女が自分の言う事を完全に聞く状態で手に入るとなれば、それはもうたまらんだろう。
見た感じ彼女の見た目は元の世界で言えば18歳くらいだが、この世界においてはとっくに成人済みの見た目だ。
……そう言う目的としても自分のそばにおいておきたかったのだろう。
「私がやったことは取り返しがつかないことだって言うのはわかってる……けど、あんまりじゃない。強制的に体を売らなきゃいけないなんて……おかしいわよ……!」
これに関しては俺が下手に口出しする問題でも無い。と言うか口出しできない。
確かに彼女が多くの人の命を奪ったと言うのは確かなんだろうが、だからと言って奴隷落ちしろだとか王様の玩具になれとか言えねえよ。
「だから指名手配犯として逃げながらも、せめてもの償いとして孤児院とか貧乏な街や村に物資やお金の補助をしているの。失ったものは帰ってこないかもしれないけど、これから失われるかもしれないものは守れるから」
「……お金が必要と言うのはそう言う事だったんですね」
うーん、それなら俺のフィギュアを売ることも許すべきだよな。
俺が恥ずかしいくらいで多くの人が助かるのならそれが一番良いに決まってら。
あれ、それにしても何でアリスは俺のフィギュアなんか作れるんだ。
考えてみれば不自然だ。資料は一体どこで……そもそもあの造形は素人が出来るものじゃないだろ。
一目見ただけでもわかるあまりにも精巧過ぎるデザイン。髪の躍動感に、俺の可愛らしくモチモチなお顔が完全に再現されていた。
「……一つ気になるんですけど、アリスさんはどうやってあのフィギュアを作っているんですか?」
「あれ? あれは土属性の魔法を転用させて作った造形魔法で作っているのよ。貴方の資料に関してはそこら中で壁画や絵画になっているから困らないもの。作りやすくて助かるわ」
「えっ」
造形魔法というのも気になることではあるが、それ以上にそこら中に俺の壁画や絵画があるのがびっくりなんだが!?
「貴方、もしかして自分で気付いていないの? 白姫と言ったら大陸を渡って伝わってくるくらい超有名な冒険者なのよ?」
「おぅ……マジか……」
どうやら俺は、有名になりすぎていたようだ……。
というか、えっそこまで白姫の名が知れ渡っているの?
それ話変わって来るというか、もはや恥ずかしいとかいうレベルじゃないんだけど……?
「は、はは……」
あぁ、ヤバイ……変な笑いを絞り出すことしか出来ないや。
「おい、聞こえているか! 私はこの街の憲兵だ。この宿に指名手配中の者が紛れ込んでいると言う情報があった!」
「うぁっ何事!?」
突然ドアが強く叩かれたかと思えば部屋の外からそう聞こえてきた。
ああ不味い不味い。この状況でアリスを見られたら完全に終わりだ。
「どうしようHARU……」
「速やかに部屋を出るんだ。同時に部屋内の確認をさせてもらうぞ」
ど、どうしようか……。
そうだひとまず転移をしよう。確か一部の転移アイテムは使用者から一定範囲内の人も一緒に転移できたはずだ。
「アリスさん、ひとまず転移をします。俺の近くにいてください」
「わ、わかったわ!」
アイテムボックスから転移用のアイテムを取り出し使用する。
その瞬間、辺りの光景が変わった。そしてそこには憲兵と思われる者はいないし、声もしない。どうやら間に合ったようだ。
いやぁ憲兵も一緒に転移されたらどうしようかと思ったけど何とかなって良かった。
「……どうやら間に合ったみたいですね」
「そうみたいね……あれ、待ってここって……」
何か気になることがあるのかアリスは何か呟きながら辺りを歩いて周っていた。
「アリスさん? どうかしたんですか?」
「ここ……間違いない……。私が消した街があったところだ……」
「ここまで来て言わない訳にもいかないでしょ。私、この世界に来たばかりの時……あ、転移してきた時じゃ無くて勇者として、プレイヤーとして転生してきた時のことね。プレイヤーとしての圧倒的な力を使って英雄もどきになってたの」
「英雄では無く、英雄もどき……ですか?」
妙に引っかかる言い回しだな。やっていることがそう変わらないなら別に英雄で良くないか?
