15 / 76
2 エルフの村
15 あっけない最後
しおりを挟む
「クイーンワーム!? アイツはさっき倒したはず……!」
倒したはずのクイーンワームが現れ、村長を食い始めたのだ。この場にいた誰もが何が起こったのかわからなかっただろう。
「助けてくれ! 我はここで死ぬべき存在じゃないんだ!! おい、聞いているのか!!」
村長がわめき散らすが、誰一人として動こうとしない。
それもそのはずだ。村長の洗脳スキルは、たった今完成した俺の洗脳無効エンチャントによって全員解除されているのだから。
「クソッ! いやだ! 死にたくない!! 我は……われ……は」
クイーンワームは村長を食い終えるのと同時に、再度消滅した。あとで分かった話だが、Sランク級の魔物は時折蘇生スキルを保持しているらしい。
蘇生といっても完全なる復活では無く、死亡後一定時間後に再度短い時間だけ行動が可能になると言うものだ。終わったと油断した冒険者を道連れにするためのスキルなのだろう。
これにて一件落着と言うことでやることは一つ。
「さて、諸悪の根源の村長もいなくなったことですし……勝利の宴、開きますか!」
こうなりゃもう飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
何気に冒険者になってから初めての宴だ。めいっぱい楽しませてもらおう……!
◇
白くなる視界。そして酷い頭痛。そうか、朝か。
うぅ……流石にハメを外しすぎた。
飲み過ぎが良くないと言うことを身に染みて思い知ったよ。
「サザン……起きたか?」
「……んんぅっ!? ラ、ラン!?」
なぜかランが同じベッドにいる。え、これは……。いや落ち着け落ち着け……。
落ち着けねえ! 顔が! 近い! まつ毛長い!
「昨日は凄かったな」
そして何も覚えていない……!! え? 何があったの? もしかして人生終了のお知らせ……?
「はははっ冗談だ。さっきベッドに入ったばかりだよ」
「あ、ハイ……」
良かった……!
心臓がバクバクしている。やっちまったかと思った。
ひとまずベッドから出て落ち着こう。
「でもまあ、少しくらいなら……私は構わないが?」
ランはそう言うと不敵な笑みを浮かべ、俺の隣に座った。
落ち着けない……!
今日はなぜだかランが積極的だ。
寝巻がはだけていて、肌色成分が強い。これ以上見ていたら戻れなくなるような気がする……。
あまり意識したことが無いと言えば嘘になるが、それでも極力パーティメンバーにそういう目を向けるのは控えているんだ。
なのに、そっちから誘惑されたら俺は……。
「サザン、起きてる? ……え?」
顔を赤くした男と、はだけた服の女がベッドの上で二人きり……。
終わった。メルにこの状況を見られた。もう終わりです俺の冒険はここで終わってしまうのだ。
「……サザン」
「サザン、頬赤いけどどうしたの?」
「なんでも無いんだ。リアは知らなくていいことだから」
メルに盛大に平手打ちを食らったが、それだけで済んだと考えればまだマシなのか……?
一応その後、誤解も解けたことだしね。
「ところでラン、村には顔出さなくて良いのか?」
「昨日の夜、既に話は終えているからな。朝に出発することも伝えてあるから心配はいらない」
「そうか。なら良かった」
ランは帰る場所を取り戻した。やっぱり一人は寂しいからな。故郷から爪弾きされるなんて考えたくも無い。
それに、悪しき村長がいなくなり村は健全に動くようになったようだ。今までのような村長ファーストの村では無くなり、村人全員のための運営を行っているらしい。
何もかもが良い方向に動いたと言って差し支えないだろう。
いやー、良いことをすると気分が良い。
こうして俺たちはまだ見ぬ冒険と強さを求め、今日も行く……なんてね。
エルフの村 完
倒したはずのクイーンワームが現れ、村長を食い始めたのだ。この場にいた誰もが何が起こったのかわからなかっただろう。
「助けてくれ! 我はここで死ぬべき存在じゃないんだ!! おい、聞いているのか!!」
村長がわめき散らすが、誰一人として動こうとしない。
それもそのはずだ。村長の洗脳スキルは、たった今完成した俺の洗脳無効エンチャントによって全員解除されているのだから。
「クソッ! いやだ! 死にたくない!! 我は……われ……は」
クイーンワームは村長を食い終えるのと同時に、再度消滅した。あとで分かった話だが、Sランク級の魔物は時折蘇生スキルを保持しているらしい。
蘇生といっても完全なる復活では無く、死亡後一定時間後に再度短い時間だけ行動が可能になると言うものだ。終わったと油断した冒険者を道連れにするためのスキルなのだろう。
これにて一件落着と言うことでやることは一つ。
「さて、諸悪の根源の村長もいなくなったことですし……勝利の宴、開きますか!」
こうなりゃもう飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
何気に冒険者になってから初めての宴だ。めいっぱい楽しませてもらおう……!
◇
白くなる視界。そして酷い頭痛。そうか、朝か。
うぅ……流石にハメを外しすぎた。
飲み過ぎが良くないと言うことを身に染みて思い知ったよ。
「サザン……起きたか?」
「……んんぅっ!? ラ、ラン!?」
なぜかランが同じベッドにいる。え、これは……。いや落ち着け落ち着け……。
落ち着けねえ! 顔が! 近い! まつ毛長い!
「昨日は凄かったな」
そして何も覚えていない……!! え? 何があったの? もしかして人生終了のお知らせ……?
「はははっ冗談だ。さっきベッドに入ったばかりだよ」
「あ、ハイ……」
良かった……!
心臓がバクバクしている。やっちまったかと思った。
ひとまずベッドから出て落ち着こう。
「でもまあ、少しくらいなら……私は構わないが?」
ランはそう言うと不敵な笑みを浮かべ、俺の隣に座った。
落ち着けない……!
今日はなぜだかランが積極的だ。
寝巻がはだけていて、肌色成分が強い。これ以上見ていたら戻れなくなるような気がする……。
あまり意識したことが無いと言えば嘘になるが、それでも極力パーティメンバーにそういう目を向けるのは控えているんだ。
なのに、そっちから誘惑されたら俺は……。
「サザン、起きてる? ……え?」
顔を赤くした男と、はだけた服の女がベッドの上で二人きり……。
終わった。メルにこの状況を見られた。もう終わりです俺の冒険はここで終わってしまうのだ。
「……サザン」
「サザン、頬赤いけどどうしたの?」
「なんでも無いんだ。リアは知らなくていいことだから」
メルに盛大に平手打ちを食らったが、それだけで済んだと考えればまだマシなのか……?
一応その後、誤解も解けたことだしね。
「ところでラン、村には顔出さなくて良いのか?」
「昨日の夜、既に話は終えているからな。朝に出発することも伝えてあるから心配はいらない」
「そうか。なら良かった」
ランは帰る場所を取り戻した。やっぱり一人は寂しいからな。故郷から爪弾きされるなんて考えたくも無い。
それに、悪しき村長がいなくなり村は健全に動くようになったようだ。今までのような村長ファーストの村では無くなり、村人全員のための運営を行っているらしい。
何もかもが良い方向に動いたと言って差し支えないだろう。
いやー、良いことをすると気分が良い。
こうして俺たちはまだ見ぬ冒険と強さを求め、今日も行く……なんてね。
エルフの村 完
12
お気に入りに追加
1,188
あなたにおすすめの小説
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる