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第一部 異世界アーステイル編
20 ゴールドランク冒険者
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「我々冒険者ギルドはこの度、ハルさんの冒険者ランクをゴールドランクに昇格したいと思います!」
「ゴールドランク……ですか?」
いつものようにギルドへ行くと、受付嬢にいきなりそう言われた。
「マナツカミ及び闇に飲まれしワイバーンの討伐という偉大なる功績を称え、貴方をゴールドランクへと上げるべきだと様々な方から声が出ているのです」
「なるほど、それはまあ……悪い気はしませんね」
いきなり過ぎて驚いたものの、ゴールドランクになれるんだったら特に損は無いか。
なれる内になっといた方が後々役に立ちそうだし、俺の実力を求めてくれたんならその厚意を受け取ろうじゃ無いか。
「ではその昇格、受けようと思います。試験はいつでも大丈夫ですけど……」
「いえ試験は必要ありません」
「あれ、試験は無いんですか?」
てっきりシルバーランクの時と同じように試験を受けて合格できれば昇格って流れだと思ったが、どうやら違うようだ。
「シルバーランクまでは試験が必要でしたが、ゴールドランク以上はそもそも試験監督が出来る冒険者も多くないので仕組みが違うんです」
「と、言いますと?」
「ゴールドランク以上の場合、基本的にその冒険者が行った行動や功績に応じて上がって行くことになります。今回のハルさんで言うと『強大な魔物を倒し街を救った』ということでその功績が認められたのです」
ああ、なるほどな。確かにほとんどの冒険者はシルバーランクまで行けば十分だって言っていたか。
それだとゴールドランクになれる可能性を持つ冒険者の試験監督なんて誰が出来るんだって話だ。
「ですので、試験は無しでハルさんはゴールドランクに昇格出来ます」
「そういうことなんですね。わかりました」
「それでは手続きを行ってまいりますので、少々お待ちください」
受付嬢はそう言って俺の冒険者登録証を持ってギルドの奥の部屋へと入って行った。
そして少しすると見た目が少し変わった登録証を持って戻ってきた。
「はい、ではこちらがゴールドランク対応の登録証になります」
「ありがとうございます。ああそれと、ゴールドランクはシルバーランクと何か違いがあるんですか?」
とりあえず成り行きでゴールドランクになったものの、ゴールドランク以上の依頼を受けられるという事以外はまったくわからない。
その辺についても今後のために聞いておいた方が良いだろう。
「そうですね。それではまずは冒険者としての特権を説明いたしますね」
そう言うと受付嬢は掲示板の元に俺を案内した。
「ゴールドランク以上の冒険者の特権として、こちらの掲示板に張られている依頼を数個までキープすることが可能になります。またこちらに張られていない依頼においても優先的に受けられるようになっておりますので、気軽に受付にご確認ください」
依頼のキープか。受けたいのが複数あった時とかに便利そうだな。
「それではもう一つの特権についてご説明いたします。ハルさんの登録証をゴールドランク仕様にさせていただいたので、それを鍵として特別な施設を利用することが出来ます」
「特別な施設とは一体?」
「ここオールアールに存在する魔法の研究や装備開発を行っているエリアです。ゴールドランク以上の冒険者の方はそこで新たな魔法の研究だったり、装備のテストを行うことが出来るんですよ」
装備のテストはともかく……魔法の研究か。そこなら俺の魔法が異常な出力になっているのもわかるかもしれないな。
それに闇の勢力に関しても何か掴めるかもしれない。
「強制と言う訳では無いので好きなタイミングで利用していただければ……ハルさん?」
「あ、あぁすいませんちょっと考え事をしていまして」
「そうでしたか。それではゴールドランクについての説明はこれで終わりです。まだ気になることが有ったらお気軽に聞いてくださいね」
そう言って受付嬢はにこやかな笑顔で俺を見送った。
とりあえず魔法の研究をしているという所に行ってみるか……?
