大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫

文字の大きさ
上 下
66 / 76
12 星龍の街と星龍教団

66 星龍の街

しおりを挟む
「……本当に良いのか?」

「ああ、二手に分かれた方が効率も良いだろう?」

「だが……」

「心配なのはわかるがな。だが俺たちだって冒険者だ。危険なことは承知で今まで活動してきた。今更臆したりはしない」

「そうですよ。それに、サザンさんには何だか縁みたいなものを感じてしまって……」

 ラン、ギラ、ルカの3人は祝福の薬の対処を手伝うことをサザンに申し出たのだった。だが今回のような強力な相手がいるかもしれないことを考えると、サザンはこの3人を巻き込むのは本望では無かった。

 それでも3人の覚悟が伝わったのか、最後にはその提案を受け入れたのだった。

「わかった。俺も出来得る限りのエンチャントを施す。でも危なかったら迷わず撤退してくれよ」

「了解した」

 こうしてサザンとランたち3人は別れて取引先の対処を行うことにしたのだった。

 3人と別れた後サザンは取引先の内の一つである『星龍の街』へと赴いた。星龍の街と言う名からサザンは教団が今まで以上に手を回している危険なところかと警戒していたのだが、実際たどり着いた街は見た感じ平穏そのものと言った様子だった。

「……まずは情報を得ないとな」

 思わぬ肩透かしを食らったサザンだったが、見た目に騙されてはいけないということを常に念頭に置き行動を始めた。

 まずは冒険者ギルドへと向かい、情報を集める。サザンの予想した通り、ギルド内には教団の装束を着た者たちがいた。しかしその行動が予想外のものだった。

「お怪我をなされているのですね。聖なる癒しよ……キュアル!」

「おお、ありがてえ!」

「いえいえ、民を救うことは教団の何よりの喜びですから」

 意外そのものだった。あれだけ欲に塗れ弱者から搾り取っていた正に愚の骨頂と言ったあの教団が、無償で冒険者の傷を癒していたのだ。

「ど、どういうことだ……?」

 あまりに現実離れしていたその光景にサザンは目を疑った。何度も目をこすり、幻惑耐性の付与魔法を自身に何度もエンチャントする。しかしどれだけ見返しても、その光景は変わらなかった。

 その後サザンはギルド内で受付嬢や他の冒険者に教団について聞いて回ったが、誰もが揃って教団は慈悲深い良い人たちだと答えた。自身の中の教団像と全く噛み合わない答えにサザンは困惑を隠せなかった。

 その後、サザンは宿屋や酒場に行って同じように教団について尋ねて回った。皆同じ答えだった。流石にこの状況はおかしいと考えたサザンは洗脳を疑ったが、洗脳解除や解呪の魔法も発動しなかった。つまりは皆、自分の意思でそう考え自分の口でそう答えているのだ。

 そんな時、酒場にいた一人の冒険者が口を開いた。

「お前さん、もしかして外から来たのかい?」

 全身を金属鎧で包んだ初老の男がそう言葉を漏らす。

「それはどういう……」

「この街の者は外の教団に会ったとしても、それが星龍教団だとは思っていないのさ。だからこの街の中の教団についての意見しか出てこない。でもお前さんが言っているのは、恐らく外でやりたい放題している連中のことだろう?」

「……そうです。ヤツらは許せないほどの悪事を働いています。だから俺はそれを止めるためにこの街に来たのですが……」

「この街の教団が良い奴らすぎて驚いた……というところか。アイツらをどうにかしたいなんて無謀なモンだが……本気なら教会に行くと良い。きっと何か手掛かりがあるはずだよ」

 初老の冒険者はそれだけ言って再びジョッキを担ぎ酒を飲み始めたのだった。

「情報ありがとうございます」

 サザンは礼を言って酒場を出た後、教会へと向かった。教会に辿り着いたサザンはまたしても驚愕する。教会が、普通の教会だった。意味も無く豪華絢爛な装飾がされていることも無く、意味も無く大きく建造されているわけでも無い。そして中に入るとまたもや驚きを隠せなくなる。

「癒しの導きよ……キュアヘルス!」

「おお、ありがとうございます! 不随だった腕が動くようになりました! ああ何とお礼を申したらよいか……」

「良いのです。民を救う事こそが星龍様のお導きなのですから」

 ギルドで見かけたものよりもさらに強力な回復魔法での治療。そしてそれを無償で行うという破格のサービスだった。そしてそれだけでは無く、教会内では無料での炊き出しも行われていたのだ。

「思っていた以上だ……」

 サザンの中で地に落ちていた教団の位置づけがおかしくなる。

「すみません……あの、今よろしいでしょうか」

 思考の世界に入り込んでいたサザンは一人の女神官の声によって現実へと引き戻された。

「うおっ、失礼。俺に何か用でしょうか?」

「教祖様が、貴方様を連れてきて欲しいと言っておられるのです」

 サザンは女神官のその話を聞いて、教祖に会えば何か情報が得られるのではないかと考えた。そのため教祖の元へと向かうことを許諾したのだった。

 そうして女神官に案内された先は教会の地下。そこは洞窟の入り口と繋がっていた。洞窟の中は光属性の魔法が刻印された魔石が淡く光っていて、中を通るだけならば不自由は無い。しかし魔物に襲われる可能性を考慮して、サザンは発光魔法をエンチャントした石を複数用意しながら進んでいった。

 結局道中には何事も無く、開けた空間へ出た。

「……やっと来たか」

「誰だ……! いや、その声……?」

 サザンは空間の中に響く声に咄嗟に反応するが、すぐに違和感を覚えた。聞こえてきた声が、自分と同じものだったのだ。

「数年間、待ち続けた。長かったよ。このまま来ないんじゃないかとさえ思ったほどだ」

「……お前は、俺か?」

 サザンの目の前にいたのは、緋星龍だったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...