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終章『アヴァロンヘイムと悪魔の軍勢』
62 妙な噂
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アリアとエルドの二人組から得られた情報は大まかにその二つであった。
だが今の俺たちにはそれだけで充分だ。後は直接その大司教本人に聞けばいいだけのことだしな。
「すまねえな、俺たちもこれ以上のことは知らねえんだ」
「いえいえ、見ず知らずの俺にこんなにも話していただけただけで充分ありがたいですよ」
「そうか。それは良かった。……ただまあ最後に一つ。あまり詮索はしない方が良い。聖王都の異常に気付いた奴が色々と調査に出たみたいなんだが、何人も行方不明になってんだ。んじゃ、幸運を祈ってるぜ」
別れ際、男はそう言っていた。
少々……いや、かなりきな臭いことになってきたな。
要はこれ、聖王都側が都合の悪い奴らを秘密裏に葬っているってことだろう。
「さて、どうするのかしら。このまま下手にその大司教とやらに接触したら、多分私たちも同じ目に遭うわよ」
「でも、だからって放置は出来ない……よね」
「そうだな。もしその大司教が勇者で、その力を使ってこの国をおかしくしているのなら止めないと不味い。だが、国と衝突することも避けたいのは事実だ」
どちらの言う事も正しかった。
迂闊に近づけば怪しまれ、最悪正面衝突は免れない。かと言って勇者がやりたい放題している可能性があるのなら放置は出来ない。
正直、慎重に考えて行動するべきだろう。
……なので、まず俺たちは宿を探すことにした。
一筋縄ではいかない案件のようだからな。しばらくはこの聖王都に滞在することになりそうだから泊る場所はしっかり選んでおきたい。
こういう時、大体は人通りの多い道に面した宿が良い感じだ。
「ここは……!」
そのとき目に飛び込んできたのは、シックでオシャレな外観に、聖王都内の各所へのアクセスも良い宿屋だった。
……これは間違いなく良い宿だろう。と、そう思って宿に入った瞬間のことだ。
「いらっしゃいませにゃん♡」
耳に飛び込んできたのは媚び媚びな甘い声だった。
それも特徴的過ぎる語尾もおまけで。
よく見れば宿屋の店主は猫耳カチューシャを付けたメイド服の少女だ。
これはつまり……そう言う宿に入ってしまった!?
いやでも外観はあまりにも普通だったぞ?
「三名での宿泊ですか? 申し訳ないのですが、いま空いている部屋は一つしかないのですにゃん」
「一部屋……ですか。それなら……」
それなら別の宿にしよう……そう言おうとしたものの。
「それでお願いしたい」
ルキオラが強引に進めたのだった。
ちょっと!?
あまりにも何してくれちゃってんの過ぎるぞ!?
「へぇ~そう言うことですかにゃん♡」
店主がニヤリと笑う。
待て、間違いなく勘違いをしているぞ。
くっ……だがそれも仕方のないことか。
冷静に、客観的に見てみれば、今の俺たちはドスケベボディのハイエルフと小さな吸血鬼の少女を連れている、全身鎧を身に纏った男冒険者の三人パーティだ。
そんな中、三人部屋に泊る。それが意味することがわからない程、俺はピュアでは無かった。
「お部屋は二階の一番奥になっておりますにゃん。それではごゆっくり~」
結局、今更キャンセルすることも出来ず、俺たちは三人部屋に泊ることとなった。
「ごめんなさいステラ。でも、あたしも……たまには君と一緒に寝たかったの」
しょぼんとした様子でそう言うルキオラ。
駄目だ、そんな姿を見せられては責められない。
まあ何はともあれ、これでとりあえず宿の確保は出来た。
となるとここからは本格的に情報収集を始める必要がある。
ただ、エルドと言ったあの男の忠告通りなら恐らく、冒険者組合に言って直接聞く……みたいなことをするのは不味いだろうな。
ここは地道に聞き込みをするしかなさそうだ。
――――――
日も暮れる頃、宿に戻ると一階の酒場が賑わっていた。
見れば冒険者も多いみたいだし、こういう所は聖王都と言っても他の国と同じ感じなんだな。
ちなみに今日一日かけて得られた情報の中にエルド達から聞いた以上の物は無かった。
そんなに簡単に行けば苦労はないけども、それでももう少し進展があってもいいものじゃないか……?