そう言えない何かが彼女の中にはあるってことか。
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アリスは震え始めた。
不味い、言いたくないことを、思い出したくないことを強制してしまっているのかもしれないな。
「大丈夫、ゆっくりで良いから。言いたくないならそれでも……」
「駄目、言わないと先に進めないから……ふぅ。……あの時、何故か魔法が暴走して……街ごと全部消えちゃったの」
「街ごと……」
あまり信じたくは無いことではあるが彼女が嘘を言っているようにも見えない。
それにプレイヤーの力では不可能では無いはずだ。何故か強化されている俺の魔法の威力でも上級魔法を使えば街一つは吹き飛ばせてしまう。
ましてや彼女は魔法のエキスパートであるエレメンタルウィザードだ。そんな彼女の超級魔法が暴走すれば確実に街一つ簡単に吹き飛んでしまうだろう。
けど逆に魔法のエキスパートであるがゆえに、魔法の暴走などそうそう起こらないような気もする。
「アリスさんは……魔法の無詠唱についてはご存じですか?」
ナビによれば無詠唱は無理やり使おうとすれば魔法の暴走を引き起こす可能性が高いと言う。というかこっちに来たばかりの時に俺も一度そのせいで火だるまになった経験がある。
痛みや熱は感じなかったものの、あの時の体中が炎に包まれていく恐怖と驚きはそう簡単には忘れはしない。
「いえ、初耳だわ。そんなものがあるの?」
「知らないのならそれで良いんですが……。どうやら無詠唱で魔法を発動させると暴走する可能性があるらしいのです。今回は関係ないみたいですけど」
「そう……なのね」
となると無詠唱による暴走では無い……か。
ナビ、完全詠唱における魔法暴走の確率はどれくらいになる?
[一般の冒険者においては1割程、勇者様方のような魔力の扱いに長けた存在ですと0.01%にも満たないかと思われます]
うーむ、となるとますます変だな。
もちろん極低確率で発生するというのならそれはそうなんだろうけど、その中でも魔法系最強と名高い職業を使う彼女がピンポイントで暴走させることなんてあるのか?
「あ、でも確かあの時……」
「何か思い出したんですか?」
「ええ、あの時私のほかにも微力な魔力反応を感じたような気がするわ。けど私の魔法発動に影響を与える程のものでは無かったはず……」
「なるほど……」
その魔力反応の持ち主に何かされた可能性も……いや、どれだけ考えても憶測の域を出ないな。
とにかく、今重要なのは彼女が何故指名手配されているのかだ。
「それで、指名手配にはその事件が関係あると」
「……そう。街を丸ごと一つ消してしまったその責任を取るために、ある王国の宮廷魔導士としてその身を捧げるか、もしくは奴隷として売りさばかれるかを選ばされて……」
「逃げてきたと言う訳ですね」
彼女が追われている理由もそれで納得できる。
でも責任のために宮廷魔導士になれってのはどういう……言っちゃあれだが街を簡単に滅ぼせるヤツをひざ元に置いておくのってどうなんだ。
「宮廷魔導士になれと言うのはこれまたどうしてなのでしょう……」
「この世界だと超級魔法を扱える人は全くと言って良い程いないからね。そんな存在を国で保持しておけば、戦争を始めとしたありとあらゆることにおいて強く出られるってことなのでしょう」
「あぁ……」
心当たりはある。俺もつい最近王子に求婚されたしな。
「それに、あの時の国王は……完全にそう言った目で私を見ていたわ」
「……」
なるほどな。俺たちプレイヤーはキャラクリで作られた容姿でこの世界に来ている都合上、この世界では絶世の美男美女として扱われることも多い。
