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出会いの章『異世界アヴァロンヘイム』
17 魔王復活
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「魔王に故郷を滅ぼされたって……本当なのか?」
この質問はあまりにもデリカシーが無さすぎるだろう。
だが、魔王に関しては今は俺も無関係とは言えない。
心が痛むが、彼女には聞かなければならなかった。
「うん……。突然こんなこと言ってごめんなさい。それと、もう一つ言っておかないといけないことがあるの」
「まだ、何かあるのか……?」
ルキオラの表情は変わらず、真剣なままだった。
「あたしは、最初から君と会うためにここに来た。魔王を倒すためには、君の力が必要だから」
「……前から俺の事を知っていたとでも言うのか」
仮に彼女の言葉が正しいとして、そうなると問題が出る。
何故彼女は俺がこの国に来る事を知っていたのか。
狼王と出会ったのは偶然のはずだし、そこからアーロンと出会って王国に来ることになったのもあくまで偶然による結果に過ぎない。
「そう思うのも無理は無いよね。だけど、予言魔法は魔王が復活することだってわかるんだよ。君みたいな存在がこの街に来ることだってわかると思わない?」
「……」
いや、まったくもって彼女の言う通りだ。
完全に失念していたが、予言魔法なる存在があれば大体の滅茶苦茶は道理が通ってしまう。
「だからあたしは君に……ッ!?」
ルキオラは何かを言いたかったようだが、突如として空が真っ赤に染まったことに意識を持っていかれてしまい、その続きを聞くことは出来なかった。
「これは……!!」
ルキオラには何か心当たりがあるようだった。
「まさかこんなに早く復活するなんて……!」
「復活? ってことは、この現象は……魔王の復活の予兆ってことなのか!?」
確かにアーロンは近い内に魔王が復活するとは言っていた。
だがそれがまさか今日だとは誰も思わないだろうがよ!
いや待て落ち着け、こういう時に焦ると取り返しがつかないことになるんだ。
この間にも空は徐々に赤黒く染まっていき、いつしか巨大な真っ黒の塊が王国の上空に浮かんでいた。
恐らくあの中に魔王ルーンオメガがいるってことなんだろう。
それにしても、よりにもよって王国の真上ってのはなぁ……。
このままここでドンパチやろうものなら被害は想像も出来ないものになるだろう。
しかし、魔王相手に交渉など出来るか?
被害が大きくなるので移動してください……なんてお願い、通る訳が無い。
『ウオオオォォォォッッ!! 我はァ、蘇ったぞォォ!!』
そして、まともな対策を練る間もなく魔王は復活したのだった。
「魔王……ルーンオメガ……!!」
ルキオラの顔が引きつっている。
故郷を滅ぼされたのだ。そんな反応にもなるだろう。
だが何故だろうか。彼女のその顔からは憎悪や悲しみといったものよりも、もっと別の……使命感のようなものを感じた。
『誰だ? 我の名を呼び捨てにする愚か者は』
魂に響くような威圧感と共に、魔王の声が脳内に直接入って来る。
今だからこそわかるが、俺はステータスによる精神力への補正があるらしい。
そうでなければ、奴の声を聞いただけで体が動かなくなってしまっていただろう。
『ほう、そこか』
俺たちを見つけたのか、魔王が目の前に降りてきた。
見た目はゲームで見たものと瓜二つ。だが放っている圧は画面の向こう側にいた時と比べれば桁違いに凄まじいものだった。
当然だ。コイツは今、目の前にいるんだから。
『なんだ、たかが女二人では無いか。殺した所で準備運動にもならんな。……いや? 前言撤回だ。そっちのハイエルフには少々興味があるぞ』
「……俺に何か用か?」
『なに、その溢れんばかりの魔力に興味をそそられたまでだ。どれ、魔王である我自ら貴様を葬り、その魔力を我が糧としてやろう。光栄に思うがいい』
「……させない」
ルキオラが俺の前に出る。
彼女には恐怖と言った感情が無いのかもしれないと、そう感じてしまう程にその姿は勇ましく、それでいて不気味な程に落ち着いていた。
「ステラは最後の希望なの……。彼女を殺すのなら、先にあたしと戦ってもらう」
『ほう、随分と大きく出たな。人の身で、我とまともに戦えるとでも?』
「……そうだね。勝つのはきっと難しい……だけど、これならどう?」
『なんだと?』
ルキオラは全身に魔法陣を展開し、魔王の元へと近づいて行く。
あの魔法陣が一体どういった魔法なのかはわからないが、彼女の表情や魔王の反応からしてただごとでは無いのは確かだろう。
「ごめんね、ステラ……。本当はもう少し一緒にいたかったんだけど、君が魔王に勝てるように少しでも助けになれればいいな」
「待て、待ってくれ、ルキオラは何をする気なんだ……!」
止めるべきか?
