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第一部 異世界アーステイル編
08 よくある修行パートというやつ
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「昨日は本当に助かった。是非謝礼をさせて欲しい」
ギルドへ行くと昨日出会った少女……名をギラと言うらしい。そんな彼女が謝礼をしたいと言ってきた。
とは言っても昨日のはお礼目当てでの行動でも無いしな。お金だって困ってない。
いやむしろお金で言えば向こうの方が相当困っているはず。この若さでの冒険者だ。きっと懐はあまり豊かでは無いだろう。
さらにはまだあの二人は目覚めていないと言う。しばらくは依頼をこなすことも出来ないだろう。
「お気持ちだけで結構ですよ。ギラさんたちも大変でしょうし」
「ま、待って!」
やんわりと断ろうとしたが腕を掴まれてしまう。
「それでは私の気がすまないんだ! 少額ではあるがどうか! 命の恩人になんのお礼も出来ないなんて、戦士として恥なんだ……!」
うーん、駄目そうだ。目がこう……何と言うか、覚悟がガンギマッている。
こちらからどれだけ言ったところで絶対に退かない。そう言った覚悟が見て取れるぞ。
とは言えなぁ。お金をもらう訳には……お金以外でってなるとどうしたもんか……。
ん、そう言えば戦士の恥って……大剣も担いでいるし……よしこれだ!
「ではお金以外でお願いがあるのですが……」
「本当にこんなことで良いのか……?」
「はい。俺は近接戦闘についてはからっきしなので」
お金をもらうことは避けたい。かと言って何も貰わないのでは彼女自身が許さない。
それならば彼女に剣術を教わるということで手を打とうじゃ無いか。
昨日の彼女の大剣捌きを見ていたが、あれだけ巨大なモンスターを相手にしても受け止められるなんて大したものだ。
俺はステータスの物量で無理やり受け止めていたが、彼女は技術で受け止めていた。
聞けば彼女たちは皆ブロンズランク……その中でもかなり上の方らしく近々シルバーへの昇格試験を受けるらしい。
ギルドで聞いた話だが、どうやらこの世界のほとんどの冒険者はシルバーランクのようだ。ごく一部化け物のような存在がゴールドやプラチナに到達できるくらいで、それ以外はほとんどブロンズかアイアンのまま冒険者としての生涯を終えるらしい。
であるならばシルバー間近の彼女たちは信頼していいはずだ。
ただ、そうなるとまた別の問題が出てくる。そんな彼女たちが容赦なくやられてしまう闇の勢力によって暴走させられたモンスターって、相当ヤバいのでは……?
そりゃ異世界からの勇者が必要になるわ。
「じゃあまずは基礎から行くぞ」
「お、お願いします」
っと、今はそんなことを考えている場合じゃ無いな。せっかく彼女が直々に教えてくれるんだ。全部吸収してやるぞ。
そして数時間の特訓が終わり、一旦休憩となった。
「凄い体力だなあんた。私が駆け出しだった頃にこのメニューをしたらまず間違いなく死んでいるぞ」
「それほどでも無いですよ」
……ちょっと待って、この人自分だったら死ぬであろうメニューを嬉々として人に与えてきたってこと?
