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4 王国の危機
29 終わらぬ戦い
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「全員、戦闘体勢に入れ! こいつはまだ生きているぞ!」
ランが叫ぶのと同時に、イル・ネクロは再び上体を起こし咆哮する。
体の奥底から恐怖と言う感覚を呼び起こすその咆哮を前に、誰一人として身動きの出来る者はいなかった。
咆哮を終えたイル・ネクロは遠距離攻撃を無効化する壁を張った。
とうとう恐れていた事態が起こったのだ。
これにより遠距離攻撃が効かなくなる。もちろんそれはサザンの作った一点集中の魔法も含めてだ。
「怯むな! まずはヤツの動きを止めるんだ。俺の後に続け!」
ギルドを訪れたサザンに話しかけた冒険者を筆頭に、イル・ネクロの足元に何人もの冒険者や傭兵が向かって行く。
それぞれが己の得物を使い攻撃を行うが、足の表面に傷を付けるだけで動きを止める程のダメージを与えることは出来ない。
「クソっ! バラバラに攻撃してもダメだ。連携して一点に攻撃を集中しよう!」
「なら私たちが先陣を切るわ。行くわよ! キュウ! カイ!」
けものわーるの三人はそれぞれ三方向に散り、イル・ネクロの死角へと周る。
そして足の薙ぎ払いを避けつつ一点に正確に攻撃を繰り返していく。
短刀による攻撃は一撃の威力は低いものの、手数の多さによって総ダメージ量は馬鹿には出来ない。
流れに乗って次々と攻撃を続ける近接部隊の面々。
連続して一点を攻撃し続けたことにより、イル・ネクロの表皮を破壊することに成功した。
だが、そこで近接部隊の皆は絶望することになる。
やっとの思いで破壊した表皮の下には、まだ何層にも硬い皮が連なっていたのだ。
「これほどの攻撃をして、やっと薄皮が剥けただけだと言うのですか……?」
「そうは言っても、私たちは攻撃を続けることしか出来ない。やるしか無いんだ」
あまりの圧倒的な状況に驚愕するイルにそう言って再び攻撃を開始するラン。
「何故、貴方はそれほどの覚悟があるのです?」
「私を救ってくれたある男の覚悟が、私を強くしたんだ」
ランはそれだけ言いイル・ネクロの下に潜り込んでいった。
「また動き出したぞ!」
「やはり倒してはいなかったか!」
一点集中させた最高の一撃でも倒せなかった。
それだけイル・ネクロは規格外の化け物ということなのか?
正直浮かれていた。魔人すらも圧倒出来た俺自身の力に、もはや敵なんていないと思い込んでいた。
だが、現に今目の前に遥か上の強大な存在がいる。
上には上がいることを思い知らされるばかりだ。
「もう一度今の攻撃は出来ないのか!?」
「それを誰が放つと言うんだ!」
「誰だって良いよそんなん! アイツを倒すためなら体の一つくらい安いもんだろ!?」
「ならそう言うお前が撃てよ!」
力では及ばない頂上的な存在を前に、皆の戦意が崩れ始めた。
不味いな。このままだと連携もまともに取れなくなってしまう。
「黙れ! てめえらは仲間割れをするためにここにいるんじゃねえだろ!」
バーンが叫ぶ。一瞬で場が静まり返り、完全に彼がこの場の空気を制していた。
「誰も撃たねえんならもう一度俺が撃つ。それなら文句はねえだろ」
「だがそれではバーン殿の体が」
「既にポーションで回復してるから問題はねえ」
「いや、その必要は無いみたいだぞ……。壁が……張られちまってる」
イル・ネクロを見張っていた冒険者がそう言った。
ヤツを見ると、確かに巨大な壁を展開している。もはや遠距離攻撃は意味を為さなくなってしまったのだ。
「おい、どうするんだ……?」
「あの攻撃でも倒せなかった相手に近接攻撃だけで挑むとか、正気じゃねえよ!」
またもや口論が始まってしまう。
もはや再度力を合わせて戦うことは不可能だろう。
「待て……何だあれは……?」
またもや何かを発見したのかイル・ネクロを見張っていた冒険者がそう言った。
その視線の先には立ち昇る土煙と大きな影。
「あれは……ファル……?」
そこには、本来の姿になったファルが……魔人ファレルロが立っていた。
「このままではイル・ネクロを倒す前にこちらが消耗しきってしまうな……」
近接部隊は攻撃を続けているが、それでもイル・ネクロの動きを止めることは出来ない。
ルガレア王国までそれほど距離も無くなってきた以上、回復に戻る時間を作るのも難しいだろう。
「……ランよ。皆を連れて下がるがいい」
「突然何を言い出すんだ?」
神妙な表情をしながらそう言うファル。
ランは彼女の異常な様子に気付いていたが、ファルの放つ威圧感に飲まれ何も言えずにいた。
「我の力を解放し、ヤツを食い止める」
「何!? 今ここでそんなことをすれば正体がバレてしまうぞ! 迫害されるかもしれない……いや、討伐される可能性だってある」
「それでも、我は人のために戦うと決めたのだ」
「……そうか」
ファルの覚悟が伝わったのか、ランは他の冒険者を下がらせるために動き始めた。
