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第一部 異世界アーステイル編
24 いざダンジョン都市へ
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狂夜から聞いた話を纏めるとだいたいの筋書きが見えてきた。
一言で表すのなら、ケインはクソ……ということだ。どうやら最初からエリィをパーティに入れたかったらしく、そのタイミングを探していたようだ。
しかしそうなると元々いた回復術師であるエランが邪魔になった。だがパーティから追放するためには色々と面倒くさい後処理や追放するに見合う理由が必要だった。
そこで死んだことにしようと思いついたのだろう。だがただ死んだことにするには問題があった。彼自身もそこそこの冒険者であったため、生半可な理由で死ぬような存在では無かったのだ。
だから偶然その時仲間を求めていた狂夜をスケープゴートにすることを思いついた。
全ての罪と現因を狂夜に押し付け、自分たちは安全にエランを追放し新たにエリィを迎え入れる。それがケインの考えた筋書きだった。
ちなみにそのエランは今狂夜が匿っているらしい。生きていることが知られたら口封じのために殺される可能性があるとのことだ。
「まあ、その作戦には唯一の欠陥があったって訳だ。オレが強すぎたっていう点がな」
「まさかボスを単身で速攻で落とすなんて、こっちの世界の住人は考えもしないことみたいですからね」
「それにしても、君も初期は仲間を求めていたんだな」
……あえて俺が言わなかった点をレイブンは突いた。
「な、悪いか!? オレだってこっちに来たばかりの時は心細かったんだよクソ!」
図星というか地雷と言うか、目に見えて狂夜は動揺し始める。こうなるから言わなかったんだ。
「けど、今はもう新たな仲間は作らねえって決めたんだ。オレのせいで変な犠牲は出したくねえしな」
「それなら……」
「勘違いすんな。オレが最強プレイヤーになりたいってのは変わらねえ。だからプレイヤーとは慣れ合わねえ」
俺たちと仲間になろうって中々に臭いセリフを言おうとしたが、寸前で遮られた。
まあ言ってから否定されるよりも恥ずかしい指数は低いし良いか。いや良くない。
「とにかく、早く街に戻るぞ。アイツらが変な噂を広めたら今回の依頼もぱあになっちまうかもしれねえ」
「それもそうですね。ひとまず街に戻って依頼の達成処理をしましょうか」
狂夜の言う通りせっかくここまで来てドラグレンを倒したのに報酬無しになってしまったら悲しい。
ということで俺たちは洞窟の外に出るなり転移アイテムで街に戻った。これなら逃げ帰ったケインらよりも速く街に戻れるだろうしな。
その読みは正しかったようで、何の問題も無く達成処理を行い、その数時間後にケインたちは要塞都市を訪れたようだった。
もっともその時には俺もレイブンも狂夜もいなくなっていたのだが。
きっと狂夜は今後も大変なことになるのだろうが、今の俺に出来ることが無いのも事実だ。彼には彼自身で頑張ってもらうしかない。
そんな訳でひと悶着あった訳だが、結局ドラグレン以外に関しての情報が得られることも無く、闇の勢力に関しては未だ情報が得られずにいた。
そんな時、オールアールのギルドでとある噂を聞いた。
なんでも、ダンジョン都市に新たなダンジョンが生まれたのだとか。
それもダンジョンの情報からして恐らくゲームには存在しなかったもののようだ。
もうマジでどんな情報でも欲しい今、もはやダンジョンにすがるしかないのかもしれない。
てな訳で早速ダンジョン都市へ転移した。
ダンジョン都市……正式名はメイズガルドだったな。ここは特にダンジョンが大量にある土地であり、それに挑む冒険者とその冒険者に向けて商いを行う商人によって作られた都市……という設定だった。
まあ、行き交う人々がのきなみ冒険者か商人な辺りこの世界でもそうなのだろう。
と、そんなことをしている場合じゃない。遊びに来たんじゃないんだからね。
とにかくまずはギルドに登録してダンジョンに入るための登録をしないと。
そう思いこの街のギルドに行くと、そこには見慣れた顔があった。
