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第一部 異世界アーステイル編
13 幼女と召喚獣
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あれから数週間、依頼をこなしながら闇の勢力に関する情報を集めていた。と言ってもわかったことはそんなに多くは無い。
奴らがモンスターを暴走させているというのがまず一つ。だがそれはもう知っている情報だ。何しろここオールアールに来てすぐにその化け物と化したモンスターを俺自身が倒したんだからな。
それともう一つ。奴らが徐々にその規模を増しているということ。……いや、これについても女神様が言っていたから知ってるんだよな。
はい、要は何も進展がありません。なんてっこったい。
[報告。RIZE様からメッセージが届いております]
「え、待って何そんな機能あったの?」
そうして一切の進展の無い状態を憂いていた俺にナビはメッセージの着信を告げた。
というかそんな機能があったの知らなかったし教えてもらって無いんだけど。
[申し訳ありません。必要性を感じませんでしたので]
「いや確かにそうだけども……」
まあいいか。今はそんなことよりもメッセ―ジの内容の方が重要だ。
メッセージを送って来たのはRIZEというプレイヤーだったな。確かPVPランキング3位、ダークファントムという職業のキャラを使っていたはずだ。
ダークファントムは多彩なデバフを使う戦法が得意なアサシン系の職業で、ステータスは他の職業に比べて低いものの得意のデバフを的確に使えれば全く問題なく戦えるらしい。
なんなら常にデバフを維持できれば実質的なDPSはデュアルアックスに匹敵するって話もある。しかし実際はレジストが可能な装備やスキルも多く、全てのデバフを維持するのは現実的では無い。一応出来無くはないが、その場合は相当なプレイヤースキルが必要になる。
まあ、それが出来てしまうんだよな彼女は……いや彼女でいいのかはわからないが。だからこそランキング3位という地位を獲得している。
そんな彼女が俺に何の用だろうか。
「ナビ、メッセージを表示してくれ」
[了解]
ナビの返事とともに、地図の時と同じように視界内にメッセージウィンドウのようなものが出てきた。
「一緒に依頼を受けて欲しい……か」
メッセージには闇の勢力に関わる依頼を見つけたから一緒に受けたいという旨が書かれていた。しかしどうして俺と一緒に……?
俺はランキング9位だ。トップナインの中では最低。とてもじゃ無いが3位の彼女とは格が違うと言うか、横に並ぶこともおこがましいだろう。
しかし彼女の方がそう言うのなら断るのも悪いな。とりあえず話だけは聞いてみよう。
そう考えて返信を送ると、速攻で返信が帰って来た。そのメッセージにはオールアールのギルドで落ち合おうと書かれている。
今ちょうどオールアールにいるし、すぐに向かおう。
「もしかして……あなたがHARU?」
ギルドへ行くと既にそれらしき人物がいた。というか俺を見るなり声をかけてきた。そうか目立つもんな俺。
「はい、俺がHARUです。初めましてですねRIZEさん」
ゲームの観戦モードで見た時と同じ全身を黒で統一した服装。ただ、リアルなこの世界において彼女のスリットの深いスカートは少し刺激が強いな。
俺と同じくらいの背丈ではあるものの、俺がかわいらしさに振ったキャラアバターなのに対して彼女は色気や艶やかさに振っている。
セクシー幼女とでも言うべきだろうか。
「あっ、その、ごめん……名前、違うの……」
「……え?」
そんなどうでも良いことを考えていた俺を彼女の声が引き戻す。
「私の名前、RIZEって読むんだ」
「そうだったんですね。ごめんなさい」
ゲーム内だとふりがなが無いからずっとリゼって呼んでいた……違ったらしい。
「どんな相手に対しても、陽が昇るように起き上がって何度でも立ち向かう……そんな意味を込めた必勝祈願の名前」
「なるほど、良い名前ですね……ってあれ?」
うん?
