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第二章『巡り合う運命』
36 魔導騎士ルーシオ
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「うぐっ……ここまでのよう……ですね。先に行くのなら……どうぞ、私を置いて……」
「それは出来ない。俺はルーシオと一緒に戦うと約束したんだ。だからこれを……」
以前メイデンがやっていたように回復ポーションをルーシオの上からかけた。
鎧の上からでも効果があるのかはわからないが、今はこうするしかないんだ我慢してくれ。
「これは……? もう、体が動く……?」
よかった、効果はあったらしい。
「物凄い効果のポーションですね……とても高価なものでしょうに、私なんかに使用していただいて申し訳ない」
「いやいや、普通にお店で買ったものだから気にしなくていいよ」
「お店で……?」
「ステラ、ちょっといいかしら?」
メイデンが服の裾を引っ張りながらそう言って来る。
「どうかしたか?」
「貴方は知らないみたいだけど、この世界のポーションって体力の二割も回復しないのよ。どこに売っているのも良くて体力が実数値的に数百程度回復すればいい方なの」
「えっ……?」
「だから、体力を全回復するポーションなんて伝説のアイテム級の代物なのよ」
そうか、だからルーシオはあんな反応を……。
「……今度から他人に使う時は気を付けるようにするよ」
「そうした方が良いでしょうね。余計な面倒事を増やさないためにも」
メイデンに教えてもらわなければ危なかったな。
変な輩に知られていたら拉致されてポーションぶっ作りマシーンにされていた可能性だってあるんだもんな。
迂闊だった。そのほかのアイテムとか装備とかも、もう少し気を付けるとしよう。
「凄いですねこれは、もう完全に動けるようになっています」
「は、はは、そうだよな。凄いポーションだよこれは。いやー流石は滅茶苦茶レアなポーションなだけはあるぜー」
今からでもごまかせるだろうか。
「やはりそうだったのですね。この恩は必ずいつか……」
「あー待って! やっぱ違うから、俺たちの世界だと普通の店売りなの! ごめん、そんなに気負わないで!」
駄目だった。彼にそんな嘘をつく訳にはいかなかった。
「そもそも怪我させたのは俺の方だし、気にしないでくれよ」
元は向こうからの戦いの誘いとは言え、怪我をさせたのは俺なんだ。
なのに回復させて謝礼をせがむとか、やってることが詐欺師過ぎるっての。
「そうですか……ではそう言う事にしておきましょう。それよりも……」
ルーシオの視線の先には通路があった。
「あの先に、元凶がいるんだな」
「ええ、ですがアレは……魔王よりも恐ろしいもの、と言って良いでしょう」
随分と物騒な言葉が聞こえてきたな。魔王よりも恐ろしいだって?
「魔王ってあの魔王か? あの時倒した?」
「はい……あの魔王ルーンオメガの残した魔力を使い、彼らは最強の生物兵器を作ろうとしているのです」
おうおう、こいつはまた……大分ヤバそうな話になってきたな?
魔王の魔力を使った生物兵器って、もう絶対に世界がヤバイ案件じゃんか。
「アレをどうにかしない限り、この世界に平穏は無いでしょう」
「だろうな。なら、さっさとぶっ潰してしまおう」
『そうはさせんよ』
「……またお前か?」
あの時と同じ声が聞こえてくる。
あの人型機械の声だ。
『また……か。どうやら私の別個体に出会ったことがあるようだね。それで生き残っていると言うことは、かなりの強者と見た』
「ま、それほどでもないかな。んで、それは良いんだよこの際。アンタらがとんでもないものを作ろうとしているって聞いてな。それをどうにかするために俺たちはここに来たんだよ」
『ほう、アレをどうにか出来るとでも? 魔王すら超えるアレを? 片腹痛いな。もっとも、今の私に痛む腹は無いがね』
目の前の人型機械は笑いながらそう言う。
その生物兵器に相当自信があるらしい。
魔王を元にした最強の生物兵器なんだもんな。それくらい言いたくもなるか。
「させませんよ。この世界を、もう貴方たちの好きにはさせない」
『ほう、実験体の分際で良くそれが言えたものだなナンバー44よ。それともなんだ? まさか自分を人間だとでも思っている訳ではあるまい?』
「それはどういう意味だ。ルーシオが人間じゃないとでも言うのか……?」
確かに以前も彼のことを実験体と呼んでいたが、てっきり非人道的な改造とかそう言う者かと思っていた。
だがあの人型機械の言い方だとまるで……。
『なんだ? そうか知らなかったのか。では説明してやろう。我々はかつてイダロン帝国において、秘密裏にとある魔導機の開発をしていたのだ』
「……今すぐその口を閉じてください」
『それが、魔王を倒すための生物兵器……魔導騎士である。そこにいるルーシオと名乗る個体はその実験体の44体目であり、完成一歩手前の個体なのだ。と言うのも、我々の国はあと一歩で魔導騎士を完成させることが出来るという所で魔王に滅ぼされてしまったのでね。こうして機械の体に記憶と信念を写して今に至るわけなのだよ』
