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97 アルティメットデュアルライザー、異世界に爆誕
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魔龍神王による攻撃が二人に直撃する直前、不思議な事が起こったのだった。
「……あれ?」
「ここは……」
気付けば咲と桜は見知らぬ謎の空間に漂っていた。
そこには何も無く、つい先程までいたはずの穏健派の拠点など影も形も無かった。
だが不思議とその空間は居心地が良く、心の奥底まで温められるような感覚すらあった。
「これ、桜の思い……?」
そんな時、咲は自らの中に桜の記憶や感情が入り込んで来ることに気付くのだった。
同様に桜にも咲の記憶や感情と言った物が入り込んでいるらしく、互いの意識は少しずつ溶けあっていく。
「咲ちゃん、こんなにも私のことを……。えへへ、私のこと大好きなんだね」
「桜こそ、滅茶苦茶私のこと好きじゃん」
「それはそうだけど……でも」
「……そうだね。こんなことしてる場合じゃない」
咲と桜の意思は完全に繋がっていた。
その結果、魔龍神王を倒さねばならぬとお互いに考えているのだと瞬時に理解することが出来たのである。
「さあ、一緒に戦おう……桜!」
「うん! やっと、咲ちゃんと一緒に戦えるんだね……!」
二人を眩い光が包み込む。
そして気付いた時には、二人は一人の戦士になっていたのだった。
――――――
「これが、新たな力……?」
右半身にはカルノライザーのような装甲が、左半身には鮮やかな桃色の装甲が、彼女……いや、彼女ら二人を包み込んでいた。
「咲ちゃん、私の回復魔法の力……存分に使ってね!」
「体の奥からエネルギーが湧いてくる……ありがとう、桜! これなら、行ける……!」
本体であればアルティメットカルノライザーは変身後にすぐまた変身をすることなど出来ないはずの燃費の悪さなのだが、どうやら今回は違った。
アルティメットカルノライザーとしての異常なエネルギー消費が、桜の回復魔法によって相殺されているのだ。
そう、これこそが彼女ら二人の合体変身形態である『アルティメットデュアルライザー』であった。
二人の固い絆と深い愛に変身スキルが呼応し、彼女らに新たな力を授けたのである。
この形態は咲の高い戦闘能力に、桜の高い治癒能力を持つ。つまり、最強にして無敵なのだ。
「どうせ見た目が変わったくらいでしょう? 期待させておいて落とすなんてやめてよぉ?」
そんな二人に向かって魔龍神王が飛び掛かって来る。
そして蹴りを入れようとしたのだが……二人はそれをいとも容易く避けたのだった。
「あら?」
「凄い……! 反射神経も動体視力も、全ての能力が高まってる……」
咲は自らの身体能力があまりにも高くなっていることに驚いていた。
そもそも今の形態は従来のアルティメットカルノライザーに比べて基礎能力すら高くなっていたのである。
「それならば、こいつはどうかなぁ!!」
魔龍神王はチャージを行わずに無数の細いレーザーを射出する。
普通であればそれを避けることは困難であり、あっという間に包囲されて焼き尽くされてしまうだろう。
だがアルティメットデュアルライザーにかかればこの程度の攻撃、大したものでは無かった。
「あらぁっ!?」
あっという間に避けられ、懐に潜られてしまった魔龍神王は驚いていた。
そしてその隙に二人は全力の拳を彼に叩き込む。
「咲ちゃん!!」
「わかってる! これで……終わり……!!」
それはパンチと言うにはあまりにも重いものであった。
まるで隕石が絶え間なく直撃しているかのような衝撃が絶えず魔龍神王の体に叩き込まれているのだ。
「ガア゛ァ゛ッ!? グギッ……!」
もはや断末魔とも言えぬ声が彼の口から漏れ出る。
そしてその体も徐々にその形を変えて行った。
「はぁ……はぁ……」
「終わった……んだよね?」
「うん……間違いない」
もはや微動だにしなくなった肉塊を見ながら、二人は変身を解除する。
「ぅぁっ……」
「咲ちゃん!!」
その瞬間、咲はその場に崩れ落ちてしまった。
「どうしたの、どこか痛む!? それとも、えっと……」
「ごめん、桜……もう、意識が……」
「ま、待って! 駄目……咲ちゃん……!」
目に涙を浮かべながら咲を抱き上げる桜。
「そんな、駄目だよ……これからまだ色々やりたいことだってあるのに……!」
桜は泣きながらそう叫ぶ。
しかしその時だった。
「ぐー……」
「……え?」
咲はあまりにも場違い過ぎる穏やかな寝息を立て始めたのである。
と言うのも、アルティメットデュアルライザーの変身を解いたことで桜の回復魔法の効果が無くなりエネルギー不足に陥った結果、咲は抵抗する間もなく夢の世界へと誘われてしまったのだ。
「もう、咲ちゃんったら……!! でも、良かった……本当に」
