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出会いの章『異世界アヴァロンヘイム』
11 魔物学者のキャラバン
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次の日、朝一番に彼は俺を迎えに来た。
護衛複数人を連れた馬車数台と共に……。
「あの、これは……」
「僕たち魔物学者に国から提供されているキャラバンです。魔物調査は長旅になることが分かっているので、騎士団所属の護衛部隊と荷物を運ぶための馬車が国から提供されているのですよ」
「な、なるほど……」
理解はしたが、いざこうして目の前にいるのを見るとあまりにもこう……。
え、俺これからこのキャラバンと一緒に移動するの?
いやいやそもそも、今の時点で既に注目の的なんだけど!?
宿を出た瞬間から、村人がずっと俺の方を見ているのだ。
それもそうだろうよ。こんなに大所帯なキャラバンでお出迎えだなんて、あまりにもVIP対応が過ぎるってもんだ。
万年庶民な俺なんかをこんな扱い……正直、胃が痛い。
いや、ステータスが高いせいなのか実際に痛いわけでは無かった。そんな気がすると言う話だ。
「それではこちらへ……」
アーロンが俺の手を取り、馬車へと案内する。
……その時、妙な違和感があった。ただそれが何なのかはわからなかったため、ひとまず彼について行き、ゆっくりと馬車へと乗り込んだ。
「アーロン様、準備が出来ました」
「では出発いたしましょう」
彼がそう言うと、少ししてから馬車が動き始めた。
「……」
「……」
馬車の中には俺とアーロンの二人のみ。
何も話さないのも何だか気まずいが、何を話せばいいものか。
恐らくだが、彼は結構育ちが良い。ゴロツキチンピラどんと来いなこの世界であれだけ柔和な対応が出来るのだから、幼少期からかなり行き届いた教育をされていそうだ。
正直、一般庶民な俺なんかと話が合うとも思えない。
……と、思っていたのだが。
「そうです! そうなんですよ! ホーンラビットはあの大きな角が取り上げられがちなんですけど、真に凄いのはあの驚異的な跳躍力なんです!」
「やはりアーロンさんもそう思いますよね? 似た系列だとビッグボアの牙なんかも同じですよ! 皆あの鋭い牙だけを見ていますけど、ボア系魔物の強みはあの体重を活かした突進力のはずですからね!」
流石は魔物学者と言ったところだろう。魔物談義が始まってからと言うもの、それはもうとんでもない魔物オタクが二人、この場に現れることとなった。
最初の内は攻略のためだけだった魔物の情報収集も、重ねて行く内に俺はその奥深さに気付いてしまったのだ。
それだけよく出来たフレーバーテキストや魔物同士の関係を描く重厚な世界観がネワオンにはあったという事だろう。
そのおかげでこんな同士と出会えたのだ。感謝しないとだな。
と、そうして魔物談義に花を咲かせていると、気付けばもう日が暮れかけていた。
「今日はこの辺りで野営を行いましょうか」
そう言うとアーロンは馬車から降りて、護衛の人たちに混ざって野営のための色々な準備を始めた。
てっきりそう言うのも全部護衛の人とかがやってくれるのかと思っていたが、どうやら彼自身も結構アクティブに動くらしい。
もっともこれが魔物学者全体のことなのか、彼だけが特異なのかは俺にはわからないが。
「ステラさん、どうぞこちらへ」
「すみません。何から何まで……」
「いえ、こちらが御招きしている訳ですから」
アーロンに連れられ、今夜寝るテントへと入る。
「……うん?」
そして入った瞬間、これは異常だと思った。
明らかに外から見たサイズと中身が合わないのだ。
「もしかして、空間魔法を見るのは初めてでしょうか」
「空間魔法……?」
「ええ、建物内と外で空間の大きさを変える魔法なのですが……これを応用すればこのように、大きな家具を持ち運ぶことも可能となるのです」
そう言いながら彼はフカフカなベッドへと視線を向けた。
なるほど。建物内の空間だけ別で作って、出先でテントなどの中に展開する訳か。
これなら確かにかさばらないし、持ち運びの自由度も高くなるな。
「有名な所だと王国の王立図書館もこの方法を使って蔵書の数を増やしていますね」
あっ、あれもなのか。
魔物や装備、アイテムにスキルと、とにかくネワオンに関するありとあらゆる情報が収められていたあのクソデカい図書館もこの方法だった訳か。
確かに外観と中のサイズ合わなくねえかなとは思っていたが……あれ、ゲーム的な仕様じゃなくてちゃんとした設定があったんだな。
「では僕はこれで失礼します。夕食の時にはお呼びしますので、そのほか何か御用がありましたらお気軽にお伝えください」
「ありがとうございます」
アーロンが部屋から出て行く。ああ、部屋じゃ無くてテントか。
そう勘違いしてしまう程にしっかりとしたワンルームだった。
確かグランピングだったか。感覚的にはあれに近いのかね?
その後、夕食を終えた俺含むキャラバンの一向は夜間の見張りを除いて就寝することとなった。
そして明朝、早く目が覚めてしまった俺はマッピングも兼ねて散歩をしていたのだが……。
「なんの声だ……?」
どこからか声が聞こえてきたため、そちらの方へと向かって歩き始めていた。
「こっちだな……」
確かこの辺りから聞こえてきたはず……。
っと、開けた場所に出たな。これは湖か……?
「え……アーロン?」
顔を上げると、そこにはアーロンがいた。
近くに桶と布があるから水浴びでもしていたのだろう。
幸いにもまだ俺には気付いていないようだが、その方が良かった。
何故かって?