ちょっと待て、それって「RIZE」じゃなくて「RISE」の間違いでは……?
「あの、それって……」
と、間違いを訂正しようと思ったがそこで思いとどまった。
名前の理由を嬉しそうに語る彼女の笑顔を見て、誰がその事実を指摘できようか。
「……HARUさん?」
「いえ、何でもないです」
言えない。いや、別に言わなくても良いじゃ無いか。この世界では英語は使われていないのだから。
「そ、それよりも依頼を一緒に受けたいというのはどういうことなんでしょうか」
こういう時は話を逸らすに限る。
「それなんだけどちょっと問題が出てきた」
「……と言うと?」
「私が受けたい依頼はカジノの運営者の物なの。なんでもカジノの運営の中に闇に飲まれたモンスターを拘束して裏で取引している者がいるらしい。だから面倒事を起こさない内に対処したいらしいんだけど……あなたもその、見た目が……」
ああ、そう言う事か。
「カジノの年齢制限に引っかかるから依頼を受けられないと……」
「そうなる。成人済みじゃないと駄目だって」
「一応聞きますが他の方はどうでした?」
一応聞いておく。初っ端俺にメッセージを送って来たとは考えにくい。恐らく他のプレイヤーにも送っているはずだ。
「無視されたり断られた」
「あぁ……」
何でわざわざ彼女がトップナイン最低順位の俺にメッセージを送って来たのかがこれでわかった。
他のプレイヤーにも送ったものの、結果が惨敗だったからだ。
そんでもって代わりに受けてもらおうと俺を呼んだが、俺も幼女だったと。
「となると……どうしましょうか」
カジノの運営者の依頼となると当然カジノに入る必要がある。その時点でもう年齢的にアウトだ。
さらに依頼主が直々に成人済みで無いと駄目だと言っているらしいからな。
……どうしようもなくない?
正直見た目の問題はどう足掻いてもどうしようもない……が、なんとかならないことも無い。
「一応、俺に考えがあります」
「……本当?」
要は成人済みの年齢の人なら依頼を受けられる訳だ。
「ナビ、この世界での成人は何歳だ?」
[ここオールアール周辺においては15歳を成人としています]
よし、それなら問題は無い。
「何か手があるの?」
「召喚獣を呼び出します」
そう、召喚獣だ。アーステイルには召喚獣を呼び出せるアクセサリー装備が存在する。そして当然俺はそれを所持している。何しろとにかく幅広いキャラビルドを行っていたからな。
と言ってもモンスターのタイプを呼び出したところで今回の場合意味は無い。
だから俺が呼びだすのは人型の召喚獣……エインヘリヤルだ。
流石にギルド内で召喚する訳にも行かないため、人通りの無い路地裏へと移動する。そしてナビの説明に従って装備ウィンドウを開き、アクセサリーを付け替えた。
ちょっと取り替えたいだけなのに一々装備ウィンドウを開いて付け替える必要があるのは少々不便だが、服とか鎧を実際に着替える必要が無いと考えればどちらも一長一短ってことで受け入れられるか。
さて、装備も付け替えられたことだし早速呼び出しますか。
「来い、エインヘリヤル……!」
召喚獣の名を呼んだ瞬間、装着した指輪が光り輝き次の瞬間には目の前に一人の女性が現れていた。
「我の力が必要か。マスター」
ゲーム内と変わらない姿。全身を神々しい甲冑で包んだ女戦士がそこには立っていた。
「……君の力が必要なんです」
呼び出したのは良いもののゲーム内では召喚獣が喋ることは無かったし、いざこうして対面してみるとどうすれば良いのかわからないな。
とりあえず召喚した目的を説明しておくか。
「……なるほど。それで我を召喚した訳だな。了解した。それと、我々召喚獣に敬語は必要ないぞマスター。よし、それじゃあ早速冒険者登録をしてこよう」
そう言うとエインヘリヤルは意気揚々と路地裏を出て行った。
が、すぐに戻ってきた。
「すまないマスター。ギルドはどこにあるんだ……?」
……この召喚獣に任せて本当に大丈夫なのだろうか?