いや、既に魔法は発動段階に入っている。今から止めたところで既に発動された魔法は止まらないだろう。
何をするにしても、もう、間に合わない。
「ステラ、君と会えてよかったよ」
『させんぞォォ!! ウグアアァァ!!』
その瞬間、彼女の体を中心にして大規模な爆発が発生し、その爆炎は魔王を包み込んだ。
幸いにもここは王国の都市部からは少し離れた展望台で、今の時間帯は人も少ない。死傷者も一人を除いていないと言っていいだろう。
そう、一人だけ。彼女を除いて……だ。
もっと、もっといい方法もあったんじゃないのか……?
俺がもっと戦えることを証明しておけば、彼女は思いとどまったのか?
駄目だ、考えれば考える程に罪悪感と後悔が増えて行く。
『ウグッ……まさかこれほどの魔法を使う者がいたとはな……流石の我でも手傷を負ってしまったわ』
「……」
そうだ。後悔は後ですればいい。
今はただ、目の前のコイツを倒す。王国を、この世界を守るために。
そうアーロンと約束したんだ。
この質問はあまりにもデリカシーが無さすぎるだろう。
だが、魔王に関しては今は俺も無関係とは言えない。
心が痛むが、彼女には聞かなければならなかった。
「うん……。突然こんなこと言ってごめんなさい。それと、もう一つ言っておかないといけないことがあるの」
「まだ、何かあるのか……?」
ルキオラの表情は変わらず、真剣なままだった。
「あたしは、最初から君と会うためにここに来た。魔王を倒すためには、君の力が必要だから」
「……前から俺の事を知っていたとでも言うのか」
仮に彼女の言葉が正しいとして、そうなると問題が出る。
何故彼女は俺がこの国に来る事を知っていたのか。
狼王と出会ったのは偶然のはずだし、そこからアーロンと出会って王国に来ることになったのもあくまで偶然による結果に過ぎない。
「そう思うのも無理は無いよね。だけど、予言魔法は魔王が復活することだってわかるんだよ。君みたいな存在がこの街に来ることだってわかると思わない?」
「……」
いや、まったくもって彼女の言う通りだ。
完全に失念していたが、予言魔法なる存在があれば大体の滅茶苦茶は道理が通ってしまう。
「だからあたしは君に……ッ!?」
ルキオラは何かを言いたかったようだが、突如として空が真っ赤に染まったことに意識を持っていかれてしまい、その続きを聞くことは出来なかった。
「これは……!!」
ルキオラには何か心当たりがあるようだった。
「まさかこんなに早く復活するなんて……!」
「復活? ってことは、この現象は……魔王の復活の予兆ってことなのか!?」
確かにアーロンは近い内に魔王が復活するとは言っていた。
だがそれがまさか今日だとは誰も思わないだろうがよ!
