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1 追放
7 失ってから気付くことって案外多い②(追放側視点)
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「リア! 回復を頼む!」
「ちょっと待って! 魔力の回復が!」
リアは魔力回復ポーションをポーチから探している。
おかしい。いつもなら常に満足な量の魔力があったはずだ。回復が必要なタイミングで魔力切れを起こしていることなどまず無かった。
「メル、危ない!」
ギラがメルに向かって叫ぶのと同時に、後方で魔法の詠唱をしているメルに向かってイノシシの魔物が向かっていく。
「くっ……!」
間一髪のところでメルは魔物の突進を避ける。
これも今まで起こらなかったことだ。今まで魔物が後方に向かうことは無かった。
「クソっ! こっちだ!」
俺は後方に下がり、魔物の前に出る。元通りヘイトを俺に向けさせることが出来た。
「グロス、下がって!」
メルは詠唱を終え、強力な業火で魔物を焼く。魔法をもろに受けた魔物はそのまま丸焦げになり、灰と化す。
俺たちは魔物を倒すことに成功したが、それは今までのような圧倒的な勝利とは違った。
「ひとまず態勢を立て直さないと。ギラ、怪我とかはしてない?」
「大丈夫。それよりタンクであるグロスを回復させないと」
「ああ、俺なら大丈夫だ。もうリアに回復してもらった」
このメンバーでダンジョン探索を始めて早数日。ギラもパーティに打ち解けてきて何よりだ。
しかし、何かがおかしい。リアは頻繁に魔力切れを起こすし、メルはやたらと魔物に狙われる。新しいメンバーとの連携が取りにくいってだけでこんなことになるか?
「リア、どうしたんだ。何かおかしいぞ?」
「ごめんね。いつもはサザンが魔力切れを起こす前にポーションを使うタイミングを教えてくれてたんだけど……」
「サザンが……?」
あのお荷物がそんなことをしていただと……?
確かにアイツが戦闘中にちょこまかと動き回っているのは知っていた。だがそれは魔物から逃げているだけだと思っていたのだが。
「私も、サザンに魔物に狙われにくい立ち位置を教えてもらってたのよ」
「メル、お前もなのか……?」
メルすらもサザンの力を借りていたという。
サザンは低レベルのお荷物だった。それは紛れもない事実のはずだ。俺たちがSランク冒険者パーティになることが出来たのは、俺とメルとリアの三人の実力のはずだ……!
認めない。俺たちにはあんなヤツが必要だったということを認められるはずが無い!!
「優秀な人だったんだね、サザンという方は。そんな方が亡くなってしまうなんて……これがダンジョンの過酷さってことなのかな」
「違う!! アイツはそんなものでは……!!」
ギラの言葉を聞き、つい否定してしまった。
「グロス……?」
「あ、いや違うんだ……」
気まずい空気になった時、リアが血相を変えてこちらに飛び込んできた。
「グロス危ない!!」
「え……?」
そのままリアは俺を突き飛ばした。そしてその瞬間、リアを切り刻む何かの姿。
「リア……!?」
「魔物がいる! 今の今まで接近に気付けないなんて……相当強力な魔物に違いない……!」
俺はそのまま突き飛ばされた先で剣と盾を構え、急いでメルの前へ出る。
俺たちの前に現れたのはとてつもなく大きなカマキリの魔物。Sランク級のヘルマンティスだった。
「リア! お願い、死なないで!!」
メルはリアを抱きかかえ、ポーションを飲ませている。リアが復活するまで俺とギラで耐えるしかない。それも回復役無しでだ。
どうしてこうなった……。いつもは魔物の気配にいち早くサザンが気付いて……。
そうかよ。結局サザンか。
結局俺すらもアイツに頼っていたのか。
イライラする。俺たちはSランク冒険者パーティだ。なのにそんな俺たちがこんな目に合うなんて……これも全てサザンの野郎のせいだ。
「かかってこいよヘルマンティス! サザンがいなくても問題ないってことを証明してやるよ!!」
「ちょっと待って! 魔力の回復が!」
リアは魔力回復ポーションをポーチから探している。
おかしい。いつもなら常に満足な量の魔力があったはずだ。回復が必要なタイミングで魔力切れを起こしていることなどまず無かった。
「メル、危ない!」
ギラがメルに向かって叫ぶのと同時に、後方で魔法の詠唱をしているメルに向かってイノシシの魔物が向かっていく。
「くっ……!」
間一髪のところでメルは魔物の突進を避ける。
これも今まで起こらなかったことだ。今まで魔物が後方に向かうことは無かった。
「クソっ! こっちだ!」
俺は後方に下がり、魔物の前に出る。元通りヘイトを俺に向けさせることが出来た。
「グロス、下がって!」
メルは詠唱を終え、強力な業火で魔物を焼く。魔法をもろに受けた魔物はそのまま丸焦げになり、灰と化す。
俺たちは魔物を倒すことに成功したが、それは今までのような圧倒的な勝利とは違った。
「ひとまず態勢を立て直さないと。ギラ、怪我とかはしてない?」
「大丈夫。それよりタンクであるグロスを回復させないと」
「ああ、俺なら大丈夫だ。もうリアに回復してもらった」
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「ごめんね。いつもはサザンが魔力切れを起こす前にポーションを使うタイミングを教えてくれてたんだけど……」
「サザンが……?」
あのお荷物がそんなことをしていただと……?
確かにアイツが戦闘中にちょこまかと動き回っているのは知っていた。だがそれは魔物から逃げているだけだと思っていたのだが。
「私も、サザンに魔物に狙われにくい立ち位置を教えてもらってたのよ」
「メル、お前もなのか……?」
メルすらもサザンの力を借りていたという。
サザンは低レベルのお荷物だった。それは紛れもない事実のはずだ。俺たちがSランク冒険者パーティになることが出来たのは、俺とメルとリアの三人の実力のはずだ……!
認めない。俺たちにはあんなヤツが必要だったということを認められるはずが無い!!
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「違う!! アイツはそんなものでは……!!」
ギラの言葉を聞き、つい否定してしまった。
「グロス……?」
「あ、いや違うんだ……」
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「え……?」
そのままリアは俺を突き飛ばした。そしてその瞬間、リアを切り刻む何かの姿。
「リア……!?」
「魔物がいる! 今の今まで接近に気付けないなんて……相当強力な魔物に違いない……!」
俺はそのまま突き飛ばされた先で剣と盾を構え、急いでメルの前へ出る。
俺たちの前に現れたのはとてつもなく大きなカマキリの魔物。Sランク級のヘルマンティスだった。
「リア! お願い、死なないで!!」
メルはリアを抱きかかえ、ポーションを飲ませている。リアが復活するまで俺とギラで耐えるしかない。それも回復役無しでだ。
どうしてこうなった……。いつもは魔物の気配にいち早くサザンが気付いて……。
そうかよ。結局サザンか。
結局俺すらもアイツに頼っていたのか。
イライラする。俺たちはSランク冒険者パーティだ。なのにそんな俺たちがこんな目に合うなんて……これも全てサザンの野郎のせいだ。
「かかってこいよヘルマンティス! サザンがいなくても問題ないってことを証明してやるよ!!」
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