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1 追放
9 新たな門出
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俺が来た時、メルとリアは大型のカマキリの魔物であるヘルマンティスに襲われていた。
あと一歩遅ければ……嫌な想像に悪寒がする。
「え……サザン……?」
「どうして……死んだはずじゃ……」
「話はあとだ。まずはあの魔物をどうにかしないとな」
俺はポーチから短刀を取り出す。その短刀に硬質化と攻撃力強化を多重で付与する。
「お、お前……お前如きに何が出来んだよ!」
「黙って見てな」
ヘルマンティスに肉薄し、短刀で鎌の付け根を斬る。エンチャントによってただの短刀とは思えない程に切れ味の良いものとなっており、何の苦も無くヘルマンティスの鎌を斬り落とした。
「嘘だろ……」
グロスは信じられないものを見たという表情をしている。それもそのはずだろう。弱いと思っていた者がこんな圧倒的な力を見せつけてくるのだから。
鎌を失くしたヘルマンティスは今度は牙で攻撃をしようと向かってくる。だが遅い。
短刀でヘルマンティスの全身を斬る。あっという間にバラバラになり、俺の中に経験値が入って来た。
今のでちょうどレベル100になった。やはりSランク魔物は経験値の効率が良い。
「倒した……の?」
「サザン……生きていたのなら、今まで何してたのよ……!!」
「ああ、それについてはこれから話すから落ち着いてくれ」
俺はグロスに追放され、そのまま殺されかけたこと。今までにあったことを全て話した。
「グロス……これでもう言い逃れは出来ないわよ」
「メル、それはどういう……」
「私、サザンが死んだ日のこと疑問に思ってたの。魔物と戦ったにしてはグロスの装備が奇麗すぎたから」
メルはグロスが俺を殺したのだと言うことを知っていたのか。でもそれならなぜ今でもグロスと共にいたのか……。
「言いたいことはわかるわ。なんでそんなクソ野郎と今まで一緒にいたのか、でしょ?」
「心が読めるのかと思うぐらいピンポイントだね」
「理由を聞いたらさらにクソ野郎度が増すわよ。グロス、このことを口外したらリアに乱暴するって言って私を束縛したの」
……なんだそれは。正真正銘のクソ野郎じゃないか。いやグロスがクソ野郎なのはわかっていたが。
「それ……本当なの?」
「リア……」
リアは昔からグロスのことを実の兄のように慕っていた。そのため、グロスの本性がそのようなものであるなど考えたことも無いのだろう。
「リア、辛いと思うがどうか受け入れてくれ」
「……」
「リア……それでも俺はお前の兄貴みたいなもんだよな……? なあ、俺の傷を治してくれよ……!」
「グロス、こんな状況でもなおリアに回復を強いるというのか?」
グロスはリアの足にしがみつき、懇願している。だがリアは目を合わせようとしない。
「クソっ……どいつもこいつも! 素直に俺の言う通りにしてれば良いのによぉ!!」
俺はグロスを引きはがした後、リアを少し離れた場所に移動させた。そしてポーチから取り出したポーションに完全回復のエンチャントを施し手渡す。
「これは……?」
「完全回復のエンチャントを施したポーションだ。これを飲めばリアの腕が治るはずだ」
ダンジョンでリアは片腕を失った。それからというもの、普段の生活の中でも不自由であったはずだ。なのでこれで腕を回復させる。このエンチャントを使うのは初めてだが、理論上は上手くいくはずだ。
「んぐっ……うわ!?」
リアがポーションを飲むと腕が光り出し、そのまま光が強くなっていく。光が収まった時、リアの腕は元通りになっていた。
成功して何よりである。このポーションは今後の冒険においてかなり役に立つものになるだろうな。
「腕……戻った……?」
「ああ。これで昔みたいに剣を持てるな」
「サザン……ありがとう!」