いや、確かに昨日のこともあって俺が超人に見えているんだろうけどさ。何と言うかこう、手心と言うか。
にしても、この体は筋力とか魔力量だけじゃなくて体力も馬鹿高いんだな。そのおかげでぶっ続けで特訓をしてもぶっ倒れずに済んでいる訳だけど。
「思ったよりも飲みこみが早い……いや早すぎるくらいだ。これならもう実践的な特訓をしてしまっても良いだろう。何故かあんたは身体能力は高いのに体の使い方がこう……とてつもなく下手くそだからな。そこを剣術を教えると共に治してやれば、すぐにでも一流の戦士になれる素質はあるはずだ」
「おお、それは何よりです」
今まで教わっていたのは剣の最低限の扱い方、重心の使い方、振り方などでまだあくまで素振りとそう大差ないものだった。
ここからが、本当の剣術というものなのだろう。
「よし、ではまずは私から一本とってみろ」
「いきなり過ぎません?」
もう少し過程があるもんかと思ったらいきなり実戦のようなもんじゃないか。
ただ、俺の体の異常性はそれくらいしないと駄目なのかもしれない。
「それじゃあお願いします!」
剣を抜き、地を蹴ってギラの懐へと潜り込む。先ほどまでの特訓の成果か昨日までとは体の動きがまるで違う。
昨日までは完全に体が勝手に動いていたという状態だった。それでも問題は無かったが、昨日みたいな戦闘があった時にはスキル頼りでは無く自らの戦闘能力が必要になるだろう。
そうなった時のために少しでも多く剣術を学んでおきたい。
「速い!? だが、まだまだ甘い!」
「ぅごっ」
かなり速く懐に潜り込めた気がしたが、それでもギラの方が一歩上手だった。
「速さはある。狙いどころも良い。だが動きが直線的過ぎるな。それだと簡単に動きを読まれてしまう。身体能力で差があってもある程度は戦略でどうにかなるものだ。少しでも読まれにくい動きをした方が勝率は上がる。それに……やっぱり体の動きが固いな。まだまだ本来の力を出し切れていないと言った感じだ」
うーん、頭じゃわかっているんだけどな。ゲームの時も基本的には相手の攻撃を躱すためには不規則な動きをする必要があった。
けど、それを理解した所で体がおっつかねえや。少なくとも一般大学生葛城晴翔では無理だ。
だからこそ、俺はPVPランカーHARUになる必要がある。体に剣術を叩き込む必要がある。
「もう一度お願いします!」
「よし、その意気だ!」
そうして何度も何度も特訓を重ね、いつの間にか数日が過ぎていた。
そしてついにその日は来た。
「ぐっ……」
「や、やった……のか!?」
ついにギラから一本取ることに成功した。
ここまで長かった。いや数日しか経っていないが。それでもこの数日間の密度は凄まじかった。
「異常な身体能力だとは思っていたが、まさかここまでとはな。ブロンズランクの私が言うのもあれだが、剣術もかなり使いこなせている。正直もう私が教えられることは無いよ」
「うぉぉ、本当にありがとうございました!」
思わず感極まってしまう。
明らかな体の動きの違いを感じる。自分の意思で体を操れている感覚。これでもう体に振り回されることも無くなるのだろう。
こうして短い間の師弟関係が終わり、俺とギラたちはまた別の道を進むことになった。
その後、メリナとテレーゼの二人も完全に回復したようで、無事に彼女たちはシルバーランクに昇格することが出来たようだ。
さて、手に入れた新たな力で俺も頑張ってランク上げをしないとな。
ギルドへ行くと昨日出会った少女……名をギラと言うらしい。そんな彼女が謝礼をしたいと言ってきた。
とは言っても昨日のはお礼目当てでの行動でも無いしな。お金だって困ってない。
いやむしろお金で言えば向こうの方が相当困っているはず。この若さでの冒険者だ。きっと懐はあまり豊かでは無いだろう。
さらにはまだあの二人は目覚めていないと言う。しばらくは依頼をこなすことも出来ないだろう。
「お気持ちだけで結構ですよ。ギラさんたちも大変でしょうし」
「ま、待って!」
やんわりと断ろうとしたが腕を掴まれてしまう。
「それでは私の気がすまないんだ! 少額ではあるがどうか! 命の恩人になんのお礼も出来ないなんて、戦士として恥なんだ……!」
うーん、駄目そうだ。目がこう……何と言うか、覚悟がガンギマッている。
こちらからどれだけ言ったところで絶対に退かない。そう言った覚悟が見て取れるぞ。
とは言えなぁ。お金をもらう訳には……お金以外でってなるとどうしたもんか……。
ん、そう言えば戦士の恥って……大剣も担いでいるし……よしこれだ!
「ではお金以外でお願いがあるのですが……」
「本当にこんなことで良いのか……?」
「はい。俺は近接戦闘についてはからっきしなので」
お金をもらうことは避けたい。かと言って何も貰わないのでは彼女自身が許さない。
それならば彼女に剣術を教わるということで手を打とうじゃ無いか。
昨日の彼女の大剣捌きを見ていたが、あれだけ巨大なモンスターを相手にしても受け止められるなんて大したものだ。
俺はステータスの物量で無理やり受け止めていたが、彼女は技術で受け止めていた。
聞けば彼女たちは皆ブロンズランク……その中でもかなり上の方らしく近々シルバーへの昇格試験を受けるらしい。
ギルドで聞いた話だが、どうやらこの世界のほとんどの冒険者はシルバーランクのようだ。ごく一部化け物のような存在がゴールドやプラチナに到達できるくらいで、それ以外はほとんどブロンズかアイアンのまま冒険者としての生涯を終えるらしい。
であるならばシルバー間近の彼女たちは信頼していいはずだ。
ただ、そうなるとまた別の問題が出てくる。そんな彼女たちが容赦なくやられてしまう闇の勢力によって暴走させられたモンスターって、相当ヤバいのでは……?