奴らがモンスターを暴走させているというのがまず一つ。だがそれはもう知っている情報だ。何しろここオールアールに来てすぐにその化け物と化したモンスターを俺自身が倒したんだからな。
それともう一つ。奴らが徐々にその規模を増しているということ。……いや、これについても女神様が言っていたから知ってるんだよな。
はい、要は何も進展がありません。なんてっこったい。
[報告。RIZE様からメッセージが届いております]
「え、待って何そんな機能あったの?」
そうして一切の進展の無い状態を憂いていた俺にナビはメッセージの着信を告げた。
というかそんな機能があったの知らなかったし教えてもらって無いんだけど。
[申し訳ありません。必要性を感じませんでしたので]
「いや確かにそうだけども……」
まあいいか。今はそんなことよりもメッセ―ジの内容の方が重要だ。
メッセージを送って来たのはRIZEというプレイヤーだったな。確かPVPランキング3位、ダークファントムという職業のキャラを使っていたはずだ。
ダークファントムは多彩なデバフを使う戦法が得意なアサシン系の職業で、ステータスは他の職業に比べて低いものの得意のデバフを的確に使えれば全く問題なく戦えるらしい。
なんなら常にデバフを維持できれば実質的なDPSはデュアルアックスに匹敵するって話もある。しかし実際はレジストが可能な装備やスキルも多く、全てのデバフを維持するのは現実的では無い。一応出来無くはないが、その場合は相当なプレイヤースキルが必要になる。
まあ、それが出来てしまうんだよな彼女は……いや彼女でいいのかはわからないが。だからこそランキング3位という地位を獲得している。
そんな彼女が俺に何の用だろうか。
「ナビ、メッセージを表示してくれ」
[了解]
ナビの返事とともに、地図の時と同じように視界内にメッセージウィンドウのようなものが出てきた。
「一緒に依頼を受けて欲しい……か」
メッセージには闇の勢力に関わる依頼を見つけたから一緒に受けたいという旨が書かれていた。しかしどうして俺と一緒に……?
俺はランキング9位だ。トップナインの中では最低。とてもじゃ無いが3位の彼女とは格が違うと言うか、横に並ぶこともおこがましいだろう。
しかし彼女の方がそう言うのなら断るのも悪いな。とりあえず話だけは聞いてみよう。
そう考えて返信を送ると、速攻で返信が帰って来た。そのメッセージにはオールアールのギルドで落ち合おうと書かれている。
今ちょうどオールアールにいるし、すぐに向かおう。
「もしかして……あなたがHARU?」
ギルドへ行くと既にそれらしき人物がいた。というか俺を見るなり声をかけてきた。そうか目立つもんな俺。
「はい、俺がHARUです。初めましてですねRIZEさん」
ゲームの観戦モードで見た時と同じ全身を黒で統一した服装。ただ、リアルなこの世界において彼女のスリットの深いスカートは少し刺激が強いな。
俺と同じくらいの背丈ではあるものの、俺がかわいらしさに振ったキャラアバターなのに対して彼女は色気や艶やかさに振っている。
セクシー幼女とでも言うべきだろうか。
「あっ、その、ごめん……名前、違うの……」
「……え?」
そんなどうでも良いことを考えていた俺を彼女の声が引き戻す。
「私の名前、RIZEって読むんだ」
「そうだったんですね。ごめんなさい」
ゲーム内だとふりがなが無いからずっとリゼって呼んでいた……違ったらしい。
「どんな相手に対しても、陽が昇るように起き上がって何度でも立ち向かう……そんな意味を込めた必勝祈願の名前」
「なるほど、良い名前ですね……ってあれ?」
うん?
ちょっと待て、それって「RIZE」じゃなくて「RISE」の間違いでは……?
