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6 次元迷宮
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「おい、どうしたサザン! 何か様子がおかしいぞ!」
「あ、ああ……」
ランの声に、ふと我に返る。
確かにランを追放した勇者は許せないが、今は魔物との交戦中だ。そんなことを言っている場合では無いのは明白だった。
「どうやら苦戦しているらしい。どうする、俺たちも加勢するか?」
「同じ冒険者だと言うのなら協力するべきだろうな」
その冒険者パーティが勇者パーティであることは、ランには言っておくべきことかもしれない。しかし今言ってしまって大丈夫だろうか。仮にも自分を追放した存在だ。とても関係が良いとは思えない。
とは言え戦い始めればそんなことは言っていられなくなる。覚悟を決めるしかない。
「ラン……戦闘中のパーティなんだが……」
「わかっている。勇者パーティなのだろう?」
「……え?」
何故かランは知っていた。部屋の中は俺しか確認していない。しかし何故か彼女は部屋の中で戦っているのが勇者パーティだという事を認識していたのだ。
「忘れたのか、私はエルフなんだ。これくらい近ければ魔力で誰だかはわかるさ」
「そうなのか……」
「私のためを思って悩んでくれたのだろう。ありがとう、サザン」
ランはそう言って部屋の中へと入っていった。
「避けろ! ルカァァ!!」
ルカに向かって魔物は腕を振り下ろす。バルドが叫ぶものの、既に腕はルカに接近しすぎていた。
しかし接触する寸前でランが滑り込み、剣で受け止めることでルカを助けた。
「お前は……ラン!? なんでお前がここに!!」
「話はあとだ。今はこの魔物をどうにかするべきだろう」
ランは魔物の腕を跳ね返し、一度距離を取る。同時に勇者パーティも一度態勢を立て直した。
「アンタが勇者か。色々と言いたいことはあるが、今はあの魔物をどうにかするぞ」
「どうにかすると言ってもどうする気だ? あの魔物には物理攻撃は効かない。魔法だって大したダメージは与えられなかった」
先ほど見ていた通り、ロストブリザードによる攻撃は意味を為さなかった。ロストブリザードは高威力の魔法ではあるものの、凍結させることが主なダメージソースとなるこの魔法はここの魔物には相性が悪かったのだろう。
だったらこちらのメルの爆発系魔法の出番だ。最初に出会った魔物も一撃で粉砕した実績もある。
「俺のパーティの魔術師なら効果がある魔法を使える。だから協力して時間稼ぎをしよう」
「おいおい、本当なのか?」
バルドは俺の言葉を疑っている。勇者パーティですら通用しなかった相手に、いきなり現れた冒険者が何とかなるなんて言ったらそう思うのも無理はないだろう。
さて、どう説明したものか。
「わかった。俺たちも協力しよう」
「おい、正気か!? こんなヤツのいう事を信じるのかよ!」
「問題は無いだろう。何しろ、俺たちが活性化させた魔人を倒した英雄なんだからな」
「なんだと?」
ルカは俺が魔人を倒したことを知っていたのか。いや、倒してはいないのだが。
「あなたはあの時の……」
「君は……」
「なんだメル、勇者と面識あったのか?」
「ええ、以前ギルドで暴漢に襲われかけた時に助けてもらったの」
「え、そんなことがあったのか!?」
全く知らなかった。近くにいながら危険に一切気付けなかったなんて……。
仮にルカがいなければメルは……そう考えるとゾっとする。
「それにしても、あの時からさらに強くなったみたいだね」
「あなたの方こそ」
「俺は強くなってなんか無い……まだまだ足りないんだ」
表情を曇らせるルカ。何か訳ありなのかもしれない。
「それで、君があの魔物に通用する魔法を使えるのか?」
「私の爆発系魔法ならたぶんね。もう少し小さい魔物は一撃で倒せたから」
「一撃!?」
大げさな反応をするルカ。いや、俺たちが異常過ぎてこの反応が普通なのだろう。限界突破の試練を通して俺たちの異常さは身に染みてわかった。
「だから少しの間頼むわね」
「……ああ」
メルが詠唱をしている間は俺たちが魔物攻撃を引き付ける。とは言え俺も後衛なのでバルドとルカ、ファルとランの4人が前で戦うことになるのだが。
最初に戦った魔物は一撃で倒せたがこの魔物にそのまま通用するかどうかはわからない。そのため詠唱を長くする代わりに威力を上げる付与魔法をエンチャントして万全を期す。リアと詠唱共有をすることで若干の詠唱短縮も見込めるため、そこまでの隙は出来ないはずだ。
前で戦っている4人は魔物の攻撃を自分たちに向けさせつつ攻撃も行う。ただ、その攻撃も陽動目的にしかなっていない。最初の魔物と違い、傷を付けることすら出来ないのだ。結果的に攻撃としては全く意味のないものと化してしまっている。
それでも攻撃を続ける4人のおかげで魔物のヘイトはメルに向かわずに済んでいる。
「皆! 準備が終わったわ!」
準備が完了した事を知らせる声が聞こえ、前の4人は一斉に横へと避ける。
「エクスプロージョン!!」
巨人の魔物に向かって火球が飛んでいく。そして着弾と同時に爆発が起こり、あっという間に魔物は爆炎に包み込まれた。最初の魔物に対して使われたものよりも遥かに強力な魔法になっており、このダンジョンに影響を及ばさないギリギリの威力にまで上昇しているはずだ。
最初の魔物と同じであればこれで終わる。仮にあの魔物よりも強かったとしてもそれなりのダメージは期待できるはずだ。