「これで良いんだ。……我は魔神ファレルロ。今、人々のためにその力を奮おう!!」
ランが叫ぶのと同時に、イル・ネクロは再び上体を起こし咆哮する。
体の奥底から恐怖と言う感覚を呼び起こすその咆哮を前に、誰一人として身動きの出来る者はいなかった。
咆哮を終えたイル・ネクロは遠距離攻撃を無効化する壁を張った。
とうとう恐れていた事態が起こったのだ。
これにより遠距離攻撃が効かなくなる。もちろんそれはサザンの作った一点集中の魔法も含めてだ。
「怯むな! まずはヤツの動きを止めるんだ。俺の後に続け!」
ギルドを訪れたサザンに話しかけた冒険者を筆頭に、イル・ネクロの足元に何人もの冒険者や傭兵が向かって行く。
それぞれが己の得物を使い攻撃を行うが、足の表面に傷を付けるだけで動きを止める程のダメージを与えることは出来ない。
「クソっ! バラバラに攻撃してもダメだ。連携して一点に攻撃を集中しよう!」
「なら私たちが先陣を切るわ。行くわよ! キュウ! カイ!」
けものわーるの三人はそれぞれ三方向に散り、イル・ネクロの死角へと周る。
そして足の薙ぎ払いを避けつつ一点に正確に攻撃を繰り返していく。
短刀による攻撃は一撃の威力は低いものの、手数の多さによって総ダメージ量は馬鹿には出来ない。
流れに乗って次々と攻撃を続ける近接部隊の面々。
連続して一点を攻撃し続けたことにより、イル・ネクロの表皮を破壊することに成功した。
だが、そこで近接部隊の皆は絶望することになる。
やっとの思いで破壊した表皮の下には、まだ何層にも硬い皮が連なっていたのだ。
「これほどの攻撃をして、やっと薄皮が剥けただけだと言うのですか……?」
「そうは言っても、私たちは攻撃を続けることしか出来ない。やるしか無いんだ」
あまりの圧倒的な状況に驚愕するイルにそう言って再び攻撃を開始するラン。
「何故、貴方はそれほどの覚悟があるのです?」
「私を救ってくれたある男の覚悟が、私を強くしたんだ」
ランはそれだけ言いイル・ネクロの下に潜り込んでいった。
「また動き出したぞ!」
「やはり倒してはいなかったか!」
一点集中させた最高の一撃でも倒せなかった。
それだけイル・ネクロは規格外の化け物ということなのか?
正直浮かれていた。魔人すらも圧倒出来た俺自身の力に、もはや敵なんていないと思い込んでいた。
だが、現に今目の前に遥か上の強大な存在がいる。
上には上がいることを思い知らされるばかりだ。
「もう一度今の攻撃は出来ないのか!?」
「それを誰が放つと言うんだ!」
「誰だって良いよそんなん! アイツを倒すためなら体の一つくらい安いもんだろ!?」
「ならそう言うお前が撃てよ!」
力では及ばない頂上的な存在を前に、皆の戦意が崩れ始めた。
不味いな。このままだと連携もまともに取れなくなってしまう。
「黙れ! てめえらは仲間割れをするためにここにいるんじゃねえだろ!」
バーンが叫ぶ。一瞬で場が静まり返り、完全に彼がこの場の空気を制していた。
「誰も撃たねえんならもう一度俺が撃つ。それなら文句はねえだろ」
「だがそれではバーン殿の体が」
「既にポーションで回復してるから問題はねえ」
「いや、その必要は無いみたいだぞ……。壁が……張られちまってる」
イル・ネクロを見張っていた冒険者がそう言った。
ヤツを見ると、確かに巨大な壁を展開している。もはや遠距離攻撃は意味を為さなくなってしまったのだ。
「おい、どうするんだ……?」
「あの攻撃でも倒せなかった相手に近接攻撃だけで挑むとか、正気じゃねえよ!」
またもや口論が始まってしまう。
もはや再度力を合わせて戦うことは不可能だろう。
「待て……何だあれは……?」
またもや何かを発見したのかイル・ネクロを見張っていた冒険者がそう言った。
その視線の先には立ち昇る土煙と大きな影。
「あれは……ファル……?」
そこには、本来の姿になったファルが……魔人ファレルロが立っていた。
「このままではイル・ネクロを倒す前にこちらが消耗しきってしまうな……」
近接部隊は攻撃を続けているが、それでもイル・ネクロの動きを止めることは出来ない。
ルガレア王国までそれほど距離も無くなってきた以上、回復に戻る時間を作るのも難しいだろう。
「……ランよ。皆を連れて下がるがいい」
「突然何を言い出すんだ?」
神妙な表情をしながらそう言うファル。
ランは彼女の異常な様子に気付いていたが、ファルの放つ威圧感に飲まれ何も言えずにいた。
「我の力を解放し、ヤツを食い止める」
「何!? 今ここでそんなことをすれば正体がバレてしまうぞ! 迫害されるかもしれない……いや、討伐される可能性だってある」
「それでも、我は人のために戦うと決めたのだ」
「……そうか」
ファルの覚悟が伝わったのか、ランは他の冒険者を下がらせるために動き始めた。
「これで良いんだ。……我は魔神ファレルロ。今、人々のためにその力を奮おう!!」
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