「口を閉じろと、言っているの……!」
『しかし全てを魔王に滅ぼされてしまった今、実験体ナンバー44……我々イダロン帝国の残したものは彼女しか残っていなかった。そこで我々は彼女のデータを使い最強の生物兵器を産み出し、世界を掌握した後にイダロン帝国を復活させるのだ』
「やめて……お願い……」
『人々を守るために、魔王を倒すために、人を模して作られた生物兵器……そんな魔導騎士が今度は多くの人々を殺すことになるのだよ。結果的にこうなっただけとは言え、これほど滑稽なことは無いとは思わないかね?』
「……」
ルーシオはその場に崩れ落ちていた。
「ルーシオ……」
どう言葉をかければいいのかわからない。
この際、彼女が女性だったことなんてどうでも良かった。
そんなことよりも言わなければならないことがあるはずなのに、それが出てこない。
「ごめんなさい、ステラ……。その名前は、本当の私の名前じゃない……。私は実験体ナンバー44……これから多くの人を殺す生物兵器の、基礎となる存在」
「だがそれは君自身じゃないだろ……!?」
「確かにそうかもしれないね。でも、私のせいでこうなってる……責任は、取らないと」
そう言うとルーシオは立ち上がり、そのまま通路の先へと向かい始めた。
『無駄だ、もう起動命令は入っている。今から止めるにはアレを殺すしかないが……そんなことは誰であっても不可能だ』
「……いや、不可能じゃないさ」
『何だと?』
確かに魔王をも超える脅威だなんて、普通は勝てる奴なんているはずが無い。
だが、俺たちは……普通じゃない……!
プレイヤーとしての経験が、知識が、ステータスが、俺たちにはあるんだ……!
そして、この世界で手に入れたものも多かった。守りたいものだって増えた。
……絶対に負けないし、負けられないんだ。
「俺が……俺たちが、今ここにいる。魔王ルーンオメガを倒した俺と、その頼れる仲間のメイデンとルーシオがな!」
「ステラ……? 全部あたしのせいなのに、それでも……まだ仲間だと言ってくれるの?」
「当たり前だろ……と言うか! ルーシオのことを仲間じゃないと思った事なんて無いくらいだ!」
「ッ……!! そっか……それじゃあ、あたしも……もう隠し事は無しだよね」
そう言うとルーシオは兜を取り外した。
するとそこから出てきた顔は、ありえないはずの人物のものであった。
「そんな……ルキオラ、なのか?」
それはあの時、魔王を倒すために命を散らした少女……ルキオラのものだったのだ。
「それは出来ない。俺はルーシオと一緒に戦うと約束したんだ。だからこれを……」
以前メイデンがやっていたように回復ポーションをルーシオの上からかけた。
鎧の上からでも効果があるのかはわからないが、今はこうするしかないんだ我慢してくれ。
「これは……? もう、体が動く……?」
よかった、効果はあったらしい。
「物凄い効果のポーションですね……とても高価なものでしょうに、私なんかに使用していただいて申し訳ない」
「いやいや、普通にお店で買ったものだから気にしなくていいよ」
「お店で……?」
「ステラ、ちょっといいかしら?」
メイデンが服の裾を引っ張りながらそう言って来る。
「どうかしたか?」
「貴方は知らないみたいだけど、この世界のポーションって体力の二割も回復しないのよ。どこに売っているのも良くて体力が実数値的に数百程度回復すればいい方なの」
「えっ……?」
「だから、体力を全回復するポーションなんて伝説のアイテム級の代物なのよ」
そうか、だからルーシオはあんな反応を……。
「……今度から他人に使う時は気を付けるようにするよ」
「そうした方が良いでしょうね。余計な面倒事を増やさないためにも」
メイデンに教えてもらわなければ危なかったな。
変な輩に知られていたら拉致されてポーションぶっ作りマシーンにされていた可能性だってあるんだもんな。
迂闊だった。そのほかのアイテムとか装備とかも、もう少し気を付けるとしよう。
「凄いですねこれは、もう完全に動けるようになっています」
「は、はは、そうだよな。凄いポーションだよこれは。いやー流石は滅茶苦茶レアなポーションなだけはあるぜー」
今からでもごまかせるだろうか。
「やはりそうだったのですね。この恩は必ずいつか……」
「あー待って! やっぱ違うから、俺たちの世界だと普通の店売りなの! ごめん、そんなに気負わないで!」
駄目だった。彼にそんな嘘をつく訳にはいかなかった。
「そもそも怪我させたのは俺の方だし、気にしないでくれよ」
元は向こうからの戦いの誘いとは言え、怪我をさせたのは俺なんだ。
なのに回復させて謝礼をせがむとか、やってることが詐欺師過ぎるっての。
「そうですか……ではそう言う事にしておきましょう。それよりも……」
ルーシオの視線の先には通路があった。
「あの先に、元凶がいるんだな」
「ええ、ですがアレは……魔王よりも恐ろしいもの、と言って良いでしょう」
随分と物騒な言葉が聞こえてきたな。魔王よりも恐ろしいだって?