「はぁ……これと言って成果は無し。今日はここで夕食を済ませて、寝ようか」
「それならあたしはあれ食べたいな」
「私はどうしようかしらね」
これだけ賑わっている酒場なだけあって、メニューはかなり充実していた。
そのためかルキオラもメイデンも何を選ぼうか迷っているようだ。
その後、メインの食事を終えて食後のデザートを待っていた時のこと。
「なあお前、あの噂知ってるか? 大司教様が裏で少女を集めてるってやつ」
「ああ、知ってるが……流石に作り話だろ。いくら何でもそんなこと大司教様がするかよ」
「だよなぁ……。おっとそこの嬢ちゃん、エール追加で頼むよ」
酔っ払い二人の会話が聞こえてきたのだが……明らかに重大な情報があったな?
ただの噂話である可能性もあるが、だとしてもそんな噂が発生するような大司教であると言うことは確定で良いだろう。
「ねえ、今の聞いた……よね」
「ああ……大司教が妙な動きをしているってやつだな」
「ただの与太話かもしれないけれど、今はそれでも大きな進歩よね」
「だからこそ、これでひとまずの方向性が決まったな」
とりあえずは大司教の行動を探り、あわよくばさっきの話の真偽を突き止める。
そしてそれを使って大司教の立場をどうにか出来れば完璧なんだが……まあそう上手くはいかないか。
「おまたせしました! デカ盛り聖王都パフェですにゃん!」
「な、なんだこれは……!?」
「わー……大きいね」
食後のデザートとして頼んだデカ盛り聖王都パフェが届いたのだが、それは思った以上に大きく……いやもう大きいとかの話じゃない。
メニューで見た時には三人ならいけるかとか思ってたけど、逆メニュー詐欺だろこれ。
こんなものをたったの三人でどうすれば……と、食べる前は思っていた。
しかし実際の所はそんな苦もなく、ペロリと平らげてしまうのだった。恐るべし別腹……。
元の世界ではもう絶対に出来なかったような暴食も、この体ならば出来てしまうのだ。
異世界転移万歳……そう叫びたくなる夜だった。
だが今の俺たちにはそれだけで充分だ。後は直接その大司教本人に聞けばいいだけのことだしな。
「すまねえな、俺たちもこれ以上のことは知らねえんだ」
「いえいえ、見ず知らずの俺にこんなにも話していただけただけで充分ありがたいですよ」
「そうか。それは良かった。……ただまあ最後に一つ。あまり詮索はしない方が良い。聖王都の異常に気付いた奴が色々と調査に出たみたいなんだが、何人も行方不明になってんだ。んじゃ、幸運を祈ってるぜ」
別れ際、男はそう言っていた。
少々……いや、かなりきな臭いことになってきたな。
要はこれ、聖王都側が都合の悪い奴らを秘密裏に葬っているってことだろう。
「さて、どうするのかしら。このまま下手にその大司教とやらに接触したら、多分私たちも同じ目に遭うわよ」
「でも、だからって放置は出来ない……よね」
「そうだな。もしその大司教が勇者で、その力を使ってこの国をおかしくしているのなら止めないと不味い。だが、国と衝突することも避けたいのは事実だ」
どちらの言う事も正しかった。
迂闊に近づけば怪しまれ、最悪正面衝突は免れない。かと言って勇者がやりたい放題している可能性があるのなら放置は出来ない。
正直、慎重に考えて行動するべきだろう。
……なので、まず俺たちは宿を探すことにした。
一筋縄ではいかない案件のようだからな。しばらくはこの聖王都に滞在することになりそうだから泊る場所はしっかり選んでおきたい。
こういう時、大体は人通りの多い道に面した宿が良い感じだ。
「ここは……!」
そのとき目に飛び込んできたのは、シックでオシャレな外観に、聖王都内の各所へのアクセスも良い宿屋だった。
……これは間違いなく良い宿だろう。と、そう思って宿に入った瞬間のことだ。
「いらっしゃいませにゃん♡」
耳に飛び込んできたのは媚び媚びな甘い声だった。
それも特徴的過ぎる語尾もおまけで。
よく見れば宿屋の店主は猫耳カチューシャを付けたメイド服の少女だ。
これはつまり……そう言う宿に入ってしまった!?
