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3 勇者パーティの後始末
20 脱出
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「どういう……ことだ……?」
魔人は、俺たちはここで終わることになると言った。
あの状態で俺たちを倒すことは出来ないはず。何よりあの悲しそうな笑顔はなんだ。
「お前らはダンジョンの崩壊に巻き込まれて、その生涯に幕を閉じることになるだろう」
「崩壊?」
「ああ、このダンジョンは我が死ぬと崩壊するようになっている。残念だ……お前らのような強き者がこのような場所で潰えることになるとは」
「なら、お前を倒さなければ良いんだな?」
「そ、それではお前らは何をしにここまで来たのだ! 我の活性化によって魔物に異常が起きているのであろう!」
それはそうだ。だがそれでも、ここで魔人を倒したら俺たちも死ぬだなんて……普通倒せないだろう。
「ひ、卑怯! 卑怯だよそんなの!」
「そう言われても困るな。我はここに封印されただけで、そういう風にこのダンジョン側が作られているだけだ」
魔人の意思では無い……であれば解除させる手段も無い……か。
ダンジョン内から即座に脱出できる道具もあるらしいが、そんな高価なもの生憎持ち合わせていない。
これは困ったぞ。世界を救う代わりに命を捧げられるほど、俺たちはお人好しでも正義の味方でも無い。
自分たちの命の方を優先したくなるのは当然だ。であればどうするか……。
「……よし、お前を外に出すぞ」
「……は? 何を言っているのだお前は」
「そうよサザン、どうやって外に出すつもり? それに魔人なんて外に出したらどれだけの被害が出るか……」
メルの言う通りではあるが、現状できる手段がそれしかないのだから仕方がない。
ただ、一応確認はしておくか。
「そもそも、お前はなんで封印されていたんだ。場合によっては外に出ても問題は無いだろ?」
「話せば長くなる……。我は元々、ただの村娘だった」
元は村娘……人から魔人になる例も無くはないと図書館の本で見たからなんらおかしくは無いか。
……ん? 娘?
「……え、ちょっと待ってお前女だったの……?」
「そうだが? いや、魔人になった今はもう性別と言う概念は無いのだが。話を戻すが、我は村の一番の魔術師の娘だった。しかしある時、村の者は我の母を悪辣な魔女として殺したのだ……! 許せなかった我は憎悪に飲み込まれ、気付いたら魔人と化していた」
「思っていたより重い過去がありそうで、その、なんか悪かったな」
「いや良い謝るな。我はその村の者を殺した罪人なのだ。温情などいらん」
ファレルロはまたしても悲しみのにじみ出た表情をする。魔人としての戦闘への欲求が表に出てきているだけで、ファレルロ自体は優しい性格なのではないだろうか。
「……あなたの母が魔女だと言われるようになったのは、何が原因なのかしら……?」
「その時流行っていた流行病だ。その病の原因が母であると勝手に思い込んだヤツらが、我の母を……!!」
ファレルロが怒りを露わにすると、辺りが震え始めた。
限界を迎えた体で魔力を高めようとしていることで、崩壊が早まっているというのか……!?