そりゃ異世界からの勇者が必要になるわ。
「じゃあまずは基礎から行くぞ」
「お、お願いします」
っと、今はそんなことを考えている場合じゃ無いな。せっかく彼女が直々に教えてくれるんだ。全部吸収してやるぞ。
そして数時間の特訓が終わり、一旦休憩となった。
「凄い体力だなあんた。私が駆け出しだった頃にこのメニューをしたらまず間違いなく死んでいるぞ」
「それほどでも無いですよ」
……ちょっと待って、この人自分だったら死ぬであろうメニューを嬉々として人に与えてきたってこと?
いや、確かに昨日のこともあって俺が超人に見えているんだろうけどさ。何と言うかこう、手心と言うか。
にしても、この体は筋力とか魔力量だけじゃなくて体力も馬鹿高いんだな。そのおかげでぶっ続けで特訓をしてもぶっ倒れずに済んでいる訳だけど。
「思ったよりも飲みこみが早い……いや早すぎるくらいだ。これならもう実践的な特訓をしてしまっても良いだろう。何故かあんたは身体能力は高いのに体の使い方がこう……とてつもなく下手くそだからな。そこを剣術を教えると共に治してやれば、すぐにでも一流の戦士になれる素質はあるはずだ」
「おお、それは何よりです」
今まで教わっていたのは剣の最低限の扱い方、重心の使い方、振り方などでまだあくまで素振りとそう大差ないものだった。
ここからが、本当の剣術というものなのだろう。
「よし、ではまずは私から一本とってみろ」
「いきなり過ぎません?」
もう少し過程があるもんかと思ったらいきなり実戦のようなもんじゃないか。
ただ、俺の体の異常性はそれくらいしないと駄目なのかもしれない。
「それじゃあお願いします!」
剣を抜き、地を蹴ってギラの懐へと潜り込む。先ほどまでの特訓の成果か昨日までとは体の動きがまるで違う。
昨日までは完全に体が勝手に動いていたという状態だった。それでも問題は無かったが、昨日みたいな戦闘があった時にはスキル頼りでは無く自らの戦闘能力が必要になるだろう。
そうなった時のために少しでも多く剣術を学んでおきたい。
「速い!? だが、まだまだ甘い!」
「ぅごっ」
かなり速く懐に潜り込めた気がしたが、それでもギラの方が一歩上手だった。
「速さはある。狙いどころも良い。だが動きが直線的過ぎるな。それだと簡単に動きを読まれてしまう。身体能力で差があってもある程度は戦略でどうにかなるものだ。少しでも読まれにくい動きをした方が勝率は上がる。それに……やっぱり体の動きが固いな。まだまだ本来の力を出し切れていないと言った感じだ」
うーん、頭じゃわかっているんだけどな。ゲームの時も基本的には相手の攻撃を躱すためには不規則な動きをする必要があった。
けど、それを理解した所で体がおっつかねえや。少なくとも一般大学生葛城晴翔では無理だ。
だからこそ、俺はPVPランカーHARUになる必要がある。体に剣術を叩き込む必要がある。
「もう一度お願いします!」
「よし、その意気だ!」
そうして何度も何度も特訓を重ね、いつの間にか数日が過ぎていた。
そしてついにその日は来た。
「ぐっ……」
「や、やった……のか!?」
ついにギラから一本取ることに成功した。
ここまで長かった。いや数日しか経っていないが。それでもこの数日間の密度は凄まじかった。
「異常な身体能力だとは思っていたが、まさかここまでとはな。ブロンズランクの私が言うのもあれだが、剣術もかなり使いこなせている。正直もう私が教えられることは無いよ」
「うぉぉ、本当にありがとうございました!」
思わず感極まってしまう。
明らかな体の動きの違いを感じる。自分の意思で体を操れている感覚。これでもう体に振り回されることも無くなるのだろう。
こうして短い間の師弟関係が終わり、俺とギラたちはまた別の道を進むことになった。
その後、メリナとテレーゼの二人も完全に回復したようで、無事に彼女たちはシルバーランクに昇格することが出来たようだ。
さて、手に入れた新たな力で俺も頑張ってランク上げをしないとな。
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