リアに抱き着かれ、一瞬バランスを崩す。が、今度は後ろからメルに抱き着かれたため結果的に元の位置に戻った。
「生きててくれて良かった……!」
「サザン、また一緒に冒険出来るんだね!」
「ああ!」
「おい……サザン……」
「……なんだ」
匍匐前進で俺の元までやって来たグロスは、まだ諦めてはいないようだった。
「助けてくれ……このままでは俺はもう冒険者として戦えない……。心を入れ替えるから、傷を治してくれ……頼む……」
「誰がその言葉を信用できるんだ?」
「頼む……」
「サザン、私からもお願い……。確かにサザンを殺そうとしたのは許せない……許せないけど、やっぱりグロスがいなくなっちゃうのは嫌だ……」
リアは覚悟を決めた目で俺を見つめる。きっと、俺が折れるまで願い続けるのだろう。
「あぁ……わかった。ただ、一つ条件だグロス。金輪際俺たちの前に現れるな。お前が俺たちと関係ないところで冒険者をやるというのであれば、回復してやる」
「わかった……! もうお前たちに干渉しないから! 助けてくれ!」
俺は完全回復のポーションをグロスに渡した。果たして、俺のこの選択は正しいのだろうか……。
「サザン……行こう」
「……わかった」
こうして俺は、メルとリアを助け出すことに成功したのだった。
「ギラはこれからどうするんだ?」
「私は先のヘルマンティスとの戦いで己の未熟さを改めて痛感いたしましたので、もう少し下のランクでしばらくレベルを上げようと思います。もしかしたらまたいつか出会えるかもしれませんね」
「そうか……元気でな!」
「はい、そちらも!」
メルとリアは俺のパーティに加入したが、ギラはレベル上げのために下のランクでレベル上げをするようだ。一期一会は冒険者であれば当然のこと。またいつか出会えることを願って、彼女を見送った。
「俺たちも行くか!」
「うん!」
「ああ!」
「行きましょう!」
メル、リア、ラン……頼もしい仲間と共に、俺たちはまだまだ強くなる。
そして今度は、胸を張ってSランク冒険者パーティを名乗れるようになってやる!
今、俺たちは新たな門出を迎える……!
追放 完
あと一歩遅ければ……嫌な想像に悪寒がする。
「え……サザン……?」
「どうして……死んだはずじゃ……」
「話はあとだ。まずはあの魔物をどうにかしないとな」
俺はポーチから短刀を取り出す。その短刀に硬質化と攻撃力強化を多重で付与する。
「お、お前……お前如きに何が出来んだよ!」
「黙って見てな」
ヘルマンティスに肉薄し、短刀で鎌の付け根を斬る。エンチャントによってただの短刀とは思えない程に切れ味の良いものとなっており、何の苦も無くヘルマンティスの鎌を斬り落とした。
「嘘だろ……」
グロスは信じられないものを見たという表情をしている。それもそのはずだろう。弱いと思っていた者がこんな圧倒的な力を見せつけてくるのだから。
鎌を失くしたヘルマンティスは今度は牙で攻撃をしようと向かってくる。だが遅い。
短刀でヘルマンティスの全身を斬る。あっという間にバラバラになり、俺の中に経験値が入って来た。
今のでちょうどレベル100になった。やはりSランク魔物は経験値の効率が良い。
「倒した……の?」
「サザン……生きていたのなら、今まで何してたのよ……!!」
「ああ、それについてはこれから話すから落ち着いてくれ」
俺はグロスに追放され、そのまま殺されかけたこと。今までにあったことを全て話した。
「グロス……これでもう言い逃れは出来ないわよ」
「メル、それはどういう……」
「私、サザンが死んだ日のこと疑問に思ってたの。魔物と戦ったにしてはグロスの装備が奇麗すぎたから」
メルはグロスが俺を殺したのだと言うことを知っていたのか。でもそれならなぜ今でもグロスと共にいたのか……。
「言いたいことはわかるわ。なんでそんなクソ野郎と今まで一緒にいたのか、でしょ?」
「心が読めるのかと思うぐらいピンポイントだね」