いやでも外観はあまりにも普通だったぞ?
「三名での宿泊ですか? 申し訳ないのですが、いま空いている部屋は一つしかないのですにゃん」
「一部屋……ですか。それなら……」
それなら別の宿にしよう……そう言おうとしたものの。
「それでお願いしたい」
ルキオラが強引に進めたのだった。
ちょっと!?
あまりにも何してくれちゃってんの過ぎるぞ!?
「へぇ~そう言うことですかにゃん♡」
店主がニヤリと笑う。
待て、間違いなく勘違いをしているぞ。
くっ……だがそれも仕方のないことか。
冷静に、客観的に見てみれば、今の俺たちはドスケベボディのハイエルフと小さな吸血鬼の少女を連れている、全身鎧を身に纏った男冒険者の三人パーティだ。
そんな中、三人部屋に泊る。それが意味することがわからない程、俺はピュアでは無かった。
「お部屋は二階の一番奥になっておりますにゃん。それではごゆっくり~」
結局、今更キャンセルすることも出来ず、俺たちは三人部屋に泊ることとなった。
「ごめんなさいステラ。でも、あたしも……たまには君と一緒に寝たかったの」
しょぼんとした様子でそう言うルキオラ。
駄目だ、そんな姿を見せられては責められない。
まあ何はともあれ、これでとりあえず宿の確保は出来た。
となるとここからは本格的に情報収集を始める必要がある。
ただ、エルドと言ったあの男の忠告通りなら恐らく、冒険者組合に言って直接聞く……みたいなことをするのは不味いだろうな。
ここは地道に聞き込みをするしかなさそうだ。
――――――
日も暮れる頃、宿に戻ると一階の酒場が賑わっていた。
見れば冒険者も多いみたいだし、こういう所は聖王都と言っても他の国と同じ感じなんだな。
ちなみに今日一日かけて得られた情報の中にエルド達から聞いた以上の物は無かった。
そんなに簡単に行けば苦労はないけども、それでももう少し進展があってもいいものじゃないか……?
「はぁ……これと言って成果は無し。今日はここで夕食を済ませて、寝ようか」
「それならあたしはあれ食べたいな」
「私はどうしようかしらね」
これだけ賑わっている酒場なだけあって、メニューはかなり充実していた。
そのためかルキオラもメイデンも何を選ぼうか迷っているようだ。
その後、メインの食事を終えて食後のデザートを待っていた時のこと。
「なあお前、あの噂知ってるか? 大司教様が裏で少女を集めてるってやつ」
「ああ、知ってるが……流石に作り話だろ。いくら何でもそんなこと大司教様がするかよ」
「だよなぁ……。おっとそこの嬢ちゃん、エール追加で頼むよ」
酔っ払い二人の会話が聞こえてきたのだが……明らかに重大な情報があったな?
ただの噂話である可能性もあるが、だとしてもそんな噂が発生するような大司教であると言うことは確定で良いだろう。
「ねえ、今の聞いた……よね」
「ああ……大司教が妙な動きをしているってやつだな」
「ただの与太話かもしれないけれど、今はそれでも大きな進歩よね」
「だからこそ、これでひとまずの方向性が決まったな」
とりあえずは大司教の行動を探り、あわよくばさっきの話の真偽を突き止める。
そしてそれを使って大司教の立場をどうにか出来れば完璧なんだが……まあそう上手くはいかないか。
「おまたせしました! デカ盛り聖王都パフェですにゃん!」
「な、なんだこれは……!?」
「わー……大きいね」
食後のデザートとして頼んだデカ盛り聖王都パフェが届いたのだが、それは思った以上に大きく……いやもう大きいとかの話じゃない。
メニューで見た時には三人ならいけるかとか思ってたけど、逆メニュー詐欺だろこれ。
こんなものをたったの三人でどうすれば……と、食べる前は思っていた。
しかし実際の所はそんな苦もなく、ペロリと平らげてしまうのだった。恐るべし別腹……。
元の世界ではもう絶対に出来なかったような暴食も、この体ならば出来てしまうのだ。
異世界転移万歳……そう叫びたくなる夜だった。
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