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1 追放
2 こういう時助けてくれる人はマジでいい人
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「大丈夫か?」
朧げな意識の中、女性の声が聞こえた気がする。
「まだ駄目か……しょうがない」
近くでポーションの瓶が開けられた音がする。唇にひやっとしたものが触れる感触……。
「ごふっ」
「すまない、苦しかったか?」
「はっ……!? あ、あなたは……?」
意識がはっきりした時、目の前には長い金髪と尖った耳が目立つエルフの女性がポーションの空き瓶を持って俺をのぞき込んでいた。
長いまつ毛にぱっちりとした碧い目、線が細い顔……美しいという他ない姿に思わず見とれてしまった。
「私はラン。ダンジョン内を探索していたら、倒れている君を見つけたんだ」
「お、俺はサザンと言います。助けていただきありがとうございました」
「良いんだ。同じ冒険者なら助け合うのは当然だろう?」
グロスのこともあり、警戒してしまう。助けてもらって失礼極まりないが、何か裏があるのではないかと勘繰ってしまうのだ。
「ここに留まるのも危険だ。ひとまずダンジョンの外へと向かおうか」
「そうですね」
俺とランはダンジョンの出口へ歩き始めた。
歩き始めて数十分。もともとかなり深い階層まで潜っていたということもあり、まだまだ先は長い。何より二人だけでダンジョンを進むというだけでかなりの難易度だというのに、俺は適正レベルに合っていないというお荷物確定な有様だ。
ランにもこのことを言うべきだろうか。いや言うべきだ。隠し事は死を招く、冒険者として基本のことだ。
「ランさん。言っておかなければならないことがあるのですが」
「ランで良いぞ。で、何か用か?」
「俺、レベルがこのダンジョンの適正に合っていなくて……お荷物にしかならないと思うんです。助けてもらってこういうのもアレですけど、あなた一人の方が生存率が高いと思うんです」
「ふむ、そんなことか。心配するな、私も適正レベルに足りていないからな」
ランは俺の言葉を聞き終えた後、そのまま歩き続けながらそう言い放った。
その言葉の意味を一瞬理解できなかった。だが時間が経つにつれ、だんだんと脳がその言葉の意味を嫌でも理解する。
ランも適正レベルに届いていない。つまり今強力な魔物に襲われれば二人そろって終わりというわけだ。
「え、それってどういう……」
「私はパーティから追い出されてしまってな」
何とも思っていないかのようにランは衝撃の事実を告白してきた。彼女も俺と同じく追放された存在だったのだ。
「でもなんであなたのような良い人が……」
「良い人過ぎたのだろう。誰彼構わず回復ポーションを使用し、いざ必要になった時には足りませんってのを何回もやってしまったからな」
ランは人が良すぎたのだと言う。例えそれがパーティメンバー以外の人でもけがをしていれば後先考えずにポーションや回復魔法を使用してしまうといった性格をしているため、いざ必要になった時に自分たちの分が無いということを繰り返しているらしい。
それが積もりに積もって今日、パーティを追い出されたのだと言う。
「実は俺もパーティを追い出されてしまいまして……」
俺もここまでのことをランに話した。
ランは俺の話しを聞きながら一緒に悲しんだり怒ってくれたりした。さっきは疑ってしまったけど、ランは本当に良い人なんだと思う。ただそれが行き過ぎてしまっているだけであって、彼女自身に悪気が無いのは十分に伝わって来る。
「君も私と同じ境遇だったんだな。なあ、このまま生きて帰れたら……一緒にパーティ組まないか?」
「良いんですか……?」
「私もこれからどうしようかと考えていたところだ。同じく追放された者同士、仲良くやろうじゃないか」
この申し出はとてもありがたい。ダンジョンから帰ったところで、俺のような経験年数に対して低レベルすぎる冒険者なんて入れてくれるパーティは無いだろうから。
少しの希望が見えてきたところで、俺たちは一気に絶望に突き落とされることになる。