「ハルか。君も噂を聞いたのか?」
「はい。レイブンさんもダンジョンの噂を聞いてここに?」
「ああ。ダンジョンには古代の遺物が残っていることもあるからな。闇の勢力に辿り着くための何かしらの情報があるかもしれない」
レイブンも俺と同じく情報を求めてここに辿り着いたようだった。
にしても頼もしいことこのうえないな。未知のダンジョンに挑むんなら戦力は多いに越したことはない。
「む、むむっ!? その見た目……もしや!」
と、そこで背後から声がした。
「其方、あのレイブン殿ではござらんか!?」
「ああ、そうだが……君はプレイヤーだな。ここに来る時に見た記憶がある」
「おお、まさか認知されていたとは。これはこれは恐れ多い」
声の主は爽やかな見た目をした青年だった。
それにアーステイルのファンタジーな世界観には異質な着物に刀と言う組み合わせ。俺はこの人を、このプレイヤーを知っていた。
「初めまして武神君さん。俺はHARUと言います」
トップナイン第5位である武神君だ。彼の職業は見た目からもわかるように侍。その中でも上級職であるエンダーサムライだ。
侍と陰陽術師が合わさったような職業で、刀を使ったスタイリッシュなスキルが多く、受け流しやカウンターなど見栄えのいいものが集まっている。
そのためか使い勝手は物凄く難しいものの、上手く使いこなせれば全職の中でもぶっちぎりでカッコいい職業として一部の人たちにひそかな人気があるんだよな。
「ご丁寧にどうも。ですが拙者は武神君と言う名で完成された存在であるがゆえ、さん付けはせずとも良いでござる」
わざわざエンダーサムライを使ってトップナインに上がってきているだけあって中々にキャラが濃いというか癖が強いというか……。
けど悪い人では無さそうなんだよな。
「おお、ここにいたのか我が兄弟。勝手にどこかへ行くなといつも……ってレイブンさん!? あっその、うぇっ本物っ!?」
……また癖が強いのが増えたかもしれない。
「あー、えっと……我はジャガバタ。どうやら我が兄弟が世話になったようだな。感謝する」
ジャガバタ……トップナインの第6位であるあのジャガバタか。
上裸で筋肉質な大男ってのはゲーム時代からわかってはいたが、まさかここまで大きいとは……。あ、違う違うこの世界だと俺が小さいだけだ。
彼は確かグレートグラディエーターだったな。彼の2mはある身長をもさらに超えるクソデカ大剣を使って強烈な一撃を繰り出す職業だ。
だがその反動と言うかデメリットは大きく、その攻撃速度は全職の中でも最低。しかし一撃必殺のロマンは凄まじく、特に敵の動きを把握してしまえばほぼデメリットが無くなるPVEにおいては根強い人気がある。
「世話になった……と言っても特に何かをした訳では無いんだが……」
「いやぁ、おね……コイツはな、放っておくとすぐにどこかに行ってしまうのだ。だから引き留めてくれていただけでも大分助かった」
「いやぁすまぬな。つい好奇心に負けてしまうと言うか」
「そうだったのか。ところで君たちもプレイヤーならあの噂を聞いてここに来たのか?」
「ああ、そうだ。新しいダンジョン……腕が鳴るなぁ!」
ジャガバタは腕をブンブン回しながら楽しそうにそう言う。
覆面を付けているからその表情はわからないものの、声色と動きからうっきうきなのが伝わって来る。
「拙者も楽しみでござるよ。今までずっとダンジョンにこもりっ切りでござったが、まだまだいけるでござる」
「ダンジョンにこもりっ切り……どうりでメッセージが届かなかった訳だ」
そう言えばレイブンもRIZEもメッセージを送ったけど拒否されたか無視されたって言っていたな。
無視された内にこの二人もいたってことか。なるほどずっとダンジョンにいたからメッセージが届かなかったんだな。
[訂正。ダンジョン内にいてもメッセージを受け取ることは可能です]
あ、そうなの?
てっきりメッセージ自体が来ていないもんだと。
[ですがダンジョン内ではメッセージを返すことが出来ないため、結果的に無視した形になったのだと思われます]
そういうことか。
……え、こっちに来てからずっとダンジョン内にいたのこの二人?