「理由を聞いたらさらにクソ野郎度が増すわよ。グロス、このことを口外したらリアに乱暴するって言って私を束縛したの」
……なんだそれは。正真正銘のクソ野郎じゃないか。いやグロスがクソ野郎なのはわかっていたが。
「それ……本当なの?」
「リア……」
リアは昔からグロスのことを実の兄のように慕っていた。そのため、グロスの本性がそのようなものであるなど考えたことも無いのだろう。
「リア、辛いと思うがどうか受け入れてくれ」
「……」
「リア……それでも俺はお前の兄貴みたいなもんだよな……? なあ、俺の傷を治してくれよ……!」
「グロス、こんな状況でもなおリアに回復を強いるというのか?」
グロスはリアの足にしがみつき、懇願している。だがリアは目を合わせようとしない。
「クソっ……どいつもこいつも! 素直に俺の言う通りにしてれば良いのによぉ!!」
俺はグロスを引きはがした後、リアを少し離れた場所に移動させた。そしてポーチから取り出したポーションに完全回復のエンチャントを施し手渡す。
「これは……?」
「完全回復のエンチャントを施したポーションだ。これを飲めばリアの腕が治るはずだ」
ダンジョンでリアは片腕を失った。それからというもの、普段の生活の中でも不自由であったはずだ。なのでこれで腕を回復させる。このエンチャントを使うのは初めてだが、理論上は上手くいくはずだ。
「んぐっ……うわ!?」
リアがポーションを飲むと腕が光り出し、そのまま光が強くなっていく。光が収まった時、リアの腕は元通りになっていた。
成功して何よりである。このポーションは今後の冒険においてかなり役に立つものになるだろうな。
「腕……戻った……?」
「ああ。これで昔みたいに剣を持てるな」
「サザン……ありがとう!」
リアに抱き着かれ、一瞬バランスを崩す。が、今度は後ろからメルに抱き着かれたため結果的に元の位置に戻った。
「生きててくれて良かった……!」
「サザン、また一緒に冒険出来るんだね!」
「ああ!」
「おい……サザン……」
「……なんだ」
匍匐前進で俺の元までやって来たグロスは、まだ諦めてはいないようだった。
「助けてくれ……このままでは俺はもう冒険者として戦えない……。心を入れ替えるから、傷を治してくれ……頼む……」
「誰がその言葉を信用できるんだ?」
「頼む……」
「サザン、私からもお願い……。確かにサザンを殺そうとしたのは許せない……許せないけど、やっぱりグロスがいなくなっちゃうのは嫌だ……」
リアは覚悟を決めた目で俺を見つめる。きっと、俺が折れるまで願い続けるのだろう。
「あぁ……わかった。ただ、一つ条件だグロス。金輪際俺たちの前に現れるな。お前が俺たちと関係ないところで冒険者をやるというのであれば、回復してやる」
「わかった……! もうお前たちに干渉しないから! 助けてくれ!」
俺は完全回復のポーションをグロスに渡した。果たして、俺のこの選択は正しいのだろうか……。
「サザン……行こう」
「……わかった」
こうして俺は、メルとリアを助け出すことに成功したのだった。
「ギラはこれからどうするんだ?」
「私は先のヘルマンティスとの戦いで己の未熟さを改めて痛感いたしましたので、もう少し下のランクでしばらくレベルを上げようと思います。もしかしたらまたいつか出会えるかもしれませんね」
「そうか……元気でな!」
「はい、そちらも!」
メルとリアは俺のパーティに加入したが、ギラはレベル上げのために下のランクでレベル上げをするようだ。一期一会は冒険者であれば当然のこと。またいつか出会えることを願って、彼女を見送った。
「俺たちも行くか!」
「うん!」
「ああ!」
「行きましょう!」
メル、リア、ラン……頼もしい仲間と共に、俺たちはまだまだ強くなる。
そして今度は、胸を張ってSランク冒険者パーティを名乗れるようになってやる!
今、俺たちは新たな門出を迎える……!
追放 完
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