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第一部 異世界アーステイル編
26 転移トラップ
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……転移トラップか。
辺りを見回しても他の3人はいない。それどころかそもそも階段が無い。
明らかにたった今までいた場所とは全く違う場所にいた。
不味いなこれ。他の3人も恐らくそれぞれ別の場所に飛ばされているはず。
それにダンジョン内ではメッセージが使えない。となるとどこで落ち合うとかも出来ない。
いや初めての場所ではマップ機能が使えないからどちらにしろか。
流石に一番難易度が高くなる下層において離れ離れになるのは本当にヤバイ。単体攻略をそもそも考えていない難易度なんだから。
「……するしかないのか」
となると安全のために呼びだすほかない。
……召喚獣を。
ここだとフレイムドラグーンは大きすぎて呼び出せない。だからエインヘリヤルとタナトスになるんだが……この二人両方ともなんか危ういんだよなぁ……。
いや考えても仕方ない。一人での行動が危険なのは変わらないんだ。少しでも早く他のメンバーに出会わないと……。
ああ、こうなりゃもうヤケだ。
「……来い、エインヘリヤル! タナトス!」
俺が呼ぶと同時に目の前に二人は姿を現した。
良かった。ひとまずダンジョン内での召喚は出来るらしい。
「我を呼んだかマスター」
「いえいえ、お呼びになられたのは私ですよね」
「ぁ゛ぁっ? コイツなんかいなくても我だけで十分だろうマスター!」
あーもう、すぐこうなる……。
「お、落ち着いてくれ。今はダンジョンの中なんだ。とりあえず護衛を頼む」
「了解だマスター」
「承知いたしましたマイマスター」
まあとりあえずこれである程度の脅威は払えるな。
にしてもどうするか。他の3人はトップナインでも上位だし、闇雲に探し回るよりもボスの間の前にいた方が合流出来そうだな。
となれば、ひとまず最深部を目指すことにしよう。
「危ないマスター」
「うぉっ」
突然エインヘリヤルは俺を抱き上げた。
だからこれやめてくれ恥ずかしい……!
「何故、軽率にマスターに触れているのでしょうか」
タナトスは怒りを込めた声でそう言いながらエインヘリヤルの肩に手を置いた。
マスクのせいで全体の表情は見えないが、明らかに目が笑っていない。
「この方が安全だろう? 我がいればどんなものでもマスターに指一本触れさせはしない」
「それは……私も含まれてます?」
「さあどうだかな」
うーんバッチバチ。やめて、俺のために争わないで。割と真面目にどちらが勝っても状況的に不味いから。
「むっ、何かが来る」
「下がっていなさい。不本意ですがマスターは貴方に任せますよ」
タナトスはそう言って何かの気配がする方に向かって歩いて行く。
「グルルルゥゥ……」
「ただのモンスターでは無いですか」
壁の向こうから現れたのは中型の狼のようなモンスターであるエルダーウルフだった。
だがコイツは他の獣型モンスターとは違う。高い知能を持っており、獣でありながら魔法を扱うのだ。
しかし、それでもタナトスには通用しない。
「沈みなさい、ダークアビス……。ふぅ、たわいも無いですね」
エルダーウルフはタナトスの発動させた魔法に飲みこまれ、影の中へと消えて行った。
ダークアビスは対策を行えばすぐに解放されるが、出来無ければあっという間に影に飲みこまれてしまう。
あのエルダーウルフは不運にも対策を知らなかったんだろう。
「では先に進みましょうか。仕方が無いので今回はマスターは貴方に任せます」
「ああ、心配はいらない。任せておけ」
そのままエインヘリヤルに抱きかかえられたままダンジョンを進む。
マジでどういう状況なのこれ。いや俺が呼びだしたんだけどさ。もうこいつらだけで良いんじゃないかな。
「この魔力は……。エインヘリヤル、何があってもマスターを守りなさい。良いですね」
「ハッ言われなくてもやってやらぁ」
「どうしたタナトス、何かいたのか?」
明らかに雰囲気が変わったタナトスは歩みを止め、即座に臨戦態勢をとった。
「かなり厄介なのがいます。……来ました」
タナトスがそう言うのと同時に、頭から角を生やし、翼で羽ばたきながら浮遊している人型のモンスターが現れた。
もろに悪魔って感じな見た目だ。
「おいおい、こんな場所に人間がいるじゃないか」
「ただの人間と思わないことですね。マスターは凄まじくお強い」
「ほーん。で、そのお強いマスターは何で戦わねえの?」
それは俺も聞きたい。まあ成り行きでこうなっただけなんだけども。
「マスターが戦うにも値しないのですよこのダンジョンは」
それは言い過ぎだと思うよ。流石に少しは歯ごたえあったよ。
「はあ、その言葉……忘れんなよ」
モンスターの雰囲気が変わった。何かして来る……!