シンプルにやべえ奴じゃん。
「それにしても、こもり切りというのは凄まじいな……」
「拙者たちはリアルでは色々あって軽率に外に遊びに出ることが出来なかったのでな。そのためこの世界に来てからと言うもの全てが珍しくて仕方が無いのでござるよ」
「そこでこんなにも楽しいダンジョンというものを見つけてしまったもんだ。それはもうのめり込んでしまって仕方が無かったわ」
この二人も中々に訳ありだったのかもしれないな。
とは言えこっちでは幸せそうだし結果オーライか。
「……ならこれほど頼もしい仲間はいないな。せっかくだ。俺たちと一緒にダンジョンに潜らないか?」
「……ふぇっ、それはその、レイブン様と一緒にダンジョン攻略を……!?」
「うむ、それは良い。拙者からも頼むでござるよ」
俺たち……いつの間にかレイブンの中では俺も一緒に行動することになっていたようだ。
まあ否定する気はないしメリットも無い。
ダンジョン攻略のプロと化している二人がいた方が絶対にいいだろうしな。
……大柄な大男が時折乙女のような反応をするのはこう、見ていて精神的にくるものがあるが、見た目もロープレも、個人の趣味にどうこう言うのは流石に野暮だろう。
こうして俺たち4人は新たに現れたダンジョンに挑むことになった。
一言で表すのなら、ケインはクソ……ということだ。どうやら最初からエリィをパーティに入れたかったらしく、そのタイミングを探していたようだ。
しかしそうなると元々いた回復術師であるエランが邪魔になった。だがパーティから追放するためには色々と面倒くさい後処理や追放するに見合う理由が必要だった。
そこで死んだことにしようと思いついたのだろう。だがただ死んだことにするには問題があった。彼自身もそこそこの冒険者であったため、生半可な理由で死ぬような存在では無かったのだ。
だから偶然その時仲間を求めていた狂夜をスケープゴートにすることを思いついた。
全ての罪と現因を狂夜に押し付け、自分たちは安全にエランを追放し新たにエリィを迎え入れる。それがケインの考えた筋書きだった。
ちなみにそのエランは今狂夜が匿っているらしい。生きていることが知られたら口封じのために殺される可能性があるとのことだ。
「まあ、その作戦には唯一の欠陥があったって訳だ。オレが強すぎたっていう点がな」
「まさかボスを単身で速攻で落とすなんて、こっちの世界の住人は考えもしないことみたいですからね」
「それにしても、君も初期は仲間を求めていたんだな」
……あえて俺が言わなかった点をレイブンは突いた。
「な、悪いか!? オレだってこっちに来たばかりの時は心細かったんだよクソ!」
図星というか地雷と言うか、目に見えて狂夜は動揺し始める。こうなるから言わなかったんだ。
「けど、今はもう新たな仲間は作らねえって決めたんだ。オレのせいで変な犠牲は出したくねえしな」
「それなら……」
「勘違いすんな。オレが最強プレイヤーになりたいってのは変わらねえ。だからプレイヤーとは慣れ合わねえ」
俺たちと仲間になろうって中々に臭いセリフを言おうとしたが、寸前で遮られた。
まあ言ってから否定されるよりも恥ずかしい指数は低いし良いか。いや良くない。
「とにかく、早く街に戻るぞ。アイツらが変な噂を広めたら今回の依頼もぱあになっちまうかもしれねえ」
「それもそうですね。ひとまず街に戻って依頼の達成処理をしましょうか」
狂夜の言う通りせっかくここまで来てドラグレンを倒したのに報酬無しになってしまったら悲しい。
ということで俺たちは洞窟の外に出るなり転移アイテムで街に戻った。これなら逃げ帰ったケインらよりも速く街に戻れるだろうしな。
その読みは正しかったようで、何の問題も無く達成処理を行い、その数時間後にケインたちは要塞都市を訪れたようだった。
もっともその時には俺もレイブンも狂夜もいなくなっていたのだが。
きっと狂夜は今後も大変なことになるのだろうが、今の俺に出来ることが無いのも事実だ。彼には彼自身で頑張ってもらうしかない。
そんな訳でひと悶着あった訳だが、結局ドラグレン以外に関しての情報が得られることも無く、闇の勢力に関しては未だ情報が得られずにいた。
そんな時、オールアールのギルドでとある噂を聞いた。
なんでも、ダンジョン都市に新たなダンジョンが生まれたのだとか。
それもダンジョンの情報からして恐らくゲームには存在しなかったもののようだ。
もうマジでどんな情報でも欲しい今、もはやダンジョンにすがるしかないのかもしれない。
てな訳で早速ダンジョン都市へ転移した。
ダンジョン都市……正式名はメイズガルドだったな。ここは特にダンジョンが大量にある土地であり、それに挑む冒険者とその冒険者に向けて商いを行う商人によって作られた都市……という設定だった。
まあ、行き交う人々がのきなみ冒険者か商人な辺りこの世界でもそうなのだろう。
と、そんなことをしている場合じゃない。遊びに来たんじゃないんだからね。
とにかくまずはギルドに登録してダンジョンに入るための登録をしないと。
そう思いこの街のギルドに行くと、そこには見慣れた顔があった。
「ハルか。君も噂を聞いたのか?」
「はい。レイブンさんもダンジョンの噂を聞いてここに?」
「ああ。ダンジョンには古代の遺物が残っていることもあるからな。闇の勢力に辿り着くための何かしらの情報があるかもしれない」