そう考えていた時、ナビの声が脳内に響いた。
[報告、レイブン様からメッセージが届いています]
「レイブン……?」
俺がこの世界に来てから最初に出会ったプレイヤーであるレイブン。あれ以来何の音沙汰も無いし、そもそも順位からして共に行動することなど出来ない。そう考えていた。
「……メッセージを開いてくれ」
そんな彼からのメッセージ。一体どんな内容なのだろうか?
恐る恐る確認したメッセージにはただ一言、協力して欲しいと書かれていた。
RIZEの時もそうだったが、何故わざわざ俺に頼むのかがわからない。もっと他に良い人がいるでしょうに……。
「……とにかく返事を送るか」
ひとまず何故協力が必要なのかを問い返した。
すると十数秒後またメッセージが返って来た。
その内容は依頼を受けるためにゴールドランクの冒険者が欲しいとのことだった。
……結果的にというか本人たちにはその気は無いのだろうが、俺はプレイヤー専用の付添人なのかもしれない。
まあRIZEの時とは違って今回は俺でも大丈夫なはずだ。よし、一応大丈夫だと返事をしておこう。
そうしてメッセージを送ってから再び十数秒後程が経ち、今度は城塞国家まで来て欲しいと言うメッセージが届いた。
城塞国家……か。ゲームにおいてはかなり終盤のマップで強力な武器や防具が店売りされていたっけな。もちろんドロップ品に比べれば性能は落ちるが、特効武器も多いしPVEなら十分な性能を持つものばかりだった。
この世界でもそうなのかは気になるところだし、一度行ってみたくはある所だ。
いや、というかオールアールと同じく転移アイテムで移動できるんだからすぐに行けるじゃん。
それじゃあ早速行ってみるか城塞国家!
転移が終わり街へ入ると、ゲームと同じく大量の装備があちらこちらで売られていた。
兵士の街という二つ名がある通りそこら中に兵士と思われる見た目の人がいて、なんかこう威圧感が凄いな。
だがゲーム内で見た武器や装備は見当たらないな。もしかしたらあれらはゲーム内限定だったのだろうか。
と、あまり悠長に観光をしている場合でも無いんだよな。レイブンを待たせている訳だし。
「確か……ここだったか?」
マップ機能を頼りに待ち合わせ場所である冒険者ギルドにやっとのことで辿り着いた。
と言うのもこの街、あまりにも道が入り組み過ぎている。おそらく責め込まれたときに少しでも時間を稼ぐためなのだろう……が、あまりにも日常生活に問題が起こるだろうこれは。
まあそんなことは置いておいて、さっさとレイブンに会って話を聞こう。
ギルドに入るとオールアール程では無いもののかなり賑わっていた。流石は兵士の街だ。力に自信のある者が多いみたいだな。
と、そんなギルドの奥に見覚えのある姿があった。
「あそこか……」
プレイヤー特有の異質で目立つ格好をしたレイブンがそこにはいた。……しかしどういう訳か彼の放つオーラはかなりこの場に順応していた。改めて見ると着用している装備も随分サマになっている。
……まるで初めからこの世界で生きてきたかのようだ。
って、いやいやそんなことは無いだろって。彼も俺たちと同じく召喚させられたプレイヤーのはずだ。
「こんにちはレイブンさん」
「ああ、ハルか。来てくれたんだな。感謝する」
「いえいえ。それで、ゴールドランクの冒険者が欲しいっていうのはどう言う事なんです?」
疑問に思っていたことを聞く。まあRIZEの時と同じく依頼を受けるための条件の話なんだろうけど。
「受けたい依頼があるんだが、どうやらゴールドランクの冒険者で無いと駄目らしい。ランク上げをしなかったことがここで響くとはな……」
「わかりました。それなら俺が受けますよ」
「助かる。他のプレイヤーにも連絡はしたが、連絡が付かないかランク不足のどちらかだったんでな」
なるほどそれで俺に。まあ今回はカジノの時みたいに変な理由が無ければ問題無く受けられるはず。それなら俺が依頼を受けて、彼にはそれに同行してもらえば問題は無い。
「それじゃあその依頼受けてきますね」
レイブンに聞いた依頼を受けようと受付に向かう。そしてその依頼を受けようとしたのだが……。
「「あっ」」
掲示板に張られていた依頼書を手に取ろうとした時、同時にもう一人が手を伸ばしたのだった。