「魔王ってあの魔王か? あの時倒した?」
「はい……あの魔王ルーンオメガの残した魔力を使い、彼らは最強の生物兵器を作ろうとしているのです」
おうおう、こいつはまた……大分ヤバそうな話になってきたな?
魔王の魔力を使った生物兵器って、もう絶対に世界がヤバイ案件じゃんか。
「アレをどうにかしない限り、この世界に平穏は無いでしょう」
「だろうな。なら、さっさとぶっ潰してしまおう」
『そうはさせんよ』
「……またお前か?」
あの時と同じ声が聞こえてくる。
あの人型機械の声だ。
『また……か。どうやら私の別個体に出会ったことがあるようだね。それで生き残っていると言うことは、かなりの強者と見た』
「ま、それほどでもないかな。んで、それは良いんだよこの際。アンタらがとんでもないものを作ろうとしているって聞いてな。それをどうにかするために俺たちはここに来たんだよ」
『ほう、アレをどうにか出来るとでも? 魔王すら超えるアレを? 片腹痛いな。もっとも、今の私に痛む腹は無いがね』
目の前の人型機械は笑いながらそう言う。
その生物兵器に相当自信があるらしい。
魔王を元にした最強の生物兵器なんだもんな。それくらい言いたくもなるか。
「させませんよ。この世界を、もう貴方たちの好きにはさせない」
『ほう、実験体の分際で良くそれが言えたものだなナンバー44よ。それともなんだ? まさか自分を人間だとでも思っている訳ではあるまい?』
「それはどういう意味だ。ルーシオが人間じゃないとでも言うのか……?」
確かに以前も彼のことを実験体と呼んでいたが、てっきり非人道的な改造とかそう言う者かと思っていた。
だがあの人型機械の言い方だとまるで……。
『なんだ? そうか知らなかったのか。では説明してやろう。我々はかつてイダロン帝国において、秘密裏にとある魔導機の開発をしていたのだ』
「……今すぐその口を閉じてください」
『それが、魔王を倒すための生物兵器……魔導騎士である。そこにいるルーシオと名乗る個体はその実験体の44体目であり、完成一歩手前の個体なのだ。と言うのも、我々の国はあと一歩で魔導騎士を完成させることが出来るという所で魔王に滅ぼされてしまったのでね。こうして機械の体に記憶と信念を写して今に至るわけなのだよ』
「口を閉じろと、言っているの……!」
『しかし全てを魔王に滅ぼされてしまった今、実験体ナンバー44……我々イダロン帝国の残したものは彼女しか残っていなかった。そこで我々は彼女のデータを使い最強の生物兵器を産み出し、世界を掌握した後にイダロン帝国を復活させるのだ』
「やめて……お願い……」
『人々を守るために、魔王を倒すために、人を模して作られた生物兵器……そんな魔導騎士が今度は多くの人々を殺すことになるのだよ。結果的にこうなっただけとは言え、これほど滑稽なことは無いとは思わないかね?』
「……」
ルーシオはその場に崩れ落ちていた。
「ルーシオ……」
どう言葉をかければいいのかわからない。
この際、彼女が女性だったことなんてどうでも良かった。
そんなことよりも言わなければならないことがあるはずなのに、それが出てこない。
「ごめんなさい、ステラ……。その名前は、本当の私の名前じゃない……。私は実験体ナンバー44……これから多くの人を殺す生物兵器の、基礎となる存在」
「だがそれは君自身じゃないだろ……!?」
「確かにそうかもしれないね。でも、私のせいでこうなってる……責任は、取らないと」
そう言うとルーシオは立ち上がり、そのまま通路の先へと向かい始めた。
『無駄だ、もう起動命令は入っている。今から止めるにはアレを殺すしかないが……そんなことは誰であっても不可能だ』
「……いや、不可能じゃないさ」
『何だと?』
確かに魔王をも超える脅威だなんて、普通は勝てる奴なんているはずが無い。
だが、俺たちは……普通じゃない……!
プレイヤーとしての経験が、知識が、ステータスが、俺たちにはあるんだ……!
そして、この世界で手に入れたものも多かった。守りたいものだって増えた。
……絶対に負けないし、負けられないんだ。
「俺が……俺たちが、今ここにいる。魔王ルーンオメガを倒した俺と、その頼れる仲間のメイデンとルーシオがな!」
「ステラ……? 全部あたしのせいなのに、それでも……まだ仲間だと言ってくれるの?」
「当たり前だろ……と言うか! ルーシオのことを仲間じゃないと思った事なんて無いくらいだ!」
「ッ……!! そっか……それじゃあ、あたしも……もう隠し事は無しだよね」
そう言うとルーシオは兜を取り外した。
するとそこから出てきた顔は、ありえないはずの人物のものであった。
「そんな……ルキオラ、なのか?」
それはあの時、魔王を倒すために命を散らした少女……ルキオラのものだったのだ。
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