いや待て落ち着け、こういう時に焦ると取り返しがつかないことになるんだ。
この間にも空は徐々に赤黒く染まっていき、いつしか巨大な真っ黒の塊が王国の上空に浮かんでいた。
恐らくあの中に魔王ルーンオメガがいるってことなんだろう。
それにしても、よりにもよって王国の真上ってのはなぁ……。
このままここでドンパチやろうものなら被害は想像も出来ないものになるだろう。
しかし、魔王相手に交渉など出来るか?
被害が大きくなるので移動してください……なんてお願い、通る訳が無い。
『ウオオオォォォォッッ!! 我はァ、蘇ったぞォォ!!』
そして、まともな対策を練る間もなく魔王は復活したのだった。
「魔王……ルーンオメガ……!!」
ルキオラの顔が引きつっている。
故郷を滅ぼされたのだ。そんな反応にもなるだろう。
だが何故だろうか。彼女のその顔からは憎悪や悲しみといったものよりも、もっと別の……使命感のようなものを感じた。
『誰だ? 我の名を呼び捨てにする愚か者は』
魂に響くような威圧感と共に、魔王の声が脳内に直接入って来る。
今だからこそわかるが、俺はステータスによる精神力への補正があるらしい。
そうでなければ、奴の声を聞いただけで体が動かなくなってしまっていただろう。
『ほう、そこか』
俺たちを見つけたのか、魔王が目の前に降りてきた。
見た目はゲームで見たものと瓜二つ。だが放っている圧は画面の向こう側にいた時と比べれば桁違いに凄まじいものだった。
当然だ。コイツは今、目の前にいるんだから。
『なんだ、たかが女二人では無いか。殺した所で準備運動にもならんな。……いや? 前言撤回だ。そっちのハイエルフには少々興味があるぞ』
「……俺に何か用か?」
『なに、その溢れんばかりの魔力に興味をそそられたまでだ。どれ、魔王である我自ら貴様を葬り、その魔力を我が糧としてやろう。光栄に思うがいい』
「……させない」
ルキオラが俺の前に出る。
彼女には恐怖と言った感情が無いのかもしれないと、そう感じてしまう程にその姿は勇ましく、それでいて不気味な程に落ち着いていた。
「ステラは最後の希望なの……。彼女を殺すのなら、先にあたしと戦ってもらう」
『ほう、随分と大きく出たな。人の身で、我とまともに戦えるとでも?』
「……そうだね。勝つのはきっと難しい……だけど、これならどう?」
『なんだと?』
ルキオラは全身に魔法陣を展開し、魔王の元へと近づいて行く。
あの魔法陣が一体どういった魔法なのかはわからないが、彼女の表情や魔王の反応からしてただごとでは無いのは確かだろう。
「ごめんね、ステラ……。本当はもう少し一緒にいたかったんだけど、君が魔王に勝てるように少しでも助けになれればいいな」
「待て、待ってくれ、ルキオラは何をする気なんだ……!」
止めるべきか?
いや、既に魔法は発動段階に入っている。今から止めたところで既に発動された魔法は止まらないだろう。
何をするにしても、もう、間に合わない。
「ステラ、君と会えてよかったよ」
『させんぞォォ!! ウグアアァァ!!』
その瞬間、彼女の体を中心にして大規模な爆発が発生し、その爆炎は魔王を包み込んだ。
幸いにもここは王国の都市部からは少し離れた展望台で、今の時間帯は人も少ない。死傷者も一人を除いていないと言っていいだろう。
そう、一人だけ。彼女を除いて……だ。
もっと、もっといい方法もあったんじゃないのか……?
俺がもっと戦えることを証明しておけば、彼女は思いとどまったのか?
駄目だ、考えれば考える程に罪悪感と後悔が増えて行く。
『ウグッ……まさかこれほどの魔法を使う者がいたとはな……流石の我でも手傷を負ってしまったわ』
「……」
そうだ。後悔は後ですればいい。
今はただ、目の前のコイツを倒す。王国を、この世界を守るために。
そうアーロンと約束したんだ。
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