「ゴールドランク……ですか?」
いつものようにギルドへ行くと、受付嬢にいきなりそう言われた。
「マナツカミ及び闇に飲まれしワイバーンの討伐という偉大なる功績を称え、貴方をゴールドランクへと上げるべきだと様々な方から声が出ているのです」
「なるほど、それはまあ……悪い気はしませんね」
いきなり過ぎて驚いたものの、ゴールドランクになれるんだったら特に損は無いか。
なれる内になっといた方が後々役に立ちそうだし、俺の実力を求めてくれたんならその厚意を受け取ろうじゃ無いか。
「ではその昇格、受けようと思います。試験はいつでも大丈夫ですけど……」
「いえ試験は必要ありません」
「あれ、試験は無いんですか?」
てっきりシルバーランクの時と同じように試験を受けて合格できれば昇格って流れだと思ったが、どうやら違うようだ。
「シルバーランクまでは試験が必要でしたが、ゴールドランク以上はそもそも試験監督が出来る冒険者も多くないので仕組みが違うんです」
「と、言いますと?」
「ゴールドランク以上の場合、基本的にその冒険者が行った行動や功績に応じて上がって行くことになります。今回のハルさんで言うと『強大な魔物を倒し街を救った』ということでその功績が認められたのです」
ああ、なるほどな。確かにほとんどの冒険者はシルバーランクまで行けば十分だって言っていたか。
それだとゴールドランクになれる可能性を持つ冒険者の試験監督なんて誰が出来るんだって話だ。
「ですので、試験は無しでハルさんはゴールドランクに昇格出来ます」
「そういうことなんですね。わかりました」
「それでは手続きを行ってまいりますので、少々お待ちください」
受付嬢はそう言って俺の冒険者登録証を持ってギルドの奥の部屋へと入って行った。
そして少しすると見た目が少し変わった登録証を持って戻ってきた。
「はい、ではこちらがゴールドランク対応の登録証になります」
「ありがとうございます。ああそれと、ゴールドランクはシルバーランクと何か違いがあるんですか?」
とりあえず成り行きでゴールドランクになったものの、ゴールドランク以上の依頼を受けられるという事以外はまったくわからない。
その辺についても今後のために聞いておいた方が良いだろう。
「そうですね。それではまずは冒険者としての特権を説明いたしますね」
そう言うと受付嬢は掲示板の元に俺を案内した。
「ゴールドランク以上の冒険者の特権として、こちらの掲示板に張られている依頼を数個までキープすることが可能になります。またこちらに張られていない依頼においても優先的に受けられるようになっておりますので、気軽に受付にご確認ください」
依頼のキープか。受けたいのが複数あった時とかに便利そうだな。
「それではもう一つの特権についてご説明いたします。ハルさんの登録証をゴールドランク仕様にさせていただいたので、それを鍵として特別な施設を利用することが出来ます」
「特別な施設とは一体?」
「ここオールアールに存在する魔法の研究や装備開発を行っているエリアです。ゴールドランク以上の冒険者の方はそこで新たな魔法の研究だったり、装備のテストを行うことが出来るんですよ」
装備のテストはともかく……魔法の研究か。そこなら俺の魔法が異常な出力になっているのもわかるかもしれないな。
それに闇の勢力に関しても何か掴めるかもしれない。
「強制と言う訳では無いので好きなタイミングで利用していただければ……ハルさん?」
「あ、あぁすいませんちょっと考え事をしていまして」
「そうでしたか。それではゴールドランクについての説明はこれで終わりです。まだ気になることが有ったらお気軽に聞いてくださいね」
そう言って受付嬢はにこやかな笑顔で俺を見送った。
とりあえず魔法の研究をしているという所に行ってみるか……?
そう考えていた時、ナビの声が脳内に響いた。
[報告、レイブン様からメッセージが届いています]
「レイブン……?」
俺がこの世界に来てから最初に出会ったプレイヤーであるレイブン。あれ以来何の音沙汰も無いし、そもそも順位からして共に行動することなど出来ない。そう考えていた。
「……メッセージを開いてくれ」
そんな彼からのメッセージ。一体どんな内容なのだろうか?