「ブラッドランス!」
「ダークレイン!」
二人共同時に魔法を発動させた。
悪魔型のモンスターの方はブラッドランスと言う魔法だ。聞いたことは無いが、見た感じ血のように赤い槍を大量に生み出して射出する魔法のようだ。
それに対してタナトスは影から生み出した矢を無数に撃ちだすダークレインを発動させた。恐らくあのモンスターを打ち取るための魔法では無く、魔法がこちらにとんでこないようにするためのものだろう。
「タナトス、こっちは気にしなくていい。倒せるのならすぐに倒してしまって良いぞ」
「いえ……貴方様のその可愛らしい顔に、美しい体に、無情にも傷がついてしまう可能性があるのならば、その確率は少しでも排さなければ」
「おいおい随分と舐めてくれるじゃないか。ならこれはどうだ?」
「ッ……いや、何ともない? 一体何を……」
「んぅっ」
「マスター!?」
あ、ヤバイ……アイツの魔法を受けたのか知らないけど、頭がホワホワする……。
体が熱い……。
「あーあ、さっさと俺を倒さないから」
「……何をした」
「アンタの軽率な行動のせいで大事なマスターとやらが……」
「何をしたのかと聞いている!!」
「ゥッ……!?」
タナトスが凄い怒っている……俺のために……。始めて見たが凄い剣幕だ……。
なんだか凄く……。
「おいおい落ち着けって、別に今すぐどうってことはねえよ。ただちょっと感覚をね、弄らせてもらっただけだ」
「感覚だと……?」
「おい、マスター! しっかりしろ!」
あー、エインヘリヤルってこんなにかっこよかったっけ。
なんかこうやって抱かれてるとさ。白馬の王子様と姫とかそういうやつみたいだよな。
「そうか貴様……インキュバスか! おのれ、マスターには指一本触れさせはしない!」
「触れさせない……ねえ。別に触れなくても出来るんだよ」
「んぐっぁっぁ……」
体が熱い……奥から疼いて……仕方がない……。
「マスター!」
「妙な魂をしているが、それでも体はしっかりと女のそれだ。俺の魔法もしっかり効いているみたいだな。さーてどうするか。○○を○○○○尽くすのもいいし、いっそのこと×××しちまうのもいいかもな」
「貴様、断じて許さんぞ!」
「ははっ、何を許さな……へ?」
あれ……あのモンスター首が……首が取れてる!?
というか意識がはっきりとしてきたぞ。……ああやだ思い出したくない。黒歴史確実のことを考えていたのは覚えている。
インキュバスとか言っていたし、奴の魔法で精神が体に引っ張られたってことなのか……?