それは彼の……いや、彼女の姿を考えればわかるさ。
水浴びのために、今彼女は素っ裸なのだから。
護衛複数人を連れた馬車数台と共に……。
「あの、これは……」
「僕たち魔物学者に国から提供されているキャラバンです。魔物調査は長旅になることが分かっているので、騎士団所属の護衛部隊と荷物を運ぶための馬車が国から提供されているのですよ」
「な、なるほど……」
理解はしたが、いざこうして目の前にいるのを見るとあまりにもこう……。
え、俺これからこのキャラバンと一緒に移動するの?
いやいやそもそも、今の時点で既に注目の的なんだけど!?
宿を出た瞬間から、村人がずっと俺の方を見ているのだ。
それもそうだろうよ。こんなに大所帯なキャラバンでお出迎えだなんて、あまりにもVIP対応が過ぎるってもんだ。
万年庶民な俺なんかをこんな扱い……正直、胃が痛い。
いや、ステータスが高いせいなのか実際に痛いわけでは無かった。そんな気がすると言う話だ。
「それではこちらへ……」
アーロンが俺の手を取り、馬車へと案内する。
……その時、妙な違和感があった。ただそれが何なのかはわからなかったため、ひとまず彼について行き、ゆっくりと馬車へと乗り込んだ。
「アーロン様、準備が出来ました」
「では出発いたしましょう」
彼がそう言うと、少ししてから馬車が動き始めた。
「……」
「……」
馬車の中には俺とアーロンの二人のみ。
何も話さないのも何だか気まずいが、何を話せばいいものか。
恐らくだが、彼は結構育ちが良い。ゴロツキチンピラどんと来いなこの世界であれだけ柔和な対応が出来るのだから、幼少期からかなり行き届いた教育をされていそうだ。
正直、一般庶民な俺なんかと話が合うとも思えない。
……と、思っていたのだが。
「そうです! そうなんですよ! ホーンラビットはあの大きな角が取り上げられがちなんですけど、真に凄いのはあの驚異的な跳躍力なんです!」
「やはりアーロンさんもそう思いますよね? 似た系列だとビッグボアの牙なんかも同じですよ! 皆あの鋭い牙だけを見ていますけど、ボア系魔物の強みはあの体重を活かした突進力のはずですからね!」
流石は魔物学者と言ったところだろう。魔物談義が始まってからと言うもの、それはもうとんでもない魔物オタクが二人、この場に現れることとなった。
最初の内は攻略のためだけだった魔物の情報収集も、重ねて行く内に俺はその奥深さに気付いてしまったのだ。
それだけよく出来たフレーバーテキストや魔物同士の関係を描く重厚な世界観がネワオンにはあったという事だろう。
そのおかげでこんな同士と出会えたのだ。感謝しないとだな。
と、そうして魔物談義に花を咲かせていると、気付けばもう日が暮れかけていた。
「今日はこの辺りで野営を行いましょうか」
そう言うとアーロンは馬車から降りて、護衛の人たちに混ざって野営のための色々な準備を始めた。
てっきりそう言うのも全部護衛の人とかがやってくれるのかと思っていたが、どうやら彼自身も結構アクティブに動くらしい。
もっともこれが魔物学者全体のことなのか、彼だけが特異なのかは俺にはわからないが。
「ステラさん、どうぞこちらへ」
「すみません。何から何まで……」
「いえ、こちらが御招きしている訳ですから」
アーロンに連れられ、今夜寝るテントへと入る。
「……うん?」
そして入った瞬間、これは異常だと思った。
明らかに外から見たサイズと中身が合わないのだ。
「もしかして、空間魔法を見るのは初めてでしょうか」
「空間魔法……?」
「ええ、建物内と外で空間の大きさを変える魔法なのですが……これを応用すればこのように、大きな家具を持ち運ぶことも可能となるのです」
そう言いながら彼はフカフカなベッドへと視線を向けた。
なるほど。建物内の空間だけ別で作って、出先でテントなどの中に展開する訳か。
これなら確かにかさばらないし、持ち運びの自由度も高くなるな。
「有名な所だと王国の王立図書館もこの方法を使って蔵書の数を増やしていますね」
あっ、あれもなのか。
魔物や装備、アイテムにスキルと、とにかくネワオンに関するありとあらゆる情報が収められていたあのクソデカい図書館もこの方法だった訳か。
確かに外観と中のサイズ合わなくねえかなとは思っていたが……あれ、ゲーム的な仕様じゃなくてちゃんとした設定があったんだな。
「では僕はこれで失礼します。夕食の時にはお呼びしますので、そのほか何か御用がありましたらお気軽にお伝えください」
「ありがとうございます」
アーロンが部屋から出て行く。ああ、部屋じゃ無くてテントか。
そう勘違いしてしまう程にしっかりとしたワンルームだった。
確かグランピングだったか。感覚的にはあれに近いのかね?
その後、夕食を終えた俺含むキャラバンの一向は夜間の見張りを除いて就寝することとなった。
そして明朝、早く目が覚めてしまった俺はマッピングも兼ねて散歩をしていたのだが……。
「なんの声だ……?」
どこからか声が聞こえてきたため、そちらの方へと向かって歩き始めていた。
「こっちだな……」
確かこの辺りから聞こえてきたはず……。
っと、開けた場所に出たな。これは湖か……?
「え……アーロン?」
顔を上げると、そこにはアーロンがいた。
近くに桶と布があるから水浴びでもしていたのだろう。
幸いにもまだ俺には気付いていないようだが、その方が良かった。
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それは彼の……いや、彼女の姿を考えればわかるさ。
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