しかしそんな期待は、ほぼ無傷のまま煙の中から出てきた魔物にいとも簡単に打ち砕かれたのだった。
「あ、ああ……」
ランの声に、ふと我に返る。
確かにランを追放した勇者は許せないが、今は魔物との交戦中だ。そんなことを言っている場合では無いのは明白だった。
「どうやら苦戦しているらしい。どうする、俺たちも加勢するか?」
「同じ冒険者だと言うのなら協力するべきだろうな」
その冒険者パーティが勇者パーティであることは、ランには言っておくべきことかもしれない。しかし今言ってしまって大丈夫だろうか。仮にも自分を追放した存在だ。とても関係が良いとは思えない。
とは言え戦い始めればそんなことは言っていられなくなる。覚悟を決めるしかない。
「ラン……戦闘中のパーティなんだが……」
「わかっている。勇者パーティなのだろう?」
「……え?」
何故かランは知っていた。部屋の中は俺しか確認していない。しかし何故か彼女は部屋の中で戦っているのが勇者パーティだという事を認識していたのだ。
「忘れたのか、私はエルフなんだ。これくらい近ければ魔力で誰だかはわかるさ」
「そうなのか……」
「私のためを思って悩んでくれたのだろう。ありがとう、サザン」
ランはそう言って部屋の中へと入っていった。
「避けろ! ルカァァ!!」
ルカに向かって魔物は腕を振り下ろす。バルドが叫ぶものの、既に腕はルカに接近しすぎていた。
しかし接触する寸前でランが滑り込み、剣で受け止めることでルカを助けた。
「お前は……ラン!? なんでお前がここに!!」
「話はあとだ。今はこの魔物をどうにかするべきだろう」
ランは魔物の腕を跳ね返し、一度距離を取る。同時に勇者パーティも一度態勢を立て直した。
「アンタが勇者か。色々と言いたいことはあるが、今はあの魔物をどうにかするぞ」
「どうにかすると言ってもどうする気だ? あの魔物には物理攻撃は効かない。魔法だって大したダメージは与えられなかった」
先ほど見ていた通り、ロストブリザードによる攻撃は意味を為さなかった。ロストブリザードは高威力の魔法ではあるものの、凍結させることが主なダメージソースとなるこの魔法はここの魔物には相性が悪かったのだろう。
だったらこちらのメルの爆発系魔法の出番だ。最初に出会った魔物も一撃で粉砕した実績もある。
「俺のパーティの魔術師なら効果がある魔法を使える。だから協力して時間稼ぎをしよう」
「おいおい、本当なのか?」
バルドは俺の言葉を疑っている。勇者パーティですら通用しなかった相手に、いきなり現れた冒険者が何とかなるなんて言ったらそう思うのも無理はないだろう。
さて、どう説明したものか。
「わかった。俺たちも協力しよう」
「おい、正気か!? こんなヤツのいう事を信じるのかよ!」
「問題は無いだろう。何しろ、俺たちが活性化させた魔人を倒した英雄なんだからな」
「なんだと?」
ルカは俺が魔人を倒したことを知っていたのか。いや、倒してはいないのだが。
「あなたはあの時の……」
「君は……」
「なんだメル、勇者と面識あったのか?」
「ええ、以前ギルドで暴漢に襲われかけた時に助けてもらったの」
「え、そんなことがあったのか!?」
全く知らなかった。近くにいながら危険に一切気付けなかったなんて……。
仮にルカがいなければメルは……そう考えるとゾっとする。
「それにしても、あの時からさらに強くなったみたいだね」
「あなたの方こそ」
「俺は強くなってなんか無い……まだまだ足りないんだ」
表情を曇らせるルカ。何か訳ありなのかもしれない。
「それで、君があの魔物に通用する魔法を使えるのか?」
「私の爆発系魔法ならたぶんね。もう少し小さい魔物は一撃で倒せたから」
「一撃!?」
大げさな反応をするルカ。いや、俺たちが異常過ぎてこの反応が普通なのだろう。限界突破の試練を通して俺たちの異常さは身に染みてわかった。
「だから少しの間頼むわね」
「……ああ」
メルが詠唱をしている間は俺たちが魔物攻撃を引き付ける。とは言え俺も後衛なのでバルドとルカ、ファルとランの4人が前で戦うことになるのだが。
最初に戦った魔物は一撃で倒せたがこの魔物にそのまま通用するかどうかはわからない。そのため詠唱を長くする代わりに威力を上げる付与魔法をエンチャントして万全を期す。リアと詠唱共有をすることで若干の詠唱短縮も見込めるため、そこまでの隙は出来ないはずだ。
前で戦っている4人は魔物の攻撃を自分たちに向けさせつつ攻撃も行う。ただ、その攻撃も陽動目的にしかなっていない。最初の魔物と違い、傷を付けることすら出来ないのだ。結果的に攻撃としては全く意味のないものと化してしまっている。
それでも攻撃を続ける4人のおかげで魔物のヘイトはメルに向かわずに済んでいる。
「皆! 準備が終わったわ!」
準備が完了した事を知らせる声が聞こえ、前の4人は一斉に横へと避ける。
「エクスプロージョン!!」
巨人の魔物に向かって火球が飛んでいく。そして着弾と同時に爆発が起こり、あっという間に魔物は爆炎に包み込まれた。最初の魔物に対して使われたものよりも遥かに強力な魔法になっており、このダンジョンに影響を及ばさないギリギリの威力にまで上昇しているはずだ。
最初の魔物と同じであればこれで終わる。仮にあの魔物よりも強かったとしてもそれなりのダメージは期待できるはずだ。
しかしそんな期待は、ほぼ無傷のまま煙の中から出てきた魔物にいとも簡単に打ち砕かれたのだった。
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