「ご無事でしょうかマスター!」
「あ、ああ大丈夫だ。なんか意識がぼわっとしていたような気がするが、実害は無い」
「それは良かったです……本当に」
……こんなに心配そうなタナトスは始めて見たな。
普段はあんな感じだが、実際は俺の事を凄い大事に思ってくれているのだろう。
となると、それほど忌避しなくても良いのかもしれない。あれもきっと忠誠心とかの表れで……。
「ああ、良かった……貴方の初めてを貰うのは、この私なのですから……!」
訂正。やっぱり駄目だわコイツ。
「おいふざけんじゃねえぞ我は絶対に許さねえ!」
「口を挟まないでください。あなたにマスターと私の関係を否定する権利はありませんよ」
「いや、俺だってタナトスのものになる気は無いが?」
結局タナトスはタナトスだった。
なお、この後は特に目立った敵も出ず、ボスの間の前で無事他3人と合流出来たのだった。
……いや、エインヘリヤルに抱かれたままの状態だったから色々と後処理が大変だったんだ。俺に関しては無事では無いかもしれない。
辺りを見回しても他の3人はいない。それどころかそもそも階段が無い。
明らかにたった今までいた場所とは全く違う場所にいた。
不味いなこれ。他の3人も恐らくそれぞれ別の場所に飛ばされているはず。
それにダンジョン内ではメッセージが使えない。となるとどこで落ち合うとかも出来ない。
いや初めての場所ではマップ機能が使えないからどちらにしろか。
流石に一番難易度が高くなる下層において離れ離れになるのは本当にヤバイ。単体攻略をそもそも考えていない難易度なんだから。
「……するしかないのか」
となると安全のために呼びだすほかない。
……召喚獣を。
ここだとフレイムドラグーンは大きすぎて呼び出せない。だからエインヘリヤルとタナトスになるんだが……この二人両方ともなんか危ういんだよなぁ……。
いや考えても仕方ない。一人での行動が危険なのは変わらないんだ。少しでも早く他のメンバーに出会わないと……。
ああ、こうなりゃもうヤケだ。
「……来い、エインヘリヤル! タナトス!」
俺が呼ぶと同時に目の前に二人は姿を現した。
良かった。ひとまずダンジョン内での召喚は出来るらしい。
「我を呼んだかマスター」
「いえいえ、お呼びになられたのは私ですよね」
「ぁ゛ぁっ? コイツなんかいなくても我だけで十分だろうマスター!」
あーもう、すぐこうなる……。
「お、落ち着いてくれ。今はダンジョンの中なんだ。とりあえず護衛を頼む」
「了解だマスター」
「承知いたしましたマイマスター」
まあとりあえずこれである程度の脅威は払えるな。
にしてもどうするか。他の3人はトップナインでも上位だし、闇雲に探し回るよりもボスの間の前にいた方が合流出来そうだな。
となれば、ひとまず最深部を目指すことにしよう。
「危ないマスター」
「うぉっ」
突然エインヘリヤルは俺を抱き上げた。
だからこれやめてくれ恥ずかしい……!
「何故、軽率にマスターに触れているのでしょうか」
タナトスは怒りを込めた声でそう言いながらエインヘリヤルの肩に手を置いた。
マスクのせいで全体の表情は見えないが、明らかに目が笑っていない。
「この方が安全だろう? 我がいればどんなものでもマスターに指一本触れさせはしない」
「それは……私も含まれてます?」
「さあどうだかな」
うーんバッチバチ。やめて、俺のために争わないで。割と真面目にどちらが勝っても状況的に不味いから。
「むっ、何かが来る」
「下がっていなさい。不本意ですがマスターは貴方に任せますよ」
タナトスはそう言って何かの気配がする方に向かって歩いて行く。
「グルルルゥゥ……」
「ただのモンスターでは無いですか」
壁の向こうから現れたのは中型の狼のようなモンスターであるエルダーウルフだった。
だがコイツは他の獣型モンスターとは違う。高い知能を持っており、獣でありながら魔法を扱うのだ。
しかし、それでもタナトスには通用しない。
「沈みなさい、ダークアビス……。ふぅ、たわいも無いですね」
エルダーウルフはタナトスの発動させた魔法に飲みこまれ、影の中へと消えて行った。
ダークアビスは対策を行えばすぐに解放されるが、出来無ければあっという間に影に飲みこまれてしまう。
あのエルダーウルフは不運にも対策を知らなかったんだろう。
「では先に進みましょうか。仕方が無いので今回はマスターは貴方に任せます」
「ああ、心配はいらない。任せておけ」
そのままエインヘリヤルに抱きかかえられたままダンジョンを進む。
マジでどういう状況なのこれ。いや俺が呼びだしたんだけどさ。もうこいつらだけで良いんじゃないかな。
「この魔力は……。エインヘリヤル、何があってもマスターを守りなさい。良いですね」
「ハッ言われなくてもやってやらぁ」
「どうしたタナトス、何かいたのか?」
明らかに雰囲気が変わったタナトスは歩みを止め、即座に臨戦態勢をとった。
「かなり厄介なのがいます。……来ました」
タナトスがそう言うのと同時に、頭から角を生やし、翼で羽ばたきながら浮遊している人型のモンスターが現れた。
もろに悪魔って感じな見た目だ。
「おいおい、こんな場所に人間がいるじゃないか」
「ただの人間と思わないことですね。マスターは凄まじくお強い」
「ほーん。で、そのお強いマスターは何で戦わねえの?」
それは俺も聞きたい。まあ成り行きでこうなっただけなんだけども。
「マスターが戦うにも値しないのですよこのダンジョンは」
それは言い過ぎだと思うよ。流石に少しは歯ごたえあったよ。
「はあ、その言葉……忘れんなよ」
モンスターの雰囲気が変わった。何かして来る……!