しばらくは驚いたままであった桜だが、咲が生きていた事を理解するのと同時に心の底から安堵するのだった。
とにもかくにも、こうして魔龍神王との戦いは終わったのである。
「……あれ?」
「ここは……」
気付けば咲と桜は見知らぬ謎の空間に漂っていた。
そこには何も無く、つい先程までいたはずの穏健派の拠点など影も形も無かった。
だが不思議とその空間は居心地が良く、心の奥底まで温められるような感覚すらあった。
「これ、桜の思い……?」
そんな時、咲は自らの中に桜の記憶や感情が入り込んで来ることに気付くのだった。
同様に桜にも咲の記憶や感情と言った物が入り込んでいるらしく、互いの意識は少しずつ溶けあっていく。
「咲ちゃん、こんなにも私のことを……。えへへ、私のこと大好きなんだね」
「桜こそ、滅茶苦茶私のこと好きじゃん」
「それはそうだけど……でも」
「……そうだね。こんなことしてる場合じゃない」
咲と桜の意思は完全に繋がっていた。
その結果、魔龍神王を倒さねばならぬとお互いに考えているのだと瞬時に理解することが出来たのである。
「さあ、一緒に戦おう……桜!」
「うん! やっと、咲ちゃんと一緒に戦えるんだね……!」
二人を眩い光が包み込む。
そして気付いた時には、二人は一人の戦士になっていたのだった。
――――――
「これが、新たな力……?」
右半身にはカルノライザーのような装甲が、左半身には鮮やかな桃色の装甲が、彼女……いや、彼女ら二人を包み込んでいた。
「咲ちゃん、私の回復魔法の力……存分に使ってね!」
「体の奥からエネルギーが湧いてくる……ありがとう、桜! これなら、行ける……!」
本体であればアルティメットカルノライザーは変身後にすぐまた変身をすることなど出来ないはずの燃費の悪さなのだが、どうやら今回は違った。
アルティメットカルノライザーとしての異常なエネルギー消費が、桜の回復魔法によって相殺されているのだ。
そう、これこそが彼女ら二人の合体変身形態である『アルティメットデュアルライザー』であった。
二人の固い絆と深い愛に変身スキルが呼応し、彼女らに新たな力を授けたのである。
この形態は咲の高い戦闘能力に、桜の高い治癒能力を持つ。つまり、最強にして無敵なのだ。
「どうせ見た目が変わったくらいでしょう? 期待させておいて落とすなんてやめてよぉ?」
そんな二人に向かって魔龍神王が飛び掛かって来る。
そして蹴りを入れようとしたのだが……二人はそれをいとも容易く避けたのだった。
「あら?」
「凄い……! 反射神経も動体視力も、全ての能力が高まってる……」
咲は自らの身体能力があまりにも高くなっていることに驚いていた。
そもそも今の形態は従来のアルティメットカルノライザーに比べて基礎能力すら高くなっていたのである。
「それならば、こいつはどうかなぁ!!」
魔龍神王はチャージを行わずに無数の細いレーザーを射出する。
普通であればそれを避けることは困難であり、あっという間に包囲されて焼き尽くされてしまうだろう。
だがアルティメットデュアルライザーにかかればこの程度の攻撃、大したものでは無かった。
「あらぁっ!?」
あっという間に避けられ、懐に潜られてしまった魔龍神王は驚いていた。
そしてその隙に二人は全力の拳を彼に叩き込む。
「咲ちゃん!!」
「わかってる! これで……終わり……!!」
それはパンチと言うにはあまりにも重いものであった。
まるで隕石が絶え間なく直撃しているかのような衝撃が絶えず魔龍神王の体に叩き込まれているのだ。
「ガア゛ァ゛ッ!? グギッ……!」
もはや断末魔とも言えぬ声が彼の口から漏れ出る。
そしてその体も徐々にその形を変えて行った。
「はぁ……はぁ……」
「終わった……んだよね?」
「うん……間違いない」
もはや微動だにしなくなった肉塊を見ながら、二人は変身を解除する。
「ぅぁっ……」
「咲ちゃん!!」
その瞬間、咲はその場に崩れ落ちてしまった。
「どうしたの、どこか痛む!? それとも、えっと……」
「ごめん、桜……もう、意識が……」
「ま、待って! 駄目……咲ちゃん……!」
目に涙を浮かべながら咲を抱き上げる桜。
「そんな、駄目だよ……これからまだ色々やりたいことだってあるのに……!」
桜は泣きながらそう叫ぶ。
しかしその時だった。
「ぐー……」
「……え?」
咲はあまりにも場違い過ぎる穏やかな寝息を立て始めたのである。
と言うのも、アルティメットデュアルライザーの変身を解いたことで桜の回復魔法の効果が無くなりエネルギー不足に陥った結果、咲は抵抗する間もなく夢の世界へと誘われてしまったのだ。
「もう、咲ちゃんったら……!! でも、良かった……本当に」
しばらくは驚いたままであった桜だが、咲が生きていた事を理解するのと同時に心の底から安堵するのだった。
とにもかくにも、こうして魔龍神王との戦いは終わったのである。
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