そんな美女が自分の言う事を完全に聞く状態で手に入るとなれば、それはもうたまらんだろう。
見た感じ彼女の見た目は元の世界で言えば18歳くらいだが、この世界においてはとっくに成人済みの見た目だ。
……そう言う目的としても自分のそばにおいておきたかったのだろう。
「私がやったことは取り返しがつかないことだって言うのはわかってる……けど、あんまりじゃない。強制的に体を売らなきゃいけないなんて……おかしいわよ……!」
これに関しては俺が下手に口出しする問題でも無い。と言うか口出しできない。
確かに彼女が多くの人の命を奪ったと言うのは確かなんだろうが、だからと言って奴隷落ちしろだとか王様の玩具になれとか言えねえよ。
「だから指名手配犯として逃げながらも、せめてもの償いとして孤児院とか貧乏な街や村に物資やお金の補助をしているの。失ったものは帰ってこないかもしれないけど、これから失われるかもしれないものは守れるから」
「……お金が必要と言うのはそう言う事だったんですね」
うーん、それなら俺のフィギュアを売ることも許すべきだよな。
俺が恥ずかしいくらいで多くの人が助かるのならそれが一番良いに決まってら。
あれ、それにしても何でアリスは俺のフィギュアなんか作れるんだ。
考えてみれば不自然だ。資料は一体どこで……そもそもあの造形は素人が出来るものじゃないだろ。
一目見ただけでもわかるあまりにも精巧過ぎるデザイン。髪の躍動感に、俺の可愛らしくモチモチなお顔が完全に再現されていた。
「……一つ気になるんですけど、アリスさんはどうやってあのフィギュアを作っているんですか?」
「あれ? あれは土属性の魔法を転用させて作った造形魔法で作っているのよ。貴方の資料に関してはそこら中で壁画や絵画になっているから困らないもの。作りやすくて助かるわ」
「えっ」
造形魔法というのも気になることではあるが、それ以上にそこら中に俺の壁画や絵画があるのがびっくりなんだが!?
「貴方、もしかして自分で気付いていないの? 白姫と言ったら大陸を渡って伝わってくるくらい超有名な冒険者なのよ?」
「おぅ……マジか……」
どうやら俺は、有名になりすぎていたようだ……。
というか、えっそこまで白姫の名が知れ渡っているの?
それ話変わって来るというか、もはや恥ずかしいとかいうレベルじゃないんだけど……?
「は、はは……」
あぁ、ヤバイ……変な笑いを絞り出すことしか出来ないや。
「おい、聞こえているか! 私はこの街の憲兵だ。この宿に指名手配中の者が紛れ込んでいると言う情報があった!」
「うぁっ何事!?」
突然ドアが強く叩かれたかと思えば部屋の外からそう聞こえてきた。
ああ不味い不味い。この状況でアリスを見られたら完全に終わりだ。
「どうしようHARU……」
「速やかに部屋を出るんだ。同時に部屋内の確認をさせてもらうぞ」
ど、どうしようか……。
そうだひとまず転移をしよう。確か一部の転移アイテムは使用者から一定範囲内の人も一緒に転移できたはずだ。
「アリスさん、ひとまず転移をします。俺の近くにいてください」
「わ、わかったわ!」
アイテムボックスから転移用のアイテムを取り出し使用する。
その瞬間、辺りの光景が変わった。そしてそこには憲兵と思われる者はいないし、声もしない。どうやら間に合ったようだ。
いやぁ憲兵も一緒に転移されたらどうしようかと思ったけど何とかなって良かった。
「……どうやら間に合ったみたいですね」
「そうみたいね……あれ、待ってここって……」
何か気になることがあるのかアリスは何か呟きながら辺りを歩いて周っていた。
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