「ブラッドランス!」
「ダークレイン!」
二人共同時に魔法を発動させた。
悪魔型のモンスターの方はブラッドランスと言う魔法だ。聞いたことは無いが、見た感じ血のように赤い槍を大量に生み出して射出する魔法のようだ。
それに対してタナトスは影から生み出した矢を無数に撃ちだすダークレインを発動させた。恐らくあのモンスターを打ち取るための魔法では無く、魔法がこちらにとんでこないようにするためのものだろう。
「タナトス、こっちは気にしなくていい。倒せるのならすぐに倒してしまって良いぞ」
「いえ……貴方様のその可愛らしい顔に、美しい体に、無情にも傷がついてしまう可能性があるのならば、その確率は少しでも排さなければ」
「おいおい随分と舐めてくれるじゃないか。ならこれはどうだ?」
「ッ……いや、何ともない? 一体何を……」
「んぅっ」
「マスター!?」
あ、ヤバイ……アイツの魔法を受けたのか知らないけど、頭がホワホワする……。
体が熱い……。
「あーあ、さっさと俺を倒さないから」
「……何をした」
「アンタの軽率な行動のせいで大事なマスターとやらが……」
「何をしたのかと聞いている!!」
「ゥッ……!?」
タナトスが凄い怒っている……俺のために……。始めて見たが凄い剣幕だ……。
なんだか凄く……。
「おいおい落ち着けって、別に今すぐどうってことはねえよ。ただちょっと感覚をね、弄らせてもらっただけだ」
「感覚だと……?」
「おい、マスター! しっかりしろ!」
あー、エインヘリヤルってこんなにかっこよかったっけ。
なんかこうやって抱かれてるとさ。白馬の王子様と姫とかそういうやつみたいだよな。
「そうか貴様……インキュバスか! おのれ、マスターには指一本触れさせはしない!」
「触れさせない……ねえ。別に触れなくても出来るんだよ」
「んぐっぁっぁ……」
体が熱い……奥から疼いて……仕方がない……。
「マスター!」
「妙な魂をしているが、それでも体はしっかりと女のそれだ。俺の魔法もしっかり効いているみたいだな。さーてどうするか。○○を○○○○尽くすのもいいし、いっそのこと×××しちまうのもいいかもな」
「貴様、断じて許さんぞ!」
「ははっ、何を許さな……へ?」
あれ……あのモンスター首が……首が取れてる!?
というか意識がはっきりとしてきたぞ。……ああやだ思い出したくない。黒歴史確実のことを考えていたのは覚えている。
インキュバスとか言っていたし、奴の魔法で精神が体に引っ張られたってことなのか……?
「ご無事でしょうかマスター!」
「あ、ああ大丈夫だ。なんか意識がぼわっとしていたような気がするが、実害は無い」
「それは良かったです……本当に」
……こんなに心配そうなタナトスは始めて見たな。
普段はあんな感じだが、実際は俺の事を凄い大事に思ってくれているのだろう。
となると、それほど忌避しなくても良いのかもしれない。あれもきっと忠誠心とかの表れで……。
「ああ、良かった……貴方の初めてを貰うのは、この私なのですから……!」
訂正。やっぱり駄目だわコイツ。
「おいふざけんじゃねえぞ我は絶対に許さねえ!」
「口を挟まないでください。あなたにマスターと私の関係を否定する権利はありませんよ」
「いや、俺だってタナトスのものになる気は無いが?」
結局タナトスはタナトスだった。
なお、この後は特に目立った敵も出ず、ボスの間の前で無事他3人と合流出来たのだった。
……いや、エインヘリヤルに抱かれたままの状態だったから色々と後処理が大変だったんだ。俺に関しては無事では無いかもしれない。
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