恐る恐る確認したメッセージにはただ一言、協力して欲しいと書かれていた。
RIZEの時もそうだったが、何故わざわざ俺に頼むのかがわからない。もっと他に良い人がいるでしょうに……。
「……とにかく返事を送るか」
ひとまず何故協力が必要なのかを問い返した。
すると十数秒後またメッセージが返って来た。
その内容は依頼を受けるためにゴールドランクの冒険者が欲しいとのことだった。
……結果的にというか本人たちにはその気は無いのだろうが、俺はプレイヤー専用の付添人なのかもしれない。
まあRIZEの時とは違って今回は俺でも大丈夫なはずだ。よし、一応大丈夫だと返事をしておこう。
そうしてメッセージを送ってから再び十数秒後程が経ち、今度は城塞国家まで来て欲しいと言うメッセージが届いた。
城塞国家……か。ゲームにおいてはかなり終盤のマップで強力な武器や防具が店売りされていたっけな。もちろんドロップ品に比べれば性能は落ちるが、特効武器も多いしPVEなら十分な性能を持つものばかりだった。
この世界でもそうなのかは気になるところだし、一度行ってみたくはある所だ。
いや、というかオールアールと同じく転移アイテムで移動できるんだからすぐに行けるじゃん。
それじゃあ早速行ってみるか城塞国家!
転移が終わり街へ入ると、ゲームと同じく大量の装備があちらこちらで売られていた。
兵士の街という二つ名がある通りそこら中に兵士と思われる見た目の人がいて、なんかこう威圧感が凄いな。
だがゲーム内で見た武器や装備は見当たらないな。もしかしたらあれらはゲーム内限定だったのだろうか。
と、あまり悠長に観光をしている場合でも無いんだよな。レイブンを待たせている訳だし。
「確か……ここだったか?」
マップ機能を頼りに待ち合わせ場所である冒険者ギルドにやっとのことで辿り着いた。
と言うのもこの街、あまりにも道が入り組み過ぎている。おそらく責め込まれたときに少しでも時間を稼ぐためなのだろう……が、あまりにも日常生活に問題が起こるだろうこれは。
まあそんなことは置いておいて、さっさとレイブンに会って話を聞こう。
ギルドに入るとオールアール程では無いもののかなり賑わっていた。流石は兵士の街だ。力に自信のある者が多いみたいだな。
と、そんなギルドの奥に見覚えのある姿があった。
「あそこか……」
プレイヤー特有の異質で目立つ格好をしたレイブンがそこにはいた。……しかしどういう訳か彼の放つオーラはかなりこの場に順応していた。改めて見ると着用している装備も随分サマになっている。
……まるで初めからこの世界で生きてきたかのようだ。
って、いやいやそんなことは無いだろって。彼も俺たちと同じく召喚させられたプレイヤーのはずだ。
「こんにちはレイブンさん」
「ああ、ハルか。来てくれたんだな。感謝する」
「いえいえ。それで、ゴールドランクの冒険者が欲しいっていうのはどう言う事なんです?」
疑問に思っていたことを聞く。まあRIZEの時と同じく依頼を受けるための条件の話なんだろうけど。
「受けたい依頼があるんだが、どうやらゴールドランクの冒険者で無いと駄目らしい。ランク上げをしなかったことがここで響くとはな……」
「わかりました。それなら俺が受けますよ」
「助かる。他のプレイヤーにも連絡はしたが、連絡が付かないかランク不足のどちらかだったんでな」
なるほどそれで俺に。まあ今回はカジノの時みたいに変な理由が無ければ問題無く受けられるはず。それなら俺が依頼を受けて、彼にはそれに同行してもらえば問題は無い。
「それじゃあその依頼受けてきますね」
レイブンに聞いた依頼を受けようと受付に向かう。そしてその依頼を受けようとしたのだが……。
「「あっ」」
掲示板に張られていた依頼書を手に取ろうとした時、同時にもう一人が手を伸ばしたのだった。
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