レイブンも俺と同じく情報を求めてここに辿り着いたようだった。
にしても頼もしいことこのうえないな。未知のダンジョンに挑むんなら戦力は多いに越したことはない。
「む、むむっ!? その見た目……もしや!」
と、そこで背後から声がした。
「其方、あのレイブン殿ではござらんか!?」
「ああ、そうだが……君はプレイヤーだな。ここに来る時に見た記憶がある」
「おお、まさか認知されていたとは。これはこれは恐れ多い」
声の主は爽やかな見た目をした青年だった。
それにアーステイルのファンタジーな世界観には異質な着物に刀と言う組み合わせ。俺はこの人を、このプレイヤーを知っていた。
「初めまして武神君さん。俺はHARUと言います」
トップナイン第5位である武神君だ。彼の職業は見た目からもわかるように侍。その中でも上級職であるエンダーサムライだ。
侍と陰陽術師が合わさったような職業で、刀を使ったスタイリッシュなスキルが多く、受け流しやカウンターなど見栄えのいいものが集まっている。
そのためか使い勝手は物凄く難しいものの、上手く使いこなせれば全職の中でもぶっちぎりでカッコいい職業として一部の人たちにひそかな人気があるんだよな。
「ご丁寧にどうも。ですが拙者は武神君と言う名で完成された存在であるがゆえ、さん付けはせずとも良いでござる」
わざわざエンダーサムライを使ってトップナインに上がってきているだけあって中々にキャラが濃いというか癖が強いというか……。
けど悪い人では無さそうなんだよな。
「おお、ここにいたのか我が兄弟。勝手にどこかへ行くなといつも……ってレイブンさん!? あっその、うぇっ本物っ!?」
……また癖が強いのが増えたかもしれない。
「あー、えっと……我はジャガバタ。どうやら我が兄弟が世話になったようだな。感謝する」
ジャガバタ……トップナインの第6位であるあのジャガバタか。
上裸で筋肉質な大男ってのはゲーム時代からわかってはいたが、まさかここまで大きいとは……。あ、違う違うこの世界だと俺が小さいだけだ。
彼は確かグレートグラディエーターだったな。彼の2mはある身長をもさらに超えるクソデカ大剣を使って強烈な一撃を繰り出す職業だ。
だがその反動と言うかデメリットは大きく、その攻撃速度は全職の中でも最低。しかし一撃必殺のロマンは凄まじく、特に敵の動きを把握してしまえばほぼデメリットが無くなるPVEにおいては根強い人気がある。
「世話になった……と言っても特に何かをした訳では無いんだが……」
「いやぁ、おね……コイツはな、放っておくとすぐにどこかに行ってしまうのだ。だから引き留めてくれていただけでも大分助かった」
「いやぁすまぬな。つい好奇心に負けてしまうと言うか」
「そうだったのか。ところで君たちもプレイヤーならあの噂を聞いてここに来たのか?」
「ああ、そうだ。新しいダンジョン……腕が鳴るなぁ!」
ジャガバタは腕をブンブン回しながら楽しそうにそう言う。
覆面を付けているからその表情はわからないものの、声色と動きからうっきうきなのが伝わって来る。
「拙者も楽しみでござるよ。今までずっとダンジョンにこもりっ切りでござったが、まだまだいけるでござる」
「ダンジョンにこもりっ切り……どうりでメッセージが届かなかった訳だ」
そう言えばレイブンもRIZEもメッセージを送ったけど拒否されたか無視されたって言っていたな。
無視された内にこの二人もいたってことか。なるほどずっとダンジョンにいたからメッセージが届かなかったんだな。
[訂正。ダンジョン内にいてもメッセージを受け取ることは可能です]
あ、そうなの?
てっきりメッセージ自体が来ていないもんだと。
[ですがダンジョン内ではメッセージを返すことが出来ないため、結果的に無視した形になったのだと思われます]
そういうことか。
……え、こっちに来てからずっとダンジョン内にいたのこの二人?
シンプルにやべえ奴じゃん。
「それにしても、こもり切りというのは凄まじいな……」
「拙者たちはリアルでは色々あって軽率に外に遊びに出ることが出来なかったのでな。そのためこの世界に来てからと言うもの全てが珍しくて仕方が無いのでござるよ」
「そこでこんなにも楽しいダンジョンというものを見つけてしまったもんだ。それはもうのめり込んでしまって仕方が無かったわ」
この二人も中々に訳ありだったのかもしれないな。
とは言えこっちでは幸せそうだし結果オーライか。
「……ならこれほど頼もしい仲間はいないな。せっかくだ。俺たちと一緒にダンジョンに潜らないか?」
「……ふぇっ、それはその、レイブン様と一緒にダンジョン攻略を……!?」
「うむ、それは良い。拙者からも頼むでござるよ」
俺たち……いつの間にかレイブンの中では俺も一緒に行動することになっていたようだ。
まあ否定する気はないしメリットも無い。
ダンジョン攻略のプロと化している二人がいた方が絶対にいいだろうしな。
……大柄な大男が時折乙女のような反応をするのはこう、見ていて精神的にくるものがあるが、見た目もロープレも、個人の趣味にどうこう言うのは流石に野暮だろう。
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