「不味い、このままじゃ崩壊するぞ! どうするんだサザン!」
「ええい、ファレロを連れて出るぞ!」
俺たちはファレルロを抱え上げ、ダンジョンの出口へと急いだ。
道中で魔物たちに出会うも、この際経験値とかなんとか言っていられないので即死魔法を付与した石を投げて対処する。
俺たちがダンジョンの外へ滑り出るのと、ダンジョンが崩壊するのはほぼ同時だった。
「っっぶねぇぇぇ!!」
「はぁ……はぁ……サザンの、身体能力強化が無かったら……危なかったわね……」
「本当に良かったのか? 我を外に出したと言うことは、下手をしたらより多くの異常が起こる可能性があるということだぞ」
「ああ、そのことなんだが……ファレルロ、お前の魔力を抑えることで対処できるかもしれない」
「……なんだと?」
俺のその提案に、ファレルロは驚きを隠せないようだった。
魔人は、俺たちはここで終わることになると言った。
あの状態で俺たちを倒すことは出来ないはず。何よりあの悲しそうな笑顔はなんだ。
「お前らはダンジョンの崩壊に巻き込まれて、その生涯に幕を閉じることになるだろう」
「崩壊?」
「ああ、このダンジョンは我が死ぬと崩壊するようになっている。残念だ……お前らのような強き者がこのような場所で潰えることになるとは」
「なら、お前を倒さなければ良いんだな?」
「そ、それではお前らは何をしにここまで来たのだ! 我の活性化によって魔物に異常が起きているのであろう!」
それはそうだ。だがそれでも、ここで魔人を倒したら俺たちも死ぬだなんて……普通倒せないだろう。
「ひ、卑怯! 卑怯だよそんなの!」
「そう言われても困るな。我はここに封印されただけで、そういう風にこのダンジョン側が作られているだけだ」
魔人の意思では無い……であれば解除させる手段も無い……か。
ダンジョン内から即座に脱出できる道具もあるらしいが、そんな高価なもの生憎持ち合わせていない。
これは困ったぞ。世界を救う代わりに命を捧げられるほど、俺たちはお人好しでも正義の味方でも無い。
自分たちの命の方を優先したくなるのは当然だ。であればどうするか……。
「……よし、お前を外に出すぞ」
「……は? 何を言っているのだお前は」
「そうよサザン、どうやって外に出すつもり? それに魔人なんて外に出したらどれだけの被害が出るか……」
メルの言う通りではあるが、現状できる手段がそれしかないのだから仕方がない。
ただ、一応確認はしておくか。
「そもそも、お前はなんで封印されていたんだ。場合によっては外に出ても問題は無いだろ?」
「話せば長くなる……。我は元々、ただの村娘だった」
元は村娘……人から魔人になる例も無くはないと図書館の本で見たからなんらおかしくは無いか。
……ん? 娘?
「……え、ちょっと待ってお前女だったの……?」
「そうだが? いや、魔人になった今はもう性別と言う概念は無いのだが。話を戻すが、我は村の一番の魔術師の娘だった。しかしある時、村の者は我の母を悪辣な魔女として殺したのだ……! 許せなかった我は憎悪に飲み込まれ、気付いたら魔人と化していた」
「思っていたより重い過去がありそうで、その、なんか悪かったな」
「いや良い謝るな。我はその村の者を殺した罪人なのだ。温情などいらん」
ファレルロはまたしても悲しみのにじみ出た表情をする。魔人としての戦闘への欲求が表に出てきているだけで、ファレルロ自体は優しい性格なのではないだろうか。
「……あなたの母が魔女だと言われるようになったのは、何が原因なのかしら……?」
「その時流行っていた流行病だ。その病の原因が母であると勝手に思い込んだヤツらが、我の母を……!!」
ファレルロが怒りを露わにすると、辺りが震え始めた。
限界を迎えた体で魔力を高めようとしていることで、崩壊が早まっているというのか……!?
「不味い、このままじゃ崩壊するぞ! どうするんだサザン!」
「ええい、ファレロを連れて出るぞ!」
俺たちはファレルロを抱え上げ、ダンジョンの出口へと急いだ。
道中で魔物たちに出会うも、この際経験値とかなんとか言っていられないので即死魔法を付与した石を投げて対処する。
俺たちがダンジョンの外へ滑り出るのと、ダンジョンが崩壊するのはほぼ同時だった。
「っっぶねぇぇぇ!!」
「はぁ……はぁ……サザンの、身体能力強化が無かったら……危なかったわね……」
「本当に良かったのか? 我を外に出したと言うことは、下手をしたらより多くの異常が起こる可能性があるということだぞ」
「ああ、そのことなんだが……ファレルロ、お前の魔力を抑えることで対処できるかもしれない」
「……なんだと?」
俺のその提案に、ファレルロは驚きを隠せないようだった。
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