目の前にSランクの魔物、ブラッドドラゴンが現れたのだ。
朧げな意識の中、女性の声が聞こえた気がする。
「まだ駄目か……しょうがない」
近くでポーションの瓶が開けられた音がする。唇にひやっとしたものが触れる感触……。
「ごふっ」
「すまない、苦しかったか?」
「はっ……!? あ、あなたは……?」
意識がはっきりした時、目の前には長い金髪と尖った耳が目立つエルフの女性がポーションの空き瓶を持って俺をのぞき込んでいた。
長いまつ毛にぱっちりとした碧い目、線が細い顔……美しいという他ない姿に思わず見とれてしまった。
「私はラン。ダンジョン内を探索していたら、倒れている君を見つけたんだ」
「お、俺はサザンと言います。助けていただきありがとうございました」
「良いんだ。同じ冒険者なら助け合うのは当然だろう?」
グロスのこともあり、警戒してしまう。助けてもらって失礼極まりないが、何か裏があるのではないかと勘繰ってしまうのだ。
「ここに留まるのも危険だ。ひとまずダンジョンの外へと向かおうか」
「そうですね」
俺とランはダンジョンの出口へ歩き始めた。
歩き始めて数十分。もともとかなり深い階層まで潜っていたということもあり、まだまだ先は長い。何より二人だけでダンジョンを進むというだけでかなりの難易度だというのに、俺は適正レベルに合っていないというお荷物確定な有様だ。
ランにもこのことを言うべきだろうか。いや言うべきだ。隠し事は死を招く、冒険者として基本のことだ。
「ランさん。言っておかなければならないことがあるのですが」
「ランで良いぞ。で、何か用か?」
「俺、レベルがこのダンジョンの適正に合っていなくて……お荷物にしかならないと思うんです。助けてもらってこういうのもアレですけど、あなた一人の方が生存率が高いと思うんです」
「ふむ、そんなことか。心配するな、私も適正レベルに足りていないからな」
ランは俺の言葉を聞き終えた後、そのまま歩き続けながらそう言い放った。
その言葉の意味を一瞬理解できなかった。だが時間が経つにつれ、だんだんと脳がその言葉の意味を嫌でも理解する。
ランも適正レベルに届いていない。つまり今強力な魔物に襲われれば二人そろって終わりというわけだ。
「え、それってどういう……」
「私はパーティから追い出されてしまってな」
何とも思っていないかのようにランは衝撃の事実を告白してきた。彼女も俺と同じく追放された存在だったのだ。
「でもなんであなたのような良い人が……」
「良い人過ぎたのだろう。誰彼構わず回復ポーションを使用し、いざ必要になった時には足りませんってのを何回もやってしまったからな」
ランは人が良すぎたのだと言う。例えそれがパーティメンバー以外の人でもけがをしていれば後先考えずにポーションや回復魔法を使用してしまうといった性格をしているため、いざ必要になった時に自分たちの分が無いということを繰り返しているらしい。
それが積もりに積もって今日、パーティを追い出されたのだと言う。
「実は俺もパーティを追い出されてしまいまして……」
俺もここまでのことをランに話した。
ランは俺の話しを聞きながら一緒に悲しんだり怒ってくれたりした。さっきは疑ってしまったけど、ランは本当に良い人なんだと思う。ただそれが行き過ぎてしまっているだけであって、彼女自身に悪気が無いのは十分に伝わって来る。
「君も私と同じ境遇だったんだな。なあ、このまま生きて帰れたら……一緒にパーティ組まないか?」
「良いんですか……?」
「私もこれからどうしようかと考えていたところだ。同じく追放された者同士、仲良くやろうじゃないか」
この申し出はとてもありがたい。ダンジョンから帰ったところで、俺のような経験年数に対して低レベルすぎる冒険者なんて入れてくれるパーティは無いだろうから。
少しの希望が見えてきたところで、俺たちは一気に絶望に突き落とされることになる。
目の前にSランクの魔物、ブラッドドラゴンが現れたのだ。
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