MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。

遠野紫

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第二章『巡り合う運命』

23 情報収集のやり方

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「ここがこの国の冒険者組合です。政治機能がほとんどストップしている今、実質的な帝国のトップはここの組合長と言って構わないでしょう」

 ルーシオに案内されたのは帝国の冒険者組合だった。
 建物は錆びれ、ところどころに修繕の跡がある。その修繕もやっつけ作業と言うか、あまりにもずさんなものであった。

 そりゃそうか。そう言ったことを専門で行う事業なんかはとっくにまともな国に逃げているんだろう。
 今ここに残っているのは他の国に行くこともできない低ランクの冒険者や身寄りのない者たちだけ。
 
 ああ、本当にこの国は……終わってしまったんだな。
 そう感じざるを得ない程の惨状だった。

「下手に国内を探し回るよりも、ここで情報を得た方が良いでしょうからね」

 そう言いながらルーシオは建物内へと入って行く。
 このまま放置されるのもあれなので、俺も彼の後を追って建物の中へと入った。

「ん? アンタら、ここらじゃ見たことがねえな。他ん所から来たならすぐに帰った方がいい。この国は治安が最悪だからな」

 組合長と思われる男は俺たちを見るなり面倒くさそうにそう言った。

「悪いですがそう言う訳にもいかないのです。人探しをしているのでね」

「人探しだぁ? こんなところにいる奴に、アンタみたいな金持ちの女連れがかぁ?」

 金持ちって……いや、そうか。
 魔導騎士の存在はこの世界の人たち皆が知っている訳ではないのか。
 それなら組合長のあの言葉も頷ける。全身を覆うタイプの鎧でフル装備だなんて、冒険者としてはかなりの上澄み……それこそ成金だと思われたっておかしくは無いんだ。

 っておい、完全にスルーしてしまうところだったが、俺は別にルーシオの女って訳では無いぞ!?

「……彼女とはそう言った関係性ではありませんよ。それより、この辺りで強大な力を持つ者に心当たりはありませんか?」
 
 いや、待ってくれ。何だその間は?
 まさか、俺に気があるとでも言うのか……?

 俺とパーティを組みたいと言っていたのはてっきり冒険者として名を残したいからだと思っていたが、まさか俺を目当てにして……?
 確かにこの体は男であれば皆釘付けになってしまうものだろう。同じパーティならばそう言う関係になる可能性だってあるかもしれないしな。
 
 まあその、なんだ。
 男に好かれるのはこう、何とも言えないものがあるが……人に好かれると言うの自体は悪い気分では無い。

「さあなぁ。どうだか」

「そうですか……。ならば、これならどうです?」

 男の態度から何かを読み取ったのか、ルーシオはカウンターへと銀貨を数枚置いた。
 ああ、そう言う事か。一瞬どういう意味かわからなかったが、あれは賄賂と言うか情報量と言うか、まあそう言う奴だろう。
 
 それにしても手際が良いな。
 あの感じだと、きっと彼は壊滅した後のこの国にいたことがあるんだろう。
 それならあれだけ手慣れていても何もおかしくは無い。

 とてもじゃないが俺には出来そうに無い立ち回りだな。滅茶苦茶頼りになる。
 この国での捜索は彼が頼みの綱になりそうだ……。

「へへ、わかってるじゃねえか。で、確か強大な力を持つ奴だったな? それなら心当たりがある」

 その後、組合長は勇者と思われる人物について教えてくれた。
 どうやらその人物は少女のようで、ここから少々離れた場所のスラム街で親玉をしているらしい。
 突然現れたかと思えばスラム街には不釣り合いな少女の身であっという間に頂点へと上り詰めたのだ……この少女が勇者とみて間違いないだろうな。

 こうして勇者だと思われる人物に関する情報を得た俺たちは早速その少女に会いに行くことにした。

「ステラ、君はどう思いますか」

「例の少女についてですよね?」

 その道中でルーシオは俺に尋ねてきた。

「ええ。例え少女であっても、それが勇者ならばスラム街で生きていける……どころか、親玉にすらなってしまう可能性はあると思います。しかし、そんな存在に真正面から話が出来るとは到底思えないのもまた事実です」

「戦闘になることも考慮するべきだと言う事ですね」

「その通りです。そうならないことを祈るばかりですが……」

 ルーシオのその心配はもっともだった。
 話を聞く限り、その少女は相当に血気盛んと言うか、暴君と言ってもいい程の暴れ具合だったらしい。
 そんなとんでもないアマゾネスと交渉なんて……出来る訳がないだろいい加減にしろ!

 交渉ってのは結局両者が席に着かないと駄目なんだよ。
 片方だけが律儀に交渉をしようとしても、相手にその気が無ければ意味が無いんだ!

「着きました。ここのようです」

 そんなことを考えている間に、俺たちは目的地に到着していた。

「……あら?」

 そこにいたのは真っ白な少女だった。
 
 比喩でもなんでも無く、本当に真っ白なのだ。
 肌も、髪も、纏う服も真っ白。純白だ。

 しかしただ一点、瞳だけは血のように真っ赤であった。

「あなた達、ここらでは見かけない顔ね。迷い込んだのかしら? そうでないのなら……私と、戦うために来たと言う事よね」

 彼女がそう言った瞬間、空気が変わったのを肌で感じた。
 下手なことを言えば間違いなく戦いになる。
 慎重に、とにかく慎重に事を進めなければならない。

「ステラ、ここは私に任せてください」

 そう考えていた時、ルーシオはそう言って前に出た。
 と同時に少女はその表情を驚きのそれへと変化させ、その後すぐに楽しそうな笑みを浮かべたのだった。

「ステラ……そうなのね。貴方があのステラ・グリーンローズだと言うのなら、きっとこれは運命の出会い……! 今ここで、決着を付けましょう!」

 そしてどういう訳か、俺の名を知った途端に少女は戦闘態勢になってしまったのである。
 ……俺、彼女に何かしただろうか?
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