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96 最終決戦③
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「桜!!」
咲は彼女の名を叫んでいた。
魔龍神王による攻撃で装甲も砕け散り今にも倒れそうになっている彼女だったが、それでも桜の無事を確認するために一心不乱に穏健派の拠点へと飛んできたのである。
咲がその身で庇ったおかげか、あれほどの攻撃であったと言うのにも関わらず拠点は半壊程度で済んでいた。
しかしだからと言って桜が無事であると言う保証はなく、彼女はその目で確かめねば気が済まなかったのだった。
「咲ちゃん……!?」
「さ、桜……」
幸いにも彼女は生きていた。
咲を見つけるなり彼女の名を呼び、自らの存在を咲へと伝える。
それに気付いた咲は心の底からの安堵を得るのと同時に、その場に倒れてしまった。
既に限界だったのだ。
魔龍神王のあの攻撃をほぼ全てその体で受け止めたのだから。
「咲ちゃん、大丈夫!?」
慌てて駆け寄る桜。
「大丈夫……じゃないかも。それより桜の方は……」
「えっと、私は大丈夫……だけどゼルさんが……」
桜はそれまで彼女自身がいた場所へと視線を向ける。
そこには背中から出血したまま倒れているゼルがいた。
「そんな……」
「私を庇って、それで……」
桜の言葉通り、彼は魔龍神王の攻撃の余波から彼女を庇っていたのである。
キングゴブリンである彼はそんじょそこらの魔物では傷一つ付けられない程に頑丈ではあるが、それでもこの有様であった。
「ポーションも効かなくて、私の回復魔法でも出血を止めるのがやっとだった……どうしよう、このままゼルさんが死んじゃったら……!」
「大丈夫、桜の回復魔法は凄いんだよ。私が証拠だもん。だから、きっと大丈夫」
咲は桜を安心させるために、彼女を優しく抱きしめながらそう言う。
「あーららぁ、こりゃまた派手にぶっこわれちゃって」
「ッ!!」
その時、魔龍神王の声が辺りに響いた。
いつの間にか穏健派の拠点の上空に魔龍神王が現れていたのである。
「ま、やったのはこの魔龍神王様なんだけどね」
「魔龍……神王!!」
「おぉー怖い怖い。でもその体で俺に勝てるとは……流石に思って無いか」
咲はすぐさま立ち上がり、魔龍神王を睨みつける。
しかし既に満身創痍状態の咲に対し、魔龍神王にはまだかなりの余裕があった。
勝敗は既に決したと言えるだろう。こうなってはもはや咲に勝ち目など無い。
「残念だけど、これで終わりだねえ」
魔龍神王は咲の目の前に降りてくると、再びチャージを始めたのだった。
「桜、私の後ろに……」
その行為に何の意味も無い事を咲は理解していた。
今の彼女ではもう一度あの攻撃を耐えきることは出来ず、桜を庇ったところで二人共仲良く蒸発するのがオチだろう。
「咲ちゃん……!!」
それでも桜はまだ諦めてはいなかった。
今なお全身全霊をかけて咲に回復魔法を施し続けている。
「桜……ありがとう。でも、もう……」
そんな彼女の努力も無駄になってしまうと、そう咲は言おうとするが……。
「私には戦う力が無いから、これくらいのことしか出来ない。私も一緒に戦えたらってどれだけ思ったことか……。それなのに咲ちゃんが諦めちゃったらもう、全部終わりだよ……? 私の信じた大好きな咲ちゃんは! 何があっても絶対に諦めないの……!!」
「桜……」
「おっとぉ、良い感じの空気に水を差すようだけど、そろそろ攻撃の方……しちゃってもいいかなぁ?」
「……とっくにチャージは終わってたでしょ」
「なーんだ、わかってたんじゃん。じゃ、もう遠慮はいらないねえ!!」
魔龍神王は先程と同じように極太レーザーを咲へと向けて放った。
「「……」」
咲と桜の二人はもはや何を言うでもなく、その場に立ち尽くす。
だがそれは全てを諦めた訳ではなかった。
「いっちょ上がりっと……。いやぁ、久々の強敵だと思ったんだけどねえ。最後は呆気なかったねこりゃ」
攻撃を終えた魔龍神王は勝利を確信し、その場を立ち去ろうとする。
だが……。
「……」
何かを感じ取ったのかすぐにその足を止めたのだった。
「……奇跡と言えるものが存在するんなら、きっとこういうのを言うんだろうねえ」
振り向いた彼の前には咲も桜もおらず、代わりに一人の戦士が立っていた。
向かって右側にはカルノライザーによく似た装甲が付いているものの、逆に左側には全くもって別の鮮やかな桃色の装甲を纏っている。
しかし今までのカルノライザーには無かったはずのその装甲からは、どこか桜のそれを思わせる雰囲気が醸し出されていた。
「この土壇場で面白いことをしてくれるじゃないの。それじゃあ、第二ラウンドと行こうか!」
咲を倒したと確信し一度は戦闘状態を解いた魔龍神王だったが、それを見るなり再び臨戦態勢をとる。
