56 / 81
第三章『ステラ・グリーンローズ』
56 この森にはクソデカい魔物が棲んでいる
しおりを挟む
夜中、突如として大きな音がしたために飛び起きてしまった。
「なんだ、今のは……!?」
音の発生場所は近いなんてものじゃなかった。
間違いなく、結界への攻撃だろう。
「ステラ、今のって……」
少し遅れてルキオラも起きたようだった。
寝起きだと言うのに、既に臨戦態勢となっている。流石は各地を旅していたって言うだけはあるな。
「わからない……けど、間違いなくただ事ではないはずだ」
この結界には微量ながら不可視の魔法をかけてある。
だからそれを突破できるだけの能力を持った魔物であることは確定なのだ。
「俺が確認してくる。ルキオラは一旦ここで待機していてくれ」
そう言ってテントの外へ出ると、そこには結界を攻撃している魔物がいた。
「グルルルゥゥゥ……!!」
おいおい、随分と物騒じゃないか。
見たところ狼型の魔物のようだが……あのサイズの奴は記憶にないな。
爪や毛色からフォレストウルフのような気もしなくもないが、アイツらはこれほどまでに大きくないはず。
いや待て、そう言えばクソデカくなったメガマンティスがいたっけか?
となるとコイツらも同じように何らかの要因で大きくなった個体って可能性が……。
「グワォォッ!!」
そんな魔物は今も鋭い爪を使って何度も何度も結界を切り裂いている。
強度はかなりあるからこの程度の攻撃で今すぐに壊れるってことは無いだろうが、それでもこのまま放置しておいていいもんじゃないだろうな……。
「ルキオラ、とりあえず外に出て来てくれるか」
今すぐに脅威があるって訳じゃ無いからルキオラを呼び出す。
と同時に、ケラルトとメイデンもテントから出てきた。
「これは、フォレストウルフ……? まさかこれほどに大きい個体が出てくるなんて……」
「やっぱりフォレストウルフなんですかねこれ……?」
迷っていた俺とは裏腹に、ケラルトは特に特に迷う事もなくこの魔物をフォレストウルフだと断定していた。
「ええ、この森周辺は特に魔力密度が濃くて、たまに物凄く大きく成長する魔物が出てくるのよ」
「……そう言う事だったんですね」
どうりでクソデカい訳だ。
ゲームではモデルの都合上サイズが変わることは無かったが、この世界では外部要因によっていくらでも大きさが変わったり生態が変わったりする訳だ。
んで、このフォレストウルフも通常の個体よりも大きく強くなっているから不可視の魔法を貫通して俺たちを認識できたと言うことだな。
まあ、考えてみれば当たり前か。生物なら個体差くらい出てくるものだよな。
これもまたゲームとは違う点だ。やっぱり今後はゲーム知識を過信し過ぎないようにしないと。
「でもこの結界があれば大丈夫なのよね?」
ケラルトは期待に満ちた目でこちらを見てくる。
「いえ、それが……この結界は未完成なので、恐らく朝まではもたないと思います」
しかし残念なことに、この結界はまだ未完成だった。
これ以上に強い結界を張るためには本職でなければ……それこそ生産職であったり、結界魔法に強い陰陽師系のスキルが必要なのだ。
なので、恐らく朝になる前にはこの結界は消失してしまうだろう。
それよりも一番の問題なのはこの結界の持つ欠陥だ。
「それなら結界が残っている内に、こちらから攻撃をしてしまいましょう?」
「それも出来ないんですよねぇ……これ、内側からの攻撃も無効化しちゃうので」
そう、この結界の一番の欠点はこちら側からの攻撃も向こうに届かないと言う事だ。
考えてもみてくれ。片方からは攻撃が通るのにもう片方からは一切通らないなんて、そんなマジックミラーのようなものを簡単に作れるはずが無いだろう。
それこそ陰陽師系が高レベルになってようやっと習得できるようなスキルだった。
「じゃあ、どうしたら……」
「解除するしかないですね。そして奴らを倒す」
「倒すって言っても、この森で巨大化した個体は相当に強くなっていて……いえ、貴方なら出来るのでしょうね。魔王殺しのステラなら」
結局のところはそう言う事だ。
正直、奴らがいくら強くなっていようが魔王よりも強いとは思えない。
少なくとも今この場の危機を無くす程度は造作もないだろう。
一つ問題点があるとすれば、このマジックアイテムは一度発動させると再度発動させるまでには結構なクールタイムが必要だった。
今の俺の制作技術ではこれが限界なんだから仕方のないことではある。
だがそれはつまり、これ以降は交代で見張りをしないといけないのだ。
そのことを皆に伝えたところ……それでも良いと言ってくれた。
一度ぬか喜びをさせてしまった所で忍びない話ではあるのだが、それでも彼女らは快くそう言ってくれたのだ。
誠にありがたい事である。
「それじゃあ解除するぞ」
「ええ、お願い」
皆に聞こえるようにそう言ってから、結界を解除する。
「グオゥッ!?」
それまで自らを阻んでいた結界が急に消えたためか、フォレストウルフは一瞬驚いてその動きを止めていた。
「フレアバースト!」
その隙に魔法をぶち込む。
結果、フォレストウルフは塵と化した。
この程度の相手でも結界を解除しないといけないのはやはりコスパが悪すぎるな。
改良して、いつかは完璧なものを作り出さないと……。
そう思いながら、俺は自ら見張り担当を名乗り出たのだった。
「なんだ、今のは……!?」
音の発生場所は近いなんてものじゃなかった。
間違いなく、結界への攻撃だろう。
「ステラ、今のって……」
少し遅れてルキオラも起きたようだった。
寝起きだと言うのに、既に臨戦態勢となっている。流石は各地を旅していたって言うだけはあるな。
「わからない……けど、間違いなくただ事ではないはずだ」
この結界には微量ながら不可視の魔法をかけてある。
だからそれを突破できるだけの能力を持った魔物であることは確定なのだ。
「俺が確認してくる。ルキオラは一旦ここで待機していてくれ」
そう言ってテントの外へ出ると、そこには結界を攻撃している魔物がいた。
「グルルルゥゥゥ……!!」
おいおい、随分と物騒じゃないか。
見たところ狼型の魔物のようだが……あのサイズの奴は記憶にないな。
爪や毛色からフォレストウルフのような気もしなくもないが、アイツらはこれほどまでに大きくないはず。
いや待て、そう言えばクソデカくなったメガマンティスがいたっけか?