「あの、それって……」
と、間違いを訂正しようと思ったがそこで思いとどまった。
名前の理由を嬉しそうに語る彼女の笑顔を見て、誰がその事実を指摘できようか。
「……HARUさん?」
「いえ、何でもないです」
言えない。いや、別に言わなくても良いじゃ無いか。この世界では英語は使われていないのだから。
「そ、それよりも依頼を一緒に受けたいというのはどういうことなんでしょうか」
こういう時は話を逸らすに限る。
「それなんだけどちょっと問題が出てきた」
「……と言うと?」
「私が受けたい依頼はカジノの運営者の物なの。なんでもカジノの運営の中に闇に飲まれたモンスターを拘束して裏で取引している者がいるらしい。だから面倒事を起こさない内に対処したいらしいんだけど……あなたもその、見た目が……」
ああ、そう言う事か。
「カジノの年齢制限に引っかかるから依頼を受けられないと……」
「そうなる。成人済みじゃないと駄目だって」
「一応聞きますが他の方はどうでした?」
一応聞いておく。初っ端俺にメッセージを送って来たとは考えにくい。恐らく他のプレイヤーにも送っているはずだ。
「無視されたり断られた」
「あぁ……」
何でわざわざ彼女がトップナイン最低順位の俺にメッセージを送って来たのかがこれでわかった。
他のプレイヤーにも送ったものの、結果が惨敗だったからだ。
そんでもって代わりに受けてもらおうと俺を呼んだが、俺も幼女だったと。
「となると……どうしましょうか」
カジノの運営者の依頼となると当然カジノに入る必要がある。その時点でもう年齢的にアウトだ。
さらに依頼主が直々に成人済みで無いと駄目だと言っているらしいからな。
……どうしようもなくない?
正直見た目の問題はどう足掻いてもどうしようもない……が、なんとかならないことも無い。
「一応、俺に考えがあります」
「……本当?」
要は成人済みの年齢の人なら依頼を受けられる訳だ。
「ナビ、この世界での成人は何歳だ?」
[ここオールアール周辺においては15歳を成人としています]
よし、それなら問題は無い。
「何か手があるの?」
「召喚獣を呼び出します」
そう、召喚獣だ。アーステイルには召喚獣を呼び出せるアクセサリー装備が存在する。そして当然俺はそれを所持している。何しろとにかく幅広いキャラビルドを行っていたからな。
と言ってもモンスターのタイプを呼び出したところで今回の場合意味は無い。
だから俺が呼びだすのは人型の召喚獣……エインヘリヤルだ。
流石にギルド内で召喚する訳にも行かないため、人通りの無い路地裏へと移動する。そしてナビの説明に従って装備ウィンドウを開き、アクセサリーを付け替えた。
ちょっと取り替えたいだけなのに一々装備ウィンドウを開いて付け替える必要があるのは少々不便だが、服とか鎧を実際に着替える必要が無いと考えればどちらも一長一短ってことで受け入れられるか。
さて、装備も付け替えられたことだし早速呼び出しますか。
「来い、エインヘリヤル……!」
召喚獣の名を呼んだ瞬間、装着した指輪が光り輝き次の瞬間には目の前に一人の女性が現れていた。
「我の力が必要か。マスター」
ゲーム内と変わらない姿。全身を神々しい甲冑で包んだ女戦士がそこには立っていた。
「……君の力が必要なんです」
呼び出したのは良いもののゲーム内では召喚獣が喋ることは無かったし、いざこうして対面してみるとどうすれば良いのかわからないな。
とりあえず召喚した目的を説明しておくか。
「……なるほど。それで我を召喚した訳だな。了解した。それと、我々召喚獣に敬語は必要ないぞマスター。よし、それじゃあ早速冒険者登録をしてこよう」
そう言うとエインヘリヤルは意気揚々と路地裏を出て行った。
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