そう、戦いはまだ終わってなどいなかった。
咲は彼女の名を叫んでいた。
魔龍神王による攻撃で装甲も砕け散り今にも倒れそうになっている彼女だったが、それでも桜の無事を確認するために一心不乱に穏健派の拠点へと飛んできたのである。
咲がその身で庇ったおかげか、あれほどの攻撃であったと言うのにも関わらず拠点は半壊程度で済んでいた。
しかしだからと言って桜が無事であると言う保証はなく、彼女はその目で確かめねば気が済まなかったのだった。
「咲ちゃん……!?」
「さ、桜……」
幸いにも彼女は生きていた。
咲を見つけるなり彼女の名を呼び、自らの存在を咲へと伝える。
それに気付いた咲は心の底からの安堵を得るのと同時に、その場に倒れてしまった。
既に限界だったのだ。
魔龍神王のあの攻撃をほぼ全てその体で受け止めたのだから。
「咲ちゃん、大丈夫!?」
慌てて駆け寄る桜。
「大丈夫……じゃないかも。それより桜の方は……」
「えっと、私は大丈夫……だけどゼルさんが……」
桜はそれまで彼女自身がいた場所へと視線を向ける。
そこには背中から出血したまま倒れているゼルがいた。
「そんな……」
「私を庇って、それで……」
桜の言葉通り、彼は魔龍神王の攻撃の余波から彼女を庇っていたのである。
キングゴブリンである彼はそんじょそこらの魔物では傷一つ付けられない程に頑丈ではあるが、それでもこの有様であった。
「ポーションも効かなくて、私の回復魔法でも出血を止めるのがやっとだった……どうしよう、このままゼルさんが死んじゃったら……!」
「大丈夫、桜の回復魔法は凄いんだよ。私が証拠だもん。だから、きっと大丈夫」
咲は桜を安心させるために、彼女を優しく抱きしめながらそう言う。
「あーららぁ、こりゃまた派手にぶっこわれちゃって」
「ッ!!」
その時、魔龍神王の声が辺りに響いた。
いつの間にか穏健派の拠点の上空に魔龍神王が現れていたのである。
「ま、やったのはこの魔龍神王様なんだけどね」
「魔龍……神王!!」
「おぉー怖い怖い。でもその体で俺に勝てるとは……流石に思って無いか」
咲はすぐさま立ち上がり、魔龍神王を睨みつける。
しかし既に満身創痍状態の咲に対し、魔龍神王にはまだかなりの余裕があった。
勝敗は既に決したと言えるだろう。こうなってはもはや咲に勝ち目など無い。
「残念だけど、これで終わりだねえ」
魔龍神王は咲の目の前に降りてくると、再びチャージを始めたのだった。
「桜、私の後ろに……」
その行為に何の意味も無い事を咲は理解していた。
今の彼女ではもう一度あの攻撃を耐えきることは出来ず、桜を庇ったところで二人共仲良く蒸発するのがオチだろう。
「咲ちゃん……!!」
それでも桜はまだ諦めてはいなかった。
今なお全身全霊をかけて咲に回復魔法を施し続けている。
「桜……ありがとう。でも、もう……」
そんな彼女の努力も無駄になってしまうと、そう咲は言おうとするが……。
「私には戦う力が無いから、これくらいのことしか出来ない。私も一緒に戦えたらってどれだけ思ったことか……。それなのに咲ちゃんが諦めちゃったらもう、全部終わりだよ……? 私の信じた大好きな咲ちゃんは! 何があっても絶対に諦めないの……!!」
「桜……」
「おっとぉ、良い感じの空気に水を差すようだけど、そろそろ攻撃の方……しちゃってもいいかなぁ?」
「……とっくにチャージは終わってたでしょ」
「なーんだ、わかってたんじゃん。じゃ、もう遠慮はいらないねえ!!」
魔龍神王は先程と同じように極太レーザーを咲へと向けて放った。
「「……」」
咲と桜の二人はもはや何を言うでもなく、その場に立ち尽くす。
だがそれは全てを諦めた訳ではなかった。
「いっちょ上がりっと……。いやぁ、久々の強敵だと思ったんだけどねえ。最後は呆気なかったねこりゃ」
攻撃を終えた魔龍神王は勝利を確信し、その場を立ち去ろうとする。
だが……。
「……」
何かを感じ取ったのかすぐにその足を止めたのだった。
「……奇跡と言えるものが存在するんなら、きっとこういうのを言うんだろうねえ」
振り向いた彼の前には咲も桜もおらず、代わりに一人の戦士が立っていた。
向かって右側にはカルノライザーによく似た装甲が付いているものの、逆に左側には全くもって別の鮮やかな桃色の装甲を纏っている。
しかし今までのカルノライザーには無かったはずのその装甲からは、どこか桜のそれを思わせる雰囲気が醸し出されていた。
「この土壇場で面白いことをしてくれるじゃないの。それじゃあ、第二ラウンドと行こうか!」
咲を倒したと確信し一度は戦闘状態を解いた魔龍神王だったが、それを見るなり再び臨戦態勢をとる。
そう、戦いはまだ終わってなどいなかった。
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