となるとコイツらも同じように何らかの要因で大きくなった個体って可能性が……。
「グワォォッ!!」
そんな魔物は今も鋭い爪を使って何度も何度も結界を切り裂いている。
強度はかなりあるからこの程度の攻撃で今すぐに壊れるってことは無いだろうが、それでもこのまま放置しておいていいもんじゃないだろうな……。
「ルキオラ、とりあえず外に出て来てくれるか」
今すぐに脅威があるって訳じゃ無いからルキオラを呼び出す。
と同時に、ケラルトとメイデンもテントから出てきた。
「これは、フォレストウルフ……? まさかこれほどに大きい個体が出てくるなんて……」
「やっぱりフォレストウルフなんですかねこれ……?」
迷っていた俺とは裏腹に、ケラルトは特に特に迷う事もなくこの魔物をフォレストウルフだと断定していた。
「ええ、この森周辺は特に魔力密度が濃くて、たまに物凄く大きく成長する魔物が出てくるのよ」
「……そう言う事だったんですね」
どうりでクソデカい訳だ。
ゲームではモデルの都合上サイズが変わることは無かったが、この世界では外部要因によっていくらでも大きさが変わったり生態が変わったりする訳だ。
んで、このフォレストウルフも通常の個体よりも大きく強くなっているから不可視の魔法を貫通して俺たちを認識できたと言うことだな。
まあ、考えてみれば当たり前か。生物なら個体差くらい出てくるものだよな。
これもまたゲームとは違う点だ。やっぱり今後はゲーム知識を過信し過ぎないようにしないと。
「でもこの結界があれば大丈夫なのよね?」
ケラルトは期待に満ちた目でこちらを見てくる。
「いえ、それが……この結界は未完成なので、恐らく朝まではもたないと思います」
しかし残念なことに、この結界はまだ未完成だった。
これ以上に強い結界を張るためには本職でなければ……それこそ生産職であったり、結界魔法に強い陰陽師系のスキルが必要なのだ。
なので、恐らく朝になる前にはこの結界は消失してしまうだろう。
それよりも一番の問題なのはこの結界の持つ欠陥だ。
「それなら結界が残っている内に、こちらから攻撃をしてしまいましょう?」
「それも出来ないんですよねぇ……これ、内側からの攻撃も無効化しちゃうので」
そう、この結界の一番の欠点はこちら側からの攻撃も向こうに届かないと言う事だ。
考えてもみてくれ。片方からは攻撃が通るのにもう片方からは一切通らないなんて、そんなマジックミラーのようなものを簡単に作れるはずが無いだろう。
それこそ陰陽師系が高レベルになってようやっと習得できるようなスキルだった。
「じゃあ、どうしたら……」
「解除するしかないですね。そして奴らを倒す」
「倒すって言っても、この森で巨大化した個体は相当に強くなっていて……いえ、貴方なら出来るのでしょうね。魔王殺しのステラなら」
結局のところはそう言う事だ。
正直、奴らがいくら強くなっていようが魔王よりも強いとは思えない。
少なくとも今この場の危機を無くす程度は造作もないだろう。
一つ問題点があるとすれば、このマジックアイテムは一度発動させると再度発動させるまでには結構なクールタイムが必要だった。
今の俺の制作技術ではこれが限界なんだから仕方のないことではある。
だがそれはつまり、これ以降は交代で見張りをしないといけないのだ。
そのことを皆に伝えたところ……それでも良いと言ってくれた。
一度ぬか喜びをさせてしまった所で忍びない話ではあるのだが、それでも彼女らは快くそう言ってくれたのだ。
誠にありがたい事である。
「それじゃあ解除するぞ」
「ええ、お願い」
皆に聞こえるようにそう言ってから、結界を解除する。
「グオゥッ!?」
それまで自らを阻んでいた結界が急に消えたためか、フォレストウルフは一瞬驚いてその動きを止めていた。
「フレアバースト!」
その隙に魔法をぶち込む。
結果、フォレストウルフは塵と化した。
この程度の相手でも結界を解除しないといけないのはやはりコスパが悪すぎるな。
改良して、いつかは完璧なものを作り出さないと……。
そう思いながら、俺は自ら見張り担当を名乗り出たのだった。
22
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる